パーフェクトヒューマン(緑)   作:蕎麦饂飩

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己より賢いものを使え

第7話『己より賢いものを使え』

 

 クチバシティにさよならバイバイしたグリーンは、ヤマブキを通じてタマムシシティに出た。

 なるほど、前世で言うところの田園調布の様な町並みだった。

 この町でなら独自の需要も生まれるだろう。

 

 定期的に『海外で流行している』ものを引っ張って来れば売れそうだ。

 グリーンはそう認識した。

 

 また、タマムシデパートは流石に大きかったが、グリーンはこのデパートより大きなものを建てたいと思っていた。

 それは形有る物とは限らない。有形無形問わず、財力と権力においてタマムシデパートを越えるモノを作ってみせる。

 グリーンは更に決意を固めていた。

 

 タマムシシティには最近出来た景観を崩している建物がある。

 光や音をまき散らしている『大人の遊び場(ゲームコーナー)』だった。

 

 このような賭博の裏には昔から良くない組織が有るものだ。

 何故、此処でスロットに嵌まるのか?

 その答えの一つに景品がある。

 此処でしか手に入らないものや、高値で買い取って貰えるものがある。

 

 ならば、それらをもっと安価に安易に手に入るようにすれば問題は無い。

 取り敢えずグリーンは景品の技マシンを全てシルフの販売ラインナップに揃えるように命じた。

 

 そして、資金源が若干落ちてきた事で活動を開始し始めるであろうゲームセンターを、警察機構に圧力をかけて調査を開始させた。

 虱潰しの調査の結果、ロケット団のアジトがゲームコーナーの中に発見された。

 これを根拠に営業を停止させた。

 

 資金源が無ければ悪の組織も行動できない。

 信念が強いはずの自爆テロも辞さない組織であれ、資金が無くなり給料が満足に支払われなくなれば、

強制では無く自由参加で入ってきた層が自然と逃げていく。

 割が良ければ悪でも何でもやるが、割が合わなければ悪に進んで加担しない人間は、悪の組織には決して少なくない。

 

 ロケット団のフロント企業だったことが発覚し、全国の同系列のゲームセンターは一斉に営業許可を取り消された。

 だが、それだけの損失を受けたロケット団は報復として、タマムシシティの警察署長の一家全員を殺害した。

 

 そして、遂に起死回生の一手として国家でさえ手を出せない大企業シルフカンパニーを武力で支配する計画を断行する必要に迫られた。

 ルール内の正攻法で勝負出来ないものには、ルールをぶち壊して戦うしか無い。

 無力な弱者が強者に抗う唯一の方法がルール破りの革命だった。

 

 

 本来はもっと念入りに内部の協力者を増やして行うはずの計画は、かなり強引な計画に変更せざるを得なかった。

 そのシルフカンパニーの成長と強化されたセキュリティには、何時もマサラの女性投資家の陰がちらつく。

 

 ロケット団の次の狙いはマサラの投資家(グリーンの母)だった。

 

 

 

 

 

 

 一方グリーンはゲームセンターが潰された後、タマムシジムにやってきていた。

 タマムシに本社がある雑誌のイケメントレーナー特集に載っていた少年が現れた事に色めき出す。

 グリーンはこの時、近隣で(勿論厳選して)捕らえたロコンを先頭にしていた。

 

 クチバシティでカリンの言っていた

『ほんとうに つよい トレーナーなら すきな ポケモンで かてるように がんばるべき』

 という言葉。

 これをロコンと出会った時にグリーンは少し解った気がした。

 なるほど、これが俺の好きなポケモンなのか、と。

 

 ロコンを見たとき、どの通信事業会社にも無料で利用させる代わりに、その情報を回収するビジネスをグリーンはやろうと思った。

 そのブラウザの名前はフレイムフォックス。イメージキャラクターはロコンである。

 尚、その中身はファイアフォッ○スというよりは完全にグ○グルクロームである。

 

 ロコンの炎タイプの攻撃や、ラプラスのれいとうビームでジムトレーナーは全滅。

 しかし、彼女たちは悔しそうでも無く、何故かグリーンを褒めちぎる様に纏わり付いていた。

 

 そんな有象無象をやんわりと離しつつ、グリーンはエリカの所までやってきた。

 

 運命を感じた気がした。

 例えるならブリュンヒルデに出逢ったシグルド。

 もっとシンプルに言うならば一目惚れだった。

 この女を手に入れよう。

 そんな情欲が彼を支配した。

 

 ベストを尽くせ。

 ベストを尽くせ。

 ベストを尽くせ。

 

 彼の中で何時も唱える言葉が何時も以上に木霊する。

 

 エリカの中でも写真を取っておく程度にはかっこいいなと思っていたトレーナーであったが、そこには温度差がありすぎた。

 ガーディとリザードン位火力に差があった。

 

 

 

 

 グリーンは絶対良いところを見せるべきだと思った。

 敢えて負けて可愛げを見せるなんてのは弱者の戦法。冴えなくて出世しそうに無いけど優しい男性なんて只の負け組だ。

 真の強者は恋愛でも仕事でも全てで勝って勝って勝ち続ける。

 マグロやサメが泳ぎ続けるように、死ぬまでひたすらに勝ち続ける。

 それが勝ち組(グリーン)の考える有るべき人間の姿だった。

 

「ここは1対1で無く、乱戦というのは如何だろうか?

全ての手持ちポケモンに適切に命令できた方が勝つという仕組みだ」

 

 未だダブルバトルも無い時代にグリーンは新たなバトル体系を提案した。

 この戦いの後、女性トレーナーを中心にカントーでダブルバトルが発展していくことになるがそれは別の話。

 

 エリカは優秀なポケモントレーナーである。

 だが、グリーンには直列思考の速度でも、並列思考の最大並列思考数でも敵わない。

 まるでスーパーコンピュータ以上の頭脳を持つフーディンかという程のグリーンの思考。

 それはある意味で正解だった。

 

 グリーンは持って行きたいその後の展開の図をフーディンにテレパシーで読み取らせる。

 そしてそれに対して必要な指示を数パターンフーディンは一瞬で提案し、テレパシーでグリーンに返す。

 自身とフーディンの頭脳をクラウド上で同期させて、サーバーであるフーディンの計算結果をシンクライアント端末であるグリーンが受け取る。

 

 要は計算を自分で行わず、計算式をそのままフーディンに依頼してその答えだけを返して貰う行為。

 スマートフォンだけでは瞬時に処理しきれない膨大な計算も、巨大サーバーに依頼して計算結果を受け取るだけなら直ぐに終わるのと同じである。

 更に言えば、命令の細かいところは許可を出した命令の範囲でフーディンから直接他のポケモンに送られている。

 

 自分の手持ちの頭脳だけで処理しようとするエリカが敵うはずも無かった。

 ましてや全力の編成では無く、あくまでジム挑戦トレーナー用の手持ち。

 勝負は完全なグリーンの勝利だった。

 

 エリカに勝因を聞かれたグリーンは端的に答えた。

フーディン(ポケモン)を信頼して、己のベストを尽くしただけだ」

 

 エリカはちょっとキュンときた。

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