どうやら百合百合しい世界に転生したらしい。   作:今日のぱんださん

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第二十八話:こんなはずではなかった

 

 

きゃーきゃーきゃー!

 

大歓声である。

 

きゃー、華月さんー!

 

黄色い声である。

 

素敵ー! かっこいいー! さいこー!

 

僕らの舞台はもうこれ以上ないってくらいウケた。何がそんなに彼女らの琴線に触れたのか分からないが僕が登場する度に声が上がり、コミカルなシーンではお嬢さま方は必死に大笑いしないように声を噛み殺すのが舞台から見えた。

 

ラストの僕が身を呈して子供を助け、果てるシーンなんていたるところからすすり声や悲鳴があがった。

 

うん、おかしいな。

いや、この舞台にそんな名シーンなんて一つもなかったしこう冷静になって振り返ったらその場の勢いで買ったけど何でこんなの買ったんだろう? って衝動買いくらい無駄に溢れてる。

終わって見れば悪くはなかったとか、期待した割にはそんなでもなかったけど、まあ面白かったよってくらい曖昧な表現されちゃうくらい駄作だった。

美智瑠がうんうん、と満足げに頷いてるけど、この評価はおかしいからね?

これはなんだろう……そう敢えて言うなら彼女らが見に来たのは舞台ではなく僕だった、ということだろう。

アイドルのCDが一定数の売上を出すのは歌が聞きたいんじゃなくて握手券の為、みたいな。

需要を満たすという意味では美智瑠はいい仕事をしただろう。

メインに僕を使い、ひたすら主人公かっこいい! 凄い! なろう系もびっくりな努力特訓もしないままただチートスキルで無双するのだ。

キャラ付けも普段のクール美人な僕ではなく男前で頼りがいのある、しかし憎めない性悪といういいキャラをしていた。

うん、よくよく考えれば分かっていなかったのは僕の方のようだ。

この学園における四条華月の人気を軽視していた。もうあいつ一人でいいんじゃないかな状態である。

 

「姫様、お疲れ様です」

 

「ああ、美智瑠。お疲れ様です。大成功でしたね」

 

「いえ、全ては姫様のおかげです」

 

「ふう、今日は素直にその言葉を受け取っておきますよ。さて、僕は疲れたんで少し休憩を……」

 

「いいえ、まだです」

 

「え?」

 

「姫様にはまだ仕事が残っているんですよ」

 

「いやいや、舞台はもう」

 

「何を勘違いしているんですか?」

 

「ひょ?」

 

「まだ姫様の舞台は終了していませんよ」

 

「何を言ってるんですか、もう舞台は幕を……」

 

「入場チケット! ――入場チケットはご覧になられましたか?」

 

そんなもの見ているわけない。僕は役者であって客ではないのだ。己の舞台のチケットなどいちいち見ない。人によっては家族や友人に渡すために確保しているかもしれないが僕の家族に限ってゲットしていないわけがない。開始時間なんかは僕より先に把握していたほどだ。

 

美智瑠が僕らの舞台のチケットを渡してくる。普通に舞台の名前、開始時間から終了時間、メインキャストが書いてあるだけで変わった内容は……いや、待て。

この右端にある謎の切り込み線と主演キャスト握手券という文字はなんだ。

 

「終了後に主演キャストとの握手会の時間が設けられています。当然姫様も含まれる……というか姫様オンリー握手会です」

 

「いやいやいやいや。僕聞いてませんけど?」

 

「言ってませんから。言えば逃げられますからね。いやあ、一時はどうなるかと思いましたがやはり握手券効果は甚大ですね」

 

こいつ、ぬけぬけとっ。

やってくれた。日本の悪しき集客術『アイドル商法』。

 

「姫様の心配しているような一人で何十枚も購入といった事は禁止した完全一人一枚ですので大丈夫ですよ。それに握手券つきのチケットは全体の4分の1ほどです。まあ、四条華月ファンクラブでほぼ握手券つきは完売しましたが」

 

ああ……あの謎のファンクラブまだ存続してたんだ。学内のアイドル的存在というのは実際祭り上げられている側からしたら異常としか感じられないがどんな形でも学校生活の充実に貢献しているならまあいいか、とおもっている。

 

「……一人何秒でやるんですか?」

 

「一人10秒以下を考えています。次のイベントもあるので巻いていくことになるとは思いますが。私と静さんで剥がしを受け持つのでご安心を」

 

いや、別に心配してないけどね。ただまあ、気合いをいれていかないとね。

にこやかな対応はできなくても、来てくれる人達に対する感謝の気持ちを忘れることはできない。

まだ僕は舞台の主演なのだから。

 

「今回だけ、ですから」

 

「ありがとうございます、姫様」

 

 

 

まあ、今回だけと言いつつ恒例になるんだろうなー、これ。

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