ここからご都合主義全開です。
現実における軍の云々やら、上下関係やら一切考慮してません。
あくまでも文字による戯画と捉えて頂ければ。
まあ元々読んでる人少ないけどさ
※注意 今回龍田さんのキャラが若干崩壊します。
「そんな……馬鹿な話があるかッッッ!!」
会議室に、横須賀鎮守府所属の、別の港を管理している①提督の怒鳴り声が木霊する。
あまりにも馬鹿らしい、現在ほぼ開拓が完了している新海域の報告に。
「しかし……事実は、事実なんですッ! そうでなくては私の所属艦である
轟沈寸前の大破で、………ッ独りで、帰ってくる訳が……伝える筈が無いのですッッ!」
その声に苦々しく、絞り出すように回答するのも……また別の港の管理者である②提督だった。
会議室のホワイトボードに羅列された会議前情報は
苦々しく返答した提督に所属する駆逐艦・潮から───
───出港時、6人艦隊で出撃した部隊の一人である潮から、もたらされた情報。
『新規開拓海域深部に、超大規模の深海棲艦隊・発生。
近辺で同時に開拓に当たっていた別の港の艦隊一同で対応するも圧倒的劣勢。
深海棲艦の総数───凡そ4、500隻』
ひとつの地点で、一度に出会う艦隊でも最大で6隻。
ひとつの海域で、一度に出会う総数でも最大で25隻程。
その海域ひとつに、400隻も集っているのは今までの常識からして有り得ない数だった。
そして情報を伝える為に必死の想いで逃げてきた潮は更なる情報を報告した後、機能を停止。
現在、鎮守府海域の一番近くにあった港で緊急補修を受けている。
高速修復材では、消しきれない程のダメージが積もっていた為に
手作業で修復しなければ、解体の可能性すらあった……それほどまでに苛烈な攻撃の中で帰還したのだ。
「しかも、圧倒的劣勢の中で逃げることすら叶わず、まだ戦っているだと……!」
潮は、状況を報告した後に最後の件を伝え……
「みんなを……みんなを、助けて、下さい……」と発言した後、気絶した───らしい。
会話が一時的に止まったのを見計らい、この港の秘書艦である千歳が新たに話を切り出す。
「②提督の潮さんがもたらした情報を全て事実と仮定して、現在横須賀鎮守府だけに留まらず
他の活動拠点に籍を置く提督達にも情報を送信し、協力を呼び掛けています」
「…………」
「事態は急を要します、まだ戦っている子達が居るなら……。
一人でも居るならッ……! 見捨てるわけには行きませんッ!」
「…………」
現在、千歳の姉妹艦である軽空母艦娘・千代田は───その海域に出撃していた。
絶望的な情報しか飛び込んでこないこの状況でも、身内の轟沈は認めたくないのだろう。
千歳の魂の叫びに対し、①提督の反応は鈍い。
しかし、②提督はすぐさまに反応を示した。
「……私の管理港の秘書艦には、既に全てを伝えて出撃準備を進めさせています。
まだ、戦っているはずなんだ……あの海域は遠い、おそらく……間に合わないでしょう……」
「…………そうだな、あそこは最速でも3日は掛かる距離だ。
私の管轄の、艦娘達も……もう…………」
「───でもッ!! もし、有り得ないぐらいに小さな可能性でもッッ!!
間に合う可能性があるのならッ!! 私は、それに全てを……賭けますッッ!!」
「……だが、そちらの潮がこの海域に入った時点で、説明された状況ではッ……」
その状況になってから潮は艦隊から離脱し、「3日近くの時間」を使ってこの海域に辿り着いた。
現実が見えている①提督と、藁をも掴む勢いの②提督。
全員が全員、足並みが揃わず、やきもきとしてしまっている。
こうしている間にも、と思う秘書艦・千歳。
早く行かねば、と焦る②提督。
行ったところで、と諦める①提督。
そして今まで沈黙していた、何か役に立つ意見が出されるかもしれない、と
とりあえず同席させられていた整備長に、千歳から会話が振られる。
「──整備長は、何か、ないでしょうか。
本当に……なんでも、いいんです……何か、ないですか……!」
「…………」
千歳の問いかけに、整備長は応じる気配を見せない。
「私の、千代田を……妹をッ……救い出せる何かを思いつきませんか……ッ!」
「………………」
整備長は、会議室のホワイトボードと周りの会話で現時点の状況を聴いてから、ずっと目を伏せている。
既に目元で涙すら溢れている千歳から、必死で、掠れた叫びを一身に受ける整備長。
他の二人の提督も、整備長風情の意見など……と半場諦めきっていた。
「………………」
「お願い、します……なんでも……もう、なんでも、いいから──」
「──まず、先に伝えさせてもらう」
ふと、目を瞑りながら整備長は声を出した。
「え……?」
「俺は、千歳殿も、お二人の提督さんもお分かりの通り……畑違いの人間で、ド素人だ。
何が効率的で何が間違っているのか、判断が付かない」
『……………………』
「だから、現状で出来るであろうことを俺の中で整理した。
その中で結論を出すなら、俺は一応、現状生き残っている艦娘がいるのなら……
今も戦っている艦娘がいるのなら、迅速に救助をする事は可能であると判断する」
『なっ!?』
整備長が発言した内容に、とても信じられないといった様子で二人の提督は声を挙げる。
今もまだ諦めきれていない②提督ですら、だ。
「……流石に、轟沈していないかどうかは現地の艦娘達次第だが……
まだ生きているのなら……多分なんとか、な」
「そうだ! 生き残っているかもわからんのだぞッ!
海域に到達した時点で誰も居なければ無駄骨にしかならんッッ!!
海戦のド素人が夢でしか無い事を口をする───」
「お願いしますッッ!!」
「頼むッッ!!」
「な、お、おいッ!? お前達───」
「どんな方法でも構いませんッッ!!
あの海域に居る子達の生存確率が少しでも上がるなら、現在の私の権限で全てを許可しますッッ!!
だからお願いッ、皆を……千代田を、助けて……ッ!!」
「ち、千歳さん、あんた……」
「あんたが何を考えているのか私にはわからないッッ!!
だがそんなことを聞く時間すら惜しいッッ!! 私からも頼むッッ!!
あんたの提案に出来る限り同調もする、だからどうか……どうか、皆を……!」
「②提督……あんたまで……」
「……わかった。正直、どこまでやれるかはわからない。
わからないが……俺は今から整備場に戻って全部の仕込みをしてくる」
整備長は、自分が座っていた椅子から立ち上がり、詰め寄ってきて横に居た千歳へ顔を向ける。
「千歳殿、俺は特に迅速に対応する必要がありそうなモノを
整備場で全て片付けてから全体に号令を出す、少し後にでも整備場に来てくれ。
その時に全体の方向性を指示させてもらう、では失礼する」
言うが速いが、整備長は「会議室の窓」へと走り、そのまま窓を開いてそこから飛び降りた。
『……はっ!?』
二人の提督はトチ狂った整備長の行動に仰天し、慌てて彼が消えた窓へ身を乗り出して下を見る。
すると整備長が会議室のある建物の壁に張り巡らされた、細い配管を掴みながら滑り降りるのが見える。
そして下に待機されていた施設移動用の自転車の前輪に付いている鍵を無理やり素手で捻り
勢い良く整備場へ向かっていくのが確認できた。
「お、おぉ……なんか凄いな……」
「確かに、この建物の階段を使って降りるよりは速いが……なんとも非常識な……」
そうして二人が室内に目線を戻してみれば、会議の進行役にあった秘書艦の千歳が
自分の武器に該当する謎の木偶箱を脇に抱えて部屋から走り去るのを捉えた。
「…………。」
「……私も、自分の管理港へと一度戻ります……。
早々に指揮を取らねば、足並みを合わせられない……失礼します!」
「あ、おいっ!」
一気に動き出した状況に、②提督は自分の行動の遅延を許せず
①提督に同意すら取らないまま、室内から走り去った。
「…………ええいッ! 現実の見えてない馬鹿者共めッッ!!
俺だって……俺だって認めたく……諦めたくないわ、クソッタレがッッ!!」
既に聞く者が誰も居ないその暴言を、一人残る室内に吐き捨て
①提督も②提督の後を追う様に、会議室を全速力で走り去るのだった。
・
・
・
「───天龍ぅぅーーーーーッッ!! 叢雲ちゃーーーーーーーんッッ!!」
「……おっ!?」
「へ?」
「……な、なによッ!?」
運良く目的の2人が整備場の入口近くに居るのを見つけた整備長が、自転車に乗りながら大声を張り上げる。
どうやら修行に一旦の区切りを見出し、天龍は龍田にいじられ。
叢雲は駆逐イ級と再度戯れていた様であった。
「緊急事態だ、本当の、緊急事態だ。
今から事情を説明する、二人の力を貸してくれ」
「な、なんだなんだ、どうしたってんだよ整備長」
「緊急事態って、何があったのよ?」
「整備長~、一体どうしたの~?」
普段の整備長の様子を知っている全員からして、今の整備長の状態が普通ではないのは明らかだ。
余程の大事が起こったのだろう、と全員覚悟して次の発言を待つ。
「お前達も一度向かった事がある、あの新規開拓中の海域で異常事態が起こっている。
深海棲艦が……4、500隻程、同時に進撃してきているらしい」
『はぁっ!?』
「そして、その4、500隻に対して海域に出撃していた艦娘全員が集まって戦ってるらしいんだ。
もちろんうちの港からも第4艦隊があそこに出撃している、そして戻ってきていない。
圧倒的劣勢で、その報告を伝えるために離脱した駆逐艦は轟沈判定寸前でこっちに辿り着いた。
もう遅いかもしれん───だが間に合うなら時間との勝負だ」
先程、あの会議室で全員が信じられなかったその情報を聴いて
やはりその場にいる3人も状況を信じられない様子だった。
──だが、最後の『時間との勝負だ』という一言が全員に冷静さを取り戻させる。
「……なるほど、大体読めたぜ整備長」
「……私も、天龍が必要なのはわかるわ。でもなんで私までなのよ?」
「天龍はアロンダイトを叢雲に貸して、一緒にその海域へ最速で迎ってくれ。
辿り着いたらアロンダイトを回収して、自分の出来る範囲で全て薙ぎ倒してくれ」
「あぁ、そういうこと」
「おう、わかった」
「まあ、アンタに頼んで天龍の剣で遊べるようにしてもらったしね。
乗るのは普通に出来るわ、それで、私の行く意味は?」
天龍に取り付けられた超速を羨ましく思い、叢雲は二人に何度も頼み込んで
天龍のアロンダイトに添え付けた推進力を、別の箇所からも出せるようにしている。
その結果、アロンダイトは宙を浮くサーフボードの様に乗る事が可能になり
暇があれば周りの駆逐艦娘を呼んで、修行の合間にそれに乗って遊んでいたのである。
そして整備長は叢雲の問いに、予想も踏まえて簡潔に述べていく。
「今回最速であちらに辿り着いて戦闘を開始するにしても
撤退……または後続の増援が海域に着く前に、弾薬が確実に尽きる。
最速で救助に向かい時間を稼ぐにあたって、弾薬を消費しない攻撃手段があるお前達が最適だ。
お前達2人は全部の兵装を取り払って、その箇所に予備燃料タンクを持てる限り積み込め」
「なるほど、天龍は本体や兵装の撃破で……私は敵空母の艦載機撃墜ってところかしら?」
「そうだ、状況は最早1秒すら惜しい。すぐに改装室に───」
「待って!」
「ッ?! 龍田!?」
全員がこの場を駆け出そうとしたところで、全てを黙って聞いていた龍田が突然声を挙げる。
「そんな危ない場所に一番槍で向かうなんて……私の天龍ちゃんを殺す気なのッ!?」
「…………ッ!! 天龍ッッ!! 叢雲ッッ!! 今すぐ改装室に向かえッッ!!」
「わかったわっ! とっとと説得しときなさいよッ!」
「……解ったッ! すまねぇ、相棒ッ!!」
「あっ天龍ちゃん待ちなさいッッ!」
走り去る二人を追おうとした龍田は、しかし整備長に道を阻まれ追いかけられなくなる。
そして即座に砲手を整備長へと向ける龍田。
「どきなさいッ! 整備長ッ!」
「もう1秒が惜しいんだ、何かをのんびりしていたら───それだけであちらの海域の全員が死ぬんだ」
「もう全員轟沈させられてるに決まってるッ! 天龍ちゃんまでそれに加えるのッ!?」
自分の主砲を整備長に向けて龍田は叫ぶ。
そのような死地に、自分の姉妹を行かせるのか、と。
どう考えても無謀でしか無い、素人の作戦の主軸を自分の姉妹にするのか、と。
「……撃ちたきゃ、撃て」
「ッ!?」
「お前に構ってる暇は無い、本当に、無い。
納得が行かないならこの場で俺を殺せ。終わった後でも良い、勝手に殺せ。
俺は、提案した。あいつらは、理解した。了承した。それだけだ。
俺がここでお前に殺されてもあいつらは多分お前を許すだろうし、俺の考えを皆に伝えて実行する」
「だ、だからって……あ───」
整備長の言葉に未だまごついている龍田をついに放置して自転車に乗る。
整備長は本来なら厳禁である、整備場内に自転車で突撃して改装室へ向かった。
説得なんていう形すら存在しない、完全な放置だった。
「だって、そんな……そんなところに行って……生き残れるわけ……ない、でしょ……」
一人取り残された龍田は、その場で静かに、静かに涙を流す。
簡単に予想出来る……いくら二人が加わったとて500隻と対峙して、無事で済む筈がない。
そんな事は、常識なのに、間違ってないのに、なのに天龍はそこに行くのだ。
龍田の涙は、止まらなかった。
・
・
・
「───待たせたッッ!! おい、予備タンクありったけ持ってこいッッ!!」
『アイアイサーッ!!』
「お前等ッ! そんな取り外した兵装なんぞその辺に転がしておけッッ!!
金剛殿と榛名殿を連れて来いッッ!! 大至急だッッ!!」
『あいあいさーっ!!』
「整備長、こっちは燃料満タンだッ! 予備タンク付けりゃあいつでも行けるぜッッ!」
「こっちも準備万端よッッ!」
改装室内が、慌ただしく蠢き始める。
後始末等考えず、ただひたすらに時間の短縮を。
「良いか、今回の勝利条件は敵艦隊の殲滅じゃない。
現状生き残っている艦娘の救助、並びにお前達の生存だ」
『……………………』
「お前達が死ぬ事を皆悲しむのは承知の上だ、でも勝利条件にお前達が絡むのはそんな事じゃない。
お前達のどちらかが轟沈、または大破したらその瞬間に現場の艦娘にも敵が殺到する」
『……………………』
「だから───生き延びろ、どれだけ不格好で、情けなく無様でも構わない……生きて、此処に戻れ。
お前達が今回の作戦の全ての要だ、その無事を俺だけがそれを願っている訳じゃない。
これから作戦を説明する他の港の提督全員も、そして───」
「整備長ッッ!! 遅くなりましたッッ!!」
「───千歳殿も、な」
改装室に突撃してきた秘書艦・千歳の方へ顔を向ける整備長。
二人は千歳を見た瞬間に、千歳の姉妹艦娘・千代田があの海域に居る事を思い出した。
そして彼らは、彼女に言葉を投げかける。
「……おう、千歳」
「……千歳さん」
「は、はいッ」
「──任しとけ、ぜってー連れて帰ってきてやっからよ」
「───速さが自慢の私達が、間に合わない訳ないでしょ?」
「────……ッ!! ッ、ッ……!」
二人の心強い笑顔と言葉を貰った瞬間、千歳の目から再び涙が零れ出す。
千歳はその涙を拭こうともせずに、二人の手を弱々しく掴み、願う。
「お願い、しますッ……どうか、二人も、ご無事でッッ……!」
「おう、じゃあちょっと行ってくらぁ、整備長……また後でな!」
「アンタもとっとと追い付きなさいよっ!」
「あぁ、頼んだぞ」
全ての準備を終えて、二人の艦娘は港の入口へと姿勢を向ける。
絶望の象徴へ、向かう為に。
「天龍───水雷戦隊、行くぜッッ!!」
「叢雲───水雷戦隊、出るわッッ!!」
天龍と叢雲は、凄まじい光と音をその場に残してあっという間に地平線の先へと消えていった。
そしてそれと同時に、作業員達が先程呼び出させた金剛と榛名を改装室前へ連れてきた。
「整備長ー、どうしたネー? 呼んでるって言われたから来たヨー?」
「どうかなさったのですか? 整備長さん」
「あぁ、緊急事態が発生した……今からスクランブル対応で全艦娘に動いてもらう」
「えぇ!? でも整備長、そんな権限持ってないヨー?」
「良いから。千歳、港の全域に非常事態宣言を出してくれ。
最重要課題は既に全部済ませてる、後はいかに効率良く準備するか、だ」
「は、はいっ!」
整備長からの発言を即座に実行する為、改装室に備え付けられた放送施設の設定を館内から全港に変え
指示に対して一切の躊躇をせずに、放送設備に向かって大声を繰り出す。
「緊急連絡ッ! 緊急連絡ッッ!! 現在ドック入りしている艦娘以外は全て整備場に集合せよ!!
事態は一刻を争うッッ、全ての艦娘は整備場に今すぐ集結せよッッ!!」
「ポカーン、ネー……」
「い、一体何が起こっているのですか……?」
「すまない、説明する時間が惜しい。おいお前等ッ! この二人からも兵装全部取り払え!」
『あいあいさーっ!』
「え、ちょ」
「せ、整備長さんっ!?」
呼び出された二人を置いてけぼりにして、整備長と千歳を中心に緊急事態はどんどん進む。
戦艦二人はあわあわしながらも、現在装着している46cm主砲三基☓2を取り外されていく。
「積載するモノは積み込めるだけの燃料と回避用タービンと本式缶だッ!
補給艦として二人を出撃させる、2名分持ってこい!!
違う予備タンクじゃない、燃料だ! あと燃料補給の簡易設備もくっつけろ、俺が載る!」
『アイアイサーッ!』
『ええーーーー!?』
「整備長ッ! ②提督から緊急入電ですッ!」
テキパキと状況を更新していく整備長と秘書艦、何がなんだか分からない金剛姉妹。
とりあえず言われた通りに燃料を満載・タービンを装着後、水の上に立っておく。
「②提督の入電内容はどうでもいい、予測出来る。
『そちらで理想と思われる手順で、全艦娘を率いて海域に迎え、手筈は整えた』
と返しておいてくれ」
「了解── ……ッ!? 整備長ッ! ①提督からも緊急入電ですッ!」
「ッ?! 内容は!?」
「『急を要する案件を回して欲しい』との事です!」
「…………迅速に行動可能な『曳航』専用艦隊を編成させろ!
全部高速艦で編成するのを伝え忘れるなよッ!!」
「了解ですッ!!」
ここに来て会議に同席していた他の提督からも連絡が入り
状況がほぼ整いつつあるのが、事態を更新し続ける二人にもわかった。
整備長は尚も慌しく、整備場全体に指示を飛ばし続ける。
「よし、高速戦艦・正規空母・重巡洋艦・軽巡洋艦は誰でも良い。
とにかく6人体制で高速艦隊を組むんだ! 組んだらすぐに出撃!
低速の航空戦艦と商船改装型空母・潜水艦は出来る限りの全速力で海域に向かえ!」
「ちょっとぉ~整備長ー! 第4艦隊以上になっちゃうわよー?」
「気にするな! とにかく組め! 組んだら出撃してくれ! 道中の敵は全部スルーしろ!」
「え、ええ~?」
本来、色々な軍事規約が交わされている関係上で第4艦隊以上を持つ事は禁止されている。
しかし港の管理の素人であり、なおかつ緊急事態で全てスルーな整備長はそんな事を気にしない。
次々に反則的な指示を飛ばし続けていく。
「いいじゃないの愛宕、さっさと出撃するわよッ!
勝利が、勝利が疲労の取れた私を呼んでいるわッッ!!」
「あ~ん、足柄さん待って~!」
「利根さん、私達も行きましょうか」
「おう、妙高! そなたの雷撃火力、期待しておるぞ!」
重巡洋艦娘達が。
「軽巡長良、抜錨しますッ! 皆、続いてッ!!」
「五十鈴、出ますッ!」
「魚雷準備おっけー! もうやっちゃいましょー!」
「あぁ……北上さんの魚雷……冷たくて……素敵♡」
「 ク マ ー ! 」 / ● ●|
「那珂ちゃん一号、お仕事行ってきまーす!」
「那珂ちゃん二号、ロケ地にしゅっぱーつ!」
「那珂ちゃん三号、センター、行きまーす!」
軽巡洋艦娘達が。
「あ、あの、神通さん……わた、私と、一緒に行きませんか……?」
「あ、羽黒さん……ハイ、行きましょう、皆を、助けに行きましょう!」
意気の合う艦娘達が。
港に待機していた艦娘達が続々と整備場に集まり、そしてすぐさま出撃していく。
しかしその中でも浮いている、あまりやる気が感じられない軽巡洋艦娘が居た。
「おいシャキッとしろ! 仲間が死んじまうぞッッ!!」
「夜戦までまだまだ時間あるじゃない……あーふぁ」
「ふざっけんな! だーもう……川内ッ! お前はこれを目につけろ!」
整備長はその態度に苛立ちを覚えながらも
気だるそうな川内に対して、横に固められていた廃材から何かを取り出して投げつけた。
「……? なに、これ? ───!? よ、夜だっ! なんかみんなが赤いけど、夜だッ!」
「そのサーマルゴーグル付けてとっとと指定海域に迎えッッ!」
「夜戦なら任せてッッ! 川内、出撃しますッ!!」
ゴーグルを身に付けた川内は、先に出撃していた艦隊をすごい勢いで追い抜きながら
あっという間に地平線へと消えていった、その勢いたるや最先陣の2人にも劣らない程だった。
「…………なんであいつは夜ってだけで、あそこまで元気になれるんだ」
「せいびちょーーー! はーやくーー! いっくヨーーーーーー!」
「整備長さんっ!! 千歳さんから事情は聞きました!
早く、新海域へ向かいましょうッッ!!」
「わかった、すぐ行く!!」
着水していた金剛達に返事を返し、そして最後にまだ出撃していない千歳に最後の指示を飛ばす。
「他の駆逐艦の子達は港の警備に回してくれ、元々俺の策は成功率が低いはずだ……。
俺らが帰ってこなかったら、奴等はここにまで侵略してくるかもしれない」
「…………はい」
「これが俺の精一杯だ……龍田が多分入り口にまだいると思う。
あいつはしょっちゅう遠征に行ってる関係上、駆逐艦の娘とも仲が良い。
残った艦の旗艦にして、警備に当たらせてくれ」
「分かりました、準備が整い次第私もすぐに追いかけます!」
「頼んだぞ……待たせたな、金剛殿に榛名殿、全速力で発進ッ!!」
「ゴーーーーーーーーッッ!」
「榛名、出撃しますッッ!!」
二人の姉妹艦は、待ってましたと言わんばかりに港を飛び出す。
そして整備長の初出撃は、地獄と隣合わせの領域となってしまった。
絶望の宴は、これから始まる。
※tips※
普通に犯罪っぽい表現が鎮守府を出る時に混ざってますが
それほどの緊急事態という事を表現するためにこうしました。
「あの大災害」で、信号無視をしてれば巻き込まれなかった命はどれだけいたのだろう……
自転車自体は鎮守府の所有物のため、まぁ後でなんとかなる、はず。
そして①提督と②提督、もちろんどちらも自軍所属の艦娘はとても大切です。
皆さんと同じく、大切なのです。
俺のところはスーパーブラックで、このイベントでも朝潮さんが沈みましたが……手違いで。
今回mobとして参加した他の艦娘の台詞は、一部ゲーム内台詞の改変を採用してます。