どうやら百合百合しい世界に転生したらしい。 作:今日のぱんださん
中間テストが開始された。
それ以上の感慨もなくただ配られたテスト用紙に記憶と照らし合せて記入漏れ記入ズレがないように埋めていく。応用力の求められないテストでは余程のド忘れがない限りミスはない。
だけども、僕の記憶力というのは少し不思議に感じることがある。
転生者であり生前の記憶があるということは脳の記憶容量の大半を占有したまま産まれることとなる。その記憶が価値のあるものであるものもあれば転生先では全くの無意味になることもあるわけで、新たな教養を得る時に不利なのではないか、と思ったのだがそういうこともなかった。
単純に四条華月のスペックが優れてて僕のどうでもいい知識が占める容量なんて些細なものだったのかもしれないが、もしかしたら魂の記憶というのは外部メモリとして脳とは別領域に存在する、なんてファンタジーなこともあるのかもしれない。
まあ、転生者なんて存在の僕自身がそもそもファンタジーなんだけども。
少なくとも精神面においては大いに転生前の記憶の影響を受けてるおかげでお勉強が苦にならないのは素晴らしい事だろう。
単純に育ちの良さからくるものかもしれないけど。あのお父様とお母様に育てられれば転生前の僕でも率先して予習復習していたのかも……いや、ないな。
いい意味で両親共に放任主義なので僕が全く勉強しなくて成績不振でも気にしないだろう。
できないならできるやつを雇えばいいの精神だからなー
うん、やっぱり自分のことは自分で律しないとね。ただのワガママ無知のお嬢様は御免こうむる。
転生者だからこそ強く思うのだ。
大和撫子、お嬢様とはこうあるべきだと。
❁❀✿✾
「お疲れ様です、奈々さん。結果の方はいかがでしたか?」
「あー華月さんおつかれー。いやー難しいねー華月さんに教えてもらってなかったらかなり悲惨だったかも」
勉強を教えた手前気になってたけど手応えは悪くなさそうで、一安心。
まあ、一年生の中間テストはやはり基礎的な部分が多いのでここでつまづいてしまうとこの後が大変なのだけど。だからこそここでつまづいて意欲を失ってしまう子も多い。
「それほど悪くなさそうでよかったです。奈々さんがよろしければ今日もお勉強一緒にどうですか?」
「え、いいのっ?! こっちとしては大助かりだけどいいの? 迷惑じゃない?」
「乗り掛かった船ですから。僕は最後までしっかり面倒みないと嫌な性分なんで」
「そんな迷子みたいな扱いは微妙なんだけど……お願いしてもいい?」
「はい、お願いされます」
「姫様、私たちもご一緒しても?」
「美智瑠たちは余裕でしょうから自力で頑張ってくださいね。それに僕の部屋そんなに入れないし」
「ま、まさか華月さんの自室に呼ぶの?」
「ええ、まあ。ファミレスってちょっとがやがやしててうるさいですから」
賑やかな雰囲気が落ち着く、という人もいるのだろうけど、勉強するならやっぱり静かな方が集中できる。
それに高校生に安いと言っても毎回ファミレスは痛手だろう。
「ええー、華月さんのお家にいけるの?! やったー、すんごい気になってたんだ!」
「そんな大したものじゃありませんよ。古くて大きいだけですから」
「……お願いします、姫様! 大人しく、真面目にお勉強しますから私だけでも!」
「ずるいわよ、美智瑠さん! ほら、教える側は多いに越したことはないでしょ? 美智瑠さんとか静と違って私はこれでも教えるの結構上手なのよ」
「愛衣! 裏切る気か!」
「はんっ、静なんて聞いても『だからここはここを代入するだけじゃない。なんでわからないの?』とか要点だけ言って詳しいことも説明しないじゃない! 自分が分かってるからって相手も全て分かってる前提で喋るなんて教える立場として論外じゃないかしら」
「いやそれぐらい普通わかるでしょ。え、わからない?
――ま、まあ、そういうこともあるよね」
「3人とも、お静かに。はぁ、分かりましたよ。みんな来ていいですから仲良くしてください。ただし真面目にいい子に丁寧に教えてあげるんですよ?」
「「「勿論」」」
仲いいなー。
しかし、僕の家なんてそんなに必死なってまで来たいものかなー。広い以外特筆することも無いし僕の自室に関してはちょっと珍しい造りなのかもしれないけど美智瑠や静さんは何度か来たことあるし。愛衣さんは静さんから聞いて興味が湧いたのかな?
「それでは、奈々さんたちはうちの車で美智瑠たちは美智瑠の家の車で行きましょうか」
「うん! わぁー、華月さん家の車に乗れるんだ! 今から緊張してきた」
「別にそんな緊張するようなものじゃないですよー」
「わ、私たちもいいんですか?」
「勿論ですよ、一子さん。皆でテストがんばりましょ?」
「ありがとう、華月さん。明日の数学は苦手範囲だから助かるわ」
「へぇー二江が素直にお礼を言うなんて意外」
「奈々が私をどう思ってるか知らないけれど私、これでも素直な方なのよ?」
「ふ、二江ちゃんが素直はさすがに無理があると思います」
「ちょっと一子!」
こっちもこっちで仲がいいなー。こういうお互いに気兼ねのないやりとりってちょっと憧れるなー。
割と皆僕に対して遠慮してる気がするんだよねー、美智瑠と静さんを除いて。
「さあ、皆さん行きましょう。お昼も僕の家で食べて行ってください」
「お昼までご馳走してもらえるなんて……凄い楽しみ!」
「んー、あんまり過度に期待しないでくださいね? ほんと大したもの出せませんから」
さあ久しぶりに友人たちを家に呼ぶ。それもこんなに大人数なんてお誕生日会以来じゃないかな?
僕は僕で少し楽しみだ。