パーフェクトヒューマン(緑)   作:蕎麦饂飩

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ハイパーメディアクリエイト

第5話『ハイパーメディアクリエイト』

 

 ハナダシティを去る最後にグリーンが見た光景は、民家をロケット団に荒らされた住民が嘆く様子だった。

 大都会とまではいかないものの、それなりには繁栄しているハナダシティ。

 だが、都会の中では治安が良いと言われていたこの町でも、ロケット団が暗躍どころか堂々と活動している。

 

 これは政・財・学・警・軍の垣根を越えて当たらなければならない問題では無いか?

 グリーンはそう結論づけた。

 故に、数週間前に政治家として出馬して貰った母親へと手紙を送った。

 シルフカンパニーが援助・擁立してシルフカンパニーに便宜を図って貰っている傀儡政治家達と協力してこの問題に当たって欲しいと。

 

 ヤマブキシティ大都市と隣接する各都市は警備道を通じて繋がっている。

 厳密には殆ど工事が終わって、後は様々な書類上の許可が降りるのを待つだけの状態である。

 ハナダシティもその隣接する都市の一つだ。

 

 通常は未だ一般開放されていないため、警備員が通路を塞いでいるが、グリーンは工事会社の共同依頼主(の息子)である。

 勿論顔パスで通れるし、顔パスで通らせないと警備員の今後の職が危うくなる。

 

 グリーンは警備道を通りながら、ハナダとクチバを結ぶ地下通路程では無いが、この通路も照明が少なくて暗いと認識した。

 勿論、使うのは電力の少ないLED照明だ。また、孰れはWifiの様なものも設置できるように要求した。

 地下通路は以前は通行料を取っていたが、グリーンが管理会社の株を空売り(持っていない株を形式上売り、後で買い直す。株価が落ちていると儲けになる)をした後、

都市直結計画に基づく直接ヤマブキを経由する通路をシルフカンパニーを通じて無料で通行させられるようにする旨を発表させたので、

地下通路管理会社の株価は急下落。そしてダメ押しのように快適な直結通路にするべく施策を行った結果、遂には地下通路管理会社は倒産寸前。

 株券は紙切れ同然になった。

 そこをグリーンは全力で買い叩いて、自分のものにした。

 因みに、地下通路管理会社は数年前に脅迫でロケット団のフロント企業になっており、図らずもグリーンはロケット団の財源を潰していた。

 

 目的は地下通路の広大なスペースと、地下通路を自動車も通れるようにして大都市の混雑を避けたバイパス道路にすること。

 交通の利便・高速化。通信手段の広域・高速化。

 何時でも何処でも連絡や発送が出来るというのはビジネスに高速化の変革を促す。

 因みにWifiや物流効率化システムの発想は既にグリーンが特許取得済みである。

 尚、タイムラグの無い高速に進む社会が生み出す過密なビジネスについてこれない過労やブラックなどと言い出す惰弱が生まれるであろうことは、

グリーンには全く興味が無い。それはただの努力不足である。

 

 ヤマブキシルフカンパニーに最初に顔を出したグリーンは社長と今後の方針や、新ビジネスについて話し合った。

 今までのゆっくりと手動で行われていた『待つのが大事な社会』から『発信するのが大事な社会』への変革。

 その為に必要な事項、必要な能力、必要な根回し。

 グリーンは着いてこられない者には極めて厳しい、着いてこれる者だけが熱狂する社会について熱く社長と語り合った。

 

 シルフの社長はその圧倒的な独創力とカリスマ性に信服して、信者の一人となった。

 まるでアッ○ル信者がジョ○ズを目の前にしたかのような敬服振りであった。

 

 グリーンは前世より遙かに緩やかで牧歌的なこの世界を、前世以上に目まぐるしく変化が変化を生んでビジネスが荒波のように流動する社会へと変えたかった。

 だから前世の知識は遺憾なく提供したし、独自の発想や、この世界で前世の技術を再現するための手段なども幾つか構想した。

 wikiに頼ること無くそれ以上の知識と理解力、応用力を持つグリーンだからこそ出来たことだ。

 

 そしてグリーンは周囲の人間にもその程度のことは自然と基準レベルで要求しており、着いてこられない者にはやる気が無いと断じた。

 この会談の翌年、人員の効果的な職場への流動のための無理由解雇自由化法案が発表された。

 シルフカンパニーがグリーンが引き起こす時代のビッグウェーブに着いてこれる者だけが未来に生きるべきと財界の圧力で政府を動かした結果である。

 

 天才(グリーン)一人が巻き起こす世界の荒波の中で生き残れるノアの箱舟の選抜者が決まる時代が、今は小さな足音を響かせていた。

 

 

 最近は落ち目のヤマブキのポケモンリーグ非公認(二年前まで公認)である格闘ジムをフーディンであっさり倒したグリーンは、看板と共に経営権を奪うと、

女人禁制の暑苦しいジムから、ポケモンだけで無く人間も肉体を科学的に鍛え上げ、根性では無く栄養学とボディメイクサロンの観点から体質改善を行うジムへと変えさせた。

 要はRIZ○PやGOLD○IMの様なモノである。

 

 お金と女性参加希望者が急に増えたことで、看板を失った元ジムリーダーの格闘王は失った看板以上の利益を得たと喜んだ。

 その魂と利権は既にグリーンの手中に置かれていることも気が付かずに。

 

 

 序でグリーンは超能力美少女ともてはやされ、嘗ては子役としてテレビドラマにも出ていたヤマブキシティのポケモンリーグ公認ジムリーダーナツメに会いに行った。

 勿論、理由は全力のナツメと戦うためである。負ける可能性は大いにあるが、最初から負けて当然と言うつもりは無い。

 どんなときでもベストを尽くさなければいけない。そうで無ければ人間じゃ無い。

 負けても良いなんて死んでも言うな。それがグリーンである。

 

 結果としてグリーンは負けたが、ナツメにはグリーンが超能力美少女である己以上に特別な存在に映った。

 何せ思考をテレパシーで読み取ろうとしても、読めない。

 いや、厳密には思考を読み取ることは出来る。しかしグリーンの思考は余りにも高速で複雑すぎるためにナツメの思考領域の中に収まらない。

 そして余りにも荒唐無稽なのに具体的な未来予想図に、ナツメは思わずその先をもっと覗きたいとバトル中でさえ思ってしまった。

 何度足下がお留守状況になりかけたことか解らないが、子役時代に身につけたポーカーフェイスで上手く誤魔化した。

 深淵を覗く者は深淵に覗き込まれて取り組まれる良い例だった。

 

 意識が高い人こそ、それ以上に意識が高い人に根拠の無い尊敬を抱くものだ。

 つまり、理想に騙されやすい人種である。

 発信された情報に最初に飛びつく受信者(アダプター)は発信者を越えられない。

 つまり、ハイパーメディアクリエイトを行うグリーンに取って都合の良い存在に過ぎない。

 だが、救いはグリーンは自分の切り開いた道に着いてこられる信者を仲間と呼び、そして実際にそう認識している点だろう。

 

 ヤマブキシティには定期的に寄ることをナツメに告げたグリーンは信者(仲間)を増やすためにクチバシティ(次の町)へと向かった。

 全てはベストを目指すために。

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