〜「if」もしも、あの時あの選択をしていなかったら〜 作:クロノス@百合おじさん
「それで、質問に答えてくれますか」
「君の質問と、私の要件はほとんど同じだから、同時に話すね」
「じゃあ、まず質問だけど、今回の文化祭は楽しかったかな?」
「え?まあ、それなりに楽しかったですよ」
「本当に?」
文化祭が楽しかったかどうか、どうしてこの人はここまで聞いてくるのだろうか。
しかも、答えを言ったのにファイナルアンサーかどうか聞かれるなんて、この人は一体何がしたいんだ?
「あの、意味がわからないんですが」
「ん?そっか。じゃあ、前回の文化祭はどうだった?」
「まあ、普通でしたけど」
「あんなことがあったのに?」
「別に、大したことじゃないですよ。特に実害があったわけでもないですし」
陰口とかは結構聞こえていたが、中学の頃に黒板にでかでかと醜態を晒されたのとかと比べると生易しいものだ。
「そっか」
「で、この質問になんの意味が?」
「この世界では、君は自分が傷つかない方法をとった。それは何故?」
「修学旅行の時に、雪ノ下達に俺のやり方を否定されました。それで、まあ、色々あって、このやり方は間違っていたんじゃないかって」
「確かに、君のやり方じゃあ本当に助けたいと思った人を助けることはできないだろうからね」
「平塚先生にも言われました」
ここまで話してみて、雪ノ下さんが何を言いたいのかさっぱりわからない。
「あの、結局何が聞きたいんですか?」
「んー、まだわからないかぁ。じゃあ、聞くけど、この世界の文化祭と元の世界の文化祭、どっちが楽しかった?」
「どっちが…ですか」
最初の俺の質問に対して、雪ノ下さんは、自分の要件とほとんど同じだから同時に話す、と言った。つまり、雪ノ下さんが俺をこの世界に連れてきたのは、文化祭をやり直すチャンスを与えるためだろう。恐らく雪ノ下さんの思惑通り、俺はあの時とは違うやり方で文化祭を収束させた。今回の結果は、どう見ても最高の結果だろう。
「そりゃあ、今回のがよかったですよ。本当に、誰一人傷つかなかったんですから」
「それは君が楽しかったと感じる理由にならないよ」
と、言い、それから一拍置いて、
「よく考えて…いや、逆に何も考えないで。君の化け物みたいな理性じゃない、君の本能に問いただして」
俺の本能……。俺は、どうなのだろうか。今回の文化祭で何を感じた…?
今回の文化祭を頭の中で蘇らせる。特に嫌なことも無かった。順風満帆に進んで、満足して……?
「違う…。何か引っかかる」
「そう、それだよ。その違和感に気づいて欲しかったんだよ」
と、言われたことで、自分が声に出していたことに気がついた。
それより、今この人は”違和感“と言った。確かに、この引っかかりの正体は違和感なのかもしれない。
「雪ノ下さんは、この違和感がなんなのかわかるんですか?」
と、言うと、雪ノ下さんは大きく深呼吸をして、
「比企谷君、「失敗は成功のもと」って慣用句を君は知ってるよね」
「え?いきなり何ですか?そりゃまあ、知ってますけど」
「つまりね、比企谷君。この世界は、さらに根本を突けば今回の君のやり方は、成功しないんだよ」
成功しない?こんなにも完璧に終わらせることができたのに?
「成功しないって、この後何か起きるって言うんですか?」
「逆だよ。何も起こらない」
「全然わかりませんよ。説明してくれますか?」
「今回の君は、本当の意味で誰も傷つけることなく、文化祭を収束させた」
「はい」
「きっとこれからも、君は同じようなやり方で依頼を解決していく。波風なんて全く立たなくて……つまらない」