〜「if」もしも、あの時あの選択をしていなかったら〜 作:クロノス@百合おじさん
部室に入ると、雪ノ下だけでなく、平塚先生もいた。
「あれ、平塚先生だー」
「珍しいっすね」
「今日は暇だったし、雪ノ下から話があるらしいからな」
「それで雪ノ下、話とは?」
と先生が聞く。
「話といっても大したことでは無いのですけれど、三年生になったので、各々受験勉強があるので部活動をどうしようかと」
まあ、そんなことだろうとは思ってはいた。
「普通の部活なら、大きな大会が終わった後…まあ、夏辺りが引退の時期だな」
「奉仕部は引退の…せつめ?っていうのが無いからねー」
「ふしめ、だよ由比ヶ浜。しかし、この部活は三年生だけだし、引退する必要はないんじゃ無いのか?」
「そうだよ!勉強とかも聞けるし!」
確かに、先生や由比ヶ浜の言う通りだ。雪ノ下に勉強を聞けるのは心強い。雪ノ下なら、下手な教師よりも上手く教えられるだろう。
「そうね、自習スペースとしても使えるし、由比ヶ浜さんをこのまま放っておくのはあまりに危険だわ」
「え?あたしそんなやばいの?」
由比ヶ浜の成績事情は一旦置いとおいて、雪ノ下も引退しない案には納得したようだ。
「でも依頼がきたらどうすんだ?」
流石に長期的な依頼は受験勉強に支障をきたす。
「受験勉強もあるし、基本的には受けない方向でいい。もし、受けるとしても自己責任で頼む」
先生の言葉に3人は首肯する。
「それじゃあ、今日は何も無いようだし、部活は終わりにするけど、何かある人はいるかしら」
「私は無いよ!」
「私もだ」
「あ、俺から一つ。個人的に一色の依頼を受けることになった。あいつ曰く、できるだけ自分の力でやってみたいらしいから、お前らの力は極力借りないようにしたい。だそうだ」
「そう、わかったわ」
と、雪ノ下。
「きつそうだったらすぐ言うんだよ!」
と、由比ヶ浜。
「私からは…いや、私からは何も言うことはないな」
と、平塚先生。
「わかった」
「それじゃあ、帰りましょうか」
「うん!」
「鍵は私がやっておくから、たまには3人で帰りなさい」
先生が鍵を閉め、俺たちは昇降口へ向かう。
「ゆきのん、新しいクラスはどう?」
「特に何もないわね。あなたたちは?」
「あたしっちはメンバー結構変わんなかったよ!」
「ああ、半分くらい前のクラスと同じメンバーだったな」
「あら、あなたがクラスのメンバーを半分も把握しているなんて驚きだわ」
「まあ、去年は濃い一年だったからな。というか、元々人の顔は覚えるぞ。名前は覚えないけど」
と、話していると、昇降口に着いた。
「それじゃあ、私こっちだから」
と、言って雪ノ下と別れる。俺と由比ヶ浜もそれぞれの靴箱へ向かって、靴に履き替え合流
する。
「俺チャリ取ってくるけど…」
「うん、待ってるね」
三年になっても、由比ヶ浜と校門まで一緒に帰るのはまだ慣れない。自転車を押して 、由比ヶ浜の元へ行く。
「おまたせ」
「うん。じゃあ、行こっか」
さっきから、由比ヶ浜のテンションがいつもより低い気がする。
「雪ノ下と別れてからやけに静かだけど、どうかしたのか?」
「うん。これからも奉仕部のみんなで集まれるってなって嬉しいんだけどさ、でも、さっきの話を聞いて、やっぱり、いつかは離れる日がくるのかなって」
由比ヶ浜の言っていることはわかる。一年後、俺たちは卒業してそれぞれの道に進む。
「まあでも、それが普通だろ。お前だって、今まで卒業してかつての友達と別れて来たわけだし」
「そうだけど…私たち、このまま終わっていいのかな…」
『本物が欲しい』
去年、俺がそう言ってから、ギクシャクしたり、ぶつかったりして、今のような形に落ち着いたが、まだぎこちなさを感じてはいる。確かに、今のまま終わらせるわけにはいかない。
「まあでも、かと言って今何をすべきかもわからないしな」
「うん…」
「それじゃあ、俺こっちだから」
「うん!また明日!」
と、由比ヶ浜は空元気のような挨拶をして、それぞれ帰路に着いた。