どうやら百合百合しい世界に転生したらしい。 作:今日のぱんださん
この世に新たな生として生まれおちて十五年、これほどの危機に巡り会っただろうか。
今、このカラオケルームという場において驚く程に現代の曲がわからないっ!
確かに僕は現代の流行曲に疎く、流行りに乗り遅れている事は理解しているが、これほどまでに友人と流行という分野で開きがあるとは……
え? 平成初期から中期って懐メロなの? ベスト名曲じゃないの?
うーん、困った。現カラオケルームにおいてのアウェイは間違いなく僕。いかな名曲と言えど知らなければただの懐メロ。
サビは知ってるんだけどもーと言われるのがオチ。求められるはキャッチーでヒットな一曲。
皆が知ってるアーティストで記憶に残ってるような名曲。
そこから導かれるのは……!
自然と年代別ヒットチャート履歴の上位曲に落ち着いた。
あまりにもオチとして弱い結果に落ちこんでしまうのは何故だろう。
気を取り直して現在カラオケルーム内部。場所としてはアミューズメント複合施設であり、カラオケ以外にもボーリングからビリヤード、卓球にダーツ、ゲームセンターと多岐に富んでいるけどその全てが今世ではやったことのないものばかりだ。普段美智瑠と静さんと出かけることがあってももっぱら服を見に行ったりお洒落なカフェでまったりティータイムとのんびりと過ごすことが多くこのようないっぱい遊ぶところがあるよ! ほら、遊べよって主張してくる場には行かない。
しかし思い返せば女子高生というのはプリクラを撮る生き物であったと前世では記憶している。
なんか街に出たらプリクラ。とりあえずその日の思い出にプリクラ。意味は無いけどそこに機械があったらプリクラ。
デコレーションたっぷりだったりもう原型かすりもしないような美白小顔に仕上がったりと恐ろしい魔改造されるのがプリクラと思っていたが、もうそういうものとして受け入れられているのだろう。
しかし女の子って案外男性曲も歌うんだな。静さんが今歌ってるのは確かドラマの主題歌で流行ったメロンだかミカンだか忘れたけどそんなタイトルの曲だし、さっき美智瑠が歌ってたのも映画化したドラマの主題歌で歌ってるのはミスター子供だったとおもう。
愛衣さんはなんか有名なアニソン歌ってた。声ものすごくかわいい!
どれも流行りでランキングに入ってるので僕でも聞いたことがある。後皆超上手い。
そういえば最近の女子高生は結構ボカロが好きと聞いたことがあるし、オススメされたこともあった。
よしそっち系で攻めよう。今の僕にとってボカロの高音なんぞおそるるに足らず!
❁❀✿✾
歌いきった。
選曲も知ってるのが有名なものしかなかったのも功を奏して美智瑠も静さんも分かる曲だったようだし、愛衣さんに至ってはデュエットしてくれた。
うん、カラオケって来てみるとやっぱりいいね。歌うの楽しいし、聞いてるのも嫌いじゃない。たまーに来る分には楽しめそうだ。
「今日はお付き合いいただいてありがとうございます。どこかでお茶しませんか?」
「いいですわね、近くに喫茶店あったでしょうか」
「それなら、ちょっと行ってみたい喫茶店があるんだけどいいかしら?」
「へえ、愛衣が行ってみたいってどんなとこ?」
「ふふ、それはついてのお楽しみよ」
不敵な笑みを浮かべて僕達を先導してくれる愛衣さんについていった先は……
『おかえりなさいませ! お嬢様方』
未知の領域だった。
「愛衣さん、ここって……」
「やっぱり華月さんは来たことないかしら? 聞いたことはあるんじゃない? メイド喫茶よ!」
「テレビで見たことがありますわ。メイドが接客する喫茶店があると。正直常日頃からメイドに囲まれてる身としてはありがたみが理解できないジャンルですが」
「美智瑠さんの場合はそうだろうねー。まあ一般男性の支持が圧倒的だろうから私達にはわからない世界ではあるよね」
「まあ私も初めて来たのだけれど前からどういうものなのか興味があったのよね」
これがメイド喫茶っ! 生前から存在は知っているし行ってみたいと思いながら近所になかったから一度も訪れることのできなかった場所。
まさか転生してくることになるとは思いもしなかったな。
しかしメイド喫茶の売りというのは喫茶店としてのお茶の美味しさではないと思われるのが不安だ。
「お嬢様方、どうぞこちらのお席へ」
促されるまま席へつきメニューを渡される。メニュー内容としては普通のドリンクにフードメニュー、メイド喫茶の定番と言えるお絵かきオムライス、それにプラス料金で一緒に写真撮影ができるようだ。
「割とメニューは普通なんですね。いや、ネーミングがちょっとあれでしょうか」
「確かにこの『LoveLoveくまたんオムライス』とかもう意味がわからないわね……想像はできるけど」
「私はアイスティーとこの愛情たっぷり苺たんパフェで構いませんわ」
「私もアイスティーで」
「僕はアイスコーヒーをお願いします」
「皆普通ね……私はココアと麗しのハーレムパフェで」
「かしこまりました! 少々お待ちくださいませ」
注文をとったメイドさんが下がっていくが随分と視線を感じる。
店内は休日ということもあって半分以上は埋まっており大半が男性の一人客。そこに接客しているメイドさんがちらちらとこちらを見ている気がする。
「何でしょうね、女性客がそんなに珍しいんでしょうか?」
「珍しいと言えば珍しいんじゃないかしら。こんな美少女集団」
「自分で言うのか」
「いや、私なんて飾りよ。美智瑠さんは見るからにお嬢様な上にかわいいし、静もかなり綺麗じゃない。女受けするタイプだけど。そして何よりも……」
ん、僕?
「華月さんが綺麗すぎるわ」
「当然ですわ。私達の姫様なんですから」
「まあそうだね。愛衣も委員長キャラとしてはかなり上玉だよ。マンガとかでメガネ外して髪型変えたら化けるタイプだ」
「褒めてるのかわからないけど、一応お礼を言っておこうかしら。ありがと」
まあ、確かに愛衣さんの言う通り僕含めこの席だけ容姿レベルが際立っている。言っちゃ悪いがこの店にいるどのメイドさん連れてきても見劣りするだろう。
遠くから見てる分には目の保養になるだろうけども。
「お待たせしました、お嬢様方。ご注文の品になります」
メイドさんがやってくる。これはかの有名な呪文を一緒に唱える公開処刑をする流れでは?
「はーい、これから料理が美味しくなる魔法を唱えまーす。私に続いてくださいねー? おいしくなーれ、おいしくなーれ、萌え萌えズッキュン!」
「「「「おいしくなーれ、おいしくなーれ、萌え萌えズッキュン!」」」」
うわー、これ予想以上に痛々しい上に恥ずかしいな。ものすごく視線感じるし。
「こ、これは恥ずかしいですね……」
「無表情のまま赤面する華月さん……控えめに言って可神だね」
「くっ、これは予想以上にきくわね。華月さん撮っていい?」
「あばばばば」
「まずい、美智瑠さんが壊れたっ」
「大変、華月さん復活の呪文を唱えてっ」
「え? えーと、
ゆうていみやおうきむ
こうほりいゆうじとり
やまあきらぺぺぺぺぺ
ぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺ
ぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺ?」
「ふう、危うく帰ってこれないところでした。ありがとうございます姫様」
「何なのこの子たちは……」
その日、某メイド喫茶に恐ろしく可愛いけど濃すぎる美少女集団が現れたという目撃情報が盗撮写真とともにツーイータで流れ一時的に大盛り上がりになったが、謎の力によって次の日には投稿アカウント事削除されていたらしい。