第8話『無能な多勢より、有能な個』
あの女性投資家を殺害!?
そんなニュースが飛び回った。
シルフカンパニーと繋がりが深いとされるマサラタウンの女性投資家が危うく殺害されかけた。
大けがをしたものの、一命は取り留め現在はヤマブキシティの病院で絶対安静状態であるそうだ。
ロケット団が犯行声明を出したと同時に、今度はシルフカンパニーが占拠された。
此方もロケット団が犯行声明を出していた。
シルフカンパニーの軍事機密をロケット団が手中に収めている可能性があるため、政府も迂闊なことは出来なかった。
最強の自動自動対空・対地システムが起動すればポケモンでも只では済まない。そしてトレーナーが狙われない保証も無かった。
行える最善は少数精鋭による電撃奇襲。これが政府の決定事項だった。
対処の最本命は『四天王』と呼ばれる最強軍団。
建物ごと凍り付かせる氷結の女神、近接最強の格闘使い、物理をすり抜けるゴーストタイプの使い手、そして『竜王』――――。
その到着までに周辺のジムリーダーが、占拠されたシルフビル以外にも被害が拡大しないように防御を固める事となった。
ヤマブキ病院を警護するのはナツメだった。
当初はマチスが来るはずだったが、病院で電磁波と超能力、そのどちらが医療機器に影響を与えるかは明白だった。
カスミやマチス、格闘王、そしてエリカは各通路を閉鎖しており、ロケット団の逃走時には狭い通路で確実に迎え撃つ。
そう言う計画だった。
しかし、銃を突きつけられた父親が電波ジャックによる全国放送で放映されたエリカは暴走。
自らシルフビルに飛び込んでその後の音沙汰が無くなってしまった。
幸いと言えば良いのか、レッドという凄腕の少年がエリカがいなくなった穴を塞ぐこととなった。
一方グリーンは自身の所持物となった元地下通路にいた。
道中ロケット団員が何人か忍び込んでいたが、容赦なく一蹴。
ポケモンバトルを開始する前に、相手の背後からトレーナーにダイレクトアタック。
悪に容赦は要らない。
それがこの状況でのベストだった。
ハナダシティとクチバシティを繋ぐ長い地下通路。
その中心にグリーンはいた。
「ダグトリオ――――穴を掘る」
彼は命じた。
全てはこの真上にあるシルフカンパニー本社に侵入するためだった。
正攻法で世界経済を手中に収めるには邪法という手段もあることを示すロケット団が邪魔だった。
だが、それ以上にグリーンは憤っていた事がある。
これは、最早制裁しか有るまい。
この制裁はメディアで正当化させる。
こうすることで何をやっても無罪を勝ち取るし、正しく強い者が弱さに耐えかねて悪に転げた者を叩き出す社会を肯定できる。
そして己個人の知名度を上げて更なる成功の足がかりにしてみせる。
だが、それよりも
シルフカンパニーに侵入したグリーンは敵勢力をフーディンのテレパシーで判別すると、敵の脳みそだけを念力でねじ曲げた。
結果は綺麗な死体の出来上がりだった。フーディン万能説である。
窓側を見張っていたロケット団員はサンダースに足下を攻撃させた後突き落とす手前の状態で脅して合い言葉を話させて、
ラプラスにはフロアの敵や被害者を関係なく歌声で眠らさせた。
…ラプラスが『滅びの歌』という破滅を呼ぶ歌い方を覚えていたら凄惨な光景が起きていたかも知れない。
勿論、本来の滅びの歌はポケモンにしか影響しないので、凄惨な結果を迎えるのはポケモンだけだったが。
駆け抜けて放送室を占拠したグリーンはシルフカンパニー全階にラプラスの歌声を響かせた。
歌うの命中率が低くても、敵の攻撃を挟まずPPの有る限りひたすら続くなら、それは理論上の100%
グリーンは最上階の社長室に駆け上がると、そこには青アザを作った社長とエリカがいた。
ドラマなら素敵なボーイミーツガールだが、此処は危険な犯罪現場だった。
グリーンは、思い返せばエリカには
「グリーン君か…」
「貴方が…私の……そう、良かった」
眠気に必死に耐える二人と違い、その横に立つ強面の男は強い意志を持った目でグリーンを睨んでいた。
「良く此処まで来た。まずは賞賛しよう。素晴らしい、実に素晴らしい。
君が部下として私の下にいれば、ロケット団は既に世界征服を成し遂げていただろう。
私の下に来れば世界の半分をくれてやってもいい。どうだ?」
「世界を支配するのは俺だ。お前は此処で消えろ」
ロケット団の総帥である男はそれを聞いて、あっけにとられたような顔をした直後、堪えきれない笑いを解放した。
「はっはははははは、王様とお姫様を助けに来た
これは愉快だ。ああ、愉快すぎる。
これは、身体にポケモン用の眠気覚ましを打ち込んで無理矢理起きただけの事はあった。
お前も似たようなことをしているから、此処で起きているのだろう?
そんな奴が真っ当な人間な筈が無かったなっ!! 失礼したよ」
グリーンに向かって注射の痕を見せつける男だったが、その男と違ってグリーンは眠気覚ましを自分に打ってはいない。
フーディンに己の脳波を弄らせて眠気を防いでいるのだ。
ある意味ロケット団総帥の男以上にキチガイ染みていた。
「大人しく捕まる気は無さそうだな」
そのグリーンの言葉に当然だとでも言う様に目の前の男は大げさに頷いた。
「私はロケット団のボスにして、トキワの――――いや、最強のジムリーダー・サカキ。
君に怖じ気づいて降伏する要素が何処にあるかね? それに――――」
「勿体ぶるな。だが、そこまで振られたら聞いてあげるのが世の情け。
言ってみろ」
「宜しい」
そうサカキが告げたと同時に、社長室の入り口の壁が爆発してその砂煙から何かの影が表れた。
「シルフカンパニーが嘗てカツラ博士、フジ博士、そしてオーキド博士と開発した封印されていた最強の自動自動対空・対地システム。
それが、コイツだ。
先程、ラプラスの歌声が沈黙しただろう。恐らく、いや間違いなくコイツが瀕死に追い込んだのだ。一瞬でな。
…私の
この一つで強弱が逆転する。ロケット団の逆襲を見るがいい。
勝ち目があると思うのならのなら勝負を挑むがいいだろう。
――――――――この『ミュウツー』になっっ!!!!」