どうやら百合百合しい世界に転生したらしい。   作:今日のぱんださん

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第二十二話︰持たざる者

 

 

 

プールの中をふわふわと浮き輪に乗って漂う。その浮き輪に美智瑠、静さん、愛衣さんが掴まって四人仲良く和気あいあいと談笑しているわけだが、先程から波と一緒に揺れる胸に目がいく。

僕達はまだ高校一年生。誕生日を迎えていても16歳のまだまだ子供である。なのにどうして僕の周りはこんなにもスタイルがいいんだろう。いや、別に僕も全くないわけではない。きちんと成長もしているしお母様のスタイルのよさを見る限り充分希望はある。

まあ、別になくてもいいんだけどね?

胸とか大きくても重い(らしい)だけだし? 肩もこる(らしい)し?

男どもはじろじろと見てくるし……それは今と変わらないか。

うん、ほんと胸とか全然大きくなくて困らないね!

 

「はあ……プールも飽きましたね」

 

飽きたというか単純に何をすればいいかよく分からない。ナイトプールの水温は高めなので寒くもなく快適ではあるがそれなら僕は熱くて広い風呂の方が好きだ。

 

「ここは広さはそこそこだけど滑り台とかもなくてほんと雰囲気を楽しむって感じだね」

 

「雰囲気……最近流行りの写真投稿サイトなどにはうってつけなんでしょうけど」

 

「まぁ、ただぼーっとするなら別にわざわざプールにこなくてもできるものね」

 

「私は姫様といられるならばどこへでもついていきますわ!」

 

「うーん、僕としては家でゆっくりしているのが一番落ち着くんですけども」

 

夏休みなのだ。お盆以降は忙しくて家にいても休まらずいつも以上に外面を厚くしないといけない。せめてそれまでの期間ぐらいはゆっくりごろごろしたいのだ。

 

「華月さんって普段家ではどうすごしてるの?」

 

「皆と変わりませんよ。本を読んで、パソコンで調べ物をしたり、映画を見ながらごろごろしたり。ゲームもやりますよ」

 

「へぇー、本当に普通なのね」

 

そう別に普通なのだ。時間が許すならとことんだらだらぐだぐだと怠けるし、最近の趣味である配信にも力をいれる。もっぱらゲーム配信なので力を入れたところで雑魚雑魚プレイなのだけどもそれはしょうがない。誰にでも得手不得手はあるのだ。

 

「華月さんは何だかんだ雑食だよね」

 

「そうですねー、割と手広く色んなものに興味はありますし手も出しますが長続きはしませんね。あ、スポーツはそもそも論外ですが」

 

休みの日に友達とフットサルだとかサイクリングだとか。最近ではキャンプや登山もあるか。

登山は無理。本当に無理。山登りなんて何も楽しくない。ただ疲れる。しんどい。素晴らしい景色が見られるとか知るか。登り切る前に力尽きるわ。

キャンプはグランピングキャンプというやつならやってみたい。単純に、楽に楽しめるという安直な考えだけども。

 

「愛衣さんは、普段お休みは何をされているんですか?」

 

「私はー、一人で映画見に行ったりカラオケ行ったり、かしら。割と一人で行動しているわね」

 

「意外だけど愛衣は休みの日は部屋にいない事の方が多いね。起きたら大体いないし」

 

「それは静が寝すぎなだけでしょう……というかあんたは寝すぎなのよ」

 

「寝るのはいいことだ。寝る子は育つとも言うだろう?」

 

ああ、だからそんなに立派なものをお持ちで……クール系美女なのに、巨乳って盛りすぎじゃないかな。

あれおかしいな、僕も割とよく寝るほうなんだけどな。

……これ以上は悲しくなるからやめよう。

 

「私は、休みは家族で過ごす事が多いですわね。母が中々多趣味な方なので色んなところに連れ回されますわ」

 

美智瑠が振り回されるって……想像がつかないな。

 

「最近はジム通いにハマっていらっしゃって、朝から晩まで一緒にトレーニングをさせられた時は休みですのにいつも以上に疲れましたわ……」

 

「一緒にって、美智瑠さんのお母さんはどんな体力を持っているのよ……」

 

「母の体力は無尽蔵なのです。疲れた、しんどいを絶対に口にしない人ですから……」

 

何度も美智瑠のお母様には会ったことあるけど子持ちと思えない程に若くて元気な女性だ。

僕のお母様とも昔からの幼馴染みで親友とのことだが、どちらも異次元の若さなのであの世代の女性は何か特殊な訓練でも受けているに違いない。

 

「美智瑠の提案する遊びがアウトドアばかりなのもその辺が原因なのかもしれないですね」

 

「ああ、確かにそうかもしれませんわね。身体を動かしていないとうずうずしてきますから」

 

「それじゃあ、今も?」

 

「ええ、ナイトプールってのんびりしていてあまり私には合わないようですわ。泳ぐなら遠泳がしたいですわ」

 

「遠泳って……それ遊びですることじゃないだろう」

 

「美智瑠さんって本当に根っからのスポーツ派だったのね……」

 

「そういうところは僕と相容れないですねぇー」

 

僕はなるべく動きたくない。海に行くならパラソルの下で寝ていたい。パーティーに出席したならテラスで誰にも話しかけられずに時間を潰したい。

そう考えると美智瑠と僕が長らく仲良くしているのも不思議に思える。接点と言っても母親同士が仲がいい以外はなく、性格も似ていない。

 

「ええ、姫様と私は相容れない。そこが私は嬉しいのです」

 

美智瑠が何を言っているかよく分からない。

 

「色んな方は私に取り入ろうと、私に合わせようとしてこられました。これでも大富豪の娘ですから、私と仲良くできるとそれなりに得は多いでしょう。そう思って近づく方はごまんといましたわ」

 

まあ、そうだろう。金持ちの友達はいれば得になる。さっき会った誠兄さんの腰巾着さんたちにもそういった思惑があっただろう。

 

「初めてお会いした時の事、姫様は覚えていますか?」

 

「初めて……って5歳くらいの時でしたか?」

 

うーん、うろ覚えだ。小さい時から一緒にいるけども果たしていつからだったかははっきりとしない。気づいたらいつも横にいた、という感じの認識だ。

 

「まあ、そうでしょうね。お互い小さかったですし……でも、私はよく覚えています。静さん、愛衣さん、もし初対面で私を神島美智瑠と知っていて遊びに誘われたらどうしますか?」

 

「承諾するだろうね。神島家の長女からの誘いを断る理由がない」

 

「そうねえ。私も静と一緒ね」

 

「そうですよね。普通そうです。ですが、姫様は何と言ったと思います?」

 

あ、思い出した。

 

「『え、嫌です』って仰ったんですよ! しかも、そのまま私を無視して帰っていかれたのです!」

 

「ええー、華月さん、それはちょっと……」

 

いや、ちゃうねん。

当時の僕って、身体は子供。頭は大人っていうどこぞの名探偵のような状態で色々苦労していた頃だ。しかも、僕は子供がそんなに好きじゃない。

うるさいし。すぐ泣くし。後力加減分かってないし。

 

「……お、覚えてませんがそんなことを言っていたのですね」

 

ここはすっとぼけておこう。

 

「ええ、そうなんですの。私、ショックでしたわ。私の誘いを断るなんて! などと憤慨しました。それで後日また改めてお誘いしましたわ。一緒に遊びましょう、と」

 

「そ、それで?」

 

「断られましたわ! 『え、嫌です』って全く同じ言葉で!」

 

「華月さん……」

 

「ですが、その時私気づいたんです。この子にとっての私はそれぐらいの存在なのだと。神島家であることなど、関係なく私を見ているのだと」

 

ごめん、ただ単純に嫌だっただけなんです。その頃から僕は根っからのインドア派なんです。

 

「それから、ですかね。私が姫様を慕うようになったのは」

 

うん、慕う、じゃなくて付きまとうの間違いじゃないかな。

 

「相容れなくとも関係なく、私は姫様が好きなのです」

 

「いい話ねぇー」

 

「ああ、感動的じゃないか」

 

どこが? ただの塩対応されたら勘違いしたって話なんだけど。

まさか、そんな幼少の頃に美智瑠へのフラグが立っていたなんて予想もできない奇想天外ではあるけども。

もしかしたら、その頃そんな塩対応しなかったら美智瑠はこんな残念お嬢様にはならなかったんじゃないだろうか。

 

……まあ、本人幸せそうだしいっか。

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