號熱鋼神インフィニット・ストラトス~獅子王者伝説~ 作:バルバトスルプスレクス
つい最近までどこにでもいる典型的な少年・遊薙雪は15年生きてきた人生の中で、今日の様な出来事に遭遇したことは無かった。
四人目の男性IS装着者で、特例として女子高でもあるIS学園に入学してしまった事も重大な事態であるが、それ以上の事態が雪を襲っていた。彼の目の前、と言うよりも同室の相手は女子生徒だったからだ。冷静になって考えてみれば、
対する眼鏡を掛けた女子生徒も、雪と同じように狼狽えてみせた。恐らくは彼女も事前に聞かされていたとはいえ、言葉が出なくなってしまっている。
「あ、その……えと…」
「あ、ぼ、僕は遊薙雪です…」
「さ、更識簪……です」
改めての自己紹介も済ませることが出来た二人だが、そのまま固まってしまい二の句が継げぬ状況に陥ってしまった。
相部屋になった簪と名乗る少女の雪から見た印象は、儚げに咲く一輪の花の様に思えた。下手に触れれば散ってしまいそうな、そんな印象だった。だからだろうか、つい彼女の容姿に雪は見とれてしまっていた。だがしかし、直ぐにそんな考えを捨てて、私物が入っている筈の積み上げられた段ボール箱を見つけると即座に荷解きに行動を移した。
実家から送られた雪の私物は私服や肌着などの衣類、携帯電話の充電器にほんの少しの嗜好品がいくつか入れられていた。これで足りなければ休みの日などを利用して買い物に出かければいい。粗方片付いた所で、簪が恐る恐る声を掛けた。
「あ、えと……窓際のベッドは私が使ってるから…」
「え、あ……うん、わかったよ更識さん」
それ以上二人は会話することなく、ただただ時間だけが過ぎていった。
荷解きを終えて携帯電話のディスプレイに目を向けると既に夕食の時間を示しており、空腹感が突然雪を襲う。確かこの学園では食堂があったはずだ。先月の頭に届いたパンフレットに載っていた情報を思い出し、改めてその地理を確認。それ程遠くないことが解った。視線をパンフレットから外すと同時に、部屋のドアを誰かが叩く。
「おい、雪いるかー?飯行くぞー!」
来客の正体である幼なじみの友人が食事に誘いに来たようだ。直ぐ行くと返事を返した雪は簪の方に顔を向けるが、両腕をクロスして拒否の意を示していた。確かに知らない人間に囲まれての食事は些か不安な事だろう。そんなことを何となく察した雪は彼女の意志をくみ取って部屋を出た。
ドアを開ければ実弟と親友が待っていた。「よっ」と声を掛けた慎也に軽く返してそのまま食堂へと歩き出す。その道中で慎也と咲羅の部屋は雪と簪の部屋からある程度近い方にあると言う。
「――で、反対隣が一夏の部屋だったんだがな……」
「アイツはトラブルを起こすことに関しては……ある意味天才に近いよ」
「あー、何があったかは聞かないでおくよ、うん」
表情に出さないモノの半開きの死んだ魚よりも酷く濁っている様に思えてしまう友人と弟の前を見ている筈なのにどこか違うところを見ていそうな目を見て、雪はこれ以上何も聞かないことにした。
しかし問題なのは一週間後の試合の事だ。雪ら三人は既に専用機を有しているものの、対戦相手のセシリア相手にどこまで食いつくことが出来るだろうか。素人が一週間で習得できる経験値など、熟練者から見ればたかが知れる。実力差は明らかだ。ならば三人が取るべきは誰かコーチになってくれる人物を探し出して、教えを乞う事だけ。
その誰かを見付けなければ当然本番勝負しかない。雪が内心そう思ったその時だ。三人が食堂に入る前に二年生らしい女子生徒が声をかけてきた。曰く、一夏の指導を買って出たのだが、かの篠ノ之束の妹とやらがそれを断ってきたという。
「――で、君たちでよかったらどうかな?相手はイギリスの代表候補なんでしょ、生半可な実力じゃ返り討ち間違いなしなんだけど」
その女子生徒の申し出は三人にとってありがたい事だったが、この瞬間雪は気づいてしまった。その女子生徒の目が咲羅と慎也に向けられていたことに。
いつもの事だ。ここでも変わらない己の扱いを悟る。悟らざるを得ない状況には既に慣れている。
「でも大丈夫なんですか先輩。俺と慎也と兄貴の三人まとめてだと……」
「あ、大丈夫だよ咲羅。僕は僕のほうでいいコーチを見付けるから」
それじゃ、と短く言って雪は席を立つ。咲羅と慎也も長い付き合いから彼の行動理由を悟り、引き留めようとするも、既に食器を返却して声の届かない所まで行ってしまった。
寮の部屋に戻る道すがらのことは覚えていない。一体どのようなルートを通り、どれほどの時間をかけて戻ったのか覚えていない。これが初めてのことじゃないのは確かなのだが、どうにも慣れない。慣れたくもない。
相部屋の女子生徒に気をかけてノックしようとしたところで、ドアが開いた。簪だった。しかし出迎えではないようで、「…少し出る」と控えめな声で雪の脇をそそくさと小走りで抜けて行った。幸か不幸か孤独に浸れることができた。自分に割り当てられたベッドの上に体を投げ仰向けになり、大きくため息をついた。弟と親友以外にこの学園に親しい友人はおらず、全くと言っていいほど二人以外に当てがない。
雪は幼いころ他人から咲羅と何かしら比べられることが多かった。勉学については同程度だったからか問題はなかったが、運動面や社交性において咲羅がほとんど上回っており、雪は運動は平均的で性格はやや内向的。もっとも咲羅だけでなく慎也や家族が支えてくれてから変な方向にズレる事無く、今の雪自身がいる。
扉が開く音に気が付き、視線を向ける。
「あ、お帰り……なさい」
「…うん、ただいま」
茶封筒片手に能面の如く無表情のまま戻ってきた簪は、雪と視線を合わせることなく部屋の備え付けの机に向かって封筒の中身を取り出した。中に入っていたのはワープロで
読み終えた用紙を封筒に戻して引き出しにしまい込んで、次はカバンからノートと教科書を取り出した。
「あ、あの……!」
「クラス代表の試合のコーチ、見つかったの?」
「それはまだ………っていうか、何で知ってるの?」
コーチを頼もうとした雪であったが、今日初めて会ってからそんな話題は一切しなかったはずだ。が、しかし直ぐにその疑問は解かれることになった。
「職員室で、あなたのクラスの担任の先生からちょっと…」
「そっか、織斑先生から聞いたんだ。うん、そう。そうなんだよね」
事の始終が雪の口から語られると、彼女はただ「なるほど」と小さく呟くだけ呟いて納得する。売り言葉に買い言葉その果てに決闘に奴隷とは時代錯誤も甚だしく、些か幼稚に思えてしまうと簪は考える。
「あ、そうだ…」
「ごめん無理」
即答で本題に入ることもなく拒否されてしまった。やんわりと拒まれることはあるだろうとは思っていたが、まさか秒で断られるとは露程思わなかった。「だよねー」と目尻からホロリ流れる涙を気にせず雪は項垂れるしかなかった。
「ごめん、更識さん。やっぱりいきなりで迷惑だったよね」
「あ…いや、そ、そうじゃなくて…その、訓練用のISが二か月先まで借りられないらしいから実技のほうは多分無理かもって言いたっかったんだけど…言葉足らずでこっちもごめんなさい」
どうやら幸いにも初対面で嫌われていないようでホッと胸をなでおろす雪は、ならばせめてと出来る限り別の方法での指導を乞うた。
IS自体は操縦者の身体に纏う物ではあるが、体力だけでなく如何なる場合でも対処できる知識などが必要とされる。聞けば簪は日本の代表候補製である為、少なくとも雪よりはISにおいて先輩ともいえる。そんな彼女の指導はまずISの基礎の復習と共に、対戦相手の研究だった。
しかし、やはりというかその後試合当日まで二人はISを使用した特訓をすることができなかった。
@
ついに、クラス代表を決める試合の日を迎えた。
巻き込まれた形で参戦することになってしまった雪達は一夏対セシリアの後その都度入れ替わりに戦う形となっている。しかも五人も候補がいる訳で、今日から二日間に渡って放課後に行うと言うのだ。
それぞれの出番が来るまでアリーナの更衣室で待機するように千冬から言われている。
雪がふと、時計に目をやった。ここで待たされて何度時計を見直したことか。思っていた以上に時間は進んでいなかった。
ただ一人、たった一人で自分の出番まで待たされるというのは新手の拷問ではなかろうか。まだ一夏とセシリアの試合が開始してから一時間も経っていない。
「……不安になってもしょうがないよね」
左腕に巻く
もう少しでお前のお披露目だ。今の内にゆっくりと気持ちを整えようか。前日の内に会社から追加の武装を送ってくれているから、今頃はもうピットには届いているかもしれない。
そう思いながらも雪は両手で顔を思いっきり叩いて気を引き締める。
その時だ。強い衝撃音がアリーナのほうから雪の待機している更衣室に伝わってきたのだ。同時に左腕の待機状態の愛機からアラームが鳴る。それは、空の彼方から脅威が迫ってきたことを知らせる合図であった。
@
中断してしまった先ほどの試合で白式とブルー・ティアーズのシールドは限りなくゼロに近く、目の前に存在する五体の怪生物を殲滅はおろか一体倒せることも難しいかもしれない。まさに万事休す、まさに絶体絶命の窮地である。
先ほどからしきりにクワガタのような顎を動かしながらカサカサとうろついている様は見ていて気持ちの良い物ではない。もとより怪生物の出現という非現実的な現状を必死に頭の中から払いのけようとするも出来ないでいた。
スターライトMark3の銃口から放たれる光線は怪生物の甲殻を破壊するどころか傷すら付けることはできず、一夏の斬撃も弾かれるばかり。撤退しようにも既に袋のネズミ。
こんなところで死ぬ運命なのか。もはやこれまでという危機的状況のさなか、突如として自分たちに襲い掛かる怪生物を白い影が弾き返す。
「二人とも、無事?」
現れたのは白い体に金色の鬣を持った機械のライオンと、その背中に跨って一夏とセシリアの二人を見下ろした雪だ。その彼の姿はさながらジャングルの王者ターザンのようではあるが、ハイパーセンサーを通して見た情報が正しければ、機械のライオン自体が雪のISなのだという。そのような今までの一般的なISとは次元が違い過ぎる代物を同い年の少年が当たり前のように動かしていることに、これが現実なのかと目を疑ってしまう。
しかし、これはまさしく現実。大いなる伝説の始まり。そして、これは新たな神話の一ページ。
「さぁ行くよ、ライガー!皆を守るために!」
アリーナの地を、
「獣装!」
相棒のコールに鋼鉄の獅子が高らかに吠える。装甲の隙間から光が漏れだしたかと思えば、次の瞬間、雪の体に、コアライガーが彼のIS『
そんな新たな標的の登場に昆虫の様な複数の怪物は群れを成し奇声をあげて獅子王に威嚇する。だが雪は、獅子王は怯まない。
「はあぁぁっ!!」
まずは大地を蹴り、距離を詰めて怪生物の顎に膝を打ち付けた。罅が走り、所々甲殻が剥がれた怪生物はお返しとばかりに獅子王に牙をむいた。クワガタに似た顎を大きく開き両断を試みるも、がっちりと顎を掴まれてしまった。
前にも進めなければ後ろにも戻れない。それほどの力を有しているのが見てわかる。そのまま怪生物を持ち上げてほかの四体めがけて投げ飛ばすも、入れ替わるように二体の怪生物が獅子王に突撃。時間差で二方向から獅子王を雁字搦めにして動きを止めた。
「しまっ……がぁっ!!」
身動きが取れないことを良い事に、残りの三機が次々と拘束されている獅子王にダメージを与えていく。
幸か不幸か怪生物の興味は殆ど獅子王に集中していて、一夏とセシリアに対してさほど興味を示していない。獅子王者と比べて脅威度が低いからだろうか。逃げるなら今しかないと、セシリアが一夏に撤退を提案する。あとは教師たちがどうにかしてくれるだろう。そう言って一夏を説得するも、彼はすぐに否定する。
「だけど、あのままじゃ雪が!」
元来正義感は人一倍強いほうであると自負する一夏。そんな彼の良心やら正義感が自分たちを助けに来てくれた雪を、獅子王を見捨てて逃げるという選択肢を取らせてはくれない。いや、取ろうともしなかった。
「彼はきっと先生方が助けてくれます!ですが今は自分の命を優先しなければなりませんのよ!」
「だからって……だからってあいつを見殺しになんか――!」
出来ない。そう言いかけたその時だった。
「二人とも、早く逃げろ!俺が時間を稼ぐからその間に二人は逃げるんだ!」
獅子王が叫んだ。普段の穏やかな彼からは想像の出来ない
「雪。今お前俺って……!?」
「早くっ……ぐぁっ!!今は俺の事は気にしないでくれ。あと少し、もう少しで…!!」
怪生物の波状攻撃は留まる所を知らず、防御の姿勢も取れぬままの獅子王のシールドエネルギーを徐々に削り取っていく。必死に抵抗し続ける獅子王であったが、突如ピットの方から光が漏れだしたのだ。同時に獅子王の装甲の隙間からまたも光が強く漏れ出し、怪生物たちは一旦獅子王から距離を取る。
「そうか、もう……よしっ!獣装合身、GO!
そのコールと共に、ピットから三つの影が飛び出した。
背面ウィング部分と両腕を備えたステルス戦闘機型のアームドステルス。下半身の役割を秘めた二連装の自走砲型のレッグタンカー。そして、大鷲型のイーグルメットの三機が獅子王を中心にそれぞれポジションを取って変形する。
獅子王の手足が背面に折りたたまれると、機体下部の腕部を広げた逆さ状態のアームドステルスが背面にドッキングして両腕とISでは珍しいロックユニットのウィングとなった。そしてレッグタンカーの二本の砲塔が左右に分かれてサイドアーマーとなり、足の裏からふくらはぎにかけてキャタピラが移動して獅子王にドッキング。最後にイーグルメットが前後に分割。イーグルメットの頭部から翼を含めた腹部の部位が胸の獅子の新たな鬣となり装着される。残りの足と尾羽の部位が名の通りの兜に変形され最後に両手で掴んで被った。
「真っ赤な太陽その身に受けて、燃やせ命の
それは、永きにわたり男達が夢見た憧れの象徴。
それは、後の世に語り継ぐべき人類の新たな遺産。
その名も、
合体が完了した勇者は重量感のある走りで目の前の昆虫型怪生物に近づいて、鋼の拳を突き立てた。直撃を受けた怪生物は悲鳴をあげながら引き飛ばされるも、即座に身を翻して体勢を立て直す。
この勇者の登場は、突然の脅威におののく少女たちを勇気付けるには充分だった。まるで男の子向けのロボットアニメのような展開。少女たちはテレビの前の男児のように固唾を飲んで見守るしかなかった。
相対する怪生物は己の複眼で獅子王者を捉え、突撃。大型バイク並みの初速から繰り出される突進攻撃はその質量と地表の剥がれ具合から普通自動車以上の衝撃があると思われる。
しかし獅子王者は怯まず、その場を一歩も動かないまま衝突と同時に怪生物を片手で止めて投げ返した。
「どうした?その程度か?」
ライトグリーンの
一歩一歩進む度に、アリーナの地にくっきりと獅子王者の足跡が生まれる。
「……ならばこちらの番だ!」
怪生物の猛攻をものともしなかった獅子王者の腕部に折りたたまれた三枚の爪の様な武装が展開される。
名刀を思わせる美しい刀身。それが両腕に計6枚も使用されている。見る人によって様々な感情が沸き上がるだろうが、一夏の様な男児であれば真っ先に『格好良い』と呟いてしまうだろう。
「
大地を蹴り、距離を詰めて一閃。更に怪生物の甲殻の隙間に差し込んで上空に放り投げ、顎を一閃する。だが、獅子ノ爪は現状では威力が低い牽制にしかならず決定打に欠ける。かと言って
ならば、と勇者は右腕を高く掲げ叫んだ。
「サモン、
その背後で五つの門が出現と同時に開門。その中から量子展開されて現れた機械の動物たちが、怪生物たちを威嚇する。主とともに、目の前の怪生物に立ち向かう。
美しく煌びやかに光る剣のような角を持つ
見た目はメカニカルマスコットのような獣兵装達。だが、その見た目の可愛らしさとは裏腹に、勇ましい咆哮を上げる。切り札が使えないのならば、頼りになる仲間たちの力を頼るまでだ。
「行くぞ皆!」
獅子王者に続くように、獣兵装達もあとに続き怪生物に各々の得意技をぶつけていく。
一角馬をモチーフにし、額に聖剣を生やしたユニコーンブレード。
それと対になる天馬の如き純白のペガサスシールド。
回転する二本角で怪生物を跳ね飛ばすのはサイのライノスドリル。
飛行能力を持ち合わせていない怪生物を空中から翻弄するツバメの形をしたスワローアロー。
そして文字通り猪突猛進のごとく突進攻撃を繰り出すボアハンマー。
それぞれ青、白、緑、黄、ブラウンのカラーリングをした機械の動物たちの姿は、怯えている観客たちを安心させるのには充分だ。
「アームズコネクト、
突然獅子王者が発したそのコールを、即座に受け付けた青い一角馬剣は頭部と前足部分が聖剣のように変形し、残った胴体と後ろ足部分は獅子王者の増設肩アーマーとして左肩に装着された。
獅子王者・
「
装着と同時に獅子王者の右手に握られた青い刀身に光が宿る。胸の獅子が咆哮を挙げると更にその輝きは強く増していく。本能的に死を覚悟した怪生物は技を放つ前に勇者を食い殺さんばかりに牙を広げるが、それよりも先に獅子王者が青い刀身を構えて迷うことなくその一太刀を振るう。
「切り裂け、
振り抜いた刃がまず一体目を頭から真っ二つに切り裂いた。慣性の法則に従って獅子王者の後方で爆発し、二つの炎の山を作り上げた。直後、内臓エネルギーが切れたのか、一角馬剣は青い粒子となって消えて、燃え盛る炎の中に照らされた獅子王者の勇姿には傷一つ付いていない。
ならばと怪生物が狙ったのは逃げ遅れた女子生徒たちのる観客席。連続で吐き出される火球が非常にも彼女たちに襲い掛かる。
「アームズコネクト、
獅子王者のコールを受けた純白の天馬が頭部と翼と前足部分で盾の形に変形し、ユニコーンブレードの時とは正反対に盾と残りの部分がそれぞれ左手と右肩に装着される。
獅子王者・
「
獅子王者の左手に握られた聖盾が眩い純白の光を放ち、勇者は勿論、彼の後にいた逃げ遅れている女子生徒たちを包み込んだ。
穢れのないその光は、獅子王者の背後の総てを覆うように展開される。
「絶体に通さない、
獅子王者の防御技が火球はどれも光の壁を通り過ぎることなく消え失せた。
光の壁が消えると同時に獅子王者に装着されていたペガサスシールドも白い粒子となって消えた。
もう後がないと本能で感じ取る怪生物であったが、それが却って闘争心を高めていく。怪生物に明確な意思があるかはともかく。
「アームズコネクト、
だがしかし、それでも獅子王者は退かない。下がらない。
緑色の犀が手足を収納すると腹部が開き、左腕の肘から先を包み込んだ。
獅子王者・
「
ドリルの回転速度が増す度に怪生物は己の死期が近づいているのをこれまた本能で悟る。逃げようと足を動かすも、それよりも早くバーニアで一気に距離を詰めた獅子王者・螺旋形態のドリルが怪生物の胴体を穿つ。
「突き貫け、
二体目がここで粉々に砕かれた。犀螺旋のドリルが貫通し、回転を止めないドリルが怪生物の固い体を振動で粉砕したのだった。
「アームズコネクト、
黄色いツバメが獅子王者・
「
伸ばし切った翼の両先端をエネルギーワイヤーが結び、獅子王者はそれを引いて矢をつがえる。
目標は三体目の怪生物。最大限にまで引き絞ると同時に矢じりにエネルギーボールが生成された。
「放て、
引き絞ったエネルギーワイヤーを放つと同時に光の矢は三体目の体内に留まり、そのまま内部から爆発した。
「アームズコネクト、
最後のブラウンカラーの猪は手足を折りたたむと腹部を中心に身体が前後にずれ、中心部から長い柄が伸びる。獅子王者は両手にそれを掴むことで
「
背面のバーニアで加速して一気に四体目に距離を詰めて勢いよく振り下ろした。
「潰れろ、
頭部をピンポイントに潰された怪生物はそのまま絶命。
四体目を倒し終えると同時にボアハンマーも量子化され、獅子王者の拡張領域内に格納される。
残る五体目なのだが、再び獅子ノ爪を展開した矢先のことだ。獅子王者のハイパーセンサーを通して、雪に危険信号を走らせる。
再び上空から先ほどの五体の怪生物を運んできた物よりも一回り巨大な隕石を捉えたのだ。しかも第二派の隕石に気を取られた事もあって、撃破した怪生物の残骸を生き残った一体が総て取り込んだ事に気が付けなかった。
残骸を取り込んだ最後の一体は徐々にそのクワガタムシに似た形を変え、元々のフォルムからかけ離れた変貌を見せた。所々にカマキリやらクモやら最早キマイラ型としか言えない風貌に見えていた。目の前の新たな脅威もそうだが、空から迫るまた別の脅威も見過ごせない。
万事休すと言ったこの状況。だがしかし、勇者には、獅子王者には仲間がいる。
『兄貴、俺と慎也で隕石の方をやる!』
『雪、お前は目の前の敵を倒せ!!』
アリーナの上空に、虹色の光が尾を引いて伸びていた。
誰もがその光に視線を奪われると、光の正体が見るからに金属出来ているサーフボードを駆る全身装甲のISがそこにいた。
青いF1カーのフロント部分を胸部に、白い腕と背面の縦に伸びた楕円状のユニット、スポーツカーをモチーフにした深紅の下半身。誰の目から見てもわかる様に、そのISは獅子王者と同類のもの。
更にもう一機。全体的に漆黒のカラーリングに胸部はオオカミの機械的な頭部を模した全身装甲。
その二機こそが、獅子王者の友。
「青き空を汚したる悪を切り裂くは白亜の雄姿!蒼穹に煌めく虹の風!
「黒き大翼輝かせ、闇夜を抱きて悪を撃つ!散れ、この世を汚す悪の華!
オープンチャネルを通して響く若い男の声。その正体がそれぞれ遊薙咲羅と門哉慎也だと彼らと同じクラスの生徒たちは気付く。
涅槃主と名乗った全身装甲ISは足元のボードを駆り、真っ先に落下する隕石に近づいて両肩部に仕込まれた左右それぞれ各十門の円形のレーザーユニットを展開し、計二十ものホーミングレーザーが隕石の表面を砕いて質量を減らしながら、隕石を囲むように飛行する。
続けてウォルフスカイザーが両腕部に内蔵されているビームマシンガンを連射して、未だ避難が出来ていないアリーナに配慮して落下する破片を更に細かく砕いていく。
「二人とも……恩に着るぜ!」
勇者が意識を集中する。キマイラ型の怪生物は変体融合が完了していて、威嚇の咆哮をあげていた。
巨躯という体系は何より相手に恐怖心を抱かせるには充分だろう。だがしかし、それは同時に大きな的という弱点にもなりえてしまう。
更に言ってしまえば、今なら奥の手も使用できる。今使わずしていつ使う。
胸の獅子が気高い咆哮を上げる。勇ましく、力強い咆哮と共に咥内から獅子の顔の飾りが付いた柄が飛び出した。力を込めて獅子王者が引き抜く。
「
日の光を反射して煌めく白金の剣が、勇者の両手に握られる。腰だめに剣を構えた獅子王者は呼吸を整え、接近しながら攻撃を仕掛けてきた怪生物目掛け、振り下ろす。
「真向唐竹獅子王斬!」
技名を叫び終えるのと同時に、振り下ろされた剣から出た斬撃波で真っ二つにされた怪生物は光を放って爆発する。
同じころ、上空で隕石の破壊作業をしていた涅槃主とウォルフスカイザーもまた、必殺技を放つ準備に入っていた。
七色の光に包まれた涅槃主は滞空するボードの上で両肩に仕込んだブーメランナイフを取り出して逆手に持つと、ボードを駆って隕石に急接近。
ウォルフスカイザーの胸の狼の口が開けば中から砲身が伸び、光が収縮していく。
「
「ウォルフスブレイザー!」
斬撃を受けた個所にはいくつもの魔法陣が浮かび上がり、極太のレーザーが直撃すれば魔法陣が鏡の役割を担って乱反射。結果、四方八方から焼かれ続けて隕石は蒸発。同時に内部に潜んでいた複数体の怪生物達も断末魔の叫びをあげながら消え去った。
それぞれの仕事を終え、アリーナの大地に並び立つ三人の鋼の勇者達。
獅子王者、涅槃主、ウォルフスカイザー。
今ここに、新たな伝説が幕を上げたのだった。
続く
次回予告
遂に明かされる怪生物の正体
だけど、また怪生物達は隕石と共に地球に降り立った
対処に向かう僕達だったけど、そこで僕達はとんでもない物を見てしまったんだ
次回獅子王者伝説第三章『三位一体!その名も!』
次回も一緒に、GO!獅子王!