〜「if」もしも、あの時あの選択をしていなかったら〜 作:クロノス@百合おじさん
家に着いてドアを開けると、マイスイートエンジェル小町たんが玄関で仁王立ちしていた。
「お兄ちゃんおかえり!ごはんにする?お風呂にする?それとも…こ・ま・ち?」
「んじゃ飯で」
「お兄ちゃんおかえり!お風呂にする?お風呂にする?それとも」
「んじゃあお風呂で」
最初から風呂に入らせる気しかなかったのかよ…でもなんで風呂?もしかしてお兄ちゃん臭い?というか、今日帰り早くて今夕方にもなってないのにお風呂って…あ、そうか。まだこんな時間だから飯も作ってないのか。
風呂を済ませ、リビングに入ると、小町が夕食の準備をしていた。
「何か手伝うか?」
「んーん、だいじょぶ」
特に課題も出てないし、することもなかったので、せっかくだから手伝おうと思っていたのだが、料理レベルが小学六年生レベルの力は必要ないらしい。
ソファーでうとうとしていると料理ができたらしく、小町に呼ばれる。どうやら、今夜かカレーらしい。
「小町、新しい学校はどうだ?」
小町は無事総武高校に合格して、今日が初登校の日だ。俺としては、二年の頃色々やらかした比企谷八幡の妹だとバレるのも時間の問題だし、小町がそのせいで嫌な目にあってないか懸念している。
「うん、友達5人くらいできたよー」
兄妹でここまで差が出るとは、さすが我が妹。お兄ちゃんの駄目な部分をしっかり反面教師にしている。
「部活とか決めたのか?」
「んー、小町、奉仕部に入りたいかなぁ」
「奉仕部は今年ほとんど活動しないぞ」
「あー、もう三年生だしね。小町が邪魔しちゃ悪いか」
「まあそれに、知らない人との部活の方が社会勉強になるだろうからな」
「お、お兄ちゃんがまともなこと言ってる…?!」
「失礼な。俺は小町のことならなんでも真剣だぞ」
「小町的にポイント高いけどキモいから外では言わないほうがいいよお兄ちゃん」
と、割とマジなトーンで返される。こんなのも日常茶飯事だ。
夕食を終え、自屋に行く。まだ早いが、何故か強い眠気を感じたので俺はベッドに仰向けになった。
微睡みの中、俺は頭の中で、今日一色に言われたことや、今の奉仕部の空気を思い浮かべていると、ふいに、去年の文化祭のことを思い出した。比企谷八幡が選んだ選択肢、正々堂々、卑屈に最低に陰湿に誰も傷つかない方法。葉山に否定され、平塚先生に諭され、恐らく雪ノ下と由比ヶ浜も否定するであろう方法。思えば、そこからだったのかもしれない。3人の間に、大きな亀裂ができたのが。もしあの時、あいつらを悲しませることなく、相模を助けられる、本当に誰も傷つけない方法があるのだとしたら…と、ここで俺は考えるのをやめた。終わってしまったことをまた考え直しても仕方がない。そう結論づけ、俺はとうとう睡魔に屈し、眠りについた。