パーフェクトヒューマン(緑)   作:蕎麦饂飩

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後日談です


パーフェクトヒューマン

バンギラス よろいポケモン

あたりの ちけいを かえるぐらい あさめしまえの ちからもち。まわりを きにしない ふてぶてしい せいかく。

 

 

 生きた自然活動とも呼ばれ、その暴力的な力により地形や環境を変えてしまう凶悪なポケモン――バンギラス。

 嘗ては只の災害ポケモンと呼ばれるだけであったが、近年では土砂崩しにより地中の栄養などを循環させる役割などが再評価されている。

 とはいえ、非常に強力な力を兼ね備えたポケモンだ。

 通常は弱者は相手にしない気位の高さを持つと言われているが、常にそうあるわけではない。

 気が立っているときなどは、気位を破壊衝動が超えることもある。

 

 とあるトレーナー(・・・・・・・・)と戦い、圧倒的な敗北を叩き付けられたゴールド少年の手持ちは残り一匹。

 それも瀕死の手前だった。

 恐らくこのシロガネヤマ(・・・・・・)の主であろうバンギラスが出てきたのは想定外であった。

 幾らシロガネヤマとは言え、バンギラスが野生で出てくるなんて想定外にも程があった。

 あなぬけのひもを丁度使おうと思っていたところでの遭遇だった。

 

 バンギラスの咆哮が響き渡る。戦いの合図であった。

 少年の持つ回復アイテムはげんきのかけらとおいしいみずが一つずつだけ。

 それ以外は先程のポケモンバトルで全て使い果たした。

 相手は全く道具は使っていない。その上での惨敗だった。

 ゴールドはすぐに逃げることを前提に、唯一体力の残ったポケモンを繰り出そうとした。

 その時だった――――――――――

 

「キュウコン アイアンテールだ」

 

 

 澄み切った鋼のような声。

 声と共に、鞭のしなやかさと剣の鋭さを兼ね備えた九連撃の鉄の尾による強烈極まりない打撃がバンギラスに襲いかかった。

 同一の箇所に、九発の連撃が叩き込まれる。その音はほぼ一度にしか聞こえなかった。

 圧倒的な練度(レベル)がそこにはあった。

 まるで、先程ゴールドを叩きのめした(・・・・・・・・・・・・・)トレーナーの手持ち(・・・・・・・・・)のように…。

 

 

 色違いにして6V。通常ではあり得ないキュウコンを使うトレーナー。

 ゴールドとて知らぬはずがない。

 

「あんたは…」

 

 

 それは、――――再生ロケット団を共に倒した仲間(クリスタル)の兄

 それは、――――カントーの覇者

 それは、――――ジョウトの蹂躙者

 それは、――――財界の皇帝

 それは、――――ポケモンリーグチャンピオン

 

 それは、――――――――グリーン・マサラ。生ける最強の証明。

 

 

「よくやった キュウコン もどれ

……所詮は野生ポケモン。他愛もない。

この程度の相手しかいなくてはアイツ(・・・)の修行も退屈だっただろうな」

 

 グリーンはキュウコンを手持ちに戻した。

 ポケモンの交代ではない。既に勝負が終わっていた。

 

 

 ゴールドの方を向くことなく、グリーンはただ前を向いたまま聞いた。

「いるのか、この先に」

 

 それは質問ではなく、確信だった。

 

「ああ、でも恐ろしく強い」

 

 誰がいるかとはお互いに口にはしない。

 言う必要さえなかった。

 

「……誰よりも知っている。そして、そうで無くてはこまる」

 

 ゴールドはその伝説の戦いを見たかった。

 世界で一番忙しい男が、わざわざ人知れず人気のない山に来た。その理由は一つしかなかった。

 しかし、グリーンが去った後、ヨーギラス達が倒れたバンギラスに近寄ってきて来た。

 誇り高いバンギラスが弱り切ったゴールドのポケモンにさえ襲いかかってきた理由が理解できた。

 ゴールドは持っていたげんきのかけらとおいしいみずをバンギラスに与えると、目を覚ますまでバンギラスの様子を見ることにした。

 その優しさこそが、彼がここまで上り詰められた理由でもあったからだ。

 だとしても、

 

「…最強は、高く、遠いな」

 

 グリーンと、彼が会いに来た相手はその更に先を行っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 グリーンはシロガネヤマの最奥に入った。

 その場所では野生ポケモンはいない。その場所の主である赤い少年に恐れを成して全て去ってしまったのであろう。

 

「久しいなレッド」

 

「ああ、待っていた。グリーン」

 

 数年会っていなかったというのに、挨拶はそれだけだった。

 二人にとってはそれだけで十分だったのだ。

 

 それからお互いのことには触れることなく、多くのことを語り合った。

 レッドが此処にいることは、ナツメから聞いたこと。そしてそのナツメは着いてこなかったこと。

 二人の間には入れない。でも決着が付いたらレッドには帰ってきて欲しいと伝えてくれと言われたこと。

 グリーンの妹(クリスタル・マサラ)がロケット団の残党に襲われたこと。

 死者はいなかったが、クリスタルを庇ったエリカが軽傷を負い、彼女にとってロケット団の残党はトラウマと憎悪を持ったこと。

 そしてその経験から彼女は将来、シルフグループの子会社である警備会社、PF(パーフェクトハーモニー)への就職を決めたこと。

 あのサカキの子供シルバーと、クリスタル、そしてゴールド少年が再生ロケット団を倒し、今では前向きな意味でPFへの就職を考えていること。

 ゴールド少年とは先程会ったが、敗北の後でさえ目は死んでいなかったこと。

 (パール)が生まれたこと。息子(ブラック)が生まれること。

 ワタルとカンナの子供も生まれてプラチナと名付けたと言うこと。

 ナツメも妊娠していること。

 彼女が自分の子供がグリーンとエリカの子供とライバルになると語っていたこと。

 それは超能力者としてでなく、母親としての勘であるということ。

 ナツメは博士号も取得し、研究者としても活躍していること。

 既に外堀は完全に埋められており、早く帰らないとレッドは目の前が真っ暗になるどころではないこと。

 

 …様々なことを語り合った。

 だが、互いの気持ちについてはお互いに何一つ語り合うことは無かった。

 言葉で語り合う必要はなかった。

 その会話については、言葉など必要がなかった。

 

 赤の青年と、緑の青年は互いに赤と白で彩られたボールを手にする。

 互いのポケモンはお互いに理解している。

 だが、あの戦い(・・・・)からどれだけ成長したかはわからない。

 しかし、持っているポケモンは言うまでもなくレベル100である事は互いが確信していた。

 互いに全力で成長し続けてきた。ベストを、尽くし続けてきた。パーフェクトを目指し続けてきた。

 

 かんぺきな ポケモンを そだてた!

 ライバルを たおせるような コンビネーションを さがした!

 ……そして いま!

 レッドと グリーンは すべての ポケモントレーナーの ちょうてんにいる

 このいみが わかるだろうか?

 …… …… ……

 ……それは このたたかいでかったほうが!

 

 せかいで いちばん!

 つよいという こと なのだ!

 

 

 あの日、決着は確かに付いた。

 しかし、新たな決着がどうしてないと言えるのか。

 生きとし生ける者達は常に前へと進み続ける。

 勝利を掴む為、成功を掴む為、ただただ前へと進み続ける。

 

 無駄に立ち止まることも、無為に振り返ることもなく、ただ未来を求め続ける。

 それこそが、パーフェクトへ至る為、ベストを尽くすと言うことなのだから――――――

 

 

「いけ ピカチュウ――――」

「いけ サンダース――――」

 

 

「「君に 決めたっ!!」」

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