どうやら百合百合しい世界に転生したらしい。   作:今日のぱんださん

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第二十六話︰学園祭にむけて

 

女子力という言葉がある。書いて字のごとく女の子が女の子らしくある力、と思っていたがどうやら本質はもっと深く幅広いようだ。

女らしさという意味なら美智瑠や愛衣さんが当てはまるかな。静さんはボーイッシュでクールな王子様だから女子力という部分では低め。頼りがいはあるけども。

僕は自分で言うのもなんだが高いだろう。

美智瑠が姫と呼ぶだけはある立ち居振る舞いを心がけ、重いものなんて持てないか弱さ。

そして、輝くばかりの美しさ!

うん、完璧だ。伊達に男から見てどんな女子がいいかを追求しているだけはある。

 

さて、何でこんな話をしてるかと言えば、夏休みが終わり新学期が始まってしまったからだ。九月となると、例年通りアレがあるのだ。

学園祭が。

学校行事のメインイベントとも言える学園祭。別にそれに対して文句はない。お祭り事も嫌いではないし、基本的に招待券を持ってない人間は入れない内々のイベントなのでナンパ目的のアホなどいない。

問題などない。基本的には。

普通にクラスから出し物をして学友と楽しむ。うん、素晴らしいじゃないか。

でも、なんでうちの出し物がよりにもよって演劇なのか。それも確定しているのか。

舞台の使用は人気なので平等にくじ引きで決められるのだ。特例があるのは演劇部と合奏部のみのはずなのに、なぜだが決定している体で話は進んでいる。それに誰も疑問を感じてないのは進行役が美智瑠だからだろうか。

「さて、重要なのは何をすれば姫様の美しさが際立つか、です。何か良い演目はありますか?」

 

「華月さんが主演ならシンデレラとかは?」

 

「姫様ではボロをきても美しすぎるのでは?」

 

「確かにそれはあるね。ならかぐや姫ならば」

 

「ストーリーが姫様を際立たせることができないから却下です。こうもっと、主役が大活躍して目立ちまくるようなのはありませんか」

 

うん、進行役が進行役だから察してたけど、僕は出演決定している上に主演なんだね。あと主目的を忘れてらっしゃる気がする。

 

学園祭とはクラスが一丸となって協力するものなんだから誰か一人を引き立てるものじゃない。皆が主人公になれるようなそんな和気あいあいとした舞台はできないのか。

 

と意見具申して見るも……

 

「さすが姫様、素晴らしいお考えです。しかし、姫様を輝かせることが我々が出店最優秀賞を取る最短ルートとなるのです。ご理解下さいませ」

 

皆で楽しむことも大事だが目標を作って目指すことも大事だ。今回なら出店賞の最上位にあたる出店最優秀賞についている学食優先権が皆が欲するところだ。

私立の学校の中でも結構な金持ちの家の子が通う当校の学食のレベルはそこらの学食とは比べ物にならないほど豪華だ。

どれを食べても素晴らしく美味いが中でも限定30食のスペシャルランチの競争率は凄まじい。

そんな時に有効なのが今回の目玉商品の優先権。持っていれば本来できないランチの予約ができるという代物なので持っていると持っていないでは学食利用の利便さに雲泥の差がある。

 

一度は食べてみたいが食べられないまま卒業することもざら。大学の方にも同じものがあるから授業のない生徒が朝から並ぶこともしばしば……という話だ。

僕としてはその優先権にさして興味はないけども、それでクラスの皆がやる気になるならいいことだろう。

だからといって、僕が主演をやるのは別の話だけども。

 

「確かに僕は綺麗で可愛くて完璧な容姿を持っていますが皆さんご存じの通り表情が乏しいです。感情を表情にのせられない主演なんてありえないでしょう?」

 

別に無表情キャラを演じているわけでもなく、幼児を卒業するあたりから表情は抜け落ち無表情が板についてしまった。だからといって感情がなくなったわけでもないので、情緒深い僕の声は表情に対する違和感が酷いようだが。

あと美智瑠などは雰囲気がどうのこうのいって僕の心情を察している。ちょっと怖い。

 

「大丈夫です。今回の舞台は趣向を凝らして姫様の心の声をナレーションとして流しますので安心してください。主役は『無表情なんだけど皆に心の声が筒抜け。でもそれに気づいていないのは本人だけ』というコミカルで愛らしい設定を加えるので観客にも楽しんでいただけます」

 

「後で華月さんにはナレーションの声を吹き込んでもらうよ」

 

この人たちは一体どこを目指しているんだろう。

 

「そこまでしなくても美智瑠と静さんでロミオとジュリエットあたりをやれば皆喜ぶんじゃありませんか?」

 

 

「駄目よ、そんなありきたりじゃ!」

 

誰が立ち上がったかと思えばまさかの我らが委員長じゃありませんか。

 

「確かに華月さんの言う舞台でも成功はするでしょうしレベルの高いものができるわ。でも、そんなよくあるものじゃ最優秀賞はとれないわ! それにね……」

 

間を空けて、かっと効果音がなりそうなくらい力強く愛衣さんは語る。

 

「皆が求めるのはそうじゃないの! 私達……いえ、皆が見たいのは狼狽え悶え恥ずかしがりながらも懸命に練習する華月さんなのよ!」

 

何で皆頷くの。いや確かに文化祭って、その過程を楽しむものだとは思うけど……

 

だめだ、こいつら……僕ではどうしようもない。






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