ドラゴンサモナー
ここはドレミシオン学園、冒険者が集まる学園で、冒険者候補生と呼ばれる冒険者を目指すものが通い学ぶ。また、すでに冒険者として活躍している者も依頼等を求めてやってくるため、冒険者ギルドも兼ねている。そしてまた、冒険者を目指す一人の少年も、ここを通っていた。
「えーノエル!」
黒板に今日の題材を書き終えた先生が、ぼくの方を見て名前を呼ぶ。
「は、はい!」
ぼくは返事をし、立ち上がる。今日の授業をノートに書きこむために準備してて、油断していたため、少々上ずった声を上げてしまった。
「冒険者には職業がある。別名はクラスだ。それをすべて答えてみろ」
「え、えーっと……戦士、魔法使い、賢者、召喚士、サモナーです」
ぼくは、知識の中から、該当する答えを思い出し、答える。
「よろしい。ではそれらの特徴をセシル!答えてみろ」
ぼくが座ると同時にセシルと呼ばれた少女が立ち上がり、問いに答える。
「はい!戦士は接近戦に長けており、防御力、攻撃力が高く、皆の盾になるクラスです。MP(マジックポイント)が少ないため、魔法は苦手です。逆に魔法使いは魔力が高く、魔法に特化したクラスで、遠距離からの強力な攻撃が可能です。ただし、防御力が低く、接近戦に弱いです。賢者は仲間をサポートすることに特化しています。回復魔法や能力強化魔法を使い、後方からのサポートを行うクラスです。召喚士はあらゆる武器やゴーレム等の人工生命体を操るクラスです。基本的には武器を次々と入れ替え、接近、遠距離をそつなくこなす必要があるため、かなり難しい職業となりますね。サモナーは召喚獣と呼ばれるモンスターを召喚し操るクラスです」
「その通りだ。だが、これは基本のクラスであり、例外はある」
セシルは答え終わったと同時に席に座る。
クラス詳細を話したセシルは僕の幼馴染。種族は人間、クラスは戦士だ。赤髪のショートカットはぼさぼさで、性格が現れている。セシルは大雑把なのだ。
彼女は、そっと耳打ちしてきた。
「ふふ~ん。ざっとこんなものよ!」
「すごいねセシル」
「あんたもちゃんと勉強してるわね!クラスちゃんと答えられるなんて。まあ、サモナーのあんたは知識がかなり必要だから当然よね」
「うん。でも意外だね。あの大雑把なセシルもクラスの詳細をちゃんと言えるなんて」
「意外は余計よ!」
とおしゃべりをしていると、セシルの側頭部にチョークがぶつかる。チョークが投げられたであろう方向を見ると、先生がこちらを見て怒っていた。
「こら!イチャイチャするのは帰宅後にしなさい!」
くすくすと他の生徒は笑っている。
「い、イチャイチャしてません!!」
セシルは、顔を真っ赤にして否定した。僕は苦笑し、黒板に書かれた字をノートに書き写した。
その後、無事授業が終わり、昼休みになった。それと同時に生徒は食堂へ向かう。ぼくらも食堂へ向かった。
「全く!あんたが話しかけるから」
「話しかけたのはセシルだよね……」
「ん?なんか言った?」
「いえ。何も言ってません」
セシルの威圧に負け、ぼくは否定の言葉を引っ込めた。
「とにかく、昼からは冒険だからどういうところか先に情報集めないとね」
そういい終わると、学食のハンバーガーを頬張る。
冒険とは、先生同伴のもと、近くの洞窟へ実際に冒険へ行く実習科目だ。月に2回だけあり、誰もが楽しみにしている科目だった。探索場所はあらかじめ教えられており、情報収集をするように言われている。冒険者になると情報は大切になってくる。情報の有無で自身の生死が決まるほどだからだ。そのため、情報を集める癖を冒険者候補生のころから付けさせるのが目的だ。
「うん!うまい!」
セシルはハンバーガ―を口に含みながら、嬉しそうにうなずく。
「セシル、食べながらは行儀が悪いよ」
そういって、ぼくもハンバーガーを齧る。口の中にジューシーな肉の味が広がり、トロトロのチーズと相性がいい。また、野菜のサッパリした味が肉の濃さを中和し、肉とチーズの濃い味を残しつつ、みずみずしい野菜の味がそれらを洗い流すように口に広がる。とても美味しい。
僕たちが食事をしていると、一人の少女が走ってくる。
「おーい!セシル―!ふぎゃっ!!」
その少女は何もないところで転んだ。彼女はエール。種族はエルフ。クラスは魔法使いだ。エルフならではの真っ白な肌に、透き通るようだがキラキラと光る美しい長い金髪をしている。耳は尖っており、それがエルフの特徴でもある。
「エール……あんたほんっとドジよね」
「えへへ……」
セシルに呆れられても、エールは頭を掻きながら笑う。
「で?何か急いでたようだけど何かあったの?」
「あそうそう!聞いて!今日あの有名な冒険者、ゴーウィンさんがここに来るらしいの!」
「へえ!あのゴーウィンさんが!」
ゴーウィンとは、数少ない99レベルの冒険者の一人。魔法戦士の人間だ。
「レベル99の魔法戦士よね。そこまで行くのはどれほどの鍛錬を重ねたのかな」
この世界はレベルという概念で強さが決まる。誰もがレベル1から始まり、鍛錬を重ねることでそのレベルは上がる。レベル鑑定を行うことで自身のレベルの数値が分かる。最大が99だ。レベルが上がると、内側から力が溢れるような感覚に襲われる。これは、全ての生き物が持つ魔力が増えるからだ。レベルによってその魔力が大きくなっていく。この魔力は生物の生命を保つために必須で、これが強いほど生命力が高いのだ。そのため、鍛錬をしなくても大人になればレベル10ほどまでは上がる。しかしそれ以上は上がらない。また、これは人間での基準で、種族によってはその限りではない。代表的な生物ではネコと呼ばれるモンスターがそれだ。
「聞いた話によるとまだ20代らしいよ」
「20!?うそでしょ!?」
セシルが驚くのも無理はない。子供の頃から鍛錬して、20代でレベル50になるか否か、それが普通なのだ。しかしゴーウィンは20代にしてレベル99に、しかも特殊な職業になっているため、驚きだ。
「まあ、噂だから本当かどうかはわからないけど。昼休みのうちに来るらしいから見に行こうよ」
「そうだね!」
学園内にあるギルドに向かうと、すでに情報が広まっているのかかなりの冒険者及び冒険者候補生が集まっていた。みな玄関の方に集中しており、受付付近には人が少なかった。ぼくたちも前に出たかったが、人が殺到しすぎてそれが叶わない。
「すっごい人だね……ちゃんと見れるかな……」
「有名人だからね。見れたらラッキー程度に考えたほうがいいかも……」
と突然集団がざわめきだす。どうやらゴーウィンが到着したようだ。集団の隙間からその冒険者を見た。黒い馬に乗った金色の鎧を着た戦士。見るだけでその力を感じ取れる。
「すごい……」
そんな言葉しか出てこないほどのオーラを持っていた。
ゴーウィンは馬を降り、群衆から囲まれるのは慣れているのか、群衆をかき分けギルドの受付にたどり着く。ぼくたちは、ちょうど彼の隣に当たる位置におり、彼を目の前で見ることができた。
そんな僕たちの視線に気づいたのかこちらを一瞥し、にこりと笑った。そして受付でクエストを受け、立ち去って行った。
「すごかったね。何というか……オーラが」
「うん。ぼくもいつかあんな風にすごい冒険者になりたい」
「みんなのあこがれよ。私もあんな風になりたい」
皆のあこがれのレベル99。誰もがゴーウィンのようになりたいと願う。
「あっそれよりもうすぐ授業の時間だ!」
「そうだった!いっけない!情報集めてなかった!」
ぼくたちは慌てて授業に向かった。
先生に連れられ、ぼくたちはギルドの西に1時間ほど歩いたところにあるドレミシオン平原に来ていた。平原と名前がつく通り、見渡す限りの草花が咲いている。ところどころに小型のモンスターがいるが、それらはこちらを襲ってこない。
ドレミシオン平原の南に森があり、その入り口あたりに大きな丘があった。これが今回冒険するダンジョンだ。
「今回のダンジョンは、ドレミシオン平原の片隅にあるドレミシオン洞窟。ここはさほど強いモンスターはいない。だが、冒険者たるもの油断はしないように!以上!」
先生は簡潔にしかし強い口調でそう言った。いくら強くないモンスターしかいなくても、相手はモンスターのため、油断すると死ぬことがある。死んでも復活はできるものの、それは体が残っていた場合のみだ。
ドレミシオン洞窟の危険度は1だ。危険度はギルドによって決まり、最高難易度は19だ。
チームは1チーム3人で、ぼくたちは、ぼく、セシル、エールの3人だ。
「僕たち3人で頑張ろうね」
「そうね。幸いよくくるところだから情報は足りてるわね」
「ハハハッ!ろくに召喚獣を操ることができないノエルじゃこの程度もきついんじゃねえか?」
そう僕たちに対して言うやつは種族は人間、クラスは召喚士のグルフト。レベルは14。僕らのクラスメイトの中でトップの成績だ。だが、性格にちょっと難がある。
そのチームメイト二人はレベル12の戦士だ。バランスが悪いにもほどがある。冒険者になるならば、チームバランスは考えないといけない。ぼくたちはサポート役の僕と盾兼近接のセシル、そして遠距離魔法攻撃役のエールというパーティーに対し、グルフトたちは近接と遠距離共にこなす攻撃役のグルフトと盾兼近接役の2人だ。これではもしダメージを受けた場合回復することができない。また、近接攻撃が効かないモンスターに出会った場合、辛い戦いになる。
僕らはそれを見て、呆れていた。
「ノエル、行くわよ。あんな奴は無視していいわ」
「おいおい!無視すんなよ。俺はな。この洞窟で立ち入り禁止になっているあの場所の先に忍び込むつもりなんだ」
と、聞いてもいないことを自慢げに言ってきた。立ち入り禁止エリアは文字通り立ち入り禁止の場所だ。そこそこの冒険者ならまだしも、冒険者候補生の僕らが立ち入っていいはずがない。
「……あんた、規則はしっかり守らないとだめよ」
「ふん。どうせ雑魚しかわかない洞窟だ。俺たちの相手じゃないさ」
「そっ。せいぜい注意することね。行こ二人とも」
僕たちは、グルフトたちを無視して、セシルの後ろについて中に入っていく。
ドレミシオン洞窟の中は、かなり広く、大人が5人横に並んで歩いても余裕があるほどだ。また、天井も高く、剣を持って手を伸ばしても届かない。洞窟は暗く、ぼくたちは松明を持って進む。すると光に反応してモンスターが襲ってくる。
出てきたモンスターは
バットLv3 種族:獣 属性:風
モグラLv4 種族:獣 属性:土
だ。この洞窟に出てくるモンスターはこの二匹だけだ。この二体は互いに同じ場所に住んでいるためか、互いを襲わない。襲うのはぼくたちのような侵入者だ。
「はああああっ!」
セシルが剣を縦に振り、バットに剣を当てる。それに続いてモグラに対しエールが魔法を唱える。
「風よ目の前の敵を吹き飛ばせ!エアカッター!」
「ちょっと!エールどこ狙ってんのよ!!うわっ!」
セシルはバットを切り倒したが、エールの魔法は明後日の方向に。セシルはギリギリ回避した。
「ご、ごめんセシル……」
「外れたからいいものを……もっと練習しなさいよ!はっ!」
セシルはそういいながら、横薙ぎでモグラを倒した。もう敵がいないことを確認し、僕たちは先に進んだ。
「ごめんねセシル、エール。僕は見てるだけで」
「あんたは仕方ないわ。召喚呪文はMPの消費が多いうえに召喚に時間がかかる。そうでしょ?」
「うん。そうだね。でもできれば僕も戦いたいなって」
僕の武器は召喚獣を指揮する指揮棒と呼ばれる武器だ。攻撃力は低く、とても武器として使えるものではない。サモナーの唯一の武器は強力な召喚獣だ。召喚獣を召喚するのに必要なMP、詠唱時間は召喚する召喚獣の強さに依存する。
ぼくの場合は使う召喚獣が特殊で、詠唱時間が長い上に消費MPが多い。そのため、おいそれと召喚することができない。
「そういえば私まだノエルの召喚獣みたことないかも」
「そういえばそうね。結構長い事一緒に冒険してるけど一度も見たことないかも。敵が弱いのもあるけど」
「できるだけ召喚したくないんだよね。あれ……」
「どうして?あんたの唯一の攻撃方法じゃない」
「それは……」
と話しているうちに洞窟の奥についた。洞窟の奥は大きな広場になっており、先ほどの通路の比じゃない。クラス全員がここにきても普通に入れるほどだ。そこにはボスモンスターが待っていた。
クレイモグーラLv9 種族:獣 属性:土
このダンジョンのボスだ。攻撃方法は主にモグラと同じ土に潜って接近、相手を強力な爪で切り裂く。そしてボスモンスターならではの仲間呼び。モグラを数体を呼び出す。
「グエエエエエエエ!!」
僕らを見たクレイモグーラが咆哮を上げ、襲ってくる。クレイモグーラは人間より少し大きいくらいで、それが襲ってくるのはかなり迫力がある。
「いくよ!エール!」
「うん!」
それに対しセシルとエールが武器を構え、クレイモグーラの攻撃に備える。クレイモグーラが大きく腕を振るい、爪で攻撃してくる。セシルはその爪の攻撃を剣で防ぎ、エールは後方から風属性の攻撃を放つ。大きな的はいくらドジでも当てられる。
「僕だって支援くらいならできる!我が仲間に力を与えよ!ビルド!」
セシルに攻撃力上昇する魔法を唱える。支援魔法だ。基本的な用途は召喚獣にバフ魔法を唱え、強化する。
「はあああああっ!!」
セシルが再び振るった剣はクレイモグーラの爪で止められるはずだったが、強化されたセシルの剣は、その爪を叩き切った。
「グエエエエッ!?」
「いまよ!エール!」
「風よ、敵を撃て!エアショット」
クレイモグーラが怯んだのを見て、セシルがエールに指示を出す。エールは軽く頷き、魔法を詠唱する。エールの手に魔法陣が現れ、そこから風の球を放つ。風の球はクレイモグーラを撃ち、クレイモグーラは転ぶ。
「やった!?」
「いや、まだよ!」
「グエエエエエエエ!!」
クレイモグーラは立ち上がり、さらに大きな咆哮を上げる。目には怒りを宿していた。クレイモグーラの咆哮に反応して仲間が現れる。現れたモンスターは4体のモグラだった。
「エール!全体攻撃魔法よ!」
「は、はい!すべてを吹き飛ばせ!トルネード!」
数が増えると厄介なため、エールに全体魔法を唱えるよう指示をする。エールが魔法を詠唱すると、モグラたちの中心に魔法陣が現れ、そこから竜巻が起こり、モグラをすべて倒す。
「さすがだねエール!」
「えへへ!」
「さあ、これでとどめよ!はあああっ!!」
「クエエエエエッ!!」
セシルは剣を思いっきり縦に振り、クレイモグーラは倒れた。
「やったわね!」
「あっ!宝箱だ!」
洞窟の奥はボスがおり、宝箱がある。宝箱の中身は洞窟の危険度に依存する。それがダンジョンというものだ。
今回の宝箱の中身は初心者戦士御用達アイテム、石の剣だった。ギルドでも300ベルで買える装備品だ。
「やっぱり危険度1のダンジョンなだけあってしょぼいアイテムね」
「でも一応攻略成功だね」
「そうね。じゃあ帰ろう!」
僕たちはその洞窟の奥にある道を進み、洞窟から出た。洞窟から出ると、すでにほとんどのグループが帰ってきていた。今までに他のグループと会わなかったり、ボスが復活していたりするのは、洞窟に宿る魔力のせいだ。普通のダンジョンでは普通他の冒険者に会えるのだが、今回は先生が洞窟の魔力に干渉し、他のグループと会わないようにしたようだ。また、ボスは魔力が再び集まり復活するため、ぼくらの前のグループがボスを倒していても、ぼくらの後のグループがあの空間に行っても、ボスと戦うことになる。魔力が集まりボスが復活するのは洞窟のみで、洞窟外ではそれらが起こらないため死体となり、蘇生魔法を唱えない限りは生き返らない。
「お、ノエルのグループも抜けてきたな。あとは……」
先生が僕らを見て、出席簿にチェックを付ける。そして出席簿からまだ来ていないグループを確認している。
「あとグルフトのグループだけか。あいつらが遅いのは気になるな……」
僕はなんとなく嫌な予感がした。確かグルフトたちは立ち入り禁止エリアの方に入ると言っていたから。
「僕、グルフトたちを探してきます!」
言うと同時に体が動いていた。仲間が死ぬのは嫌だからだ。
「おいノエル!」
先生の呼ぶ声に反応もせず洞窟に戻る。洞窟半ばに分岐があり、その分岐には立ち入り禁止という看板が立っていた。僕は構わず入り、奥を目指す。
途中モンスターが徘徊していた。
クレイモグーラLv30 種族:獣 属性:土
ウルバットLv30 種族:獣 属性:風
先ほど戦ったボス、クレイモグーラ、それもレベルがかなり上がって、そしてバットよりさらに強いウルバットこちらもレベルはかなり高い。到底僕にはかなう相手ではなかった。
「っ!仕方ない!あいつを呼び出す!」
ぼくは詠唱を始める。目の前の地面に大きな魔法陣が現れる。クレイモグーラ、ウルバットがこちらに気づき、襲ってくる。
「召喚獣召喚。我が声に応えよ!獄炎龍イフリート!!」
ゴゴゴゴと音を立て魔法陣から現れる赤き龍。イフリート。僕の召喚獣だ。
獄炎龍イフリートLv12 種族:ドラゴン 属性:炎
ウルバットはすでに目と鼻の先まで来ていた。僕は指揮棒でイフリートに指揮をする。
「イフリート!襲ってくる敵を倒してくれ!」
「グオオオオオオオオッ!!!」
イフリートが振るった爪はウルバットを叩き落とす。尻尾もそれにつられ動き、僕の目の前を掠める。
「うわっ!」
「グオオオオオオッ!」
イフリートの灼熱の嵐。クレイモグーラ、ウルバットを焼き尽くし、2体とも倒れた。
「イフリート!奥に行くよ!」
「グルルルルル」
「い、イフリート?うわっ!」
イフリートは僕を尻尾で吹き飛ばす。これが僕が召喚したくない理由だ。全くいうことを聞いてくれないのだ。
「っ!仕方ない……戻れ!」
イフリートの足元に指揮棒を向けると、魔法陣が現れ、イフリートの姿も消える。
「だいぶMP消費しちゃったな……MPポーション高いんだけど仕方ないよね」
イフリートを呼び出すためのMPは120。現在の僕のMPは140のため、残ったのは20だ。そしてMPポーション。一つ1000と無駄に高いポーションで、使うとMPを500回復してくれる。このMPの数値は感覚だけで分かる。
僕はMPポーションを使い、奥に進む。
奥についたとき、悲鳴が聞こえた。
「ひ、ひいいいいい!!た、助けてくれええ!!」
この声はグルフトのグループの一人、アダンだ。
「お前の相手はこのおれだあああ!!」
僕が奥についたとき、アダンに鋭い爪を振り下ろすギガントモグーラ。その腕に攻撃し、注意を逸らすグルフトの姿があった。
ギガントモグーラLv40 種族:獣 属性:土
このダンジョンの最も強いボスだ。クレイモグーラの3倍ほどの大きさで、圧倒的な威圧感を放っていた。
グルフトの剣はギガントモグーラの腕に突き刺さり、ギガントモグーラは動きを止める。しかし、ダメージはほとんどないように見える。
「チッ!やっぱりこの程度じゃ効かないか!ならば!」
グルフトはギガントモグーラから離れ、剣を手放す。すると剣の周囲に魔法陣が現れ、剣が消える。
「顕現せよ!土の魔物よ!クレイゴーレム!!」
手を地面に向けると魔法陣が現れ、クレイゴーレムが現れる。
クレイゴーレムLv10 種族:機械 属性:土
クレイゴーレムは人間の手によって作られた魔物で、召喚士が呼び出せるものだ。大きさはギガントモグーラより一回り小さい。サモナーが呼び出すことはできない。
「ゴゴゴゴゴ!!!!」
クレイゴーレムはギガントモグーラに向かって渾身のパンチを繰り出す。しかし、ギガントモグーラにはほとんどダメージを与えられない。
「キイイイイイイイイ!!」
ギガントモグーラの足元に魔法陣が現れた。魔法での攻撃を繰り出すつもりだ。魔法陣がグルフトたちの中心に現れる。それは全体攻撃の予兆だった。
「危ない!逃げて!!」
しかし、僕の声は遅かった。土の上位魔法、グランドオール。地面が揺れ、グルフトたちを跳ね上げるように地面が盛り上がる。
「うわあああああ!!!」
グルフトたちは一瞬にしてやられ、クレイゴーレムは一撃で崩れた。しかしまだ死んではいないようだ。
「みんな!!くっみんなを助けないと!」
僕は召喚魔法を使う。
「獄炎龍イフリート!!」
再び現れるイフリート。しかし、イフリートは寝ていた。
「イフリート!起きて!みんなを助けて!!」
しかしイフリートは起きない。ぼくたちに気づいたギガントモグーラは、イフリートに突進してきた。ギガントモグーラは、イフリートを軽々と吹き飛ばす。
「グオオオオオオッ!!」
壁にぶつかり、地面に落ちるイフリート。
「イフリート!!」
ぼくはイフリートを心配する。しかし、イフリートは立ち上がり、目には睡眠を邪魔されたせいか、怒りを宿す。
「グオオオオオオオオオオ!!!!」
イフリートの咆哮。それに臆せずギガントモグーラは突進した。しかし、尻尾だけで吹き飛ぶ。
「グオオオオオオッ!!」
イフリートのファイヤブレス。炎の息は、ギガントモグーラを燃やす。
「イフリート!ぼくの指示に従って!」
僕の指揮、声を無視し、ギガントモグーラに突進していくイフリート。ギガントモグーラは立ち上がった瞬間イフリートの突進をくらい、壁に打ち付けられる。ギガントモグーラは体力を全て失い、倒れたまま、立ち上がることはなかった。
僕はすかさずイフリートに魔法陣を展開し、帰らせる。
「ふう……何とかなった……。そうだ!グルフト!アダン!エシル!」
僕はグルフトたちに近づく。
「みんな!大丈夫!?」
「うう……」
冒険バックから回復のポーションを取り出し、グルフトたちに飲ませる。そうしていると先生とセシルとエールが走ってきた。
「おい!大丈夫か!?みんな無事か!?」
「はい。何とか命には別状ないようです」
「そうか……まさか立ち入り禁止エリアに入るなんて……全くこいつらには説教が必要だな」
そういいながら先生はアダンを担ぐ。
「ノエル、お前も無断で入ったことについて説教させてもらうぞ」
「……はい」
「とりあえずこいつらを連れて帰らないとな。セシル、エール、協力してエシルを担いできてくれ。ノエルはグルフトを頼むぞ。お前ひとりで大丈夫だろ?」
「わかりました」
僕はグルフトを担ぐ。グルフトは僕に対して呟く。
「すまないな……助けてくれて、ありがとう……」
「え、あ、うん」
「へへ……お前……強かったんだな……」
僕は素直に褒められて、照れると同時に、ぼくの切り札を見られたことを危惧した。
「……あのさ、一つお願いがあるんだけど」
「ん?」
「僕の召喚獣のこと、黙っていてほしいんだ」
「……そうか……わかった」
グルフトは、ぼくの願いを快諾してくれた。そして僕たちは学園に無事帰ることができた。そして放課後、
「ガミガミガミ」
「……」
「……」
「……」
「……」
僕たち4人は説教されていた。もちろん無断で立ち入り禁止エリアに入ったこと、危険な行為をしたことについてだ。すでに20分以上も説教されている。
「……それじゃあ、反省文書いて出すように!以上!」
「すみませんでした……」
僕たちは全員で頭を下げた。そして部屋を後にしようとした。
「ノエル!」
「……はい?」
「よくやったな」
最後に先生は僕をほめてくれた。僕は褒められてなんだか恥ずかしくなったと同時に、誇らしくなった。