どうやら百合百合しい世界に転生したらしい。   作:今日のぱんださん

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第十六話︰四条華月のできないこと

6月の半ば梅雨シーズンというのにあまり雨のふらないこの季節は髪の長い僕にとって辛いシーズンだがこの先の夏という地獄が待っていることを考えるとここはまだ序章……だが、高等部に入ると僕にとって天敵と言えるイベントの一つが開催される。

 

球技大会だ。クラスの団結をはかるなどもっともらしい理由をつけられている学校の大きなイベントの一つだが、僕にとってはただただ辛い催しだ。

美智瑠は嬉々としてバスケに参加するだろう。静さんはあの身長に高い身体能力を有してるのでどの競技に参加しても活躍できるだろう。

一方僕と言えば認めたくないが中々貧弱な身体だ。低身長で身体能力も高くない。体力もないので走り続けるような競技は絶対無理だ。

種目としてあるのはサッカー、バスケ、バレー、ドッジ。選ぶならバレーかドッジの二択だろう。残りの二つにおいては確実に体力がもたないし足を引っ張るだけだろう。

バレーならまだボールをあげるくらいはできるだろうか。目は悪くないので身体さえついてきてくれれば何とかなる、とおもう。

ドッジはうーん、僕の投げる玉で相手倒せるかな? できることならただ避けるだけの機械となれればいいのだがその場合最後の一人まで残るという絶望しかない。

うん、やっぱりバレーがいいな。バレーにしよう。それしかない。

 

 

バレー舐めてたわ。え、レシーブめっちゃ痛いんですけど。自他ともに認める白い白い僕の腕すごい赤いんですけど。

死ぬの? 梨汁ブシャーするの?

 

「華月さん、大丈夫?」

 

「静さん……これは、予想以上に痛いですね……」

 

「だろうね、あっちで愛衣も死んでるし」

自主練ということでバレー出場の静さん、愛衣さんと体育館にきたけど、愛衣さんが床に突っ伏して倒れ込んでる。僕と一緒で体力がないみたい。

 

「静さんは、元気そうですね」

 

「まあ、二人に比べたら常に身体動かしてるし剣道も結構痛い競技だからね」

 

はぇー、剣道って暑い臭いだけじゃなくて痛いのか……中々マゾいスポーツだったんだな。

まぁ、スポーツってどれも怪我の可能性はあるわけだし暑い苦しいだけのはほぼほぼないか。

 

「愛衣さん、大丈夫ですか?」

 

「む、無理ね……静の嘘つきめちゃくちゃ痛いじゃない」

 

「最初だけだよ。二回目三回目には慣れてそんなに痛くなくなるはずさ。私も痛いは痛いけど小手や胴を外された時ほどではないし」

 

「そんな剣道経験者にしかわからない例えされてもわからないわよ」

 

「でも華月さんいつも運動は苦手という割には動けてるね。しっかりボールに追いついてるし」

 

「一応合気を嗜んでましたからそのおかげでしょうか」

 

「ああ、だから構えが武道みたいな体勢だったのね……」

 

えっ、そんなおかしな構え方してたの? いやでも正直構えたところで何の役にも立たないんだけどね。受け流したらダメだし。

激流に身を任せ同化する、したらボールがあらぬ方向に飛んでいくし。なんならボールが垂直に飛んで味方に攻撃しかねない。

もしかしたら、バスケの方が向いていたかな? 体力絶対もたないけど。

 

「しかし、愛衣さんがバレーというのは少し意外でした。ドッジの方が楽できそうでしょうに」

 

「あーまあね。でも、こっちなら静もいるしね。この子に任せとけば点とってくれるし。折角やるなら負けたくないじゃない?」

 

案外負けず嫌いなんだ。自分の力だけで勝てないと分かっているのは自己評価が低いのか冷静に分析できているのか微妙なところだけど、愛衣さんは純粋に運動音痴のようなので正確な判断だろう。

 

「過剰な期待だと思うけどね、私もバレーは初心者だ」

 

「初心者という割には随分と慣れた動きに見えたけれど」

 

「ええ、随分とさまになってましたよ」

 

「君らと同じで体育の授業でしかしたことないさ。まあなんとなくで割とできるもんだね」

 

「これだから天才肌は……」

 

「羨ましい限りです。いえ、妬ましい、でしょうか」

 

「勉学のトップがそれを言うか」

 

「それもそうね。華月さんがテストで苦労してるところ見たことないし。妬ましや」

 

ええー、そうなる?

確かに勉強で苦労は今のところしたことないけども。

皆も毎日予習復習すればいいんじゃないかな。まあ、既に一通り内容を知っているかどうかという違いはあるかもしれないけど。

僕からしたらあー、昔やったなー懐かしいなーぐらいな懐古心もあって勉学を楽しみやすいというところもあるから、これから新しいことを学ぶ普通の学生とは随分と違うとは思うけども。

 

「ま、まあその分体力はこれっぽちもないですけどね。これ以上はもう無理です」

 

「同じく、今日はもういいわ」

 

「まだ開始して三十分経ってないんだが……まあ仕方ないか」

 

そう仕方ないのだ。日頃から率先して動かない僕らに急な運動は毒だ。次の練習も来年でいいんじゃないかな。

 

「私はもうこのまま車で帰りますね。お二人は徒歩ですよね?」

 

「ああ、そうだけどちょっと待って華月さん」

 

呼び止められて静さんの方を向けばぱしゃりと写真を撮られる。

 

ん、なんで?

 

「美智瑠さんからの注文でね。汗に濡れた華月さんの写真が欲しいって。うん、いいのが撮れた」

 

見せられたのは汗で髪の毛が顔に少し引っ付いてる僕。顔も上気して赤みをおびている。

うん、風呂上がりの僕と大差ないな。違いは疲れで目がジト目になってるくらいか。

 

「相変わらず美智瑠も変なものを欲しがりますね……では、お先に失礼します。お疲れ様でした」

 

「ええ、お疲れ様、華月さん」

 

「帰ったらしっかり柔軟するといい」

 

静さんからありがたい忠告も受けて帰路につく。帰ったら速攻お風呂に入ろう。田中さんにマッサージもしてもらおう。

 

夜、手が痺れて箸を持つのも苦労した。

ああ、懐かしい感覚だと思う梅雨の夜。

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