パーフェクトヒューマン(緑)   作:蕎麦饂飩

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全てはより大きな競争のために

第6話『全てはより大きな競争のために』

 

 クチバシティにはグリーンの狙う幾つかのものがある。

 一つはポケモン大好きクラブ。ポケモンリーグ非公認の組織でありながら、その規模はポケモンリーグの半分ほどもあるという。

 そして、その会長が財政界で知るものはいない大富豪だった。

 

 シルフカンパニーの代行として、そして投資家の一人として、時として鎬を削り合ってきた相手ではあるが、グリーンは敬意を持っていた。

 それは、ポケモンをただ大好きであるというだけの緩いコミュニティを、確固たる規模にまで押し上げた世界の改変力。

 これは世界を革命する力に他ならない。

 革命を待つ民衆に甘んじること無く、革命を引き起こす指導者になるグリーンに取って会わなければならない相手だった。

 

 会長はこれまでのグリーンを理解できない俗物や、グリーンに心酔する部下達とは違った。

 グリーンを前にして、そのカリスマに畏怖しない精神力を持っていた。

 

 倒すか、取り組むか、共存するか。道は3つだ。グリーンには己が下に着くつもりは無い。

 彼が行くのは英雄が進む、征くべき覇道。

 このポケモン世界で黄金の精神を燃やし尽くして例え短命で燃え尽きようと、最後まで誰よりも眩しく輝くことを定められた英雄。

 それが(グリーン)である。

 

 旧世代の資産家である共和主義的な会長を認めながらも、グリーンは負けるつもりは無かった。

 通信の広域化・安価化・高速化・安全化・一般化が行われることを見越して、グリーンがシルフカンパニーの事業として起こした通信販売。

 あらゆるモノが宅配で届く社会に、全国に百貨店やスーパーマーケットを置くこの会長にいつか勝つとグリーンは以前から決意していた。

 

 信者以外と行われたこの会談は、互いに敬意と警戒心を引き上げさせながら、一定以上の成果を出して終わった。

 

 また、会長の家には会長の親戚だというカリンという女性が遊びに来ていた。

 「つよい ポケモン よわい ポケモン そんなの ひとの かって

ほんとうに つよい トレーナーなら すきな ポケモンで かてるように がんばるべき」

 

 彼女はグリーンにそう言ったが、グリーンの中ではメンバーの選抜も含めてベストを尽くすべきだと思っていた。

 だが、彼女の言うことも彼女なりのベストを尽くす結果であり、それはポケモンのタイプを縛って挑戦者を受けるジムリーダーとも重複していた。

 グリーンはカリンが甘いだけの惰弱で無く、強い理想家であることを見抜き、

 

「君とはいつか共にありたいものだな」

 

 とプロポーズ紛いのことを言った。

 これはあくまで未来の変革者の一員としてという意味であったが、それはキチンとカリンにも伝わっていた。

 勿論これは、カリンの

 

(落ち着きなさいカリン。イケメンにそれっぽい言葉を言われてからって浮かれちゃ駄目。

どうせ実はビジネス的な意味合いや社交辞令的な意味でしたってオチよ。

何度騙されたのか、勝手に勘違いしたのか自分でも解ってるでしょ)

 

 という謎の自己評価の低さの結果である。

 彼女はこの後タイプ縛りの強者という意味ではジムリーダーより格上の四天王に位置することになるが、それはまた別の話。

 

 

 

 

 ポケモン大好きクラブ会長の家を出た後、グリーンはクチバジムの入り口を木が塞いでいることを抗議し、誰でも入れるジムへと変えさせた。

 その後、クチバのジムリーダーと出会うことになったが、そのジムリーダーは外国人だった。

 

 ジムリーダーというのは地域に非常に大きな影響を与える。

 そのジムリーダーが外国人で有りながら問題が無いのだろうか?

 外国の都合を国内に持ち込んでくる可能性は無いのか?

 そう言う声があるのは確かだ。

 だが、それはグリーンに言わせればそれは古い(・・)

 

 文句があるならば己がより強いことを示して新たなジムリーダーになれば良い。

 ポケモンで勝てなくても資金力で勝負するなり、新しく別の町でジムを設立してもいい。

 国際化、ボーダーフリー大いに結構。

 競争相手が増えるほど、競争は激化する。

 国内の一部地方だけでの小さな経済は孰れ先に拡大した大きな経済に潰される。

 ならば自分達が先に大きな経済を打ち立てるべきだ。所詮世の中は弱肉強食。

 努力しなかった(弱い)者が努力し続ける(強い)者に喰われるのは当然のことだとグリーンは考えていた。

 尚、死ぬほど努力できない者や、努力しても結果が出ない者は考えるに値しない者とする。

 

 ベストを尽くさないことは自分の人生を輝かないものにしていることだ。

 そこにあるだけで輝かない人生は死んでいるのと同じ。ならばベストを尽くさない者は自殺しているのと同じだ。

 死者にかける言葉などグリーンにも見つからない。

 

 

 グリーンは近くの洞窟で捕まえてきた厳選ディグダを鍛え上げてダグトリオにした個体を先頭にマチスに望んだ。

 勿論、会話は全て英語で発音はネイティブだ。

 グリーンはイギリス英語、アメリカ英語、オーストラリア英語の全てを自在に操れる。

 そしてその英語の中にはそれぞれロイヤル英語や軍事英語も含まれている。

 

 マチスは英語が堪能な少年に気をよくした。

 そして、自分のポケモンをあっさり倒した少年に驚いた。

 

 その後、いつものように全力のマチスに勝負をして貰ったが、今回は地面タイプという相性も良いダグトリオがいたが、

マルマインのスピードスターの前に敗北することになった。

 基本的に命中率100%で先行されて勝ち抜くのは難しい。

 それでもかなり良いところまでいけた。

 グリーンにはジムリーダーのハードルを超える算段がつき始めていた。

 

 グリーンはマチスに今後はグローバル化が広がり、カントーでも英語を使う機会は大きくなる。

 シルフカンパニーでも英語を公用語にする予定(着いてこれない者は退社)であり、地元への外国人のイメージアップをかねて英語教室を行うように助言した。

 尚、全国規模の英会話教室を配備する手順は既にシルフカンパニーが行っているので、そこの特別顧問として参加してはどうかと言うことを提案した。

 

 また、シルフカンパニーとマチスの本国との貿易戦争や、シルフカンパニーの軍需産業のこれからについてもマチスと話し合った。

 マチスは元は米国空軍の少佐である。

 空軍という組織の佐官は、極めて高い能力が要求される。

 若くしてその佐官の地位に上り詰めたマチスは、ビジネスにおいても高い思考能力を持っていた。

 このビジネスが今後成功するかどうかと言う問題に、マチスは答えを出した。

 

「どうだろうか。その能力に見合うだけの報酬は用意する。無論、当然のことだが」

 

 グリーンが目安として提示した金額を見て、マチスは決意した。

 

「乗るしかない このビックウェーブに」

 

 

 こうして、今日もまたベストを尽くす男の部下が一人できあがった。

 勿論、全国展開の英語教室の特別顧問とジムリーダーの二足の草鞋は並大抵のことでは無いが、ジムも顧問もどちらもおろそかにしてはならない。

 問題は、何処にも、無い。

 ただベストを尽くせば良い。ベストを尽くせる人間がベストを尽くせばベストな結果が待っているだけのことなのだから。

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