どうやら百合百合しい世界に転生したらしい。   作:今日のぱんださん

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第 話︰こうして生まれ変わった

僕は一間志摩という。

一般家庭に生まれ、人並に育ち、人並に成人し、人並に働いき、人並に恋人に出会い、そして人並に死んだ。

いや、事故死なので人並みの生は歩めず道半ばと言えなくもない。

しかし、事故死なんてままある事だし、幸か不幸かと言われれば不幸な最後ではあるが別段珍しいこととも思わない。

 

死んだらどうなるのか、なんて何度か夢想したこともあったが天国か地獄の二択なら人間皆等しく地獄行きだろうと勝手に思っていたから僕も地獄行きだろう。

 

それとも死んだらその先は完全な無?

いやいや、未練タラタラ幽霊なんて摩訶不思議的な存在に?

 

・・・・・・

 

少なくとも今こうして意識がある以上、無と化した可能性はないわけだが、不思議と身体というものを感じず、あえて言うなら俯瞰したところからものを考えている状態に近いと言える。

まるで夢の中で漠然と垂れ流しの中継でも見てるようなそんな感覚。

いっそ夢なのではないか、と思いたいがはっきりと死ぬ瞬間をまざまざと見せられるというのは悪夢にしても質が悪すぎる。

それにこんなにはっきりと物事を考えられるのは夢ではないと経験上から分かる。割と夢見はいい方だったが自由度の高い夢なんてものは1度も見たことがなかったし、何よりこんな景色も何もないただただ考えるだけの夢なんてないだろうからだ。

 

まぁ、死んでもその先があると分かったのは儲けもんとプラス思考に考えよう。可能なら初めてのスレ建てやらをして嘘松さん認定されてみるのもいいかもしれない。

この当事者にしかわからない感覚というのを、皆と共有したいものだが死後にしか味わえないのだから、伝えようがないな。

 

「清良(きよら)さん、華月ちゃんがまた難しい顔をしてますよ」

 

どこからか、というよりは随分近いところから女性の声がする。

ああ、この感覚は覚えがある。寝ぼけてる時に起こされる時の感覚だ。何言ってるか頭では理解しているはずなのに全然頭に入ってこない感覚。

 

「ほんまや。赤ちゃんでもこんな顔しはるんやなーもう次期社長の貫禄がでてるな」

「あらあら、産まれたばかりや言うのに随分時の早い事で」

 

女性と男性の話し声。自分の事を話しているんだと感じはするのだが不思議と理解できない。

でも、嫌ではない。

 

優しく、暖かい感覚。

 

とても、懐かしい感覚。

 

意識だけのはずなのに、眠気を感じた。もしかしたらこれが本当の死という感覚なのかもしれない。

抗えず、ただただ意識が遠ざかっていく・・・・・・

 

 

「おや、葉月(はづき)、今度は随分と気持ち良さそうに寝たはるよ」

「本当に。ああ、私に似て本当に可愛らしい」

「は?」

「清良さん、なんか言いはりましたか?」

「いやいや、何も。本当にカワイイナーハヅキニニテ」

「ほほほほほ、清良さんたら」

「ハハハ、ハー」

 

❁❀✿✾

 

仲つむまじい声が遠のいて、どれくらい経ったか。

今度は、意識だけでなくちゃんと視界もしっかりあるらしい。

木目の天井が見える。

「い・・・あ・・・あー・・・?」

こういう時の通例として「知らない天井だ・・・」と言いたかったのだが不思議とまともに声がでず発音もできない。

これはもしかして奇跡的に助かったというやつだろうか。もうこれ絶対死んだわ、という死に方だったと思うが世の中絶対がないというし、運良く重症ですんだのかもしれない。喋れないのも大怪我のせいなのだろう。なんだか身体もうまく動かせないし。

 

しかし、それならそれで明らかに病室と思えない天井が不可解なわけだが。

 

うまく動かない身体をばたつかせて動かしてみればなんか柵と明らかに和室を思わせる障子が目に入る。

ああ、ここ病院じゃねえわ。てかまじどこ?

和室にしてもかなーり広い。病院の大部屋ぐらいはいうにあるだろう広さの和室に自分のベッド一つというのに違和感を覚えるしなによりこの高い柵はなんだ?

思い返せば人生で病院に長期入院なんてしたことないし生死不明の重症も負ったことがないから、もしかしたらホントの重病患者は意識回復時に暴れたりベッドから落ちないように柵で囲うのか? 知らんけど。

 

とにかく、ここはどこかわからないが病院にしろ病院でないにしろ誰が現状を説明して欲しい。病院のスイートルームが和室である可能性が微レ存で存在するなら近くにナースコールがありそうなものなんだが・・・それらしきものもないし。

 

しかし、ほんとに身体の自由が効かない。なんとか寝返りをするのも、一苦労だ。そして寝返りをしたことでここがどんな場所かはっきりと分かったが確実に病院じゃないな。

完全に普通のよくある和室。ただ調度品などから見る限り相当豪華。あとやっぱ凄い広い。それと柵もそうとう高い。身長ぐらいはありそうな、長さの柵ってこれもう簡易的な牢屋じゃね?

後は色々と違和感を覚えることが多々ある。

 

先ず第一に身体。

違和感と不自由さを感じるが別に痛みも無く包帯やら点滴やらもされてない。つまり、重症で運び込まれた線は相当薄い。

もしかしたら昏睡状態のまま数年間眠り続け、今まさに目を覚ました、という可能性も映画の中でなら有り得そうだ。

次に感情。

これでも立派な成人した大人だ。感情のコントロールなどとうの昔にマスターし、子供の頃のように癇癪を起こしたり泣き喚くようなことなど当然しない。

しないはずなのだが・・・なぜだが不思議と大声をあげたい。怖い。不安。

そんな、感情を外に出さずにはいられないのだ。

冷静にここはどこか、とか分析してみたがもう無理。意味が分からなすぎて不安が止まらない。

 

 

 

 

 

少し、泣く。

 

 

 

 

 

 

泣いた。もう声を出して泣くなんて数10年ぶりだろうか。声につられて人も来るし、何となく現状も分かった。分かったら分かったで意味不明で更に泣いてしまったがそれも仕方ないだろう。

 

これは、あれだ。

 

巷で流行ってる転生、というやつだ。

広すぎる部屋も牢屋のように高い柵も納得がいった。だって、僕赤ちゃんですもの!

華月、と呼ばれる僕。

うん、名前から察するに女の子だわ。

 

僕、女の子に転生したわ。

 

 

 

 

 

 

 

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