調度良く区切れた気がしたのでとりあえず投稿。
整備場では、今日も忙しなく作業員が右に左にと一生懸命働いている。
その隅っこでは、最近保護されたクラゲが人体健康のツボ・マッサージの極意を習得した事で
疲れが溜まっていたり、肩こりなどで悩まされている艦娘や作業員などがそこに訪れる様になっていた。
「あ、ちょっと、やさしく、やさしくするのよ!?
そう、その調子……って、うにゃっ!? うにゃーー!!」
今回、激痛と引き換えに疲労を消すことが出来た艦娘は、一体誰なのやら。
「おーい、整備長ー! 作業中悪ぃんだけどちょっと話聴いてくれねえかー!」
「───ん?」
前回の廃棄物から偶然生まれた謎の道具によって、作業員達の疲労が殆ど回復し
通常業務もお気軽にこなせる程度の体調が戻ってきた、この慌ただしい作業場に
あまり見ない組み合わせの珍客が訪れていた。
「二人が一緒に俺の所に訪ねてくるなんて、珍しいな。
どうかしたのか? 天龍に叢雲ちゃん」
整備場における吹き抜けの三階付近で、作業員と一緒に設備の点検を行っていた整備長は
階段をのんびりと降りて、下から聞こえた声の元へと辿り着いた。
「出来ればそのちゃん付けをやめて欲しいんだけど、ね」
「んな事はどうだっていいだろーが、叢雲。
駆逐のヤツラなんて殆ど小さいのばっかなんだから、ちゃんだろーがなんだろーが構いやしねえだろ」
「なんだか子供扱いされてるみたいで呼ばれる度にイラっとすんのよっ!
ま、まぁ……いっつも修理に入る時には世話になってるし、仕方なく呼ばせてあげてるけど……」
二人一緒に整備長を訪ねてきた艦娘は二名。
口調が乱暴な短髪で、眼帯を装着しているのが軽巡洋艦娘・天龍。
胸の前で腕を組み、少し顔を赤らめながら呼称に文句を言っている艦娘が、駆逐艦娘・叢雲である。
どちらも艦娘の中でも一際強気であり、天龍は武闘派、叢雲は効率派といったところだろうか。
提督(の秘書艦達)のお気に入りなのか、性能ではトップクラスと比べるとかなり劣っているのだが
出撃機会は他の艦娘と比較してもかなり多めの二人である。
「つーてもなぁ、すまんな叢雲ちゃん。
俺も子供居てもおかしくない年齢だし、君等みたいに小さい艦娘だと自然とちゃん付けになっちまうや」
「ふ、ふんっ、やめる努力ぐらいはしなさいよ? いいわね!?」
「ははは、期待しないで下さいませ、御嬢様」
「おい叢雲、話がズレてんだろーが」
「あっ」
整備長の言葉に対し、また少し顔を赤らめながら胸を沿って返答し
そこで主題に一向に入れない天龍から、会話のストップが掛かった。
「で、用事は? 一応仕事中なんでな、すぐ済む事ならここで頼む。
入り込んだ内容なら俺の仕事部屋にでも行くか?」
「んーーーそうだなぁ……パパッと終わっちまう様な内容じゃねぇしな」
「お茶ぐらいは出してもらえるんでしょうね?」
「いつも通りに高圧的でございますね、うちの御嬢は……ま、そんなら付いてきてくれ。
すまんー、ちょっと抜けるー。後で結果を知らせてくれやー」
「わかりましたよー」
此処では解決しない話であるらしく、整備長は場所を移動して話を聞く事にした。
上の方で一緒に点検を指定た作業員達に離脱の声を掛け、三人は整備長室へと向かったのだった。
◇
「──近接装備が欲しい?」
「おう、そうだ」
「ええ、そうよ」
整備長は、室内へ二人を迎え入れた後ちゃんと粗茶も出し
二人から切り出された話の内容をオウム返しに尋ね返す。
「えーと…………」
「んだよ、言いたい事でもあんのか?」
「あるのならはっきり言いなさいよね」
「ん、なら遠慮無く……君等ってアホ?」
「うるせぇちくしょー!
俺だって艦娘である以上どんだけ有り得ねぇ事言ってっかぐらいわかってらぁ!」
「直で言われたら言われたで腹立つわね……」
アホと言われて逆ギレに近い対応を示す艦娘二人。
しかし整備長が言う事も間違っているわけではなく、常識から考えれば有り得ない事である。
何故なら、艦隊戦は基本的に砲撃戦か航空戦しか行わないからである。
もちろんこちらで開発する装備も艦載機か砲身砲塔、または索敵機や推進タービン等である。
直接殴りあうモノは一切開発の視野に入れられていない、砲身で殴る場合はまた別の話になるが。
「で、なんでそんなもん欲しがってるんだ?」
「そりゃぁ整備長お前よぉ、日頃から俺らこんなもん背負ってんだしさぁ。
やっぱロマン感じちゃうじゃねーか、これで伸し上がってみたいじゃねーか」
「あー、その野太刀みたいなやつ?」
「私も同じようなものね、多少扱えるのであればそれも長所として伸ばしたいのよ」
「叢雲ちゃんのはアンテナじゃねーか! 取手付いてるだけで騙されるかッ!!
「う、うるさいわねっ! そんな些細な事どうでもいいのよっ!」
そんな事情もあり、近接武器を開発している提督、または整備場など皆無である。
殴り合いを希望する艦娘も現れないため、需要も供給もゼロなのは当然であると言えた。
「つーわけで、整備長。作れ。」
「いやお前作れったってなぁ……」
「良いからアンタは言われた通りに作ればいいのよっ! どうせ資材も提督持ち───」
「一応既にあるしなぁ」
「なんだから……って、なんですって?」
「なんだと……!?」
二人で需要を希望したところ、整備長からは意外な返答が返ってきた。
供給ゼロとはなんだったのか。
「あるって……お前……なんで装備完成書類に入れてねぇんだよッ!!」
「だって誰も使わんだろ、そんなん載せた所で周りからいじられるだけでいいコトが何も無い」
「だからって、お前……あるんならあるでもっと早く言えよッ」
「無茶言うなっ! こっちゃ責任背負ってる立場なんだぞッ! 生活掛かってんのにそんなもん出せるかッ!
役に立たないモン作って資材消費しまくってたら下手すりゃクビなんだよっ!」
「他の奴等に見せりゃ何かしら改良案があったかもしんねぇだろッ!」
「待ちなさい、アンタ達」
「ぉ?」
「あぁ?」
己の生活が、ここでの行動に掛かっている整備長と元々口が悪い天龍で口での砲雷撃戦が始まったが
本格的に発展する前に、少し呆けていた叢雲が復活して二人に待ったをかけた。
「整備長、あんたは、既にそれを開発してるのね?」
「開発失敗しただけの鉄屑な可能性のが大だけど、な」
「それでいいわ、掘り出し物があるかもしれないし保管場所に案内しなさい。
アンタも元々仕事中なんだし、時間は無駄にするべきではないでしょう?」
「あぁ、まぁそうだが……がっかりしても俺は知らんぞ?」
「いいわよ、いきなり作れって言った手前もあるし、ダメならダメで作らせるわ」
「おい」
「天龍、アンタもそれでいいでしょ? さっさと行きましょう」
「お、おう……」
「……まぁ、良いか。三階にある兵器保管庫の奥に色々溜め込んでる。とりあえず三階に上がろう」
こうして一同は整備長の言う失敗作を見に行くため、失敗作保管庫へと足を向けたのだった。
◇
「…………ま、マジかよ……なんだ、この品数と品質……」
「…………これは、表に出せないわけね……状態が良いのはアンタの趣味?」
「だなー、一応なにかしらの機会で陽の目も見るかもしれんから
不具合だけは無いように、協力者と一緒にひと通り整備はしてるぞ」
整備長の案内の元、二人は失敗作保管庫へと案内され
その中に綺麗に陳列されている上に埃も殆ど被って居ないその状態に驚いてしまう。
最初こそその光景に圧倒されていたが、二人は途端にウキウキしだした。
「な、なぁ! 早速見ていいか!? 見ちゃっていいよな!? な!?」
「そ、そうね……もう、見ても、いいでしょ? いいわよね? 行くわよ?」
「……どうぞ」
「ひゃっほーーーーーーーー!」
「きゃーーーーーきゃーーーーーーー!」
整備長の同意を得たが途端に保管庫へと突入した二人は
まるで遊園地へと訪れて手を離されてしまった子供のように辺りを物色し始めた。
「おぉ……おぉ……! なんだこれ……失敗作にするにゃ勿体無いモンばっかじゃねーか!」
「うわ……何よこの刀身……私達よりしっかり整備されてんじゃないのかしらコレ」
「やれやれ……まあ御眼鏡に適っているようで何よりだが……お?」
周りに置かれているモノの質に感動しながら持ち手をにぎにぎしたり、うっとりしたりしている最中に
保管庫の奥から大きくて太い何かが、こちらに向かってくるのが全員の目から見えた。
「な、なんだ、ありゃ……!?」
「な、で、でっか……!?」
奥からこちらに向かってきているのが見えているだけでも、天井まで5mはありそうなこのフロアにおいて
既に天井との隙間が殆ど無い辺り、その大きさが伺える。
「おーっす、今日もご苦労さんー」
「ーーー」
そんなデカブツに対して、さして驚きもせずに声をかけながら手を振る整備長。
それに気付いてデカブツもその手に対してややぎこちなく、手のようなモノをふりふりした。
気のせいか、頭の上に生えた二本の何かもキュリキュリ前に後ろに動いているようである。
その様子を見て、天龍は横からそのデカブツを観察し始めて……すぐに気付いた。
「おい……こいつ、島風の連装砲(ちゃん)じゃねぇか!!
整備長お前なんでこんなバカデカく改造してやがんだ!」
「れ、連装砲ちゃんですってぇ!?」
「失礼な、別にあいつの連装砲ちゃんを改造したわけじゃないぞ。
ただ単に開発に失敗したら鉄屑の中にコイツが居ただけだ、一応46cm連装砲ちゃんと名付けているぞ」
「作ったのかよ!?」
「まぁ、気付いたら。HAHAHA」
「ーーー♪」
そしてさらに見てみれば、46cm連装砲ちゃんの手には
掃除道具であるハタキと太めの回転箒が装着されていた。
どうやらここの失敗作兵装・件・失敗作保管室の管理人らしい。
「おま……なんつーもんを……」
「………………」
「ん、叢雲、どうした?」
「か、可愛い……♡ 整備長ッ!! これちょーだいッッ! この子ちょーだいッッ!」
「ダメでござる。そいつがさっき言ってた協力者だ。
その連装砲ちゃんがいなくなったら俺の疲労がマッハでクラゲマッサージで気絶のループになる」
「ちょーだいちょーだいちょーだい! ちょーーだい!」
「うるせぇ叢雲ッッ! お前ここに近接武器探しに来たんだろーがッッ!
時間が勿体ないとか言ってたくせに他のことに気をとられてんじゃねぇっ!」
「はっ!? そうだったわっ!」
「まぁ、そんなに気に入ったんならたまにここに遊びにくればいいさ。
んで武器の手入れでもしてもらえばいいぞ」
「そ、そうするわ……」
「ーーー♪」
叢雲にとても気に入られたことが嬉しいのか、46cm連装砲ちゃんもニコニコ顔である。
その一方で、艦娘と兵器の和やかな様子を見ながら整備長は
(こいつの中身を操縦式にして、叢雲乗せてモビルスーツに出来ないかな)
とか考えていた。
※続きます。
※模造tips
・この小説では開発に失敗しても開発資材(元になるヤツ)は消費されます。
その代わりアイテム欄に出ていない失敗作が出来上がってしまってます、それが今回のメイン。
次回明らかになる兵装は普通に他作品のモノが出てきます。一応伝説の剣とかは出ない。
・46cm連装砲ちゃんはPixivで見かけたものを採用しました。
・叢雲さんの口調がうまく表現出来てなくても殴らないで下さい。お願いします。