第16話『強い負け犬達』
グリーンはレッドに勝負を挑まれたが断った。
「俺たちの戦いの場は、もうそこまで来ている。
俺は、そこでお前を待つ」
そう言って。
また、エリカはタマムシシティへと返させた。
あまりジムリーダーがジムを空けては良くないというグリーンの判断だ。
「グリーンさんは、私とポケモンリーグ機構のどちらが大切なんですか」
と拗ねられたが、
「どちらもだ。俺は全てを手に入れる。
その妻になるのなら、それくらいのことは目指せるだろう」
というイケメンボイスで断言した。
乙女ゲーならスチル絵で保存されるキラキラなシーンだった。
全てのバッジが揃っていることを警備員に見せ、彼は
流石にチャンピオンロードにはバッジを集めきった者が集うだけあって、強者が揃っていた。
だが、グリーンに取っての認識は異なる。
「バッジを全て集めておきながら、未だに此処にいるのか?
進むべき道は定まっているだろうに」
そう言う認識である。
これまで各々のベストを尽くしたから此処まで来たのに、ここに来てそこから先へ進むことを止めてしまった、
若しくは進めなくなった者の集団が、グリーンに取ってチャンピオンロードに集まったトレーナー達だった。
能力が違う。意志が違う。覇気が違う。
凡百のトップエリートでは、大企業の役員出世コースで満足してしまう程度のトレーナーでは、
グリーンには彼らが、頂に届くかも知れない素質がありながら、届かせようとも思っていない安定志向の哀れな集団に見えた。
その様な凡百などグリーンの配下にはなれたとしても、『敵』には到底届かない。
その王者の空気に惹かれたのだろうか、あるいは相手が引き寄せたのだろうか?
気が付けばグリーンはファイヤーの前にいた。
ファイヤーは睨み付けるようにグリーンを見ている。
本来野生のファイヤーはレベル50なのでポケモンの技としての『にらみつける』ではない。
それを覚えるにはふしぎなアメが一つくらい足りない。
ファイヤーは流石にサンダーやフリーザーとは格が違った。
とはいえ、この時点でのグリーンのポケモンはレベル50の野生ポケモンなど伝説であっても余裕であった。
何時もの捕獲要員ゲンガーがさいみんじゅつであっさりと眠らせて、ナイトヘッドで体力を削ってハイパーボールでゲットした。
そんなチャンピオンロードの旅路を越えて、遂にポケモンリーグの到達点、その始まりまでやってきた。
感慨深さは無い。それはチャンピオンになってから感じるもので、此処はただの通過点に過ぎない。
グリーンはそういう男だった。
道具は十分。ポケモンは万全。トレーナーは完璧。
グリーンは臆すること無く、ポケモンリーグ最後の難関、四天王の最初の扉を開けた。
「待っていたわグリーン。じゃあ早速――――」
「俺も会いたかった。では早速――――」
姉と弟は、互いにモンスターボールを構える。
その瞳には、同じ色の冷たい闘志が宿っていた。
言葉など不要。育ててきたポケモンとの戦いを見れば全てが理解できる。
何故なら、二人は同じ血を引く姉弟だから。
「――――――始めましょう」「――――――始めようか」
戦いが、幕を上げた。