この世界では種族というものがある。前に戦ったギガントモグーラは種族は獣だ。どこにでもいる種族だがどこにでもいるがゆえに危険な生物である。普通の市民への被害もあり、それを駆除するのが冒険者たちの仕事だ。
そしてぼくの召喚獣である獄炎龍イフリート。こいつは種族はドラゴンだ。滅多なことでは見かけない生物だが、ひとたび現れると都市を壊滅させることすら可能なほどの力を持つ極めて危険な生物だ。それゆえ冒険者でもドラゴンを倒す仕事を受ける人は滅多にいない。また、ドラゴンはその力に誇りを持っているようで人に従うことがほとんどなく、ドラゴンサモナーをクラスにしている冒険者もほとんどいない。
さて、何故レベル差がかなり開いていたギガントモグーラをイフリートが圧倒できたかだが、それはこの種族にある。獣は攻撃力こそは高いがその他のステータスは低い。ドラゴンは全体的なステータスは極めて高いため、多少レベル差があっても獣程度ならば相手にはならなかったわけだ。
サモナーの召喚獣は召還主のレベルと同じレベルになる。つまり、イフリートを強くするには僕自身が強くならないといけないというわけだ。
そんな時に前助けたときからやたら僕に付き添ってくるグルフトがいい情報を持ってきてくれた。
「ノエル!お前聞いたか?イリアヌ洞窟の奥の方でメタルコーラルを見たって話し」
「イリアヌ洞窟で?でもあそこ何もないで有名なところでしょ?」
メタルコーラルとは冒険者の中でも倒すと膨大な経験値をもらえると有名なモンスターだ。だけど見つけるのはとても難しく、その上メタルとついているだけあって防御力も極めて高い。そのうえ魔法をすべて無効化。状態異常など一切効かないというおまけつきだ。
それからメタルコーラルを見たというイリアヌ洞窟は、ギルドから北西に30分程度進んだところにある、丘の上の小さな洞窟だ。奥に進むと丸い部屋があるだけでボスはおろかお宝もないという、何もない洞窟で有名なところだった。その何もなさから危険度は1、冒険者候補生もなんの許しも得ずに入れる洞窟だった。
「ただの噂だがレベリングはしたいからな。行ってみるだけ行ってみないか?」
とグルフトは提案してくる。何もない洞窟とはいえ、低レベルの弱いモンスターは出てくる。メタルコーラルがいなくとも、それらを倒して、強くなることはできる。
「うん。そうだね。放課後行ってみようか。セシルとエールにも声かけてみるよ」
僕は快諾し、そう答えた。
「おう、よろしくな!」
丁度授業開始を知らせるチャイムが鳴り、ぼくたちは解散した。
授業が終わり、昼休みになった。僕は食堂でエールとセシルにグルフトと話したことを話をした。
「イリアヌ洞窟に?」
「メタルコーラル?」
エールとセシルは、互いに顔を見合わせながら問いかけてくる。
「うん。僕もグルフトから聞いただけなんだけど。いたらラッキー程度でレベリングしに行こうかなって話」
そこまで話すと、エールとセシルは、困ったような顔をした。
「んーごめん!私はまだ宿題残ってて……」
「え?宿題って……あの冒険者の基本の宿題?」
「うん。あれ終わらないと帰らせてもらえない」
「いやあれ10分程度で終わるじゃん。なんでやらなかったの?」
「ノエル……あなたはそうでしょうけど」
「え?エールも終わってなかったりするの?」
「ううん。私は40分かけて終わらせたけど。でもあの洞窟には行けないかな。今日は寮でやることあるから」
「あー……そういえば昨日壺割ってたね……」
昨日、寮でエールが自分の足に躓いてそのまま飾ってあった壺にぶつかり、割ってしまっていた。寮監の先生から、
「割ってしまったのには変わらないザマス!責任もって直すだザマス!!」
って怒られていた。それはつまり、接着剤でその壺を直さないといけないということ。ぼくはなんとなく納得した。
「あの寮監は鬼だからね……」
セシルは鬼といったが、それは種族的な意味ではない。規則破りにはきつい罰、何か問題を起こしたら、一日説教と、生徒たちからは鬼と恐れられていた。
「つまり二人とも来れないということだね」
「ごめんね」
「あんたが宿題を教えてくれたらすーぐ終わるんだけどなー」
「宿題は自分で解かないと身につかないよ」
「あんたはまじめだからね……そういうと思ったわよ。ま、そういうわけだから」
「そっか。残念。じゃあ、グルフトと二人で行ってくるよ」
「気をつけなさいよ」
「うん。ありがと」
僕らは食事を済ませ、教室に戻った。
放課後、教室の方では、
「お前授業でそれ教えただろ!なんでわからないんだ!」
という怒号、寮の方では、
「早く直すだザマス!!いつまでかかってるだザマス!!」
という怒号が鳴り響くのをよそに、ぼくたちはイリアヌ洞窟へ向かった。
「そっか。あいつらは来れないのか。証言者は一人でも多いほうがよかったんだがな」
「まだ探すつもりだったんだ……」
「当たり前だろ!それに、仲間が多いほうが安全だしな」
「それはそうだね」
「と、着いたな。じゃ、行くか」
丘の頂上付近にある洞窟の穴から、イリアヌ洞窟へ入っていく。ここで出てくるモンスターはドレミシオン洞窟と同じモグラとバットだ。あとここではネコというモンスターも出てくる。
「剣!はあああっ!」
モグラを倒しつつ、奥へ進む。グルフトは召喚魔法で剣を召喚する。消費MPは1。召喚した剣は手放すことでMP0の帰還魔法を自動発動し、元あった場所に戻される。
「さすがだねグルフト」
「おうよ!この程度の相手にお前の召喚魔法、サポート魔法を使う必要ねえよ!」
そんな話をしながら奥へ進んでいると、ニャーと声が聞こえた。ネコだ。
「お、ネコだ。んー……」
ネコLv99 種族:獣 属性:風
ネコはレベルだけ無茶苦茶高い。しかし、ステータスはまさかのALL1で攻撃されるとすぐに倒される。魔法もスキルも使えない。それはもはやカモなのではと思うが、倒しても経験値は1だ。そして何より、その愛くるしさから倒すことが躊躇われる。放っておいても、襲ってくることはないし、たとえ噛まれてもダメージを受けることはない。
「放っておくか」
「そうだね」
「にゃー」
僕たちは先に進む。ネコは僕たちの後についてくる。敵を倒しつつ、一番奥についた。一番奥は大きなドーム状の部屋で、そこには何もない。光は松明の明かりだけで真っ暗だが、秘密基地にはもってこいかもしれない。
「やっぱ何もないね」
「ぬあー!やっぱりメタルコーラルを見たって噂は嘘だったのか!?」
「仕方ない。帰ろうか」
僕たちが帰ろうとしたとき、ネコがドームの隅の方に走って行った。こちらを向き、ニャーニャーと鳴き声を上げている。まるで僕たちを呼んでいるようだった。
「何かあるのか?」
「おい、ネコなんて放っておいて帰ろうぜ」
「なんとなく僕たちを呼んでいるような感じがするんだ。少し調べてみるよ」
「何もないと思うんだけどな」
グルフトは入り口付近の壁で手を後ろ手に組んでうっかかっていた。ネコは僕が近づいてみると、壁をひっかいていた。僕はその壁に耳をつけ壁の奥の音を聞く。びゅおおおおおという風の音が聞こえた。それからぽつ、ぽつと水が滴る音も。
「グルフト!爆弾って召喚できるかな」
「あ?一応できるが何に使うんだ?」
「ここの壁、破壊してもらいたい」
「何かあるのか?」
「うん」
「わかった。爆!」
爆弾を召喚し、少し離れて、爆弾を壁に投げつける。派手に爆発し、壁が崩れる。そこからさらに奥へ進む道が現れた。
「これは……」
「ネコ、この先に何かあるの?」
「にゃー!」
爆弾から離れるために抱えていたネコは僕の腕から抜け出し、その洞窟の先へ進んで行った。
「ここからは未知の世界だね……」
「ハハッ!腕がなるぜ!」
「用心しないと」
ぼくの不安とはよそに、グルフトは興奮しており、進む気満々だった。もちろんぼくも冒険者の端くれ。多少は興奮しており、戻る選択肢はなかった。
道は4人並べるほどの広さで、壁は水が流れているようで湿気ている。道の隅は壁に伝って流れて溜まった水がところどころ水たまりを作っていた。
僕たちは警戒しつつ奥へ進んで行った。道の隅で何かが動く。
「なんだ!?」
グルフトは剣を召喚し、構える。水たまりがうごめき、周囲の水たまりが集まり一匹のモンスターとなった。
スライム(水)Lv9 種族:スライム 属性:水
「スライムだと!?くそっ!俺と相性悪いぞ!」
「スライム確かに厄介だね。だけどイフリートを召喚するのはさすがに勿体ない……どうする?」
スライムは物理攻撃を食らった場合、半分に分かれるだけでダメージを負わない。そのうえ再びくっつくため何度攻撃しても無意味だ。爆弾で倒した場合、周りにスライムが飛び散り、またつながるため、これも無意味。唯一の倒す手段として魔法、それもファイヤによる延焼で焼き尽くすしかない。しかし運の悪いことに、ここのスライムの属性は水だ。炎で倒そうにもかなりの火力を必要とする。
「ここは逃げるしかないね!行こう!」
「ああ!爆!」
スライムに爆弾を投げ、爆発させる。飛び散ったスライムは再び集まるのに時間がかかる。その隙をついて先へ進んだ。
途中何度もスライムが道を阻むが、爆弾で隙をついて、僕たちは先に進んだ。その調子で僕たちは一番奥へ。そこは滝が流れ、水が溜まり、その中心に道がある。その一番奥は丸くステージのようになっていた。そこには光が差し込む。上を見ると、そこだけまるで隕石でも落ちたかのように丸く穴が開いていた。滝の前には宝箱があった。ステージの中心に猫が座っていた。
「ネコ!」
「お前こんなところにいたのか!」
先に進んだネコの姿が見えないと思ったら、ダンジョンの一番奥にいた。一応モンスターだから狙われなかったのか、そのすばしっこい身のこなしで逃げてきたのかは謎だ。
ステージに近づくと、滝の中に影が見えた。
「なんだ!?」
滝の中から現れたのは、蛇のように長い体を持つ生物だった。
ウルナーギLv40 種族:魚 属性:水
「ウルナーギだと!?バカな!こいつは危険度3クラスの洞窟にいるモンスターだったはずだ!」
そもそもスライムですら危険度1にいるモンスターではなかった。つまり、この洞窟は危険度2以上はあるということになる。
「ここは逃げたほうが!」
僕が踵を返そうとした瞬間、ウルナーギは口から何かを吐き出す。それは泥だった。これでは滑ってしまい、逃げ切れない。逆にウルナーギは、泥の上を滑り、素早く動く。
「くっ戦うしかないか!」
「ノエル!お前はイフリートを召喚してくれ!その間俺がなんとか食い止める!」
「わかった!」
僕は詠唱を始める。グルフトはぼくの前に出て、ウルナーギに剣を向ける。
「剣!はああっ!」
ウルナーギは尻尾で剣を受け止める。すかさずグルフトをその長い体で囲み、縛り上げる。
「ぐっあああああ!!」
グルフトは、かなりの力で締め上げられ、骨が折れるような音が聞こえてくる。しかし、そのおかげで詠唱が終わった。
「召喚、イフリート!!」
イフリートを召喚し、イフリートに命令を出す。
「イフリート!グルフトに攻撃しないようにウルナーギを倒せ!」
イフリートが僕の命令に従ったのか分からないが、ウルナーギに突撃、グルフトに当たらないかひやひやするほどの荒い攻撃を繰り出す。それが効いたのかグルフトは拘束から解放された。
「グルフト!大丈夫!?」
「あ、ああ……なんとかな」
そういうグルフトは、左腕を抑える。左腕は普通じゃ曲がらないような角度に曲がっていた。骨が折れているのだ。
イフリートはウルナーギをどんどん追い込む。しかし、イフリートはウルナーギが吐いた泥で足を滑らせた。その隙をつき、ウルナーギはイフリートの腹部に潜り込み、その体で体を拘束する。
「グオオオオオオオ!!」
イフリートは身動きが取れずじたばたともがく。しかし、泥に足が滑り、うまく力を入れられないようだ。
「イフリート!」
ウルナーギはギュウギュウとイフリートを締め上げる。イフリートはそのまま倒れる。だが、体力が無くなったわけではないようだ。
「グオオオッ」
「イフリート!っだったら!力を付与せよ!ビルド!」
イフリートに攻撃力アップの魔法をかける。
「グオオオオオオ!!!」
イフリートはウルナーギを振りほどこうともがくが、ウルナーギはさらに強く締め上げる。
「ビルドでもダメか!」
「どうする!?ノエル!」
「……っ!」
イフリートの体力がもう尽きかけてきた。もう帰還魔法で戻すしかない。
「戻れ!」
イフリートはそのまま帰らせた。ウルナーギはこちらを次の標的にしたようだ。
「ノエル!お前は逃げろ!俺が時間を稼ぐ!」
「そんなことできないよ!」
「逃げろおお!!」
グルフトが叫ぶ。すぐ目の前にウルナーギが迫ってきていた。
「いい度胸だ!」
声が聞こえた。グラフトの声ではない声が。その刹那、ウルナーギの頭部に何かが落ちてきた。
「な、なんだ!?」
「俺は9人のLv99の冒険者の一人、ゴーウィンだ!」
「ゴーウィン……さん?」
ウルナーギは頭を振るい、ゴーウィンを振り落とす。ゴーウィンはそこから離れ、グルフトの前に降り立つ。
「お前ら、大丈夫か?」
「は、はい!」
「ならばそこで見ていろ。こいつは俺一人で十分だ」
ウルナーギは泥を吐き出す。
「障壁!マジックウォール!!」
泥はゴーウィンの目の前に現れた赤みを帯びた透明な壁で止められ、足元に落ちる。
「相手の属性は水だったか。だったら!雷よ、我に力を!サンダーオーラ!!」
ゴーウィンの体に雷が落ちる。ゴーウィンはその雷を纏う。オーラ系の魔法は自身にその属性の力を纏う。これにより属性の有利不利を変えることができる。
ウルナーギは地面に落ちた泥を使い、突進してきた。それをゴーウィンは剣で受け止め、弾き飛ばす。
「今だ!我が力を限界に!アルティメトブースト!!」
ステータス上昇系魔法最上位の魔法、アルティメットブースト。自身のすべてのステータスを2倍に引き上げる魔法だ。
ウルナーギは再び突進してきた。ゴーウィンは剣を縦に振るい、ウルナーギの頭部を切り裂く。属性有利、ステータス最大の攻撃力、そしてウルナーギの弱点である頭部への攻撃。その一撃をウルナーギが耐えられるわけがない。ウルナーギは一撃で倒れた。
「す、すごい……」
ゴーウィンは滝の前にある宝箱を開け、取り出す。それは魚鱗の槍だった。
「槍か。いらないな。お前ら、槍を装備できるやつはいるか?」
「お、俺は召喚士だから一応すべての武器を装備できます」
「そうか。じゃあこれを受け取れ。俺にはこの程度の装備は必要ない」
そう言いながら、槍をグルフトに投げる。グルフトは、槍をキャッチし、お礼を言う。
「あ、ありがとうございます!」
「さて、帰るぞ」
ゴーウィンは出口に向かって歩いて行った。
「グラフト、立てるかい?」
「ああ、なんとか」
ぼくはグルフトに手を貸しながらゴーウィンの背中を追いかけた。
「にゃー!」
「おわっ!なんだ!?」
「あ、ネコ!」
「お前、逃げてたんだな」
ネコはゴーウィンの足元を抜け、こっちへ来る。僕の背中を利用し、肩へ乗る。
「お前、付いてくる気かい?」
「にゃー!」
「なんだ?そのネコは」
「さあ……でもここへの道を案内してくれたネコだから一応悪いモンスターじゃないかもですね」
ネコであるという時点で悪いモンスターであっても脅威ではないが。
「連れて帰るのか?」
「僕になついてるようなので大丈夫かな?一応サモナーですからこの子を飼いたいと思います」
「そうか。大事にしてやれよ」
「ありがとうございます」
ネコを肩に乗せ、僕たちは帰った。ゴーウィンはあの洞窟での報告をしていた。
僕はそのルートを見つけたとしておそらく話しを聞くことになるだろうということでギルドの待合室で待たされていた。グルフトは治療室で治療を受けていた。
「待たせたな。しばらくしたらギルドの者が話を聞きに来るらしい。そのあとあの洞窟についてもう一度安全性等を検査するため、ギルド兵が確認しにいくようだ。あ、この検査についてはお前らはついていく必要はないから安心してくれ」
「何もかもありがとうございます」
「せっかく会ったんだ。それにお前を見て将来性を感じてな」
「将来性?」
「ああ、お前は将来大物になる。そんな予感がするんだ」
「僕にそんな力はないですよ」
「確かお前はサモナーだって言ってたな。お前、サモナーの中でも珍しいドラゴンサモナーか?」
「……見てたんですか?」
「その聞き方はそうだと答えているようなものだぞ。俺は見ていなかった。」
「そう」
「安心しろ。お前が隠している理由は大体わかる。誰にもばらしたりしないから」
「そうしてもらえると助かります」
話しているうちにギルドの調査兵だという者が話を聞きに来た。僕はあの時あったことをすべて話した。
「そうかですか。それでは、あの洞窟について今一度調査します。冒険者候補生は入らないように注意してください」
「わかりました」
そして僕たちは寮へ帰った。ゴーウィンは冒険者の宿に泊まるらしい。ネコについては僕のペットにするということで話はついた。
寮について、寮監にばったりと会った。そして今までの話をし、ネコについても話した。が、
「ダメだザマス!!ここはペット禁制だザマス!!」
「そこをなんとか!そもそも僕はサモナーですからペットの1、2匹は……」
「ダメって言ったらだめだザマス!」
ぼくが怒られていると、唐突にゴーウィンの声が聞こえる。
「おいおい寮監さん」
「誰だザマス!?」
「俺は9人のLV99の一人、ゴーウィンだ」
「ご、ゴーウィン!?」
ゴーウィンの姿を見た寮監は、驚きと恐れの表情に変わる。
「サモナーにとってペットを飼うというのは勉強にもなるし、自分の戦力にもなる。そうじゃないのか?」
「そ、それは……」
「まさか寮監ともあろうものが冒険者候補生の武器を奪う、なんてことはないよな?」
「くっ……わかった!分かっただザマス!!許だザマス!!」
寮監は大股で大きな足音を立てて、奥へ戻っていった。
「ゴーウィンさん、ありがとうございます」
「いいんだ。ここの寮監には何度か世話になったからな……」
「え?ゴーウィンさんもここの出身だったんですか?」
「ああ、一応な。それじゃ、次こそ俺は宿に戻る」
「はい。おやすみなさい」
僕も部屋に戻ることにした。廊下の奥でエールはまだ接着剤で壺を直そうとしていた。
「エール。まだやってたの?」
「うん……難しくって」
確かにかなり複雑に割れていた。パズルよりかなり難しいと思う。
「手伝うよ」
「え!?いいよ。私のドジのせいだし……」
「よくないよ。友達が困ってるんだから……」
「……ありがとう」
エールは少し赤くなっていた。
「どうしたの?エール。熱でもあるの?」
「へっ!?いや、大丈夫だから!」
「そう?無理しないようにね」
「うん」
それから明け方までずっと壺を直していたのだった。