どうやら百合百合しい世界に転生したらしい。 作:今日のぱんださん
新入生挨拶を無事終え、滞りなく入学式も終了した。これから1年間お世話になるクラスも確認し、新入生の波に乗って1年3組の教室に入る。
因みに間同立学園は一学年、6クラスという高校としては少なめの生徒数だが女子校であることを考えると妥当な数なのだろう。
クラス内には当然見知った顔が多く、先程から代わる代わる僕の席に挨拶に来てはそのまま居座り僕の周りだけ人口密度がおかしなことになっている。
僕としては割と慣れたものではあるが高等部から入学の子達には異様な光景に見えるだろう。
特に・・・
「ねえ、美智瑠・・・いい加減僕の髪で遊ぶのやめてくれません?」
「そんな! まだまだ試してみたい髪型が十はあるというのに!」
この当然のように僕の髪をいじくり続けるお嬢さまは一体いつからこんな変な子になってしまったのだろう。幼等部初等部の頃はどちらかと言えば自分なこと大好きで自分が着飾る方が好きだったと思うのに中等部あたりからいかに僕の魅力を引き立たせるかに関心が全振りされたようで、まるで侍女のように傍らにい続ける始末だ。
「美智瑠さんは本当に華月さんが好きだよねー正直見てて重たいぐらいに」
「あら、静さん、好きなんて生ぬるい言葉で片付けられるのは心外ですわ。私の姫様への想いを表すなら、それは・・・・・・LOVE、ですわ!」
「ははは、ご愁傷さま」
「美智瑠、お願いだから黙って」
どうしようもないな、と笑っているのは須藤静(すどうしずか)さん。彼女もなんだかんだと長い付き合いの友人の1人。品行方正成績優秀で常に学年上位にいる凄い人だ。
まぁ、僕の後ろのお嬢さまもずっと学年2位の成績をとっている成績優秀者なのだが普段からの僕絡みでの奇行が目立ちすぎてそんな風には全く見えない。
そんなしょうもないいつものようなやり取りをしていると、
「華月さん、おはようございます」
「はい? あ、あーえーと」
「錦愛花(にしきまなか)です」
「錦・・・あー錦家の?」
「はい、いつも四条のおじ様にはお世話になっております」
「いえいえ、そんなそんな。愛花さんは高等部からこちらなのですね」
「はい、これからよろしくお願いします」
お硬いやりとりをしてくるりと背を向けて去っていく錦愛花さん。そんな彼女を値踏みするように見る美智瑠。
ねえ、いつの間に僕の横に移動したの?
「彼女はどなたですか、華月さん」
声のトーンが低い美智瑠。しかも、いつもの姫様呼びではなく名前呼び。
「い、従姉妹ですよ、ただの」
「従姉妹・・・華月さんの従姉妹・・・なるほど、敵ではないようですわね」
本当にこのお嬢さまは何と戦っているんだろう。
「でも華月さん従姉妹ってことは四条家の分家ってやつでしょ?」
静さんが聞いてくる。
「そうですねー、今どき本家とか分家とか古いと思いますけどねー、気にする方は気にするようで」
「一般庶民の私にはわからない世界だなー」
安心してほしい、僕にもわからない。
四条家が総本家でありそれ以外の分家がいくつか存在していて、家名も財も力も強い本家の庇護を受ける事が多いから自然と上下関係が生まれる。
なるほど、と理解はできてもそれが自然なことと思えないのは前世からの庶民感覚からくるものなのだろう。
「正直僕の家って、古いだけな気がするんですけどねーお父様もあんなんですし」
「確かに華月さんのお父さんって大物感全然ないよね。前遊びに行った時もほら、格好がね・・・」
それは僕も思う。なんで純和風の家に住んでるのに出迎える家主がTシャツに短パンなんだ。いかに容姿や格好に無頓着な僕でもあ、これはないわと思えるような格好で娘の友人を出迎えるのだ。
つい美智瑠と静さんが帰った後に「お父様なんて大嫌い!」などと言ってしまったら、おんおん泣くしお母様はあらあら言うだけだし。
「あれは本当にごめんなさい。僕も普段からああだったから見慣れてて気にしなかったけど冷静に考えるとあれは無いですよね。でも安心して? 来客の予定時は必ず着物を着るようにお父様と約束しましたから」
「はは、じゃあまた近いうちにお邪魔させてもらうよ」
「私もお泊まりセットと菓子折り持って行かせてもらいますわ!」
「え、泊まるの? ・・・・・・いいけど美智瑠はお風呂と寝室別ね?」
「そんな殺生な! いや、そういう焦らしプレイもまた・・・・・・」
ごくり、じゃないよ。
はあ、全く中等部の頃との変わりがない。思えば卒業式にしても殆どの子がそのまま高等部に行くので卒業生にはそれほどの涙もなく、むしろ在学生の方が泣く子が多数いるという形になっていたし。
しかし、人生2度目の高校生活か。中学の頃に比べれば大人な子が増えて少しは楽な日常になるだろうか。正直ね、内面おじさんの僕には若い子特有の後先省みない無鉄砲な行動とかきゃぴきゃぴしたやりとりとか苦痛でしかないからね!
プリクラとか生前でも数回しか撮ったことないのに街に遊びに行ったら必ず撮るしポーズは要求されるし辛いことこの上ない。
生まれつき表情筋死んでるのかってくらい無表情な僕にかわいいポーズさせても違和感しかないのにね。
いえーい、ピースピース。
・・・・・・あ、先生来たから今日はこの辺で勘弁してください。