螺旋と星と雷と    作:螺旋

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第5話 男の秘密?

「全銀河螺旋平和会議って知ってるか?」

「ぜ…全銀河……平和会議……?」

 

夕食を食べ終わったシモンは桃子とともに皿洗いをしながら、リビングにいる士郎たちに質問する。最初に反応したのは恭也だった。

 

「全銀河っていうくらいだから、シモン君の世界には宇宙人がいるってことだよね!?」

「あぁいるぜ、宇宙中にな。まぁ、俺の世界ではそんな呼び方はしてないんだけど。相手からしたらこっちだって宇宙人ってことになっちまうし」

「あ~そっか。じゃあなんて呼んでるの?」

「螺旋族って呼んでるんだ。星によって呼び方とかは変わんないんだよ」

「螺旋族??なんかこう、変な名前だね……」

「そうか?かっこいいと思うけどな。っと、はい、桃子」

「ありがとう、シモン君」

 

シモンの話に食いついた美由希。シモンは話しながらも皿洗いにぬかりはない。すると、驚いていた恭也も話に加わってきた。

 

「お前のいた世界ってなんかすごいんだな。俺たちの世界では、宇宙人っていうのはまだいるのかいないのかはっきりしていないのに。……やっぱ宇宙人って、見た目がタコみたいだったりするのか……?」

「タコ、かぁ……」

「ああ、悪かった。そこらへんわかんないよな。ほら、こんな感じのやつだ」

 

宇宙人と聞いて、恭也は典型的な火星人の姿を想像してしまったようだ。今までの会話で、シモンのいた世界とこちらの世界はかなり違うと理解していた恭也は、チラシの裏の白紙の部分に簡単なタコの絵を描いて見せる。

 

「いや、こんな変な姿はしてないよ。……そうだな、地球にいる螺旋族と比べても、特に変わったところはないな。みんなちゃんとしたヒトの姿をしてるから」

「はぁ、そうなのか。俺たちがイメージしているものとはだいぶ違うみたいだな」

 

恭也は顎に手を当てて話す。シモンの答えは恭也にとってかなり意外なものだったらしい。

 

「さっき平和会議と言っていたけれど、それは定期的に行われているのかな?」

「ああ、5年に一度、春にな。会議の時には、宇宙中から各星々の代表が集まってくるんだ。時期が近くなるとテレビなんかで大々的に宣伝されたりしてさ。そりゃもう毎度毎度お祭り騒ぎだよ」

「なるほど。でもそんな会議を開くようになったということは、星々の間で何か戦争のようなものがかつてあったということになるが……」

「戦争?!そんなことがあったの!?」

 

今度の質問は士郎だ。話に出てきた「平和会議」という部分に引っかかった士郎は、それがかつて戦争があったという事実と、会議がその反省から開かれるようになったということを推測する。

 

「……ああ、確かにあった。けどそれは1000年以上も前の話だ。今はその被害による影響はほとんどないよ。それに、その戦争は星と星との間に起こった戦争じゃなくて、螺旋族が持つある力をめぐって起こった戦争だったからな。星々の間に起こる戦争を防ぐためじゃなく、その力による災いを防ぐために開かれる会議なんだ」

「ある力?それに災いって……」

「なんとも物騒な話になってきたな……」

 

恭也たちはシモンの話を聞いていくうちに冷や汗をかき始めた。「戦争」と「災い」。その2つのパワーワードがシモンの世界にはもっととんでもない秘密があることを物語っていた。

 

「…あっ、あの!」

「ん?」

「さっき言ってた、学校に行ったことがないって、どういうことですか……?」

 

話がだんだんと難しくなっていくのを引き留めたのはなのはだった。なのはは先ほどの会話からそのことがずっと気になっていた。シモンは真剣な表情になり、口を開く。

 

「……それはな……俺が……1000年以上生きてるからだよ」

 

「「「「えっ!?」」」」

 

「……なんてな!」

「「「「あだぁ!?」」」」

 

まさかのさらなる衝撃的事実に一同またフリーズしてしまったが、そのあとの一言でそれがシモンのついた嘘だったと思い込み、ずっこけてしまった。

 

「今日はここまでにしようか。まだ時間はあると思うし、ここにいるうちにゆっくり話していくよ」

 

シモンの一声で、シモンの世界の話はいったん持ち越されることになった。

 

「なら、お風呂沸かしましょうか。シモン君、先に入る?」

「居候の身で一番風呂はちょっとな……。一番最後でいいよ」

 

桃子のはからいだろうが、泊まらせてもらってごはんまでいただいている身なのに、それに加えて一番風呂となるとさすがに気が引けた。

 

「そうだ。シモン君、ちょっとついてきてくれ」

「ん?ああ」

 

士郎に呼ばれてシモンは士郎についていく。

 

「ここがしばらくは君の部屋になる。少々埃っぽいが、そこは我慢してほしい」

「ここが……」

 

士郎に案内されたのは、古い書斎のような部屋だった。なんでも数年前までは士郎が使っていたのだが、最近は家族と過ごすことに時間を割きたいと思って使わなくなっていたらしい。部屋の右側には本棚があり、左側にはベッド、奥には木製の机やいす、電気スタンドが置いてある。シモンが使うには十分だった。

 

「十分だよ、ありがとう、士郎」

「どういたしまして」

 

士郎はそう言ってリビングに戻る。シモンは一時的に自分のものとなった部屋を見回す。そしてベッドに腰かけ、ふぅと口から息を漏らす。とにかく今日はいろいろあった。気疲れというほどでもないが、やはり少し頭の中を整理する時間はほしかった。

士郎たちと話をしてみて、ここは自分のいた世界ではないと確信が持てた。そしてそれがあの石の力ということも。

 

「別の世界、かぁ。なぁブータ、アニキたちが知ったらきっと驚くだろうな。俺たちはまだまだ先へ進めるんだなって言って。ははっ!」

「ブィ!」

 

今はいない仲間たちがこのことを知ったらどう思うかを想像して、つい笑いがこみ上げてしまう。シモン自身も最初こそ戸惑ったものの、今は新しい世界に来たことにワクワクし始めていた。

 

「でもって元の世界に戻る方法って言ったら……。やっぱこの石をもう一度使うか、あるいはアレができれば……」

 

シモンには石の力以外に元の世界に戻る方法があるようであった。しかし今までできるかどうか以前にやってみようとも思わなかったことである。その上、それができたとして世界を越えられるかどうかもわからない。一か八かの賭けではなく、むしろ0%からの出発だった。

だが、今まで0%を100%に変えてきたこの男には、そんな確率など意味を持たない。

 

「…ウジウジ考えたってしょうがないよな。とにかくやってみよう。『無理を通して道理を蹴っ飛ばせ』だ!」

 

いつもと同じ。気合で突き進むだけ。

シモンは考えることをやめてとにかく試してみることにした。

 

そのとき、

 

 

 

 

〔聞こえますか…?僕の声が聞こえますか…!?〕

 

 

 

 

「!?」

「ブィ!?」

 

頭の中に誰かの声が響いた。

 

「ブータ、聞こえたか?今の声!」

「ブム!」

 

同じく聞こえていた様子の相棒にも確認をとる。

 

「一体どこから…?近くで話している感じじゃないし、頭の中に直接響くような…」

 

窓から身を乗り出して周りを見渡すがどうも近くに助けを求めるような影はない。するとまた声が頭の中に響いてくる。

 

〔僕の声が聞こえるあなた、お願いです。僕に少しだけ、力を貸してください!早く僕のところへ!時間が、危険が、もう……〕

 

そこで声は途切れてしまった。

 

「相当まずいみたいだな。仕方ない、風呂は明日もらおう。急ぐぞ、ブータ!」

「ブィ!」

 

声の様子からしてかなりの緊急事態。助けなければいけない人物の捜索に加えて、その人物を襲っている危機を解決するとなると長丁場になる。士郎たちには悪いが今日の風呂はお預けとなった。

 

急いで玄関まで行き、靴を履いていると、

 

 

「お兄さん!?」

「えっ?」

 

後ろから驚くような声が聞こえる。振り向くとそこには

 

「なのは、どうしたんだ?」

 

こちらを緊張した面持ちで見るなのはがいた。

 

 

 

 

 

 

------数分前

 

”アリサちゃん、すずかちゃん。あの子はうちで預かれることになりました。明日、学校帰りにいっしょに迎えに行こうね。”

 

「あっそうだ。あのお兄さんのことも書いとかなきゃ。アリサちゃん、すごく心配してたし」

 

自分の部屋でなのはは、傷ついたフェレットを預かることの許可が下りたことと、シモンが居候することになったことをメールで二人の親友に報告しようとしていた。

 

”あと、お兄さんはしばらくうちに泊まることになりました。やっぱり悪い人じゃなかったよ。

なのは”

 

「------送信っと。結局、学校のことは上手にはぐらかされちゃったなぁ。また今度聞いてみようかな?」

 

シモン本人はゆっくり話すと言ってくれていたが、彼は大きな秘密を抱えているように感じた。すべてを話してくれるかどうかも難しいところだ。いつか二人きりで話す機会があればその時に思い切って聞いてみようかなとなのはは考えていた。

 

そのとき、

 

 

 

 

〔聞こえますか…?僕の声が聞こえますか…!?〕

 

 

 

 

シモンが聞いた声と同じものがなのはの頭の中に響いたのだった。

 

(あの子がしゃべってるの?)

 

なのはには声の主に心当たりがあるようだ。声が途切れてしまうと、急いで寝間着から普段着に着替え、玄関に向かう。だが、そこには同じように急ぐ様子のシモンがいた。

 

「お兄さん!?」

「えっ?」

 

シモンがこちらに振り向く。

この世界に行く当てがないシモンが、こんな夜遅い時間にどこかへ出かけようとしていることに驚いて、声を出してしまった。

 

「なのは、どうしたんだ?」

「お、お兄さんこそどうして…」

 

まさか頭の中に助けを求める声が聞こえた、なんて言っても信じてもらえるかわからないと思ったなのはは、シモンに質問を返すが、

 

「頭ん中に誰かの助けてって声が聞こえたんだ。なのは、悪いけど士郎たちにちょっと遅くなるって伝えておいてくれないか?なるべくすぐに終わらせて来るから!」

「あ、あの、ちょっと待ってください!」

 

まさに自分と同じ事情で今にも外に飛び出していきそうなシモンをなのはは引き留める。

 

「私も!き、聞こえたんです!場所もわかります!だから私も……」

 

止められると思ってなるべく家族や年上の人に知られたくなかったなのはは、シモンに必死で自分もついていくという意思を伝えようとするが、拒否されると思うとだんだんと声が小さくなってしまう。だが、

 

「そうか、なら一緒に行こう。俺はこの世界の地理はまったくわからないからな。なのはが一緒に来てくれたら早く助けられるかもしれねぇ!」

「へっ…?あ、はい…」

 

二つ返事で同行を了承され、驚いてきょとんとしてしまう。

こうしてさっそく現場へ向かおうとする二人だが、

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ乗れ!」

「はい!……はい?」

 

 

 

 

 

 

 

外に出るとシモンはしゃがんでなのはに背中を差し出す。

 

(これって…アレだよね…?)

 

きょとんとしたまま固まっているなのはにシモンは告げる。

 

「何やってんだ?おんぶだよ、早く!」

「あ、あああああああの!」

「ん?」

 

何か焦っているようななのはにシモンは首をかしげる。

昔は父や母によくしてもらってはいたものの、もう小学3年生になり、そういうことが恥ずかしくなってきていたなのは。しかもそれが父や母ではなく、知らない年上の男ともなれば、恥ずかしさはぐんと大きくなった。顔を赤らめてどもるなのはにシモンは無意識の追撃を行う。

 

「俺のほうが年上だから、俺の足に合わせるのが大変だと思って考えたんだけどな。俺一人突っ走ってもなのはより遅くちゃ意味ないし、こうしたほうがどっち行ったほうがいいかなのはが指示出してくれれば、二人一緒に走るより早く着くと思ったんだ」

「うぅ…」

 

そんな乙女の心情を察することもなく、シモンには珍しい合理的な説明になのはは追い詰められていく。

 

「だめか。なら他に手は…」

(ここは私が先に代わりの方法を……!)

 

シモンに先回りして他の手を考え出そうとするなのはだが、

 

(お兄さんの言う通り、二人で走るよりも私が案内しながらお兄さんに運んでもらったほうが早いから、そうすると、だっこ、肩車、俵担ぎ……)

 

……おんぶよりひどかった(恥ずかしさとかの意味で)。

 

「……すみません、おんぶでお願いします……」

「ん?おう!」

 

恥ずかしさよりもとにかく助けるほうが先だと思いなおしたなのはは、恥ずかしさを我慢してシモンの背中におぶさった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここか!」

「は、はい、こここここです!」

 

------槙原動物病院

 

なのはの案内に従ってたどりついたのは、フェレットが入院しているはずの動物病院。

なのははやっとおんぶから解放されたが、いまだ恥ずかしさで顔が赤く染まっていた。

 

「ここのどこかにいるんだな。手分けして……っ!?」

「うぁっ!?」

「ブミッ!?」

 

突然頭の中に耳鳴りのような擦り切れる音が響く。お世辞にも心地よい音とは言えず、三人とも目と耳をふさいで立ち尽くしてしまう。

 

「また…この音…」

 

しばらくすると音が止み、目を開けられるようになる。だが、

 

「ヴオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

今度は獣のような叫び声が聞こえてきた。

 

「ヤバいやつがいるな。なのは、お前はちょっとここで待ってろ。俺が探してくる!」

「えっ!?あっ!あれは!」

 

声の主はかなり危険だと察知したシモンは、なのはに待機するように言って駆け出す。

それと同時に病院の陰から一匹のフェレットが飛び出してきた。

 

「ヴオオオオオオオオオオオ!!」

 

そのすぐ後を追いかけるように、全身真っ黒な毛でおおわれた化け物が突進してくる。何とか木の上に避難したフェレットだったが、化け物の突進で木は折れ、そのままでは宙に投げ出されてしまう。

 

「こっちに!」

 

なのははフェレットに体を向け、それに気づいたフェレットは落ちる寸前の木を踏み台にしてなのはに向かって飛び出した。なのははうまくフェレットをキャッチし、三人は木の根元にいる化け物のほうへ目を向ける。

 

「……なぁなのは。あれもこの世界の生き物なのか?」

「いえ、あんなの見たこともないです……」

 

化け物に向けて構えるシモンと呆然とするなのは。すると、

 

「来て、くれたの?」

 

「しゃべった!?」

「そうか、フェレットってのはしゃべれるのか!」

「いやふつうはしゃべりません!?」

 

フェレットがしゃべるという摩訶不思議な事態になのはは驚き、この世界のことがまだよくわかっていないシモンは天然ボケをかましてしまう。

 

「ヴオオオオアアアアアアアアアアアア!!」

「「っ!!」」

 

自身の上に倒れた木を跳ね飛ばした化け物は、その赤い目を見開き、シモンたちを見据える。

 

「とにかくここから移動しよう。どこか別の場所であいつをぶっ飛ばす!」

「えっ!?ぶっ飛ばすって、戦うってことですか!?」

「ああ!あの化け物はそいつを狙ってるみたいだからな。逃げ回ってもあきらめずに探し続けるはずだ。そのうちにあの化け物が誰かを襲っちまうかもしれねぇ。だったらどこかであいつを倒すしかねぇだろ!」

 

あの化け物を放っておいては高町家のみんなだけでなく、たまたま遭遇して襲われる人が出てくるはずだ。そんなことにはしたくない。そう思ったシモンは、化け物を倒すことを決めたのだった。

 

 

 




今回で第1話を終わらせると言ったな。あれは嘘だ。









じゃなくてすみませんでした(謝。ぐだぐだ書いてたら目安としている5000字に到達してしまい、終わらせられませんでした。次回には終わらせられたらいいなぁ(オイ。
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