どうやら百合百合しい世界に転生したらしい。 作:今日のぱんださん
異世界転生物というのがテンプレとなるくらい溢れていた。
異世界に転生することによって全く新しい土地での冒険ができる。しかも転生特典というチート能力を持っているのがデフォルトだ。
とにかく楽ができる。普通の異世界の住民達にはない力を持っていることによって、持て囃される。承認欲求が満たされる。
転生物というのはそういうものだ。
日本に再び産まれた僕にもその特典のいうのは例外なく適用されているらしく、まずは生まれ。
四条家はこの日本では京都の名家らしい。歴史に詳しくない僕でも四条なんて平安っぽい名前だしそうなのかなーと思ったら案の定だ。
その四条家の一人娘である四条華月(しじょうかづき)が僕だ。この手のお決まり通り容姿はすこぶるいい。
細くしなやかな黒髪。すれ違えば10人が10人とも振り返るであろう美貌。高すぎない身長に大きすぎないバストに引き締まったウエストに柔らかさを控えめに主張するヒップ。
完璧な大和撫子が四条華月の容姿だ。
まあ、問題があるとしたらその中身なわけだが。
転生して生まれてから15年の月日が流れたが驚いたのは最初だけで慣れればこれほどイージーな転生先もない。転生ガチャ大勝利である。
そもそも地球の日本でしかも生まれが2003年という育てば既存の知識が活かし放題の時代。
家は名家でお金の心配はなく中身が成人してる以上礼儀作法立ち居振る舞いの覚えも簡単。
心配があるとすれば幼少期の他の子供たちとの付き合い方だったがそれも家柄ゆえなのか子供は風の子と言われるようやんちゃな子に出会うこともなかった。それはそれで寂しい気もするのだが。
困ったことことがあるとしたらそれはもう精神年齢が故の母とのあれこれだろう。授乳からはじまりおしめの交換にお風呂・・・まさかはじめての赤ちゃんプレイがガチの赤ん坊の身体で行うとは・・・このリハクの目を持ってしても見抜けなんだ!
しかも我が母葉月の年齢が当時は20代半ばと死んだ僕と大差ないし嬉し恥ずかし百面相。
身体に関してはもう慣れた。最初こそ迷いや恥ずかしさもあったが伊達に生まれてから15年付き合ってるわけではないのだ。生理に関しては2度目の死を覚悟したけども。
そんなこんなで、なんだかんだと育ってみれば15歳の春、高校入学式である。だらだらと過去をふりかえっていればいつの間に高校の校門前である。
といっても、女子中からのエスカレートなのでこれといった感慨もない。あるとするならこれから行う新入生代表の挨拶めんどうくさいな、という思いぐらいである。
中学入学時にも行ったわけだが、人前での代表挨拶など前世では当然なかった。今世でこそ過去の蓄えの差から優秀であっても前世はなんてこたない一般人。
はじめてのことには緊張するし、壇上から何百人見られての挨拶などすらすらと行える度胸など身につけてこなかったのだ。
まあ、今はそれよりも・・・
「おはようございます、姫様!」
「・・・おはよう、美智瑠さん。毎度言うてますが、その姫っていうのやめてもらえません?」
「何をおっしゃいます! 華月さんは当学園きっての成績優秀者にして初の中高通しての代表挨拶を務めるお方。ならば、そんな方には敬意を表して姫様と呼ばせてもらうのが私達同学年の務めです!」
「そんな務めないから。普通、普通で。あと近いです」
ずずい、と力強く(声も大きい)言いきるのは昔からの幼なじみである神島美智瑠(かみじまみちる)である。幼少の頃は普通だった気がするのだがいつの間にやら僕を心酔するような振る舞いが目立つ変わった子になってしまわれた残念お嬢さまである。
これもある種の中二病をこじらせた結果なのだろう。
「いえいえ、私と姫様の距離はこれぐらいが適切です! ああ、中学の制服姿も大変可愛らしかったですが、高校の制服姿はまた一段と素晴らしい。まさに少女から女性への階段を踏み出したと言っていい美しさです。・・・あら、シャンプーをお変えになられましたか? 以前はA社のAAAを使われてましたが・・・この匂いはB社のSSSですね?」
「えー・・・」
うん、もうこじらせすぎててドン引きである。いや、とてもいい子なんだけどね。相当なお嬢さまのはずなのに既成概念なく誰にでも分け隔てない対応のできる素晴らしい子だ。
僕の事を除けば。
「しかし、姫様。相も変わらずご自身の見た目に頓着なさってませんね。髪も梳いただけで、いえ、それでも充分麗しいのですが・・・結って見るのもいいも思います。姫様ならどんな、髪型にしても似合いますが私としては────」
こうなると長い。というか満足いくまで止まらない。だって話しながら僕の手を引っ張ってどこぞへ連れていこうとしているんだもの。
一体いつの間に設置されたかわからないメイク車へと引きずり込もうとしているんだもの。
いや、美智瑠は純粋に僕を着飾りたいだけなのは分かっている。長年着せ替え人形やってるからね!
でもね、なぜだろうどことなく目が怖いのだ。どこなく手に込められる力が強いのだ。
あと、吐息がはぁはぁと危なげなのだ。
メイク車の隣には見知った美智瑠のSPのお姉さんが立っている。
期待はしていないが助けてほしいなーという気持ちを込めて彼女を見るがすっと視線を逸らされた。
うん、まぁ分かってたけどね!
神島美智瑠。
僕の幼なじみにして僕の通っている私立間同立学園の理事長の孫である。