第3話『成功する人間が成功者』
怪しげな500円でポケモンを売る中高年を無視してグリーンはおつきみやまへと進んだ。
グリーンはおつきみやまに入る前に十全な準備をした。
十全な準備を面倒くさがる者ほど、いざという時に咄嗟の行動を行えない者が多い。
準備にベストを尽くさない人間が、本番でベストを目指せるはずが無い。
おつきみやま内部はロッククライミング技能と鍛えた肉体を持つグリーンには何てことの無い洞窟だった。
イシツブテやズバットなどが多かったが、ラプラスで対処できない相手ではなかった。
ただ、ズバットからの感染症が恐いからか、ズバットに対しては念入りにラプラスに攻撃を命じていた。
洞窟の中には怪しい連中が多かった。
黒ずくめの連中もその例の一つだった。
「ロケット団に入らないか?」
ロケット団。その名前にグリーンは聞き覚えがあった。
国家指定暴力組織で色んな会社や資産家に接触しては脅迫による資産乗っ取りを行っているという話だった。
シルフの社長は警戒をしているものの、ロケット団の現在の最大目標がシルフカンパニーである可能性が高いと聞いていた。
そしてそれ以上には、大都市ほど闇が潜むもので、娘のいるタマムシが、――――正直に言えばタマムシにいる娘が心配だと言っていた。
暴力で資産などを奪う側に走るメリットがあるから、悪が生まれる土壌が生まれる。
悪が割に合わない世の中になれば、市場原理に基づいて悪は減少していく。
人を殺したら10億円が50%でタダで手に入るが、50%で捕まってお金は得られずに無期懲役。
この条件ならチャレンジする『悪』はかなり出てくる。
だが、人を殺したら10億円がタダで手に入るが、99%の確率で失敗する上に捕まったら死刑。
この条件なら先程の条件より『悪』にチャレンジする者は少なくなる。
法の厳罰化と、警察機構の強化。そして
グリーンは将来的にそれらが必要だと感じていた。
濁しながら断るのも良かった。
だが、グリーンにはその必要を感じなかった。
どうせこの程度の下っ端など大した権力を持っていない。
ならば叩きのめしたところで問題ない。
この程度で己の覇道を止められるのならば、所詮そこまでの道だった――――グリーンはそう結論づけた。
結果は縦抜き。
ロケット団のポケモンは全て出したと同時にラプラスの攻撃の餌食となった。
ロケット団との勝負に勝った。ロケット団は賞金を出し渋ったがラプラスの威圧力で大人しく賞金を払って消え失せた。
消える途中、ロケット団は縦穴か崖に落ちたように見えたがきっと気のせいだろう。
グリーンはそんな危険がある方向をしっかり確認した上で、その真逆の方向からロケット団を威圧したのだから。
その後、怪しげな研究者風の男に出会った。
その前にグリーンが先に見付けた2つのポケモンの化石を寄越せとその男は言って来た。
グリーンはポケモンの化石をやっても良かったが、それはその研究者風の男が優秀ならの話。
どう見ても研究所で成功した人間とは見えないし、タマムシ大学にも目の前の男のような知り合いはいない。
フィールドワークの権威のようでも無い。ならばタダのコレクターか化石オタクだろう。
努力を怠り栄光を手にできなかった者の手に収まると言うことは、その底辺の者が手に入れられる程度のものでしか無くなると言うこと。
化石がその様な無価値な者の手によって無価値になる事が可哀想だと思ったグリーンは、ポケモンバトルでその男を叩き潰して化石を2つとも確保した。
努力してきた者=(有能)には共に前に進むための褒美を、努力してこなかった者=無能には軽蔑を。
それがベストを尽くす男、グリーンである。
成功した人間を成功者と呼ぶのでは無い。
成功する人間が成功者なのである。
成功する前から成功する人間は決まっていて、それはベストが尽くせる人間だ。
そしてグリーンはその中心に当てはまる。
そんな彼の栄光へと降り注ぐように、洞窟から出た彼を太陽の光が祝福した。
余談だが、彼は洞窟を抜ける前に、ピッピを何匹か捕まえた。
そして逃げるピッピを追いかけている内に小さな月の石を幾つも見付けた。
グリーンは回収できない地中に眠っている月の石がある可能性をシルフカンパニーの社長に報告し、共同名義でその後月の石を発掘することに成功した。
また、古代の海に住んでいたポケモンの化石がこの山で見つかったことから、ここは古代の海であり、巨大な水の石採掘所になり得る可能性と、おつきみ山に眠るであろう水の石と、清涼な水が潤沢にあるハナダシティの関連性に着目し、水の石を利用した浄化槽によるミネラルウォーターの販売をも提案した。
タダである水道水から、お金を払ってでも水を買う時代に富裕層を皮切りに流れていく事をも予測したのだ。
シルフカンパニーの株価がまた上がった。