パーフェクトヒューマン(緑)   作:蕎麦饂飩

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環境が変わろうと、新たな環境でのベストを尽くせ

第17話『環境が変わろうと、新たな環境でのベストを尽くせ』

 

 カンナの最初のポケモンはパルシェンだった。

 キュウコンを繰り出したグリーンにカンナは少々呆れたように言った。

 

「パルシェンは氷タイプだけで無く、水タイプも備えているわ。

知らない貴方では無いでしょう?」

 

「嘘は良くない。姉さんはそのパルシェンには水タイプの技は持たせていない――――だろう?」

 

 不敵に微笑む二人。その二人の出した回答は奇しくも同じだった。

 

「「どくどく」」

 

 それはグリーンの十八番と同じ戦法。

 どくどくからの拘束技。

 見た目とは裏腹に、パルシェンのすばやさは決して遅くない。

 

「パルシェン からではさむ」

「キュウコン ほのおのうず」

 

 指示はカンナがパルシェンに伝える方が早かったが、キュウコンのすばやさ種族値は100。

 パルシェンの70よりも30も早い。

 

 キュウコンのほのおのうずがパルシェンを捕らえた。

 グリーンが敢えて指示をカンナより遅らせたのは、パルシェンを引き込むため。

 殻で挟む攻撃故に接近が必要(特殊技扱いだが)。そして挟まれればナパーム弾でも破壊できない殻からは脱出は出来ないが、

グリーンは己のキュウコンならそれが出来ると信じていた。

 

 ほのおのうずに閉じ込められるパルシェン。更にもうどくが身体を蝕む。

 しかし、毒に侵されるはキュウコンも同じ。

 

 パルシェンを閉じ込めて毒殺(ひんし)した後、キュウコンは生き延びていたが、その体力は風前の灯火だった。

 

「戻りなさい、パルシェン。

いけ ジュゴン」

 

 二番手はジュゴン。

 流石にジュゴンであれば水タイプの攻撃もあるだろう。

 

 グリーンは此処でキュウコンを使い潰すことにした。

 選択したのは『どくどく』。

 

 ジュゴンのバブルこうせんでキュウコンは倒れた。

 

 場に残るはもうどくを負ったジュゴン。

 キュウコンの代わりに出されたのはゲンガーだった。

 

 

「やるわね。随分と嫌らしい戦い方ね」

 

 カンナはジュゴンに『ねむる』を使わせるつもりでいた。

 キュウコンの次のポケモンと一応酬した後、毒の解除と共に体力を回復するために。

 

 しかし、ゲンガーであれば『ゆめくい』がある可能性が高い。

 迂闊に眠ることはダメージを受ける上に、回復したゲンガーを場に残すことになる。

 

 それはカンナの望むところでは無かった。

 そして性質が悪いことに、(グリーン)もカンナがねむるを使わせないことを理解しているようだった。

 

「ジュゴン ふぶき」

「ゲンガー ナイトヘッド」

 

 

 故に直接応酬。

 凍らせれば儲けものとカンナはふぶきを放たせたが、結果は状態異常を生みはしなかった。

 

 そして次の応酬でこそ凍らせてしまおう。

 そう思って、カンナはふぶきを命じたが―――――――

 

 

「ゲンガー だいばくはつ」

 

 その前に、ゲンガーのだいばくはつでジュゴンは倒れた。

 場合によっては、(グリーン)が手で弄ぶげんきのかたまりで再度爆発要員として出てくるのだろう。

 それともブラフか?

 

 カンナは想定しながらもヤドランを繰り出した。

 ぼうぎょが高く、ドわすれでとくしゅを上げられる長期戦の鬼だ。

 

 ならば短期決戦で決めるのが筋だと、グリーンはケンタロスを繰り出した。

 サンダースでも良かったが、ヤドランはすばやさが低い。

 つまり大抵のポケモンで先手が取れる。

 故に、すばやさが極端に高い代わりに打たれ弱いサンダースより、ケンタロスが良いと考えたのだ。

 

 グリーンの予想通り、最初にドわすれをしてきたヤドランに対して、ケンタロスは10まんボルトを先手で使用した。

 しかし、とくしゅが2段階もドわすれで上昇したヤドランに、次のとくしゅ技である10まんボルトは通用しない。

 だが、それがどうした。

 ケンタロスにはそれを貫く必殺技がある。

 

「ケンタロス はかいこうせん」

 

 ぼうぎょが高ければ、その高いぼうぎょごと撃ち抜けば良い。そしてケンタロスにはそれが出来た。

 

 きゅうしょに あたった

 ヤドランは たおれた

 

 寧ろ、オーバーキルといって良い。

 この勝負はグリーンの勝ちだった。

 

 

 続くルージュラも、

 

「ケンタロス はかいこうせん」

 

 その後のプクリンも、

 

「ケンタロス はかいこうせん」

 

 

 粉砕! 玉砕! 大喝采!

 ケンタロスのはかいこうせん最強論である。

 

 

 そして最後のカンナのポケモン。

 そのポケモンは解っている。

 これは戦いにおいてはベストでは無い選択だ。

 今から取る行動がベストでは無いことを理解しながらも、自分がこれまで進んできたベストを確かめる意味においては、ベストである選択肢をグリーンは選んだ。

 

 

 

「「いけ ラプラス」」

 

 オスとメスの違いはあれど、互いにV6で同レベル。恐らくは――――いや考えるまでも無く努力値もMAX。

 ポケモンの性能は互角。勝てるかどうかはトレーナー次第。

 

「「10まんボルト」」

 

 

 

 ――――その時不思議なことが起きた。

 …絶対にあり得ない、世界が許すはずの無い現象が起きた。

 先行も後攻も無く、同時にその攻撃が互いを傷つけた。

 

 世界の法則を支配する神が、今だけはその目を背けているかのような空間になっていた。

 どこかシステマティックな戦いは、今この瞬間だけ、世界から放棄され、リアルタイムでの数値に寄らない全力が求められる戦いが生まれた。

 

 世界が切り離された感覚を、グリーンとカンナとラプラス達だけが理解できていた。

 

 なみのりで互いに生み出した水が場の水位を上げ、互いに放電しながらぶつかり合う。

 敢えて無粋な言い方をすれば、『なみのり』『のしかかり』『10まんボルト』を常に行い続けている状態。

 

 

 そんなことは通常あり得るはずが無い。ポケモン時空の法則が乱れていた。

 もし神がいるとすれば、きっと見たかったのだろう。

 己が定めた世界の制限を解き放ったベストの戦いを。

 

 それは死闘だった。それは私闘だった。

 それは――――――――姉弟喧嘩であった。

 

 激しい戦いの末、勝ったのはグリーンのラプラスだった。

 先にカンナのラプラスの放電が切れたのだ。

 若くして常に挑戦者を万全で待つ立場になったカンナ、

 そして旅を続け、ベストを探し続けたグリーン。

 

 二人の違いは『ポイントアップ』だった。

 極めて現実的な理由だった。

 世界はポケモンバトルの制限を解放したが、ポケモンの能力自体を無尽蔵にしたわけでは無い。

 

 ベストに備えてベストを尽くした者が勝つ。

 それは世界の法則が変わった先程も、戻った今も同じだった。

 

 

「じゃあ、行ってくる」

「ええ、行ってらっしゃい」

 

 そして少年は次のベストへと進む。

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