どうやら百合百合しい世界に転生したらしい。 作:今日のぱんださん
風呂は良い。疲れた身体を芯から温めてくれる素晴らしい文化だ。海外ではそもそも湯船に浸かるという文化がないところもあるようだがそれで疲れはとれるのだろうか?
いや、日本にもシャワー派という時間効率重視の方々もいるわけだしそもそも身体を洗い清潔に保つという点から考えるのならゆっくり湯船に浸かったり、なんなら半身浴でダイエットを試みるのは目的から違うのだろう。
因みに僕はできるならゆっくり湯船に浸かりたい人だ。皮膚がふやけるぐらいゆっくりのんびり時間の許す限り漂いたい。ついでに惰眠もいくらでも貪りたい。
ただ今日に関して言えばあまりリラックスできる環境とも言えないのでさっさと浴場から退散したいところだ。
宿泊研修の夜。
一通りの行事も終わり後は風呂から食事、その後に簡単なテストを行い就寝という流れだ。団体行動ゆえそれぞれのグループに与えられる入浴時間もそもそも長くないが、それでも最低三十分は設けられいる。髪が長い人が多い女性は洗う・流す・乾かす全てに時間がかかる。今となっては慣れたがこの長さを髪を洗うのは結構疲れるものなのだ。乾かすとなれば毛量も多いから乾ききるまでに1時間以上はゆうにかかる。
だからある意味…
「姫様ー、お痒いところはありませんかー?」
「ないですよー、ありがとう美智瑠」
「いーえー、姫様の御髪を洗わせていただけるなど光栄の至でございますわ」
「美智瑠さん、流すのは私だからね」
『乾かすのは私達にお任せ下さい!』
至れり尽くせりとはまさにこのことだろうか。身体は意地でも自分で洗ったが髪だけでもと懇願された結果が現在である。
せっせと僕の髪を洗う美智瑠。隣でいつでも交代できるよう待機している静さん。そして、浴槽に浸かりながらあがった後の乾かしを待っているお友達。
僕の知っているお風呂イベントと違うな、これ。
普通、お風呂イベントっていうのはもっときゃっきゃうふふとボディタッチやらを楽しんだりするものなのだがなぜこんなにも偏りが生じるのか。
いや、きっと僕が知らないだけで学園のアイドルとか裏アイドルとかがいるに違いない。
僕に対するこの異常な好感度はそれに対する隠れ蓑にすぎないのだ! すぎないはずなのだ!
しかし、いや、やはりと言うべきか同年代に比べて僕の身体は些か貧相な気がする。大きすぎない胸は最近僅かばかりの成長を見せていたが全体的に肉が足りない感が強い。
それに比べてよく一緒に二人はすばらしいお餅の持ち主だ。
……そもそも身長からして頭一個違うんだから僕より大きくて当然なんだけどね?
別に悔しいとか、羨ましいとか思ってないからね? ただ、そう元男性としては目のやり場に困るってだけだし。
「でも姫様は本当にお肌が綺麗で羨ましいですわ」
「そうだねー、私達体育会系は擦り傷とかしょっちゅうだしね。まあ肌白すぎてちょっと不健康っぽい気もするけど」
「自分の肌ってあんまり意識したことないですけどそうですか? ああ、でも焼けたらすぐ赤くなっちゃうんで日焼け対策はしっかりしてますね」
「姫様は、どちらの日焼け止めをお使いなんですか?」
「僕はねー……」
女子っぽい話をしている自分に違和感を覚える。性別上おかしなことなど何も無いのだがやはり元男である事を思うとこんな話したことなかったなー、とかやっぱり僕も女なんだなーと改めて思う。
少なくとも、湯船に浸かる時に髪を纏めることは男の頃は絶対なかったな。
好きでのばしているが長い髪というのは何かと手入れが大変なのだ。あと水を吸うとずっしり重い。
「そういえば静さんは髪の毛もうのばさないんですか? 中等部途中までは僕と一緒くらいの長さでしたよね」
「ん、ああそうだね。両親の希望であの頃はのばしてたんだけど正直手入れが大変で切っちゃったね。ほら私って結構面倒臭がりだから」
「「あー確かに」」
「はもらないでくれる?」
静さんは見た目の落ち着いた印象からは意外なほど適当な人だ。よく言えば自由人。
やらなくていいことは極力やらないしやらなければいけないことは手短に最低限の労力で。
それに比べ美智瑠は意外なほどにまめなタイプだ。 彼女曰く石橋を叩いて渡るような生き方を目指しているらしい。
なので今回の宿泊研修にしても1番軽装なのが静さんで1番重装備なのが美智瑠だ。一泊二日でキャリーバッグでくるのはさすがに呆れるが。
「でもお二人共綺麗なストレートヘアーで羨ましいですわ。私なんてくせっ毛なのであんまりのばすと爆発してしまいますから…」
「僕は美智瑠のその髪好きですけどねーふわふわしてて」
「まあ! 静さんお聞きになりましたか?! 姫様が! 私を好きと!」
「ああ、ちゃんと聞いていたさ」
「髪の話なんだけど…でも美智瑠の事も静さんの事も僕は好きだから間違ってはないですね」
なんだかんだ言っても大切な友達だ。絡み方が怖かったり重かったりすることがままあっても嫌いになるはずがない。
「「…………かはっ」」
「ええ、なんで鼻血?!」
二人同時に鼻血を吹いて倒れた。
ええ、僕また何かやっちゃいました?