俺はスタイリッシュなヴォルフシュテイン   作:マネー

16 / 21
第五話:ザ・デイ・アイ・スィー・ユウ 上

 ●

 

「食料庫に盗み? 学園都市でか?」

「というより未遂、かな」

 

 朝からナルキに呼び出されたレイフォンは、都市警察の派出所に来ていた。

 ナルキに連れられて小さな応接室に押し込まれた上に、事件なのかどうかすら分からない事情をフォーメッドから説明されることとなった。

 フォーメッドと並んで座るナルキはじっとしながら、居心地悪そうにしている。

 

「学園都市では通常、学生に救済策が設けられているだろう。なのに食料の盗難未遂だと?」

「まあ、そうなんだがな……」

 

 歯切れの悪いフォーメッドによれば、狙われたものはハトシアの実。

 ハトシアの実には興奮作用があるため、産地の森海都市エルパでは夫婦や婚姻前提の者しか食べてはいけないものとされているという。

 隣で居心地悪そうにしているナルキの顔が赤くなった。実に学生らしく若々しくてよろしい。

 あえてそれを無視してレイフォンは思う。

 無法な果実なのでは、と。

 レイフォンとて広告くらいは目にする。

 明日はバンアレン・デイ。

 チョコを前提とした製菓店の仕掛けた大流行。それが始まっていることは知っていた。

 

「……そんな媚薬染みたものの流通を認めたのか?」

「まさか。()()するには特別な調理法が必要なんだそうだ。酒や蜜漬けにしたぐらいでは渋みのある甘い果実でしかない」

 

 それに、と言いながらフォーメッドは資料を確かめる。

 

「リンカという製菓店の注文で生産されて、今日の昼に搬入される予定だったんだ。だが、問題は一般人向けの話じゃない。武芸者にとってだ。

 闘争心をかきたてることで剄脈への異常加速を起こさせる。神経を過敏にさせて五感を鋭くするなどの作用もある。効力はこの前の違法酒よりも遙かに強力らしい」

 

 剄脈の加速。バンアレン・デイ。森海都市エルパ。

 単語が繋がっていき、レイフォンのなかで一本の線となった。

 ……ア・デイ・フォウ・ユウ!

 原作において鋼殻のレギオスという物語を複雑化した要因。

 外伝シリーズと本編の合流地点。

 それが、ここだと思い出したのだ。

 

「ハトシアの実にそんな効力があるってことはそれほど知られていないようだ。だが立場上、こんな危険物を放置しておくわけにもいかん。出荷は禁止にしたが、そのあとの処分が問題だ。レイフォン、お前さんにはそのときまでブツの警護を頼みたい」

 

 治安維持としては不審な点などどこにもない依頼だった。

 普段であれば、武芸者の義務として協力しているところだ。だが、今は無理だ。

 ……違う。

 明らかに優先度が違うのだ。

 バンアレン・デイにおいてシャンテ・ライテは、彼女の中に眠る火神を目覚めさせることになる。

 火神がどういったものなのかは不明。覚えていなかったとはいえ、レイフォンですら存在を感知できていないなにか。

 不気味ではある。だが、今ならシャンテの内なる変化を見つけ出せるかもしれない。

 火神とやらは狼面衆が作り上げた兵器であるという描写は覚えている。

 ならば壊すか、奪うかすればいい。いや、むしろ()()()()()()()()

 だから、とレイフォンはフォーメッドにこう言った。

 

「他を当たれ」

「なに?」

「……レイとん?」

 

 怪訝そうな顔で二人がレイフォンを見ていた。

 今まで二つ返事で依頼を受けていたレイフォンが断ったからだろう。

 都市警察からの依頼は治安維持であり、手を貸すことに否はないとも語ったことがある。

 それでも今回ばかりは、優先すべきは治安維持ではない。

 

「やるべきことがある」

「うーむ、そうか。レイフォンが居てくれるとそこの安全確保が楽なんだがなあ」

 

 フォーメッドは断られる事に慣れているようで、残念そうではあったがそれだけだった。

 常に次を考慮して動いているのだろう。学生とは思えない思慮深さだ。

 それとは対照的にナルキはしょんぼりと(つぶや)いた。

 

「手伝ってくれないのか……」

 

 その様子を見たレイフォンは吐息をひとつ。

 そして、一呼吸置いてからこう言った。

 

「俺は関わっていられんが、ゴルネオにでも頼め」

「まあ仕方ない。そっちはなんとか頼み込んでみよう。朝から悪かったな」

 

 そうしてフォーメッドがあっさりと諦めたことで、都市警察との話し合いは終わった。

 

 ●

 

 話し合いを終えて、レイフォンとナルキは一年校舎へ。

 そのまま授業を受けて、昼になる。

 

「じゃあ明日はいないんだ」

 

 レイフォンはいつものようにメイシェンの弁当を美味しく食べていた。

 休校中は外食で済ませていたが、物足りなく感じていたものだ。

 舌で幸せを噛みしめながら、ミィフィの確認を聞き流し、考える。

 どうすべきか、と。

 実際のところ、レイフォンはア・デイ・フォウ・ユウにおけるタイムラインを把握しているわけではない。

 いつ、どこで、なにをすべきか。その点が明確ではなかったのだ。

 だから参考にするのは都市警察の行動だ。

 

「明日の昼に倉庫から処分場に運ばれる予定だ。今夜から倉庫近辺の警護をする予定だから、明日は学校に来られないな」

「せっかくのバンアレン・デイを、もったいない」

 

 学生にとって最大級のイベントに参加できないナルキに、ミィフィは残念そうにそう言った。

 そして、ミルクの紙パックにストローを差し込んでから一口。

 

「んで、レイとんはなにかあったの?」

「どうしてもやらなければならないことがある」

 

 具体性を欠いた返事を聞いたミィフィはミルクを軽く飲む。

 そうしてじっとりと視線をレイフォンへと向けた。

 

「また言えないこと?」

「言えば巻き込む」

「危ないこと、ですか?」

 

 瞳を潤ませながら、メイシェンはレイフォンの表情を見つめていた。

 狼面衆の襲撃などレイフォンにとっては特筆すべき事態ではない。

 レイフォンが意識を向けているのはそんな(ちり)ではなく、火神のほうだ。

 とはいえ、そんなことを話すことはできない。

 狼面衆に関しては、知ることをトリガーとして関与できるかどうかが決まっているような描写があったからだ。

 不要な事実をわざわざ知らせる必要はなく、知れば巻き込みかねない。

 だから、とレイフォンは事実を事実として述べることにした。

 

「俺にとってはそうでもない。心配はいらん」

 

 食事中のレイフォンは()()()()()の表情でそう言った。

 気負わない発言を()()、メイシェン達は顔を見合わせる。

 そして、小さく笑みをこぼして笑い合うと、納得したように頷いた。

 レイフォンは思う。 

 やはりこれまでの実績は有効だ、と。

 天剣授受者というグレンダンの武芸における最高位に至った。実感できずとも、その遠さくらいは察せられるのだろう。

 

「そっか。よかったです。無理、しないでください」

「んー、でもやっぱりもったいないなあ。メイっちみたいにお菓子じゃなくてお昼ご飯を作ってあげるのもいいよね~?」

「そうだな、いつも本当に美味い」

「うん! え、えへへ……」

 

 ミィフィの発言はナルキをからかうためのものだったが、横から惚気(のろけ)られて返されることとなった。

 アツアツである。

 

「あらら。ナッキもこれくらいしてあげたらいいんじゃない? 課長さんと二人っきりのチャンスでしょ」

「そんなことはしない」

 

 ナルキはそう言いながらも視線を逸らす。

 それを見たミィフィはあやしく笑うと、レイフォンの隣へと移動していった。

 レイフォンの耳に顔を寄せて、ささやくフリをしながら普通に暴露する。聞こえるように言うのがポイントである。

 

「ナッキはね、仕事一途な男が好きなのよね。課長さんなんて養殖科の研究室と都市警察を行ったり来たり、好みぴったりなの。しかもやり手、これも重要」

「だから! 違うと言っている」

 

 頑なに否定するナルキだが、その頬が微かに赤くなっている。

 完全に恋バナに花が咲いてしまったのでレイフォンは黙々と食事に専念することにした。

 この手の話に男が口を出すと火傷することくらいは知っているからだ。

 

「それともレイとんかしら? レイとんは武芸一筋で超強い。小隊の現役エースアタッカーよね」

「だ、だめっ!」

「メイ……。さすがに簡単に釣られすぎだ」

 

 ナルキを煽るための発言に一瞬でメイシェンが食いついたことで、ナルキは逆に冷静になれた。

 メイシェンはといえば、あうあう言いながら小さくなることしかできなくなってしまっている。

 そんな愛らしい小動物化した親友を眺めていたミィフィは不意に気付く。

 

「……あれ、相手いないのわたしだけ?」

 

 ●

 

 時間は流れていき、夜。

 食糧庫のある倉庫区。

 四角い倉庫がいくつも並んでいる。

 そのうちのひとつ。

 屋根の上にレイフォンが(たたず)んでいた。

 殺剄で気配を押し殺しながら、周囲を探り続けているのだ。

 やがて動きがあった。

 

「…………」

 

 視線の先。

 ”D17”とペンキで塗られた倉庫の正面から、それは来た。

 暗がりではあまり見えないだろうが、レイフォンほどの活剄であれば十分に見通せる。

 小柄な少女。赤い頭髪の武芸者。

 ……シャンテ・ライテ。

 ゴルネオ率いる第五小隊の副隊長だ。

 彼女は殺剄で気配を殺しながら倉庫へと近づいていく。

 実力でいえば都市警察の学生よりも遙かに上でも、目的地は判明している。

 その状態で発見されないほどの殺剄ではなかった。

 

「――――!」

 

 号令とともに都市警察が動いた。

 直後。

 シャンテへと四方から投げ込まれたのは、巨大な網だ。

 網が複数の方向から投げられたことで獲物は逃げ場を完全に奪われ、そして、不自然な横殴りの風が来た。

 

「……出たか」

 

 (つぶや)くレイフォンの視線の先。

 黒ローブに身を包んだ武芸者の姿があった。ローブの内側は不自然に暗く、レイフォンの眼でも見通すことができない。

 狼面衆だ。

 狼面衆は風を起こし、網の落下を一時的に留めることでシャンテに逃げるチャンスを作ったのだ。

 その僅かな隙に、シャンテは投げ網の下から離脱。正面の倉庫に向かって駆け抜け、直角に角度を変えて走り去っていく。

 レイフォンはそれを追う。

 シャンテよりも殺剄のまま走るレイフォンのほうがまだ速い。

 すぐに追いつくだろう。

 と、そのときだ。

 前方を走るシャンテとレイフォンとの間に気配が現れたのだ。

 気配はふたつ。

 だから、とレイフォンは殺剄をやめて活剄の密度を高めていく。

 身体能力が劇的に向上したことで駆ける速度が上昇する。

 

「――邪魔だ」

 

 シャンテに向かって走るレイフォンへと、それは来た。

 衝剄だ。

 そのさらに向こうには巨躯がある。

 ゴルネオは決死といった風情であり、悲愴な表情を浮かべながらレイフォンに接近していく。

 その行為を選択するだけの理由があるのだろう。

 自分の行動がどのような意味を持つのか。ゴルネオはそれを理解できない男ではない。

 だが、とレイフォンは思う。

 今はそれを尊重している場合じゃない、と。

 だから、とレイフォンは鞘のまま殴りつける。

 

「はっ!」

 

 抜刀する必要もない。

 鞘をぶち込まれた衝剄が弾け飛び、空気が震えた。

 次にレイフォンは脚部へと剄を集めて、行く。

 内力系活剄の変化、『トリック・アップ』。

 ゴルネオまでの距離を一瞬にしてゼロへ。

 続く動きで鞘を振るって、ゴルネオの顎を打ち抜いた。

 

「か!?」

 

 なにを言うでもなく、ゴルネオは意識を手放して崩れ落ちていく。

 レイフォンはそれを無視。

 活剄の密度をさらに高めて加速する。

 活剄によって強化された視線は、走るシャンテを確実に捉えている。

 身体能力に任せて一気に距離を詰めていき、シャンテが目の前まで迫った。

 そのときだ。

 もう一方の気配が横から来た。

 狼面衆。

 それは、なにかを投げつけてきた。

 缶のようなものが弧を描いて、レイフォンへと落ちてくる。

 続くレイフォンの動きは冷静だった。

 左目を閉じ、(まぶた)の上から腕でさらにカバーしたのだ。

 残る右目は敵を捉え続け、

 

「――――」

 

 フラッシュバンが炸裂した。

 音と閃光が弾け、レイフォンの右目を焼く。

 だが、動きは止まらない。

 右の視界を失ったレイフォンは踏み込みながら、左目を開いた。

 見える。

 

「□□!」

 

 なにやら喚いている狼面衆の言葉はまるで聞こえない。

 一時的に聴力を失っているらしい。

 だが、騒がしそうな狼面衆の姿ははっきりと視界に捉えている。

 剄を練り上げ、さらに加速。直進する。

 外力系衝剄の化練変化、『疾走居合』。

 レイフォンの軌跡を追うように斬撃が吹き荒れた。

 狼面衆程度では逃げることすらできない。

 斬撃は嵐のように空間を満たし、狼面衆をズタズタに引き裂き、細切れにしていく殺意の極意。

 もはや人型であったことすら分からないほど刻まれたそれは、地面に落ちるよりも早く空気に溶けるように消えていった。

 だが、それすらも些事(さじ)

 レイフォンはそんなことには視線すら向けていない。

 ただ、駆けていく。

 急速に少女へと迫り、追いついた。

 一秒も待たずにレイフォンはシャンテへと仕掛けることにした。

 

「――寝ていろ」

「!」

 

 放った打撃はシャンテの後頭部を強打。

 その勢いで地面へと叩きつけられ、あっさりと気を失った。

 

 ●

 

「……なるほど」

 

 倒れ伏したシャンテを見下ろすレイフォンは、確かに感じている。

 僅かな剄の波形。

 シャンテ自身の野生染みた荒々しいものとはまるで性質が違う。

 眠っているような静けさと、奥底にある苛烈さ。

 これまで感じ取れなかったのが不思議なほどだった。

 

「これが火神か」

 

 レイフォンは多くのことは知らないが、火神は狼面衆の作り上げた兵器であるという。

 シャンテ・ライテのなかで完全に沈黙していたはずのそれは、ハトシアの実と接触したことで目を覚ましたのだ。

 原理も由来も知らない。

 しかし、分かっていることもある。

 ……力だ。

 廃貴族と似ているが、どこか違う。それでも力には違いない。

 だから手に入れる。

 理由などそれだけでいい。

 だから、レイフォンはそれに手を伸ばす。

 どこまで行っても兵器は兵器。単なる力にすぎない。

 自分が手に入れれば、さらに上へ。女王すら超越した、真の最強に至れるだろう。

 と、そのときだ。

 

「――そいつから離れろ!」

「!」

 

 背後からの急襲。

 レイフォンは咄嗟の動きで反転。

 迫る一撃との間に鞘を差し込み、ガード。

 迷いの無い一撃は重く、勢いがある上に電撃すら帯びていた。

 衝剄と衝剄、金属と金属が衝突して、音が弾ける。

 強烈な一撃によって生じるそれは、金属音というよりもはや打撃音に近い。

 

「――――」

 

 レイフォンは不利を悟った。

 唐突すぎて、さすがに剄が足りない。

 無理に受けようとすれば隙が生まれることになる。

 だからレイフォンはそのまま飛ばされることを選んだ。

 圧力に逆らわず、上半身から流れるようにすれば、襲撃者とレイフォンの二人は一塊となって後方へと吹っ飛んでいった。

 周囲の景色が高速で流れていく光景の中。

 武器を押し付け合うお互いの姿だけが停滞していた。

 武器を支点にして姿勢を制御しながら、レイフォンは襲撃者を認識する。

 

「貴様は……!」

 

 身長が高く、脚の長い青年。

 少しボサついた癖のある赤髪に置かれたサングラス。

 険しい目付きでこちらを睨み付けてくる、武芸科の制服に身を包んだ男。

 聖戦のレギオスにおける主人公、ディクセリオ・マスケインだった。

 ニーナを狼面衆との戦いに巻き込んだ男であり、明確に狼面衆と敵対する者。

 記憶にある最後はニルフィリアとともにどこかへと消えていった場面だ。

 それ以後のことはなにも知らない。

 目的も立ち位置も不明確な男が、そこに居た。

 ディクセリオが怒りとともに咆哮する。

 

「あれは俺のものだッ!」

 

 そして、感情を吐き出すように錬金鋼を振り抜いた。 

 合わせるようにしてレイフォンもまた閻魔刀を振り払う。

 錬金鋼の接触部分が一層大きく音を奏で、不快な金属音を撒き散らした。

 

「ちぃ!」

「――ふぅ」

 

 二人は示し合わせたように距離を置いて着地。

 視線が交わった。

 レイフォンは険しい表情でこちらを睨み付けるディクセリオを冷たく見据えながら、顎でシャンテの方向を示す。

 

「あれの中にあるのは兵器なんだろう? しかも使用者もいない遺失物。なら俺が拾っても問題あるまい」

「ふざけろ。俺のものだって、――言ってんだろうが!!」

 

 ディクセリオが手にする巨大な鉄鞭とともに突っ込んでくる。

 活剄衝剄混合変化、『雷迅』。

 金棒と呼べるほどに巨大な鉄鞭に剄が満ちると雷を帯びて、重量以上の威力を纏う。

 直線的だが、姿が消えるほど素早く重い一撃だ。

 しかし、体勢を整えて待ち受けるレイフォンにとってはなんら脅威ではない。

 だからレイフォンは正面から迎え撃つことにした。

 

「はっ!」

 

 上へと斬り上げるように抜刀。

 居合での斬り上げは、雷迅を切り捨てながらディクセリオを空中へと打ち上げた。

 レイフォンはそのまま刃を返して、今度は斬り下ろす。

 

「ふん!」

「ぐ……!」

 

 ディクセリオは高速で地面に叩きつけられ、その勢いのまま転がっていった。

 その様子を見ながら、レイフォンはゆっくりと納刀。

 小気味の良い金属音が鳴った。

 追撃は加えない。

 先ほどの二連撃は殺すためのものではなく、格の違いを分からせるためのものだったからだ。

 それを、ディクセリオも感じている。

 そうでなければわざわざ錬金鋼に当てたりせず、斬り捨てればいいだけだ。

 だから悔しそうに顔を歪めながらも膝をついたまま悪態をつくことしかできない。

 

「チッ、舐めやがって……」

 

 廃貴族を持っているのに使っていない。

 舐められている、と。

 しかし、それほどまでに明確な実力差が二人を隔てているのだ。

 だから、とレイフォンは訊ねることにした。

 

「貴様はなんだ?」

「あぁ?」

 

 怪訝そうな声をあげるディクセリオを、レイフォンは冷徹に観察している。

 

「強欲都市の男。貴様の目的はなんだ。どうやってツェルニまで来た? 縁を辿ったのか?」

「……ずいぶん知りたがるじゃねぇか。てめぇが俺の邪魔をしないならこっちは何もしねぇよ。失せろ、クソガキ」

「貴様から奇襲をかけられたばかりだが?」

「俺のモンを奪おうとしたからだ。くそが!」

 

 悪態ではある。

 しかし、レイフォンへの攻撃はシャンテに、あるいは火神に手を出そうとしたからだという。

 そうでなければ関わらない。

 ディクセリオはそう言ったのだ。

 勝てないからだろうな、とレイフォンは思う。

 自分よりも強い武芸者だとは思わなかったのだろう、と。

 だが足りない。何のためにツェルニにやってきたのかが抜けている。

 レイフォンの冷徹な視線が(くら)く沈んでいく。

 まるで獲物を見つけた蜂のように、視線から瞬間的に温度が失われたのだ。

 

「ツェルニにはいつの頃からか、ある言葉が刻まれていた」

「…………」

「求めよ、ならば力尽くで」

「ふぅ、そうだな。それで?」

「生きているうちに(さえず)ることだ。さもなくば、――死ね」

 

 レイフォンが活剄の密度を高めていく。

 すると、波のように圧が生まれた。

 圧倒的な剄が十分な技量によって体内で凝縮され、それは力となる。

 

「――――」

 

 天剣授受者をも凌駕する剄の奔流。

 間近でその剄に(さら)されたディクセリオは、絶句するほかなかった。

 桁違いの剄。

 どれほど遠いのかすら分からないほど隔絶した実力差。

 なにもかもがディクセリオに予感させている。

 指一本でも動かせば斬られる、と。

 ゆっくりと動いていくレイフォンの右手が柄に届けば斬られるのだ、と。

 次の瞬間。

 濃密な殺気のなかで二人はそれを聞いた。

 

「待った待った。ちょっと待って!」

 

 ディクセリオをレイフォンから隠すように女が割り込んだのだ。

 活動的で陽気な雰囲気を持つ美しい女。

 レイフォンの冷酷な視線に、無邪気に笑ってみせる女。

 

「ジャニス?」

「……また、貴様か」

 

 ジャニス・コートバック。

 なにもかもが不詳。ディクセリオ以上に情報のない人物だった。

 レジェンドの世界にてゼロ領域探査計画に参加し、そのまま帰ってこなかったという情報しかレイフォンは知らない。

 死んだはずの女が、ディクセリオをレイフォンから(かば)っている。

 

「あたしに免じて二人ともやめて。ダメ?」

「俺が知るかよ。あっちが突っかかってくんだよ」

 

 ジャニスが呼びかけ、ディクセリオも言葉を返す。

 その様子から、この二人が初対面ではないことは明白だった。

 外伝とはいえ主人公だったディクセリオとジャニスの関係性について、レイフォンは一定の近さを感じている。

 ジャニスはレジェンド時代の登場人物で、ディクセリオとは生きる時代があまりにも遠すぎる。

 なのに二人は互いを知っている。

 

「レイフォン?」

「…………」

 

 レイフォンは思い出していた。

 あの闇の中で、ジャニスは未知を求める好奇心ゆえに破滅を齎すだけのイグナシスよりはこちら側だという旨の発言をした。

 ……本当に?

 ソレを証明する物証がどこに存在するというのか。

 あるのは、ジャニス・コートバックを名乗る女の証言ひとつ。

 そもそも本当にニルフィリアを生かすべきだったのか。

 すべてに根拠がない。

 

「…………。いや、両方斬り捨てれば済む話か」

「レイフォン、今回限りでいいからやめて」

「――俺に指図するな」

 

 レイフォンの身体から蒼が弾け、剄が爆発した。

 莫大な剄の奔流が人型に凝縮していく。

 やがてそれは形を成した。

 人の形をしていながら、人から遠く離れた異形。

 蒼い魔人が、レイフォンに付き従うようにして顕現する。

 魔人の一部がレイフォンと重なるように存在しており、それはまるで悪魔のような力の結晶だった。

 レイフォンと魔人が二人を見る。

 

「!」

 

 ただそれだけの行為が、ディクセリオに死を幻視させた。

 死ぬしかない、どうしようもない、と。

 だが、それよりも早くジャニスが動いていた。

 魔人の威圧すら、なんでもないように言葉を(つむ)いだのだ。

 

「じゃあとっておき。ディクセリオはキミの命の恩人なのよ」

「……なに?」

 

 レイフォンは動きを止めて、ディクセリオを見た。

 だが、ディクセリオは明らかに困惑した様子でジャニスを見上げているだけだ。

 どう考えても知っている人間の反応ではない。

 

「知らないようだが?」

「忘れてるだけよ。彼はキミを確かに救ってる。赤子のキミと、――キミの母親をね」

 

 ●

 

「…………」

 

 冷たい感触。

 凍えそうなほどに体温を奪われている。

 そうしているうちに、ゴルネオは己を自覚した。

 

「――シャンテ!」

 

 飛び起きたゴルネオは状況を把握するべく、周囲を見渡す。

 倉庫だ。

 無数の倉庫の中心に、自分はいる。

 対象が誰とは知られていなかったであろう、都市警察の捕獲作戦の現場から離れた地点だ。

 

「そうだ、俺はあの人に……」

 

 レイフォン・ヴォルフシュテイン・アルセイフに蹴散らされたのだ。

 兄、サヴァリスと同じ天剣授受者に。

 では、そのあとどうなったのだろうか。

 ゴルネオはシャンテを追う武芸者に気付いたから足止めに走った。

 だが、一瞬で意識を落とされて戦線離脱。今の今まで眠りこけていた。

 

「どこだ?」

 

 レイフォンの追いかけていたシャンテはどうなったのか。

 

「シャンテ――ッ!!」

 

 声を張り上げても、空しく虚空へと消えていくだけだ。

 近くにいないことは分かった。

 探さなくては。

 焦燥感が膨れ上がり、ゴルネオを突き動かしていた。

 まずは現状を確認すべく都市警察へと走る。

 レイフォンがシャンテを捕まえたのなら、都市警察が確保しているはずだ。

 この場合は、自分とシャンテの戦力を都市に提供すれば、おそらく退学はせずに済む。

 第五小隊は悪くない成績を残しているからだ。

 問題は、レイフォンがシャンテを本当に都市警察に突き出すのか、という点にある。

 一瞬の交差だったが、レイフォンは明らかにヒリついていた。

 汚染獣を前にしたときほどではないが、実戦に備えているかのような鋭さがあった。

 殺されてしまうのではないか。

 そんな恐怖を、あの一瞬で味わった。

 

「頼む、生きていてくれよ……!」

 

 ゴルネオは死んだ心地で都市警察の支部に飛び込んだ。

 捕り物のあとだからか。建物にはまだ人が残っている。

 荒い呼吸を整えながら、適当な者を捕まえて訊ねていく。

 

「おい、今夜の捕り物はどうなった?」

「はあ? 俺らのことを笑いに来たのかよ。ふざけやがって」

「いいから答えろ! どうなった!?」

「お、おい、なんだよ……。うおッ!?」

 

 反応の鈍いゴミを放り捨てて、別の者へと質問する。

 

「捕り物はどうなった!!」

「ル、ルッケンス隊長、落ち着いて……」

 

 答えようとしない態度に、思わず全力で拳を叩き込んでいた。

 

「…………!?」

 

 最後に残った理性が軌道を逸らしていた。

 おかげで壁に穴が空いただけで済んでいる。

 だが、次はそうならない。

 

「最後だ。どうなったか答えろ」

「……し、失敗です! 犯人らしき影を見逃してしまいました! 撤収作業を終えて戻ってきたばかりです!!」

「チッ!」

 

 無駄足だったか。

 もう都市警察に用はない。

 ゴルネオは即座に建物を出て、全力で駆ける。

 とにかくシャンテが行きそうな場所をしらみつぶしに探していくしかない。

 

「どこに居るんだ、シャンテ……!」

 

 公園。いない。

 寝具屋。いない。

 練武館。いない。

 学校の屋上。いない。

 行きつけの飯屋数軒。いない。

 どこにもいない。

 

「…………」

 

 どこを探せばいいのか分からない。

 さまよい歩いていると、ゴルネオは事件のあった倉庫に戻っていた。

 倉庫には人気(ひとけ)がない。

 誰もいない。

 傷ついて倒れている何者かも、いない。

 死体どころか血痕すら見つからない。

 

「…………」

 

 シャンテはどこにいるのか。

 当てもなく、夜の都市を彷徨(さまよ)った。

 レイフォンに捕まってしまったのだろうか。

 彼は冷酷な天剣だ。だが、同時に理想的な武芸者とも言われていたことは覚えている。

 一方的に私刑になどしないはずだ。

 死んでいるということなど無いはずだ。

 

「…………ッ」

 

 ネガティブなイメージだけが際限なく(ふく)らんでいく。

 そんなものは妄想でしかない。

 理性では理解している。

 だが思い込みでしかないはずのそれは、少しずつ輪郭を帯びていくのだ。

 野生そのもののような少女が死体となった姿が、はっきりと見えてしまう。

 

「くそっ、どうかしている……」

 

 頭を振って、嫌な思い込みを振り払う。

 だが、どこを探すべきかという指標すら失っている。

 そのまま都市を練り歩いていると、ふと頭を上げたとき、自分の寮が視界に映った。

 まるで帰巣本能だな、と自嘲しながら、部屋へと戻っていく。

 疲れ切った身体を動かして自室への扉を開ける。

 

「……?」

 

 鍵が、開いていた。

 鍵を閉め忘れたかような気もするし、閉めたような気もする。

 疲労からか、ゴルネオは自分の頭が回っていないことを自覚した。

 ろくに考えず部屋に入り、着替えもせず寝室へと向かう。

 

「――――」

 

 ゴルネオは絶句した。

 人のベッドで眠りこけている相棒の姿が、そこにあったからだ。

 ゆっくりとベッドに腰掛けてシャンテへと手を伸ばす。

 

「……シャンテ」

 

 穏やかに眠る少女の髪を撫でた。

 ここにいるシャンテは、嘘じゃない。

 それはやがて実感となり、自然と息を吐き出していた。

 よかった、と。

 そして思う。

 知らなければならない、と。

 なぜレイフォンがシャンテを付け狙ったのかを。

 あの様子は単に都市警察に協力していたといったものではない。

 

「もしも……、か」

 

 どんな理由であれ、シャンテを殺すと言われたのなら。

 それを防ぐ手段はない。骨身に染みた真実だ。

 天剣授受者に勝つなど、夢物語にすぎない。

 そうであるならば、今度はツェルニからも逃げるしかないのだろうか。

 

 ●

 

 とあるバーのボックス席。

 そこに三人の男女がいる。

 それぞれのグラスには水があり、水で軽く唇を湿らせる女、――ジャニス・コートバックは朗らかにこう言った。

 

「ありがとうね、レイフォン。止まってくれなかったらお姉さん困ってたわ」

 

 気の抜ける言い方のせいで、男は二人揃って吐息を漏らすことになった。

 だが、肩の力は確かに抜けたのだろう。

 やれやれ、と気を取り直したディクセリオは姿勢を崩し、背もたれに肘を乗せると自問するようにつぶやく。

 

「んで、なんだったかね……」

 

 やや間を置いてから、向かい側に座るレイフォンを見る。

 それから、ああ、頷いた。

 

「ああ、そうだ、俺の目的だったな。――火神(かしん)だ。あの娘のなかに眠ってるもんを取り戻すことが目的だ。それ以外はどうでもいい。邪魔な狼面衆はぶち殺すがな」

「火神は狼面衆の作り上げた兵器と聞いているが?」

「違うね。あれは元々俺のものだった。それを奪われて、今はああなってるのさ」

 

 ディクセリオの強い視線を浴びながら、レイフォンは思う。

 事実を確認するべきだ、と。

 この男が、赤子のレイフォンとその母親を救ったのが事実であるか否か。それが事実であればレイフォンはディクセリオに対して巨大な借りがあるということだ。

 その是非は無視できない。

 ゆえに重要なのはそちらであって、火神という兵器についてではない。

 だから、というふうにレイフォンはディクセリオに告げる。

 

「あれが単に落ちているだけなら俺が拾っても問題ないはずだが、場合によっては見逃してやってもいい。――答えろ。貴様の旅路、その目的はなんだ?」

 

 問いを投げかけられたディクセリオは鼻白み、苦々しい顔をした。

 そうして出てきた言葉はまるで自分に言い聞かせているかのようなものだった。

 

「……知るかよ。俺は……、俺は俺から奪おうとするすべてを食い破るだけだ」

「狂犬か」

「そうさ。俺はマスケイン家の狂犬だ。だから絶対に諦めない。火神は、あいつは、俺のものだ……!」

 

 ディクセリオは吠えてみせた。

 廃貴族を完全に掌握したレイフォンに対して、だ。

 虚勢であることは明白。

 しかし、レイフォンはそれを笑わない。

 虚勢であろうとも、自身よりも遙かに強い敵対者と対峙した。これは武芸者たる第一歩であり、前提条件だからだ。

 だから、と煽るようにレイフォンは言った。

 

「相手が俺であってもか?」

「当たり前だ」

 

 ディクセリオは強い眼差しでレイフォンを睨みつけ、レイフォンはそれを受け止めた。

 互いの共通認識はある。

 レイフォンのほうがディクセリオよりも強い。それも圧倒的に。

 デビルトリガーを間近で見て、それでも虚勢を張ったのだ。

 そのクソ度胸はレイフォンをして見事と言わざるを得ない。

 

「――面白い」

「!」

 

 レイフォンが口の端を吊り上げて冷笑し、ディクセリオは凍り付いた。

 殺意ではない。

 レイフォンはディクセリオに対して害意を露わにしているのではない。殺意もなければ戦闘の意思すらない。

 剄でもない。

 活剄こそある程度の密度を保っているが、圧倒的なまでの剄を纏ってなどいないし、剄を練ってもいない。

 

「――――」

 

 ディクセリオの意思を身体が拒絶しているのだ。

 脳がどれだけ強く命令を下しても、本能がそれを否定する。

 そんな様子を、レイフォンは冷たく微笑みながら見据えていた。

 と、そのときだ。

 ジャニスが二人の間に手をかざして割り込んだ。

 

「はいストップ。そんなことで熱くなってないで、レイフォンはあたしに聞きたいことがあるでしょう?」

「…………、そうだな」

 

 吐息を吐き出すと、レイフォンは平静を取り戻した。

 場に満ちていたなにかが消え去り、ディクセリオの身体に自由が戻ったのだ。

 

「……ちっ!」

 

 拳を何度か握り直して感覚を確かめたディクセリオは、舌打ちをひとつ。

 わずかに浮いていた腰を下ろして座席へと座り込んだ。

 その表情には悔しさが満ちている。

 ろくに反抗することも出来ず、ただ耐えるしかなかった己の弱さが許せなかったのだ。

 そんなディクセリオを顎で示して、レイフォンはジャニスへと問いを投げる。

 

「この男が命の恩人というのは?」

「言葉通り。別に見てたわけじゃないから詳しくは知らないけどね」

 

 相変わらず煙に巻くような言い回しを好む女だ、とレイフォンは思った。

 だから、というように敵意を視線に込める。

 話さなければ斬る。そんな意思を無言で示し、催促としたのだ。

 するとジャニスは小さく微笑んで、続く言葉を回答にした。

 

「物騒ね。――天蜘(てんち)都市アトラクタ。そこで貴方たちを助けていたはず。そうでしょう?」

 

 確認の意を向けられたディクセリオはジャニスを見てから、あからさまに大きな息を吐き出した。

 そして少しの間、上を向いて考え込む。

 

「あー……、ああ。思い出した。あの蜘蛛みたいな都市か」

「蜘蛛……?」

 

 思わず、といった様子でレイフォンは呟いていた。

 それを見たディクセリオはもう一度大きなため息をこぼしてから乱暴に頭を掻いた。

 そして大きく深呼吸をひとつ。おもむろに話し出す。

 

「都市のことはよく覚えてないな。あそこで見たのは狼面衆から逃げてる女だ。お前の母親かは知らねぇけど、女が抱いてる子供を狼面衆どもが欲しがってた。だから潰してやった。

 俺にとってはそれがすべてだ。あの都市であったのはな」

「女と子供はどうなった?」

 

 レイフォンが問いかけると、ディクセリオは端的に回答していく。

 

「放浪バスに乗り込んでいった。そこからは知らない」

「父親は?」

「殺した」

「……そうか」

 

 レイフォンが生まれて初めて聞く故郷らしき都市、両親らしき人の話は、ひどく些細なものだった。

 しかも証拠の一つもない証言だけのもの。

 自分でも理由すら分からないが、レイフォンは本当のことだと感じていた。

 天蜘都市アトラクタという名前に、心臓が高鳴ったからだろうか。

 レイフォン自身にも理解できないなにかを感じている。

 故郷に思うところは無い。

 両親に感じることは無い。

 それとも、この身体が覚えているのだろうか、と。

 そうして自分の内側へと意識を向けるレイフォンへとディクセリオから問いが投げられた。

 

「恨まないのか?」

「どうせ狼面衆だったんだろう?」

「…………」

 

 どこか投げやりな質問に対して決めつけるように言い放っていた。

 逆にディクセリオのほうが黙り込んだことで、それは確信となった。

 レイフォンには両親の思い出など無い。

 メイファー・シュタット事件と呼ばれる現場で、レイフォンはリーリンとともにデルクに拾われている。

 母親の女はそのときに死んだのかもしれない。あるいは、赤子を捨ててさらに逃げたのかもしれない。

 今となっては如何なる過程を経て、赤子のレイフォンがそこに来たのかを知る術はない。

 だが、ひとつ明らかなこともある。

 ディクセリオ・マスケインは通常の時間を生きる存在ではない、ということだ。

 

「会った記憶もなければ、育てられた事実すら存在しない。もはや他人だ」

「そうかい」

 

 ディクセリオがそう答えると、場を沈黙が覆った。

 そして、ややあってから、唐突にジャニスが手を打つ。

 

「――さて。レイフォンは火神をどうする? 手を出さないでくれるならあたしに答えられることならなんでも答えてあげるけど」

「…………」

 

 火神は廃貴族に近い力だ。

 火神さえあれば、レイフォンは確実に女王を超えられるだろう。

 それは、いずれ来る戦争において大きな意味を持つ。

 しかし、ディクセリオはそれを自身のものだと主張している。

 ……どうすべきか。

 沈黙の中で思案しながらも結論はとっくに決まっていた。

 

「いいだろう。火神は忘れてやる」

 

 火神が重要な戦力となることは理解している。

 だがディクセリオの行動がレイフォンの母親を救い、レイフォンをも救ったことが事実である、と感じてしまったのだ。

 レジェンド・オブ・レギオスに名前だけがあったジャニス・コートバック。

 聖戦の主人公でもあるディクセリオ・マスケイン。

 この二人が揃っているなら、起こりうる、と。

 

「そう。助かるわ」

 

 レイフォンの決断を、ジャニスは無邪気そうな笑みを浮かべて見守っていた。

 

 ●

 




十年お待たせして申し訳ございませんでしたぁ!(ヤケクソ)

あと、また少しだけ外伝部分に入ります。
出来る限り分かりやすくなるように書いているつもりですが、私も外伝既読勢になってしまったので省いてしまっている部分があるかもしれません。
内容理解できねぇんだけど!? とかあったら容赦なく書いてください。修正するかもしれないし、新鮮な投稿に追加しておくかもしれません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。