どうやら百合百合しい世界に転生したらしい。 作:今日のぱんださん
梅雨が明けた。学校行事としては期末テストが終われば夏休みという学生皆が待ち望む長期間の休みとなる。
球技大会? そんなものもありましたね……
二回戦、三回戦までは順調に勝ち進んだけど四回戦の時は先輩チームが強いのと僕と愛衣さんの体力が尽きて敗退となった。
アレだね、どの競技にしろ勝ち進むだけ試合数も増えることを失念してたね。
練習で三十分しかもたない体力で何試合もこなせるわけないよね。
まあ、だからと言って率先して体力つけようとは思わないんだけどね。
人間向き不向きがあるわけだしっ。
その分知力は抜きん出てるわけだし?
しかし我がことながら優秀な頭をしている。
前世の成績は中の中。大学入学までは塾にも行っていたが、大学入学後は遊んでばかりでまともに勉強もせずいかにして単位を落とさないかに腐心し、就職後は目の前の仕事をこなすことに注力。
過去の勉強など思い出すこともなければ社会で活かすこともなかったし、すっかり忘れていた。
だというのにいざ教科書を読めば導き方を覚えているし、意味を知っている。
きっと覚えているのではなく蓄積していた記憶を引き出せるのだろう。パソコンの中にどんなファイルがあるかなんて知らないし過去に保存したデータなど居場所すら忘れていても検索をかければ引き出す事ができる。
そんな都合のいい外部記憶装置が前世の記憶という形であるんだろう。全くもって都合のいいことだがそれを差し引いても今の身体のスペックが高くなければ円滑に引き出すことが出来ないだろう。
いっそこんなに高スペックなら身体能力も高くしてくれればよかったのだけども、そのへんは頭の良さと同じく親の遺伝なのだろう。
まあ、どれも現状からの推測予想にすぎないから答えなんて一生出ないんだろうけども。
❁❀✿✾
「テストお疲れ様でした、姫様。手応えはどうですか?」
「お疲れ様です、美智瑠。いつも通り、ですかね」
「その様子じゃ今回も華月さんに勝てそうにないな」
全テストが終了し、美智瑠と静さんがやってくる。確かに今回もいつも通りな結果に終わるだろう。教科数が多くて苦労するのも皆同じなのだから。
「皆十分に勉強しているのですから順位にそれほどの価値があるとは僕は考えていませんけどね」
「私としては取れるなら何でも一位を取りたいですわ。でもまあ、常に目の前に目指すべき目標があるというのもモチベーションが保てていいことですが」
「そこでめげないのは美智瑠の美点だと思いますよ」
投げ出すのは簡単だからねー。勝てない戦い、越えられない壁。
それでも目指し挑み続けることのできるメンタルは賞賛に値する。
スポーツなんかじゃ、僕はすぐ折れちゃうからね。苦手分野では全くモチベーションを保てない。
あと英語。書くのも聞くのも問題ないけど喋るとなると発音も残念な上にから回ると噛む。
慌てない慌てない呪文噛むからね。
ま、まぁ、旅行で国外に行くことがあっても絶対一人にはならないし、通訳者さえいれば問題ない。喋るのが苦手なだけで聞き取れないわけじゃないからかもられることも無い。
だから、大丈夫ったら大丈夫なのだ。
「さあ、テストも終わりましたし夏休みですわ!」
「夏休み、と言っても私達は部活で結構学校くるけどね。華月さんは予定決まってるのかい?」
「そうですねー、お盆辺りは親族が集まるので忙しいですがそれ以外は今の所特には。お盆明けは家族旅行が例年通りあるので日本にいないでしょうけど」
「それでしたら、七月中に海かプールにでも行きませんかっ!」
「海……海、ですか……」
まあ、夏の遊びと言えば海か山だろう。山にしても小川でバーベキューとか水場なわけだが、僕にはどうも水場での楽しみ方というのを理解できない。
泳ぐことそのものが好きなら別に一人で泳ぎに行くだろう。みんなで行って海辺で追いかけっこ、水のかけっこ、後は……砂場でお城作り?
僕としてはパラソルの下でごろごろ希望。できることならクーラーの効いた室内でごろごろ希望。でも、寒いのは嫌だからタオルケットは必須。
うん、家から出たくねえな。
「やっぱり華月さんは暑いところは苦手かい?」
「ええ、まあ。肌も強くないですし直射日光浴びるのも辛いですね」
「なるほど、では、姫様ナイトプールとやらにいきませんか」
「ちょっと、美智瑠さんそれは」
「ナイトプール、聞いたことがあります」
昼間だけでなく夜も解放しているプールでライトアップ謎の光るたまで幻想的な雰囲気を作り出し女性相手に流行したアレか。確かに夜なら日焼けの心配や暑さ対策も大丈夫だろうし、確かホテルのプールなどが会場となってるところも多いのでプールからあがった後にすぐ休憩もできる。
問題があるとするなら……
「ナンパが凄く多いんですよね?」
男性客にはそれを主目的としてくる層が多く存在するのだとか。必然的に肌の露出の増えるプールなら確実にナンパ祭りになるだろう。
「そこらへんはご安心を。こちらの高級ホテルのVIP限定プールで一時的に行われるイベントですので私達のような女子高生をナンパするような常識知らずなお客様はおりませんわ」
見せられたのは確かに会員制高級ホテルの公式サイトでその中でも一部の会員限定ナイトプール解放のお知らせだ。
「確かにここなら変なお客さんはいないだろうね。しかし、よく見つけたね」
「事前に下調べは入念に行いましたから! テスト中も楽しみで楽しみで」
おい、僕のさっきの褒め言葉返せ。
「はあ、分かりました。夏ですし一度くらいはプールに行っておくのもいいでしょう」
「ありがとうございます、姫様! 日取りの方は七月最終の土曜日などはいかがでしょうか?」
「僕は大丈夫です」
「私も。愛衣も、空いてるよ多分」
「では詳しくはまた改めてメールで伝えさせていただきますね!」
嬉しそうだなー、美智瑠。まあ、今まで何度誘われても海やプールは断り続けてきたから尚更なんだろう。しかし、プールなんて学校の授業以外で入るのいつ以来だろう。
海外旅行中のホテルにはプールが併設されてるところが多いがだからといってわざわざ入ろうという気にはならなかったし、なんなら海辺だろうと海にすら入らない僕だし。
まぁ、プールなんて泳がずぷかぷか漂ってればいいか。
この後美智瑠と静さんにめちゃくちゃ水着選びに連れ回された。