螺旋と星と雷と    作:螺旋

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第1話 男、異世界に立つ

---------- ならば、この宇宙、必ず守れよ……

 

 

---------- 当然だ、人間はそこまで愚かじゃない

 

 全宇宙を巻き込んだ宇宙戦争。それは二人の男の意地のぶつかり合いの末、決着した。

 

 

 彼はかつて地上を知らなかった。自由を知らなかった。地下の世界がすべてだと思い、いずれ来る、落盤による村人の全滅も運命だと受け入れていた。しかし彼は、荒唐無稽な兄貴分に触発され、狭い穴倉から飛び出した。そして彼を待ち受けていたのは、地上の人間はすべて殺されるという残酷な世界だった。彼は、そんな世界で戦った。戦いの中で、かけがえのないものを失った。荒れて仲間を傷つけた。ボロボロの彼を信じてくれる存在に出会った。自分が誰なのかを思い出した。仲間とともに、地上の自由を勝ち取った。時が過ぎ、彼を信じ続けた人は彼の大切な人になった。その直後、彼女は彼の敵として立ちはだかった。自分たちの持つ力が脅威だと知らされた。安易な行動が市民の反感を買った。『俺たちが死ぬのはお前のせいだ』と非難された。仲間に糾弾され、死刑判決を受けた。刑務所で宿敵と再会した。宿敵と殴り合い、自分を見つめなおした。かつての仲間に救われ、すべてを救うと決めた。危機に陥った仲間を救うために宇宙へと飛び立った。彼女の心を取り戻し、月を止めた。必ず救うと約束した。敵の本拠地に殴り込んだ。仲間の死をすべて受け止め、敵の罠を打ち破った。閉じ込められた並行世界で、本物のアニキに助けられた。たどりついた宇宙の果てで、彼は彼女を救い、彼らは宇宙の行く末と覚悟と意地をかけた、最後のタイマン勝負に赴いた。

 

 

 

 宇宙最大規模の戦争は、二人の男の殴り合いの末、己を信じ、すべてを信じた男の勝利に終わった。彼は彼らから全宇宙を託された。全宇宙の民は解放され、自由を手にした。男は銀河の英雄となった。しかし、男はそれからすぐに表舞台から姿を消し、彼の行方を知るものはもはやだれもいなかった。だからこそ今、彼がどんな人物なのか、そもそも存在していたのかすらも誰もわかりはしないのだ。そう、()()()()()()1()0()0()0()()()()()()()()()()()()()()()()では。

 

 

 

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「『第203回全銀河平和螺旋会議』か……」

 

 

 地球上のどこか、都会とは程遠い、田舎町にある飲食店の入口の階段に腰を掛けた男は、手にした新聞のとある記事に目を通す。手にしたといっても、彼は世界中を旅し続ける旅人で、無一文であるから、それは風に乗って飛んできたいつ発刊されたかもわからない新聞である上に、月日の感覚も鈍ってしまっているので、新聞の日付がわかってもそれがちゃんとここ最近のものかどうかというのもまったく確かめようがない。もしかしたら、数年前の新聞で、もうそんな会議は終わってしまっているかもしれない。だが、男にはそんなことはどうでもよかった。彼にとって、そんな会議が続いてくれていることのほうが心の底からうれしいのだ。

 

 『螺旋の力』。二重螺旋構造の遺伝子を持つ螺旋族特有の、進化しようとする力。螺旋族の進化を可能とする一方で、増大し続ける力は制御することができない。その結果起こるのが宇宙の滅亡”スパイラルネメシス”。かつての戦争の原因であり、それを防ぐことが全銀河平和螺旋会議における最優先目標だ。

 

 戦争から20年後、第一回会議が開催されたころから、全螺旋族の間で、螺旋の力に対する認識が改められ、というよりもそもそも存在自体を認識され、使い方に慎重さが求められた。しかし、時がたつにつれて、人々の間では、螺旋の力の扱いへの意識の低下がみられるようになった。それどころか、『そもそもそんな力なんてあるのか?』と、存在自体が疑われるようになっていった。螺旋力の扱いがおざなりになりつつあるこの時代で、それでも5年ごとに開催されるこの会議は毎度毎度人々の注目を集め、人々にその危険性を再認識させる。何せ、各星々の最高代表が集まり、話し合うのだから。この会議はそれだけでも十分意義を持っている。いまだ完全な解決方法は見つかってはいないものの、繰り返されてきた会議の中で立案されたものは、各星々で実践され、それなりの成果をあげ続けている。きっと、いや必ず解決策は見つかるだろう、と男は確信するとともに、その礎を築き上げた、ちょっと頭の固いかつての仲間を誇らしいと思うのであった。

 

「さて、俺たちもそろそろ行くか、ブータ」

 

「ブッヒュイ」

 

手にしていた新聞を丸めて近くにあったゴミ箱に捨てると、男は相棒の名を呼び、再び当てのない旅を再開する。

彼の仲間は不老不死の彼を除いて、みな天寿を全うし、いまは誰もいない。あの戦いで螺旋力がみな覚醒したものの、その覚醒は一時的なものだったらしい。完全に覚醒してしまった彼と、彼の力の影響をすぐ近くで受け続けた彼の相棒は、実質不老の身となった。といっても見た目は、細身だが筋肉でがっしりした体形の中年のおっさんなのだが。彼は生き残った仲間の最期を一人も忘れることなく看取った。先に天国で待っていてくれ、と。俺はまだまだそっちには行けないから、アニキたちによろしく、と。彼はそんなことを思いながら。

そしてまた世界を周る旅を続ける。

 

   

 

-----------それが大体二か月くらい前の話。

 

 

 

「くそっ、失敗したかなぁ……」

 

 男は荒野のど真ん中をひたすらに歩いていた。彼の旅は基本的に風の向くまま気の向くまま。行きたいほうへ行くというスタイルなので、別にそんなところにいてもおかしくはないのだが、今、男はかなり困っている。方向感覚がなく、歩けど歩けど見えるのは赤い地面と岩ばかり。ここ一か月はろくに食べていなければ水も一滴も飲んではいない。40度近い暑さも相まって、男の頭からは煙が立っている。むしろ手持ちの食料と水で一か月持たせていたというほうがさすがといえばいいのか。一か月何とか生きているのは、ひとえに男のもつ巨大すぎる螺旋力のおかげだろうが、とにかく水だけでも確保しないと、この渇きの地獄から逃れられない。

 

「ブィ、ブブィブィ」

 

「『なれないことするからこうなるんだ』か。まぁその通りなんだけど、後悔はしてないさ。けど本当にどうしたもんかな、これ」

 

なれないこと、というのは、案内役なしでは方向感覚が失われて必ず迷い、一度迷えば3か月は抜け出すことはできないとうわさされる『魔の荒野』を彼は一晩で突っ切ろうとしたことだ。もともとはそんな物騒な場所ではなく、ただ年中暑いだけの荒野だったのだが、ここ一、二年のところ、行方不明になる者が急増したのだという。昔から気合と根性で無理無茶を通してきた彼だが、それまでの無理無茶とはある意味違った。そもそもそんな危険なことをする馬鹿はいるはずもないのだが、無理だ無茶だと聞いて興味本位で挑戦してしまったのが運の尽き。すぐに方向感覚を失い、荒野のど真ん中を放浪する羽目になった。相棒から説教をくらい、どう危機を脱しようかと首をひねる。

 

「あんまり自分のためにやりたくはなかったけど、やってみるか、水脈掘り」

 

文字通りの生き地獄の現状を打破するため、男は水脈を掘り当てようとする。男は穴掘りに関しては、子どものころから得意であり、世界を周る旅を始めたころは地球上の荒れ果てた村を訪れては水脈を掘り当て、その村を潤した。おかげで地球上でもはや水に困ることはないというほど、この男がなしたことは大きかった。今回もそうやって水を手に入れようと考えているのだが、ここは荒野のど真ん中。雨もろくに降らないそこに、水脈などあるはずもなく。男は地獄のせいでちょっと頭がやられていた。

 

 ハンドドリル片手に地面を掘り進めていく男。しかしいくら掘っても水脈は見つからない。少し冷静になって、どうしたものかと考えていると、

 

 

 

 ------ ブゥン ブゥン

 

 

 

「ブィ?」

 

見た目特徴的な形をした胸元のアクセサリーが反応し始めた。

 

「この反応、近くにラガンでも埋まってんのか?」

 

男は水脈そっちのけで宝探しを始めた。ハンドドリルを回し続けることおよそ3分、大きさとして、少し大きめな一人部屋くらいの空間をくりぬいた男が見つけたものは、彼のかつての相棒ではなく、

 

「石……いや、宝石か……?にしてもなんでこんなものにコアドリルが反応するんだ?まさかこいつはコアドリルと同じ性質を持っているとか……」

 

男は手にした石を持ち上げたりひっくり返したりして全体を見回してる。しかし見れば見るほど何の変哲もなさそうなこの石にコアドリルが反応したことに疑問が絶えない。そうやって何度か回していると、

 

----- ブォン ブォン

 

「なんだ……?……ッ!?」

 

「ブィイ?!」

 

コアドリルが先ほどよりも強く反応を示したかと思うと、同時に石も強い光を発して、男は目を閉じてしまう。石が発した光は二人を包み込み、次の瞬間、二人ごと光はこの世界から消えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは……どこだ?」

()()が目を覚ましたのはどこかの町の公園。男は、異世界へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 




書いてみて思った。ハーメルン投稿者さんはみんなすごい。3000字だけでこんなに精神力を使うとは(泣。シモンらしさが出てるかなぁなんてびくびくしながら書いてます(汗。
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