礼装しかでやがらねえ!   作:ケイト

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2話目

 奏多は持ち前の前世の記憶(アラサー一歩手前のオジサン)の知識をフル活用することにした。小学校に入学した直後に身体づくりの為の情報収集、実践を行い、さらに親に隠れて中学、高校までの総復習を行う事にした。

 

 子供の頃の勉強は大事。それは文字通り人生を一回摩耗させる程度には経験して学んだ事である。前世の奏多はあまり勉強や運動が得意ではなく、夢も持っていなかったためそこら辺の中小企業でブラックな環境の下働く事になったのだ。

 

 同じ轍は二度も踏まない。夢をかなえるためには何でもする。それが奏多の覚悟だった。

 

「あいつはいつも頑張っててえらいなぁ」

「ええ、本当にそうですねぇ」

「しかも才能もある…将来はきっと良いヒーローになるぞ!」

「あら、あなたったら。気が早いんじゃなくて?」

「どちらにしろ鍛えるのは良い事だろう。どれ、俺もちょっと手伝ってやろうかな!」

 

 という流れでプロヒーローである父親の特訓も同時並行で始まった。不幸なのは奏多の父親―――霊道が天然で、拷問紛いな事や死にかねない事を平然と課すことにあった事だろう。奏多は死にかけた経験を50を過ぎたあたりで数える事をやめた。

 

 ちなみに霊道は『霊力』と呼ばれる謎のエネルギーを扱う個性で、母親は謎の生き物を召喚する個性を持っている。謎の生き物と言っても、猫やら犬やらリスやら判断が付かないモフモフの小動物を一体だけ呼び出せるだけの個性だが。戦闘力は皆無である。

 

 霊道の方はかなり強力な個性で、霊力をまとう事でコンクリートを粉砕できるほどの怪力、丸めて投げる事で遠距離攻撃もできるというオールラウンダーな個性であった。

 

 さて、そんな両親の下で生まれた奏多の個性は、少し特殊な個性となった。

 

 『ガチャ』。それが奏多の個性である。

 

 

 

 家に備えられた個性トレーニングルームにて、奏多は一人個性の特訓に励んでいた。この時奏多は小学3年生である。

 

「星5こい星5こい星5こい!」

 

 奏多にしか分からない呪文をぶつぶつつぶやいて、目を瞑る。脳裏に思い浮かぶのは、FGOと呼ばれるゲームの召喚サークルであった。

 

「うおおおおおおおお!」

 

 気合一発、召喚する。

 

 

 星3四枚、星2五枚、星4一枚。すべて礼装。奏多は何度目になるかわらかないそんななんともいえない結果にいつも通り肩を落とした。

 

 奏多の個性『ガチャ』。それは、FGOと呼ばれる、前世で携帯ゲームとして配信されていたゲームに使われていた召喚を行い、手に入れたカードを自由に使う事が出来る、というものだった。

 

 FGOは過去に逸話を残しその名を轟かせた英雄の魂――英霊を呼び出し契約し、ともに世界を救うという内容のゲームであり、また、その中二チックな世界観やアニメーションの出来なんかから人気を博したゲームであった。

 

 何故奏多の個性にそんな能力が宿ったのかは分からない。偶然などありえないだろう。一つのゲームのガチャをそっくりそのまま真似たものなど、偶然で合っていいはずがない。

 

 とはいえ、これまで漫画の世界に転生という最もありえない経験を経ていた奏多にとってはそんな事些事であった。彼にとってしてみれば「サーヴァント召喚できるじゃん!青ペンと契約できるじゃん!」という喜び以外の感情は何も出なかった。

 

 もちろん、召喚するためには制約がある。

 

 まず召喚には2種類ある。それが、聖晶石ガチャとフレンドポイントガチャである。

 

 まず聖晶石ガチャは、聖晶石を消費するガチャであり、星3以上の礼装が確定で出てくるガチャの事である。ただし聖晶石は非常にレアで手に入りにくいものである。というか、作るのに時間がかかるというべきか。奏多は父親の個性を多少変化させて受け継いでおり、霊力を結晶にして体内に持つ個性も持っている。それが聖晶石であり、これは一週間に一つという微妙な速度で生成されるのだ。

 

 霊道が言うには成長すれば霊力も増し作れる速度が速くなるそうだが、奏多自身で聖晶石の造りを早めたり遅くしたりといった操作が一切効かない為訓練で増やすこともできない。一応瞑想したりして試してはいるが、どれも失敗に終わっている。

 

 聖晶石はガチャ以外にも使い道はあるのだが、それはまた後程だ。

 

 次はフレンドポイントガチャだ。フレンドポイントを使って召喚するのだが、まず第一の疑問としてフレンドポイントって何?となる方も多いかもしれない。これは奏多が日常の中で、友達とゲームをしたり女の子と仲良くしたりといった他人とのつながりによって増えていく。また、繋がりの仕方でポイント入手量は増減する。例えば男友達と遊ぶと+200なのが、女の子と手をつなぐだけで+1000行ったりとか。特に異性とのふれあいで増えるのだが、これが奏多にとっては難点であった。

 

 前世の奏多はコミュ力がある方とは言えなかった。むしろゲームやアニメや漫画が好きなオタクであり、さらにはブラック企業に勤めていた事もあって人とのまともなコミュニケーションなど…加えて異性とのコミュニケーションなど全くと言っていいほど作ることはできなかった。

 

 だから奏多は人づきあいを本気で勉強する羽目になった。時間が経つにつれマシになってきているが、小学3年生の現時点では女の子の友達は一人か二人いるかいないかだ。そもそも現時点ではクラスメートたちがみんな子どもで、精神年齢がアラフォーになってきた奏多にまともなコミュニケーションが図れるわけがなかったのだ。

 

 しかしそんな事言っててはせっかく授かった個性がまともに使えなくなってしまう。今でも他人とのコミュニケーションは奏多の課題の一つであった。

 

 フレポガチャでは星1以上から星3以下のカードしか出ないが、日常で手に入るためかなりの頻度で引く事が出来る。

 

 さて、ここまで聞けば、なるほど転生者にふさわしいチート能力だと思うだろう。もし星3でもサーバントを引き当てれば、それはまさしく一騎当千の戦力だ。奏多にとってはそれこそが理想であった。

 

 しかし現実は違った。それが最初の奏多の落ち込み様と繋がってくる。

 

 なんと奏多の個性の『ガチャ』には、サーバントが全くと言っていいほど出てこないのだ。それこそ星1のサーバントすら出てこない。出てくるのは礼装ばかりである。

 

 さらに、この礼装は使用する事であらゆる効果を発揮するのだが、一度使用してしまうとそれだけでカードは消えてしまう。さらにカードの効能なども一目みて分かるものと分からないものがあり、使うまで効果が分からないカードもザラにある。それで一度大変な目にあった奏多にとって、かなりリスキーな個性と言わざるを得ないものであった。

 

 ヒーローになる夢はあきらめてないが、これじゃよくてサイドキックかな、と最近は思い始めている。

 

「今日もサーバントは出てこない、かぁ…」

 

 出てきた礼装を個性により亜空間にしまいつつ、奏多はため息を吐き出す。とはいえ、サーバントが出てこないからと言って泣き言ばかりなどいってられない。そんな事をすれば霊道から強めの説教が飛んでくるからだ。そしてそんなものが飛んできたら奏多は死にかねない。

 

 故に今日も奏多はガチャを引いて、身体を鍛えて知恵を蓄える。

 

 そんなことを続けていると、奏多はいつの間にやら中学生になっていた。

 

 

 

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