どうやら百合百合しい世界に転生したらしい。 作:今日のぱんださん
僕は前世でナンパという行為をしたことがない。僕も周りの友人にしてもがつがつ出会いを求めるタイプではなく夜の街に繰り出すことも少なかったので自然と経験しないまま一度目の人生に幕を下ろした。
二度目の人生では街を歩けばナンパ勧誘スカウトと声をかけられる側になったわけだが、どんなに高級ホテルで客層がハイソと言えど軟派な人はいるようだ。
「この後僕達の部屋にこない? 最高級スイートルームで凄く夜景が綺麗なんだ」
「結構です」
「君のように美しい女性に初めて出会った! 是非僕の婚約者に!」
「興味ないです」
「ねえ――」
「嫌です」
うん、美智瑠の言う事もアテにならないな。ちょっとお手洗いへと一人になった途端これだ。
声をかけてくるのは夏休みの大学生のお坊ちゃんといった感じの人ばかりで最低限のマナーは心得ているのかしつこく引き下がるような真似をしてこないだけ好感を持てるけども。
彼らにしても価値観の合わない相手よりは同じような生活を送ってる子に声をかけたいと思っての行動なんだろうけど、こちらとしてはただうざいだけだ。
でもそんなお坊ちゃんは、確かに少数派で殆どはカップルや僕らと同じ女性のグループなので普通の人が多いレジャー施設よりはゆっくりできるかな。
「結構です。私達は私達だけで楽しむのでどうぞそちらもそちらだけで楽しんでください」
「そう言わずにさ。こんかところで会ったのも何か運命的なものを感じない」
「いいえ、全く」
三人のいるところへ帰ってくればどうやらこちらもナンパされていたようだ。男四人でナンパとはもう完全に目的が女の子グループを目的としているのが丸わかりだ。いや、男同士で楽しくナイトプールを純粋に楽しみに来てる人もいるだろうから全てが全てそうというわけではないんだろうけども。
ん? というか、あの人は……
「兄さん、何をやっているんですか」
「げえっ華月?!」
「何をそんなに驚いているのですか。美智瑠がいるんですから一緒に僕がいても不思議ではないでしょうに。というかまた性懲りも無く美智瑠にちょっかいをだしているんですか」
如月誠(きさらぎまこと)。お母様のお兄さんの息子であるこの見た目だけイケメンは僕の従兄弟だ。性格はどちらかと言えばナヨナヨしていて、男らしくなくて僕は好きじゃないんだけど不思議と女性からは慕われている事が多い。多分ろくな死に方しない。
「いや、うん、えっと……水着かわいいね」
「兄さんに言われるといらっとくるのでやめてもらえますか?」
「え、誠、妹なんていたの? チョーかわいいじゃん!」
ああ、なんかチャラい感じの友人Aっぽい人がテンション上がってる。その上がるテンションとは真逆に空気読めと表情が死んでいく兄さんがすこぶる無様で面白い。
「いえ、ただの従兄弟です」
「あーえーとそろそろ俺たちは帰ろうか!」
「えー、何でだよ誠。ここにナンパしに来ようって言ったのも誠なのに今帰ったら意味無いじゃん」
「そうだよー。あ、なら、君たちも一緒にこない? こいつの親かなり金持ちですげえ部屋泊まってるからさ」
人の笠を着るとはこういう時に使うのかな。でも、相手のことも知らずに使うといい結果を得られないと思うけども。
「あら、ではあなた達は最上階にお泊まりなんですか?」
ああ、美智瑠が悪い顔をしている。
「へ? 最上階?」
「ええ、こちらのホテルの最高級はそちらとお聞きしているので」
「誠、そうなん?」
「ああ、ここだと最上階にある四室がそうだ」
「へえ、すげえじゃん! 誠そこに変えてもらえよ」
「バカ言うな! 一部屋数十万の部屋だぞ?!」
「……なにそれこわい」
「あら、残念ですわ。そこなら伺ってもいいかと思ったのですが。近いですし」
「へ?」
「私達も今夜こちらに泊まりますの。最上階の部屋に」
ころころといい声で笑ってるけど恐いよ、美智瑠。しかし、まあ、相手が悪かった。兄さんは知っていても周りの友人なのか腰巾着なのかわからない人たちが美智瑠の家を知っているわけもなく、ナンパしてる相手が日本有数の大富豪の家の子など思うわけもない。
因みに如月家も、名家でそれなりのお金持ちではあるらしい。興味がないから詳しくないけども。
「それでは私達は行きますね? 楽しい夜を」
歩いていく美智瑠を止める者もおらず、ただ無言で見送るのみ。ああ情けないことこの上ない。
「あ、兄さん。今日のことはお母様に報告しておきますからね」
「ま、待ってくれ! 葉月さんに言うのだけは! か、華月ー!」
止めても止まってやらない。まだまだプールにきたばかりで全然遊んでないのだ。
時間は有限。しっかり楽しまないと。
揺れるおっぱいって揺れないおっぱい持ちからしたら無意識の攻撃だと思うの。