アビリティーはあらゆる生物に必ず一つあると言われている能力だ。アビリティーの種類はかなりあり、同じアビリティーの人を見つけることが難しいほどだ。また、アビリティーは自分自身にどんなアビリティーがあるのか分からないため、才能を見る才能を持つ人かアビリティースキャンの魔法を使える人に聞く。
レオンの持つドラゴンを見つけるアビリティーは、ドラゴンをただ見つけるだけでなく、遠くにいるドラゴンを召喚することのできるドラゴンサモナーを見つけることも可能だ。また、有名なアビリティーではマーリンのアビリティーで、魔力の消費をかなり抑えるというものだ。最上位魔法であるエクスプロージョンを他の高レベル魔法使いが唱えると、2発が限界だが、マーリンの場合は8発撃てるのだ。
ぼくの夢は、立派なドラゴンバスターになることだ。父もそれを目指していた。しかし、ドラゴンバスターへの道はとてつもなく遠く、父はその夢を諦めた。それもそのはず。ドラゴンバスターになれるのは、折れない心と多くの知識、そして強靭な肉体が必要だった。この龍殺しの村と呼ばれ、数多のドラゴンバスターを育て上げた村でも、本物のドラゴンバスターが生まれるのは極まれなのだ。
ぼくがドラゴンバスターを目指すのは、父の影響もあるが、何より、ハイドという優しいドラゴンバスターに影響されたからだ。ハイドは竜の山に住まうドラゴンを何体も狩り、その度にぼくにその話をしてくれた。火を吹く竜、水を使う竜、暴風を吹かす竜、地を揺らす竜。そんな竜の話をいくつもしてくれた。時にはやけどを負い、時には水の水圧に負け、時には風に体を浮かされ、時には地に手を付き、それでもなお魔法を駆使し、剣を振るい、ドラゴンを討伐した話を。目を輝かせて話を聞く僕に、優しく微笑みながら、何度も話してくれた。でも、それは唐突に終わった。ハイドは村から出て行ったのだ。理由ははっきりしない。ただ一言、
「奴を殺す」
それだけを言って、村を去ってしまったのだ。その時の横顔は、とてもあの優しいハイドとは思えなかった。でも、ぼくはハイドの話を忘れない、希望と勇気に溢れ、絶望に負けない心を聞かせてくれたハイドを思い、ぼくはドラゴンバスターになることを決めた。今度はハイドにぼくの冒険、狩りを聞かせるために。
ここはライナ村。龍殺しの村と呼ばれ、数多くのドラゴンバスターが生まれた村だ。人口200人程度の村で、頑丈な岩で作った家が立ち並ぶ。これは、数キロ先の竜の山と呼ばれる山から来る竜に対抗するための工夫だった。火で燃えないよう、風で飛ばないよう、地震で崩れないよう工夫され、竜が来たら、ドラゴンバスターが防衛するのだ。竜との戦闘は命がけで、死者が出ることもある。
そんな状況に置かれた村のため、幼少期から、英才教育を受け、日常的に訓練を課される。村の子供もそれを理解し、嫌がることなく、むしろ喜んでそれを行う。ぼくだってそうだ。村一番のドラゴンバスターのリゼさんに教わりながら、訓練をしている。
今は、大剣の素振りをしていた。大剣を振るえるかどうか、それはドラゴンバスターになれるかどうか決まると言っても過言ではないから。
「レオン、素振りは終わった?」
「ッはい!」
ぼくは丁度素振り200回を終わらせ、武器を下ろし、地面に座り込む。
「よろしい。それじゃあ少しお願いがあるんだけど」
リゼさんがお願いをしてくる。それはたいして珍しいことではない。しかし、そのどれもがほぼ無理難題だったため、身構えた。
前回は村の裏に佇む山の崖に生える、リュウノハナを取ってこいというものだった。500mの高さの崖の中腹に生えるそのリュウノハナは、この地域だけで伝わる秘薬で、売れば村が潤う。しかし、1つ2つじゃ秘薬にならないため、ノルマは毎回50から100本だ。ただでさえきつい場所で、なかなか見つからないリュウノハナを50~100、無理難題にも程がある。しかし、これができなきゃドラゴンバスターにはなれないため、ぼくはしぶしぶ取りに行った。
そんな無理難題が多いため、ぼくは咄嗟に身構えてしまったのだ。しかし、今回のお願いは優しいものだった。
「裏の森で薬草を取ってきてほしいの」
「そんなことでいいんですか」
秘薬があると言っても普段からそんなものを使うわけにはいかないため、薬草を定期的に採っていた。
「ええ、学校の薬草のストックが少なくなってきててね。大体1000本くらい採って来てくれたらいいわ」
やっぱりリザさんのお願いは無理難題ばかりだ。
渋々薬草採取をする。ほかにも何人か薬草採取に来てるようで、所々で愚痴が聞こえる。ぼくは黙々と薬草を採る。
しばらく採り続けていると、村の方から騒ぎが聞こえてきた。薬草採取に来ている他の生徒もそれに気づいたようで、ザワザワと騒いでる。
「おい!村にドラゴンが降りてきたって!」
「今いるドラゴンバスターは?」
「4人、リザ先生も出てるみたい」
みんな村の方に走る。ぼくもそれに続いて走り出した。
村の上空で羽ばたく大きな緑色の体の竜。鼻の先端に生える角の頂点に雷を集め、それを村に落とす。雷属性の竜、サンダードラゴンだ。それに対し、ドラゴンバスター4人が土の魔法を撃ち、落とそうとする。
竜は一気に急降下し、一人のドラゴンバスターを捕らえ、食らう。その隙をつき、リザさんと他のドラゴンバスターが大剣を振るう。が、ライトニングアーマーという魔法を張っているようで、剣を通じて、3人とも感電してしまった。それでもリザさんはヒール魔法を唱え、自身を回復し、竜に挑む。竜は切りかかったリザ先生を尻尾で弾き飛ばすと、すぐに追撃を仕掛けて行った。途端に、別の竜が現れ、サンダードラゴンを吹き飛ばす。
黄色の体を持つ竜だった。土の竜、マッドドラゴンだ。そして、リザさんの後ろにはそのドラゴンを使役しているであろう男が魔法を唱えていた。詠唱を終え、マッドドラゴンが強化され、サンダードラゴンに攻撃を指示する。それに対抗し、サンダードラゴンは雷を落とす。が、土属性のマッドドラゴンに雷属性は効かず、逆にマッドドラゴンのマッドブレスをくらう。さらに追撃しようとすると、サンダードラゴンは宙に舞う。逃がすまいと宙に舞うサンダードラゴンにマッドドランがしがみつき、地に落とす。最後は首元を噛み切られ、サンダードラゴンは倒れた。サンダードラゴンが倒れたのを確認すると、マッドドラゴンの足元に魔法陣が現れ、マッドドラゴンはその姿を消した。ぼくは急いでリゼさんの元へ駆けつけた。
「リゼさん!大丈夫ですか!?」
「え、ええ。レオン達も大丈夫だった?」
「はい!」
リゼさんは大丈夫というが、腕からは血が流れていた。
「腕から血が……」
「かすり傷程度よ。それより」
リゼさんは、サンダードラゴンを調べている男に近づく。それに気づき、男はこちらを見る。
「助かりました。ありがとうございます」
リゼさんは腕を止血の為に抑えながら、頭を下げ、お礼を言う。
「いえいえ。村が襲われていたら助けるのは当たり前ですよ。えっと……」
「リゼと言います。この村でドラゴンバスターとして、憲兵及び教師をしております」
ドラゴンバスターという言葉を聞いて、男は少し顔をしかめる。それを見て、リゼは微笑む。
「ご安心を。村を守ってくれた方のドラゴンを狩るなんてことはしませんよ」
「そう言っていただけると安心できます。私はデルファと言います。ドラゴンサモナーとして冒険者をしております」
そういいながら、冒険者のランクを示すバッチを見せる。クリスタルクラスの冒険者だ。
冒険者ランクは、ビギナー、アイアン、ブロンズ、ゴールド、クリスタル、ダイヤ、アダマンタイト、ブラックからなるクラスで分けられている。基本的に冒険者成り立てはビギナー。危険度5までの洞窟の冒険を許されている。そこから功績を上げ、アイアン。さらに功績をあげブロンズになる。ブロンズは一般冒険者として扱われ、危険度12までの冒険を許される。そこからゴールド、クリスタルと進み、上級冒険者として扱われ、危険度16までの冒険を許される。クリスタルの冒険者の多くは王都を拠点とし動くため、こんな村に来ることは滅多にない。さらにダイヤ、アダマンタイトとなると、危険度18までの冒険を任され、最上級冒険者として扱われ、国からの依頼が来る。ダイヤやアダマンタイトになる冒険者は少なく、王都でも滅多に見ないほどだ。そしてレベル99になり、最高難易度の試練と言われるものをクリアすると、ブラックとなる。マーリンやゴーウィンと言った9人のレベル99と有名な人々は、このブラックに当たる。国からの依頼もなく、彼らは冒険者として扱われない。兵器としての扱いになる。そして、彼らは何をしても許されるのだ。
デルファはクリスタルクラスの冒険者だ。恐らく竜の山の冒険に来たのだろう。ぼくは勉強したことを頭のなかで反復し、目の前の男がここに来た理由を導き出す。
「ここに来た理由は、竜の山の冒険です。そのためにここを拠点にしたいと思い来ました」
「クリスタルクラスの冒険者さんを受け入れない村はありませんよ。どうぞ宿に案内します。あ、ドラゴンはこちらで片付けますので、安心してください」
リゼさんはデルファを宿に案内していった。
先ほどの戦いで、一人が竜により命を落としたが、皆はたいして気に留めることなく竜の死体を片付ける。死んだドラゴンバスターの一人は、教会に運び込まれ、蘇生魔法で生き返る。
死とは肉体から魂が離れること。蘇生魔法はその魂を再びその肉体へ引き戻すことだ。だが、蘇生にはいくつか条件がある。そこに本人の肉体があること。時間は24時間以内。そして、肉体の機能が正常なことだ。ドラゴンに喰われ死んだドラゴンバスターは左腕から左胸までを失っているため、本来なら蘇生ができない。だが、肉体は回復魔法で元に戻すことが可能だ。これもまた条件がある。肉体の70%以上が残っていることだ。それ以下の場合は回復魔法がうまく機能しないのだ。今回の彼は肉体損失率8%。全然問題はない。そのため、ドラゴンを片付ける彼らは、焦ることもなければ悲しむこともないのだ。
サンダードラゴンを片付け終わり、歓迎の宴会を開く。村の酒場に村の皆が集まり、今回の竜について語り合う。ドラゴン襲撃のあとはいつもこうだ。竜は滅多に現れないため、竜の素材は高く売れる。この村では、竜の住処が近いため、滅多に現れないということを聞くと疑わしく思う。物事を付いたときからすでに3回、ドラゴン襲撃を受けている。
「今回のやつはなかなかに手ごわかったな!」
ドラゴンバスターの一人がそう言う。それに対し、リゼさんが答える。
「ええ、デルファさんの助けが無かったら、村が崩壊していたかもしれないわ」
その言葉を聞き、それほどに強かったのかと驚愕する。デルファさんは差し出された酒を飲みながら、いえいえと謙遜する。
「たまたま私のドラゴンの属性が、相手と相性が良かっただけですよ。もし他の属性のドラゴンで合ったら、負けていたかもしれません」
リゼさんはその様子に微笑みながら、デルファについて聞く。
「先ほどのドラゴン……マッドドラゴンですか?あのドラゴンとはどこで出会ったのでしょうか」
その質問に対し、一度酒を飲み、答える。
「私はもともとサモナーでした。サモナーは仲間がたくさんいたほうがいいため、ある沼地で仲間となるモンスターを探していたのです」
淡々と過去を離し始め、皆静かにそれに耳を傾ける。
「沼地でモンスター探しをしていると、一人の男がマッドドラゴンと戦っていたのです。マッドドラゴンはもう息を引き取る寸前でした。普段ならなんてことない狩りなので、邪魔することはなかったのですが、何故だかその時、マッドドラゴンを助けないといけないという感じがしたのです」
「助けないといけない?」
「はい。というのも、マッドドラゴンは一方的にやられており、戦う気力すらなく逃げ出そうとしていたのです。男はそれに対しまるで弱い者を虐めるかのように攻撃を続けておりました。サモナーの血が騒いだのでしょうか、他種族を虐げる人間が悪に見えたのです」
サモナーは他種族との共存を主とする職業だ。ぼくにはその感覚はわからないが、なんとなくわかる気がする。
「わたしは咄嗟に前に出て、攻撃をやめるように言いました。しかし、彼を見たとき、私は驚愕したのです」
「一体何にですか?」
「殺気です。竜を守る私への圧倒的な殺気。邪魔をするならば殺さんとそう言ってるような眼でした。それでも私は、彼の前に立ち続けたのです」
「何故ですか?」
「いくら私に殺気を向けても、私を殺したとなればそれは犯罪です。今後生活が成り立たなくなるため、殺人を犯すなどできはしないと考えました。案の定彼は、私に殺すぞなどと脅しをかけることはできても、本当に殺すことはできませんでした」
殺人などの犯罪を犯したものは、あらゆる権利を剥奪され、今後人間として扱われなくなるため、殺人だけはどんな悪人でも避ける。この法のおかげで、強盗が入っても殺されないと分かっているため、強気で動く人々が増え、強盗自体が減った。
「彼は、私に何もできないため、悪態をつきながら立ち去りました。そして私は、傷を負ったマッドドラゴンを助けました。それで絆が芽生え、私のパートナーとなったのです」
「いい話ですね」
「全くだ」
リゼさんも他の人々も彼のお人好しに感激し、酒の席はさらに盛り上がったのだった。
おまけ
ファング 種族:獣 属性:土
森に住む大きな牙が生えた四足歩行の獣。雑食性で、土の中の虫や草、農作物などいろいろなものを食べる。大きな鼻は土の中のものすらも嗅ぎ分け、1キロ先のものの臭いも嗅ぎ分けることができる。牙は土を掘ることや外敵への攻撃に使われる。しかし、性格は臆病なため、追いつめられることがない場合はすぐに逃げ出す。
攻撃手段は突進で時速40キロものスピードで突っ込んでくる。また牙での攻撃は脅威で、鎧を着ていないと大けがを負うこともある。
肉は筋肉質で硬く、火を通せば柔らかくなり歯ごたえがある。味は臭みがあり、あまりおいしくない。
ビブラート 種族:獣 属性:雷
森に住む大きな飛虫。羽音は人間が嫌う音を出し、鋭い針には毒がある。毒が体に回ると、体中が痺れ、身動きが取れなくなる。普段は獣の血を吸うが、人間の血も吸うため、危険なモンスターだ。
攻撃手段は軽い身のこなしで攻撃を躱しながら接近し、鋭い針で麻痺を付与してくる。空を飛び、素早い動きのため攻撃が当たりにくい。
対処法は、ベノム系の魔法を撒き散らす。毒耐性がないため、簡単に落ちる。
ブラッククロウ 種族:竜 属性:闇
大きな黒い爪を持つことからその名がついた。竜の山に住まい、闇の中から侵入者や獲物をその爪で刈り取る。また、火を使うこともでき、その炎は一吹きでファングを炭にするほどの火力だ。大きな翼を広げ、宙を華麗に舞うことができ、その姿は悪魔だと言われ恐れられている。
攻撃手段は大きな爪での攻撃。そのひと振りは戦士の盾を軽々と切り裂く。また、炎を吐くこともでき、距離を取ろうものなら炭にされる。出会ったら命はないと思え。
対処法は、光属性に極端に弱いため、光属性で攻撃攻撃するのが有効。また、基本的に暗闇に潜むため、フラッシュを使えば動きを止めることも可能。だが、戦わないに越したことはない。
サンダードラゴン 種族:竜 属性:雷
緑色の体をした竜。翼にある模様は実は電気で、血液内の電気が光り、浮き出ている。大きな角は電気を扱う器官を持っており、体内の電気を集め、雷を降らせたり、電気の刃を作り出すこともできる。体には常にライトニングアーマーを纏い、電気を通す金属系の武器での攻撃は、むしろ自身を痺れさせ、危機に陥ることになる。高い戦闘力を持ち、強力な雷属性を扱うため、雷帝と恐れられている。
攻撃手段は、雷を降らせ、電気を刃に変え、襲い掛かる。大きな尻尾は硬く、そこらの武器では簡単に弾かれる。また、体にライトニングアーマーを纏い、攻撃を防ぐことができる。
対処法は、避雷針を立て、雷を回避しながら土属性魔法で攻撃するとよい。魔法攻撃はライトニングアーマーを貫通するため、有効だ。だが、戦わないに越したことはない。