剣と魔法と召喚獣   作:Firefly1122

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 村で平穏に過ごしていたレオンに突然襲い掛かるドラゴン。その力は強大で、村は一夜で壊滅してしまった。そのショックとドラゴンに対する怒り、憎悪を覚えたことで、レオンはドラゴンバスターとなることを決めた。レオンはドラゴンバスターとなるため、冒険者育成も兼ねているギルドに入学することにしたのだった。


海と竜

 ドラゴンサモナーは、竜との血の契約を交わすため、体内に少なからず竜の血が混じる。それは人間が抑えられるものではなく、一度竜が暴走しようものなら、召喚主の体を乗っ取り、挙句の果てに、竜人かさせてしまうのだ。

 竜の暴走の原因はいまだに不明だが、ドラゴンサモナーで暴走しなかったものは今のところいない。そのため、ドラゴンバスターに監視されることが多いのだ。また、ドラゴンバスターの中には、暴走したドラゴンサモナーにトラウマを植え付けられたというものもおり、そういうものはドラゴンサモナーを人間のうちに殺そうとする。そのため、昔からドラゴンサモナーとドラゴンバスターは仲が悪く、互いに殺し合う関係だと言われている。ドラゴンサモナーが自身がドラゴンサモナーであることを隠すのは、暴走したドラゴンサモナーにトラウマを植え付けられたドラゴンバスターに殺されないようにするためである。

 

 夏休みに入り、1週間が経過した。ぼくたちは前々から約束をしていた、海水浴へ来ていた。

 海水浴場サーモス海岸は、ぼくたちのギルドから南に位置する、ギルドから4時間ほど歩いた場所にある海だ。周辺を大きな崖が囲み、ぽっかりとここだけ浜辺となっている。夏場のみ海水浴場として開かれており、たくさんの人々がこの時期になると、泳ぎにやってくる。しかし、ここは近くにサーモス海岸洞窟というダンジョンがあるため、頻繁にモンスターが沸くのだ。そのため、警護としてたくさんの冒険者がライフセイバーとして雇われている。また、夜になるとモンスターが狂暴化して危険のため、海岸に入ること自体を禁止にされる。しかし、せっかくの海なので、遊びたいというものも多く、夜まで海岸に居ようとするものが後を絶たなかった。そのため、最近崖の上に大きなホテルが作られた。かくいうぼくらもそのホテルに泊まって、海でたくさん遊ぶつもりだった。

「おーい!お待たせ!」

 僕たちを呼びながらとことこと走ってくるクラスの女子たち。走るたびに胸が揺れ、それを見てニヤつく男たち。ぼくは竜の血が入っているためか、ときめくことはなかった。

「ノエル!この水着どう?」

 そういいながらセシルはくるりと回って見せる。白地に桃色の花柄の可愛らしい模様がついた、ビキニにフリルスカートの水着で、ふわりとひらひらが浮きあがる。

「うん。似合ってるよ」

「ほんと!?えへへ」

 僕が素直に言うと、セシルは嬉しそうに喜ぶ。それを見てエールも対抗心を燃やしたのか、「私は?」と聞きながら、くるりと回る。エールの水着はシンプルな真っ白なビキニで、エールの白い肌とマッチしている。

「きれいだね」

「き、きれい!?」

 僕が褒めると、エールは真っ赤になって体を隠すようにしゃがんでしまった。その後ろに、学校指定の紺色のスクール水着を着ているシエルが立っていた。

「あれ?シエルはいつもの水着なんだ」

「機能性がいいから」

「そ、そうなんだ」

 淡々と理由を話すシエルに苦笑し、周囲を見渡す。他にも同じクラスの生徒や別のクラスの生徒、先生たちまでもが水着を着てはしゃいでいる。夏休みの間、帰省する生徒もいるため、全員がいるわけではないが、そこそこの人数が集まった。その中にはレオンもいた。

 ぼくが周囲を見てると、セシルが話しかけてくる。

「ねえねえ!海に入ろうよ!」

 ぼくはうんと答え、海に入る。足を水に付けると、日で温まったのか、温かい水が肌に触れる。その後、ゆっくりと熱が引いていき、冷たい水に変わる。途端に波が再び温かい水を運び、また冷たい水へと変わる。一歩一歩進み、深くなるにつれその感覚はなくなり、ただひんやりとした心地よい水に変わっていく。

「きゃ!冷たいね!」

「うん。きもちいい」

 海の水を観察していると、唐突に水をかけられる。口に入った水は塩辛く、海であることをさらに実感させる。水をかけてきたのは当然セシルだ。僕はお返しに水をかけてやる。そこにエールが入ってきて、水かけ合戦へと発展していった。

 

 先生に呼ばれ、海に来たはいいが、もともと海に興味はなかった。俺ははしゃぐ生徒たちを見ながら、退屈していた。ドラゴンサモナーのやつは他の生徒と水をかけあって遊んでいる。俺はそれを忌々しく思いながら見ていた。

「どうだ?楽しんでるか?」

 先生が俺に話しかける。俺はというと、パラソルの下で胡坐をかいて座っているだけだった。先生に訓練を止められているため、退屈で仕方なかった。その様子を見て先生は苦笑していた。

「お前の村を襲ったドラゴンサモナー、デルファとか言ったか?彼の素性は明らかになった」

「っ!」

 俺は咄嗟に先生を見る。あいつについての情報は少しでもほしかったから、先生に頼んで情報を集めてもらっていた。ギルドの先生ともなれば、俺が集められなかった情報を集めることも可能だろう。

「デルファはもともと王都の北東に位置するジャスミア町の出身だ。人柄はよく、幼少期からよく地域活動もしていたそうだ。幼少期のころから生物が好きでそれが理由でサモナーになった。15のころギルドに入り、18でサモナーの冒険者となった。それから王都で様々な成果を上げ、ゴールドランクにまで上がった。そしてゴールドになってしばらくして、ドラゴンと契約を交わし、ドラゴンサモナーにクラスチェンジした。その力を認められ、クリスタルランクに昇格したらしい」

 ここまでの話は正直どうでもよいことだった。すでにそんな情報は持っている。そんな話をいちいちしてくる先生に苛立ちながら、静かに話の続きを聞く。

「さて、ここからが本題なのだが、村に行った理由はあるクエストだそうだ」

「クエスト?」

 俺はそのクエストについて気になり、聞き返す。クリスタルランクの冒険者がクエストを受けるというのは別に珍しくはないのだが、なぜかそれが気になった。

「ああ。竜の山の秘宝を取って来てくれというクエストらしい。そしてそれは指名のクエストだそうだ」

「指名?」

 俺は胸騒ぎがした。竜の山の秘宝というものを聞いたことがない。そして指名とは、依頼主が特定の冒険者を指名することで、意図的にデルファを竜の山に送った気がするのだ。ただデルファと知り合いで、竜の山の秘宝というものの存在を知った誰かが、信頼できるデルファに対し依頼したのかもしれないが、俺はその可能性は限りなく低いと思った。

「俺も詳しくは知らないが、たぶんお前と同じことを考えている。おかしな依頼だし、指名だという点も引っかかる。それからデルファの行方は分かっていない」

 俺はデルファとの会話を思い返す。冒険をしに来たと言っていたし、秘宝について一言も聞いてこなかった。ただ竜の山についてを聞いてきただけだった。依頼に他言無用と書かれていたのかもしれない。俺は思案を巡らせる。が、何もわからなかった。竜の山に行けば何かわかるかもしれないが、今の俺ではまだいけないだろう。はあっとため息をついた。先生はそれを見て、苦笑する。

「まあ、今考えたところで何も分からない。ゆっくりでいい。時間ならあるさ」

「そんな悠長なことしてたらまたどこかで竜の犠牲になる人がでる!」

「だからといってお前に何かできるわけでもない。今はまだ自分を鍛える時期だ。今日は遊べ。たまには息抜きも大事だぞ」

 先生は俺の肩にポンと手を置いたのち、立ち上がって他の生徒のところに行った。俺は先生に言われたことを思い出しながら、憂鬱な気分のまま、ノエルを見た。ドラゴンサモナーに何かまだ知られない秘密があるのかもしれない。

 

 海で遊び、気が付くと夕暮れになっていた。すでに人はまばらで、帰路につく人々がちらほら見えた。ぼくたちも海から上がり、海の宿にあるシャワーを借り、体に付着した塩を落とした。着替えたのちに、ぼくたちはホテルへ帰った。

 ロビーは天井からシャンデリアが垂れ下がり、床は赤い絨毯が敷かれている。白いタイルと待合スペースの机とソファーはどれも高級そうだった。受付で部屋のカギを借り、指定された部屋へ向かう。廊下は人が3人ほど横に並んで歩けるほどの広さで、ポツンポツンと部屋がある。ぼくたちはそれぞれ一人部屋を借りている。

「じゃあまた後で―」

「じゃあねー」

 セシルとエールと別れ、自分の部屋に入る。部屋の中は一人部屋としては広く、シングルベッドは清潔感に溢れている。玄関から右手にある扉はトイレ及び浴槽に繋がっている。また、洗濯機もあり、汚れた服や水着を洗える。洗濯機やトイレの水は、棚の中にあるスゥァールの魔法を使える魔法の書を使い、洗濯したり水を流したりする。スゥァールは改造魔法と呼ばれるもので、普通の魔法とは違う。魔法が使えない人でも生活で使えるように人工的に作られた魔法だ。洗濯やトイレの水を流す、風呂場の掃除等の掃除や水を使う仕事でよく使われる。他にも改造魔法はあり、部屋を明るくするためのライトという魔法や料理や焚火などで使うファイヤという魔法もある。ファイヤという魔法は改造魔法と別に普通の下位魔法として存在するが、今はいいだろう。

 窓から外を見ると、先ほどまで遊んでいた砂浜が見える。やはり崖にぽっかりと穴が開き、そこだけ入り江ができていた。浜辺にはまだ何人かぽつりぽつりと人がいるが、ほとんどが冒険者であろう。みなやることを終えたのか、海岸から出ようとしていた。それをぼんやり見ていると、海を横断するように動く1匹のモンスターらしきかげと、それを追う人の影が見えた。

「あれは……?」

 目を凝らし、それをよく見ると、モンスターはプレシオスドラゴンという珍しいドラゴンであることに気づいた。そしてそれを追いかける人。ぼくはドラゴン狩りだと思い、急いでドラゴンが向かったであろう洞窟に走った。ドラゴン狩りは冒険者の営みではあるが、ドラゴンサモナーであるぼくはそれを不快に思ったのだ。

 

 ホテルを出て、海岸の前を走り、森の中へ。モンスターが襲ってきてもそれを無視し、急いで洞窟へ向かった。森を抜けると、海が目の前に広がる高い崖に出る。僕はそこから下を見ると、一か所だけ、大きな穴が開いていた。恐らくここに入って行ったのだろう。ぼくはロープを張り、壁を降り、穴の前にぶら下がる。穴は水道になっており、水が奥まで流れ込んでいる。壁の方を見ると、人ひとりがギリギリ通れるほどの足場がある。ぼくは体を揺らし、反動をつけてそこに飛び移る。そして道沿いに洞窟へ入っていった。洞窟にはモンスターはおらず、奥は松明が無いと見えないほど暗い。壁に手を付きながら奥へ入っていくと、奥から戦いの音が聞こえてくる。2匹のドラゴンの鳴き声と、体をぶつけあうような音、そして一人の人間の魔法を唱える声が聞こえて来ていた。

「ドラゴンサモナー?」

 ぼくは聞こえてくる音からそう考えた。しかし変だ。ドラゴンサモナーが使えるドラゴンは1匹。2匹目を使役しようとドラゴンを狩るドラゴンサモナーなどいないはずだ。ドラゴンサモナーならばドラゴンを狩るということも気が引ける。少なくともぼくはそうだ。そういうドラゴンサモナーもいるのだろうか。そう考えながら、奥へ進むと、奥から明かりが漏れてきた。そっと洞窟の最奥であろうその場所を覗くと、月の光が水に反射し、洞窟を明るく照らす空間が見えた。上には光が水に反射し、水が揺れるような光景を映し出している。その空間に、プレシオスドラゴンとブラッククロウがおり、互いに体をぶつけあっていた。しかし、ドラゴンサモナーが指揮するブラッククロウの方が強いらしく、プレシオスドラゴンは傷だらけだった。

「よし!止めだ!ブラッククロウ!」

 ぼくは声のする方を見る。そこには見覚えがある少女がいた。

「あっ!」

 ついつい声を上げてしまう。その声にビクッとし、こちらを振り向く少女。ぼくと目が合うと、あちらもぼくを覚えていたようで、

「あーーっ!」

と声を上げる。

「お、お前はっ!あの時の!」

 指揮官である少女がぼくに意識を向けたのに反応し、ブラッククロウもこちらに意識を向ける。その隙をつき、プレシオスドラゴンは、ブラッククロウに体当たりをし、突き飛ばす。

「ブラッククロウ!くそ!ヒール!」

 少女が回復魔法を唱え、ブラッククロウは回復する。続いてプレシオスドラゴンに攻撃するよう命じる。

「そろそろ止めだブラッククロウ!」

「そうはさせないよ!!」

 ぼくは咄嗟に詠唱し、イフリートを召喚する。ブラッククロウがプレシオスドラゴンに爪攻撃をする前に、その間にイフリートが召喚された。イフリートは、召喚された途端にブラッククロウに掴みかかり、首筋に歯を立てる。

「なにっ!?ドラゴンサモナーだと!?」

 少女は召還されたイフリートを見て、怯んでいた。ぼくはすかさずビルドを唱え、イフリートを強化する。首筋に歯を立てられたブラッククロウは、必死に抵抗するが、イフリートを振りほどくことはできず、自動帰還魔法で戻された。それを見たイフリートは次にプレシオスドラゴンに標的を向ける。ぼくは慌ててイフリートを戻す。

「お前は一体ッ!」

 少女はおびえた様子でこちらに問いかける。

「君はたしか王都で捕まったはずだけど……」

「っ!」

 少女はこちらを睨むと、すぐに走って逃げて行ってしまった。

 

 気配を辿り、俺は洞窟を発見する。イリアヌ洞窟に繋がっているであろうその洞窟の奥から、3匹のドラゴンの気配を感じた。一匹はよく知る奴のドラゴン。もう一匹は先ほど見たプレシオスドラゴン。あと一匹は……ドラゴンクロウか。俺は武器を片手に、慎重に歩いていく。唐突に一匹の気配が薄まり、続いて奴のドラゴンの気配が薄まる。そして奥から一人の少女が走ってきた。しかしここは一人分の狭さしかない。

「っ!?」

 少女は俺を見るなり、怯えた表情を見せる。

「お前か……さっきのドラゴンの気配はっ!」

 俺は武器を構える。少女は後ずさりし、足を滑らせ横転する。これほど殺すのが簡単な相手もいないだろう。俺は武器を振りかぶる。少女は涙目になり、目をつぶる。しかし、俺は武器を振り下ろせずにいた。

(くそっ!なぜだ!相手はドラゴンサモナー!殺すのに躊躇う必要はないだろう!)

 そう思い、武器を振り下ろそうとするが、やはり振り下ろせない。少女は、葛藤する俺を見て、急いで立ち上がり、海の中へ飛び込み、逃げてしまった。

「くそっ!!」

 俺は振りかぶった大剣を振り下ろし、地面に叩きつける。

(何故だ!何故殺せない!あいつもそうだ!まさか俺はまだ、憎しみが足りてないというのか!?)

 俺は不甲斐ない自分に嫌気がさした。俺は、いまだ存在が消えていないドラゴンを殺すという目的を思い出し、洞窟の奥へ進む。

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