どうやら百合百合しい世界に転生したらしい。   作:今日のぱんださん

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第十二話︰気づけばすっかりお嬢様思考

 

 

「え……これが家?」

 

「はい、こちらが僕の家です。さあ、おあがりください」

門の前で下車し、我が家へと招き入れるけど三人とも固まったままついてこない。

「いやいやいや、豪邸を想像してたけどもこれは……」

 

「大きすぎるでしょ……なにこれ」

 

「ふ、ふえええー」

 

三者三葉。一子さんなんてもうただただ可愛らしい悲鳴を上げてるだけだが、やっぱり大きいよね。

産まれてから15年間自宅として住んでると広いなー以外の感想が古い家だなーくらいしか出てこないが来訪者からしたら驚くべき広さなんだろうな。

まあ、僕の部屋はきっと今どきのワンルームマンションのような造りだから落ち着いてくれるだろう。

 

「まあま、気にせず気にせず」

 

「う……お邪魔しまーす」

 

「では僕の後についてきてくださいねー。下手したら迷って帰れなくなっちゃいますから」

 

「冗談のつもりなんでしょうけど冗談になってないわね……」

 

むう、下手くそだったか。

確かに本当に迷いかねないから冗談になってないか。

いやでも1回覚えれば簡単だからね。

玄関から入って廊下をうえうえしたしたひだりみぎひだりみぎ行ったらあら不思議。

僕の部屋の前である。

 

「はい、ここが僕の部屋ですー」

 

「わあ、部屋は普通……じゃない?! なんで日本屋敷の中にこんな普通のワンルームが?!」

 

「キ、キッチンもあるし、じ、自分の部屋にしても広すぎるよー」

 

「さすがのお嬢様ね」

 

「へ、部屋のことはいいじゃないですか。さぁ、お勉強ですよ、お勉強」

 

これが普通の反応なのか。

たまに家に来る美智瑠の反応が淡白というか「こ、ここが姫様の部屋……ああ、部屋全体から姫様の匂い。もうこれは姫様の中にいると言っても過言ではないのでは?!」と斜め上のリアクションをするから別におかしいことはないと思ってたけど充分普通からは逸脱してたらしい。

庶民意識を持ってたつもりだけどもしかしたらすっかり上流思考に染まりきってるのかもしれないなぁ。

 

「飲み物の用意をしますから三人はそちらのテーブルに座ってお待ちください」

 

そう考えるとあれか。ここで最高級の茶葉の紅茶とか出すのはひかれちゃうんじゃないか。

無難に。そう無難に番茶とかがいいんじゃないか? いや、番茶なんて買った覚えないな。

……田中さんにメールで持ってきてもらおう。

 

「お嬢様、どうぞ。近所のスーパーに売ってるパックの番茶です」

 

「……僕、まだメールしてないんだけど。というか、いつの間に部屋に入ったんですか?」

 

「普通に合鍵を使って。できる秘書というのは言われる前に用意しておくものですから」

 

「……ありがとうございます」

 

「それとお嬢様こちらも」

 

「なにこれ」

 

「やかんです」

 

いや、そういうこと聞いてるわけじゃないから! なんでやかん。そこでどうしてやかんがでてくる!

 

「お茶を大量に沸かすといえばやかんと相場は決まってますから。漫画とかでも野球部なんかはやかんのお茶のを飲んでたのでそういうものかと」

 

この人もこの人で一般常識ずれてるよなー。

 

「どうして友達を家に呼んでやかんでお茶を沸かすんですか! 女の子ですしそんなにいらないでしょう! むしろ、こういう場合はペットボトルのジュースとかでしょ!」

 

「そう言われる思って、オレンジジュースと炭酸ジュースとおかしも用意しておきました」

 

あー、頭はたきたい。関西人のようなツッコミをいれたい。

 

「ありがとうございます……」

なんだろう、家に帰ってきたはずなのにどっと疲れた気がする。なぜ僕の周りの大人はこんなに癖が強いんだろう。

精神年齢としては大人のつもりの僕から見ても大概自由奔放がすぎる気がする。両親はともかく田中さんは秘書といういわば雇われの立場のはずなのにお父様よりも立場が上に感じることすらある。

というか基本的にお父様に対して辛辣だからそう見えるんだろうけど。

まあ変わってたりマイペースなところを除けば凄く優秀な人なんだけどねー。なんだかんだ来客に対して最善の準備をしてくれてるわけだし。

 

「お待たせしました。あったものなので好みに合うか分かりませんが、どうぞ」

 

「ありがとー、私このジュース好き!」

 

「わ、私もこれ好きです」

 

「ありがとう、華月さん」

 

苦手ではなかったようで一安心。

そこでインターホンが鳴る。美智瑠たちが到着したようだ。

 

「はい。どうぞお入りください」

オートロックの扉を解除すれば美智瑠、静さん、愛衣さんが入ってくる。

 

「お邪魔しますー。わあ話には聞いてたけどこっちも広いのねー」

 

初めて来た愛衣さんがあちらこちらと見回しながら入ってくる。ううん、あんまり注目されるのも恥ずかしいな。

 

「いらっしゃいませ。さあ、三人にはしっかり先生役を務めてもらいますからね」

 

「勿論。委員長としてクラスメイトの為に一肌脱がないとね」

 

愛衣さんは乗り気だ。

 

「姫様……パソコン周りの機材随分と増えましたね?」

 

「アレは音声ミキサーかな? 普通に使うには必要のないものだね」

 

相変わらず目敏いなこの二人は! いや、どんなに二人が気にしようと無視だ。定期的に配信してるなんてバレたらどうなるか分かったもんじゃない。

 

「もう僕が何を買おうと勝手でしょう? さあ、二人も座って」

 

「……後で詳しく聞かせてもらいますわね」

 

「まあ、大体察しはつくけどね」

 

 

うーん、お片付けしないで呼んだのは間違いだったかもしれない。





いつも誤字脱字報告ありがとうございます。
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