「────愛そうか、殺そうか……そ、その前に服はきちんと着ろ!」   作:佐折

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炎の客

この島の植物はとても愉快である。

 

それが、この島を初めて散策した時に抱いた感想だった。如何にも「毒です」と言っているような赤地に白玉模様のキノコに、「キキキッ」と不気味に笑う(正確には葉の擦れる音がそう聞こえるだけ。どんな葉だよ)黄色と黒の縞模様をした花など、私の持つ常識を尽く覆してくれる奇妙なものばかりが自生していた。どれを見ても名前や性質が分からないものばかりなので手を伸ばしていない。というか伸ばしたくない。下手に触って人生……神生終了したくないので。

 

「やはりどの植物も不可解なものばかりだな」

 

顎に手を当て、しばし思考に耽る。ルーン魔術を行使して植物の性質を調べるのもありかと一時期思ったけど、やめた。理由?碌でもない成分が含まれてそうだから。知らぬが仏っていうのもたまには大事なんだよ、うん。それにこの島の生態系を凶暴化した植物の実態なんて知りたくないからね。最初に襲ってきた虎(推測)がいい例である。あんなのを作り上げる植物の性質なんて知りたくない。いっそ、中身は全部プロテインだったと言われた方が嬉しい。たんぱく質は筋肉の元だからね、肉体強化されても仕方ない。何よりオチが平和的である。

 

 

そう現実逃避をしながら、唯一持っている得物の杖でルーン文字を刻む。すぐさま氷の結晶が現れ、敵の眼前スレスレで止まる。野太い悲鳴を上げながら動物……猛獣たちは逃げていった。私が余所者な為か、かなりの頻度で襲おうと目を光らせているのである。

 

「ふむ、出直すが良い。お前達では私に勝てん。しかし、そんなお前達も私は愛そう」

 

女神スカサハ=スカディの性格が少し反映されているせいか、よっぽどのことが無い限り、生物を愛そうとする。植物は例外である。更に言えば、最初に倒してしまった猛獣も例外である。あの時はまだスカサハ=スカディに染まってなかったので構わずやってしまったのだ。完全にスカサハ=スカディが馴染んでいれば、あの猛獣は生きていたかもしれない。大学生の私の人格としてはあれで正解だと思ってるけど。

 

「まぁ愛す云々はさて置き…スカサハ=スカディの記憶がある事で、迷わずルーン魔術が使えるのは良い事ではあるな」

 

流れて来た記憶には、当たり前にルーン魔術を使う姿があった。その時の経験や感覚、知識が残っているのは有難い。でないと宝の持ち腐れもいいところだった。

 

 

 

「___さて、今日のところはここまでにしておこう」

 

結局、収穫らしい収穫もなく(調べるのを拒否した自分のせいでもあるが)城へ戻ろうと私は立ち上がるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだこれは」

 

城に戻っての第一声。私以外に住民はいないので、ただいまを言うつもりは毛頭無かったのだが、この言葉を言うつもりも毛頭無かった。

 

本当に謎である。何故1時間くらいの外出で___

 

 

 

「こんなにも、城の温度が上がるのだ」

 

 

暑い。そう、暑いのである。日本で言う初夏レベルには暑い。真夏で無かっただけまだマシだが。

 

ただ、如何せん暑いのはよろしくない。女神スカサハ=スカディは人肌の温度すら好まない。季節は冬と(命が芽吹くという理由で)春が好きな女神である。初夏とはいえ夏はあまり歓迎したくないのが心情だ。ちなみに、暑さで城が溶けないのは、おなじみルーン魔術で細工をしたからである。もう万能すぎて何も言えない。

 

まぁそれはさておき。

 

「犯人は見つかり次第氷漬けがお望みなのだな。ふふ、腕が鳴るな」

 

こと暑さにおいてスカサハ=スカディは容赦がない。暑さの元凶を見つけようものなら一切の躊躇なく凍らせて、自分の身をひんやりさせようと目論むくらい容赦がない。

 

「2階の一室から気配がするな。隠れる気が無いということはただの興味でここへ来たか」

 

悪気は無かっただろうけど、それとこれとは別。熱源は即刻排除に限る。

 

2階へと繋がる階段を上り、元凶がいるであろう部屋の扉へと立つ。

そして、持っている杖を構え…

 

「────神に平伏せ」

 

ルーン魔術ぶっぱである。

 

 

 

「おわ!?な、なんだこれ!?くそ!火拳!!」

 

…ん?“火拳”?

 

今、何処かで聞き覚えのあるフレーズが鼓膜に響いた気が…え、まさかこの世界って…

 

 

 

『ONEPIECE』

 

だとしたら不味い。火拳を使う人間なんて1人しか居ない。やばい、暑さが嫌すぎて感情任せにルーン魔術使ったよ…。思いっ切り原初のルーン行使したよ…!

 

なりふり構わず扉を開け、中に入る。そこには予想通り、上半身半裸に顔のそばかすが特徴的な火拳のエースが氷漬けになっていた。やはり女神の魔術には能力者の炎でも歯が立たなかったのか。

 

「…と、感心している場合ではないな。急いで魔術を解かなくては」

 

発動している魔術を止め氷を溶かす。凍らされた彼の顔が面白かったのは余談である。

 

「ぷ、はーー!!死ぬかと思ったー!」

 

「すまなかったな。城に来た侵入者だと思い、ついお前を凍らせてしまった」

 

彼の意識がはっきりしていたので、それらしい理由を述べて先に謝罪をする。まぁ全部が嘘ではないし、不法侵入で悪いのはそっちだから許して。

 

「ん?あぁいや、こっちこそ悪かった。勝手に人ん家に入ったらそりゃ怒るよな。すまん」

 

そう言って謝られた。律儀だな。

 

「それはもう気にしてないから良い。ところで、何処かで怪我はしておらぬか?」

 

「あぁ大丈夫。俺、メラメラの実を食べた火人間だからな。これくらいどうってことない」

 

の割には簡単に氷像にされてたがな。とは言わないでおく。

 

「けど、不思議なんだよなぁ…メラメラの実を食べた俺に氷はあんまり効かないはずなんだよ」

 

「そうなのか?」

 

ここは惚けた振りをしておく。勘ぐられるのは良くない。主に精神的に。半裸のイケメンの時点で色々物申したいのに、疑いを向けられたらもたない。

 

「まぁな。あ、そーいえばまだ名前言ってなかったな。俺の名前はエース。ポートガス・D・エースだ!よろしくな!」

 

少し考える素振りを見せていたが、早々に諦めたのか急に自己紹介を始めた。特大の笑顔付きで。あ、これはダメだ。

 

私の中で抑えていたスカサハ=スカディの感情がエースのせいで表に出てしまった。元一般人の私が止められるのも時間の問題だったが。

 

「私はスカサハ=スカディだ。…そ、それで、だな」

 

「ん?どうした?えーと…スカディ?」

 

「ふ、服はきちんと着ろ!は、肌を出し過ぎだ!」

 

赤面まっしぐらである。スカサハ=スカディは全く同じ姿をした別の自分が水着を着ている時、肌を出しすぎではないかと赤面するくらいに露出が多いものに弱い。よって、半裸のエースは目に毒なのである。

 

どうしたものかと、顔を赤らめながらも考える私だった。

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