パーフェクトヒューマン(緑)   作:蕎麦饂飩

5 / 27
番外編・道を歩んで3流、道を切り開いて2流、道を見付けて1流

番外編『道を歩んで3流、道を切り開いて2流、道を見付けて1流』

 

 エリカは世間で言うところの箱入り娘だ。

 社長令嬢として過保護に育てられてきた自覚もある。

 自分が世間一般の人々よりも裕福な生活を送らせて貰っている事も理解している。

 

 だが今の時代、親が気に入ったというだけで会ったことも無い男性と結婚するというのはいかがなものだろうか?

 エリカは流石にそれは時代錯誤だと思っていた。

 

 久し振りに父親が帰ってきたら、

 

「見所のある男の子がいてね、いや、彼は凄い。

うん、そう言えばエリカとは同い年だったな。彼は凄いよ。息子に欲しいくらいだ。

是非シルフカンパニーを継がせたい。いや、寧ろ継いでで欲しい。

きっと世界企業にしてくれるだろう。

…ああ、そうだった。その子はエリカの婚約者候補だから宜しく。

婚約者は流石に彼の方に断られちゃったみたいでね」

 

 などと言い出した。

 父親の戯れ言をこれ以上聞きたくは無かったので、父親も入れない男性禁制のタマムシジムに逃げ込んだ。

 一応、女性用の批難フィルターとしての側面もタマムシジムにはあるので特に問題ない。

 というか、そう定めたのは周囲の意見を受けて決断したエリカだ。

 

 それに、当初は婚約者として扱おうとしたのをその少年の方から断ったというのも、少し…いやかなり女としてのプライドが傷ついた。

 会社の存続と成長のための道具扱いされた上に、それさえも相手に返品される。

 こんな屈辱があろうか。いや、無い。

 エリカはその少年を見付けた暁にはポケモンバトルでボッコボコにしてやろうと決めた。

 

 

 

 エリカはジムリーダーである。タマムシジムを担当している。

 過保護な父親に封じ込められ続けている内に、封じ込められた場所の中でも出来る何かを探し続けた結果、

タマムシジムに封じ込められた(・・・・・・・)ままでもやれるジムリーダーになろうと決意して、そしてやり遂げた。

 

 前任者のやり方や、ジム内に残る雰囲気を一掃して、新たなエリカのためのジムを作るにはポケモンバトルだけで無く政争の能力も必要だった。

 だが、エリカには問題なかった。

 エリカには有り余る富が有り、美貌がある。

 そして女性は自分が強者に回れる側に着くものだ。

 ジム内にいた女性を取り巻きにして、以前の空気を払拭して元からエリカのためだけのジムのような雰囲気にするのに時間はかからなかった。

 そして増長した取り巻き達が以前の男女共同で無く、女性による女性のための女性のジムが良い。

 自分達は選ばれた側だと主張する声に押されてポケモンリーグ本部に対して、近年の女性の性被害状況を鑑みて女性が安心できるジム作り

――などというそれらしい建前と、ポケモンリーグ協会への寄付金を送ることでこれを通した。

 

 エリカはのんびりはしているが、やるべき事にはそれなり以上には鋭い本性も兼ね備えている。

 

 

 また、タマムシジムは、現在は女性専用のジムというよりは、お嬢様(・・・)専用のジムとなってきている。

 元からお嬢様であるエリカにはたいしたことの無い『おこづかい』で何とかなるが、

ジムにいる上流階級で無い子達は周囲の女性のようにお嬢様らしいハイソな習慣やお付き合いについて行くためにかなりの無理が必要で、

裏で必死にアルバイトをして、疲労に耐えながら憧れのお嬢様を必死で演じているジムトレーナーや、

 他のジムトレーナーに借金をしてお嬢様生活を無理矢理続けている者もいるようだ。

 

 

 エリカは問題をはっきりと把握してはいないが、具体的な問題が発生する前には対処すべき案件だとは理解している。

 だが、お嬢様ごっこ(・・・・・・)な生活に溺れた者達が、今の上流階級の特別な私たち(・・・・・・・・・・・)を捨てられるとも思えない。

 今まで特別扱いされたことが無かったのに、いきなり自分を特別扱いされて、特別だと認識した者がその特権を捨てられるわけが無い。

 他者へのアドバンテージを捨てることを特に女性は嫌う者であることをエリカは知っている。

 それが、急に得られた不自然な者であるのなら尚更である。

 

 妊婦になったり嫡子を生んで義実家からチヤホヤされた快感が忘れられない為に、子供を産む前より図々しくなる女性。

 息子に嫁が出来て姑という有利な立場が出来て、立場が弱い嫁に付け上がる女性。

 

 生まれ持ってチヤホヤされたことが無い者が折角初めて評価されるようになった『有るべき自分』を捨てられるわけが無い。

 

 取るべき道は二つだとエリカは考えていた。

 お嬢様らしいお金がかかる生活に着いてこれるジムトレーナーだけを残し、似非お嬢様を排斥するか、

 お嬢様ジムから女性専用ジムに戻すか。

 

 

 しかし、女性専用ジムであればポケモンリーグ公認ジムとしての言い訳も立つが、お嬢様専用ジムでは流石に言い訳が通らない。

 上流階級だけのポケモンジムに公共性は認められないという通達が来るのに想像は難くなかった。

 

 実質取るべき道は一つ。

 エリカは寝ぼけ眼で進むべき道を進むことにした。

 

 超お嬢様であるエリカの圧倒的お嬢様力で、プチお嬢様達など無理をしている庶民と変わらないと解らせる。

 時間がかかるかも知れないが、これ以外に道は無い。

 ならばこれこそがエリカにとってのベストだった。

 

 進むべき道が示されているのなら、その道で進むしか無い。

 進む道が解っているのにそれを面倒くさがるような愚鈍ほど、エリカは無能では無い。

 そんな無能にはそもそもポケモンリーグ協会も金を積まれてもジムリーダーに任命はしないのだから。

 

 

 

 ジム内は男性禁制と言えど、男の会話が殆ど無いわけでは無い。

 寧ろ、女しかいないのだから男のことばかり話している。

 誰がイケメンだとか、誰がお金持ちだとかそう言う話ばかりだ。

 

 エリカには特に興味の無い話であったが、実はエリカもタマムシに本拠がある編集社の雑誌を読んでいたところ、

『イチオシ☆イケメントレーナー』のコーナーで載っていたマサラタウンの少年の写真をこっそり切り抜いて持っている。

 最近ジム内でその『グリーン』という少年の話が良く出ている。

 

 エリカは婚約者(候補)を親に決められたりしない人達は自由に男の話が出来て良いわねと思いながらも、

せめて自身の婚約者(候補)も写真の少年に爽やかだったら良いなと考えながら、プチお嬢様達に身の程を弁えさせる手法について考え

――――ながらいつの間にか眠っていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。