天才絵師と若き頭領   作:ぶらじる丸

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「真舞、今日からあんたが代表して」
去年の春、俺はこう言われて自らが所属する「よさこい演舞衆-華咲舞乱歌」という巨大チームの代表になった。「よさこい」とは高知発祥の踊りの文化であり、90年代初頭の札幌YOSAKOIソーラン祭りを皮切りに全国に広まった。それを踊るチームの代表になるということは、チームの頂点に君臨するということ。当初は喜びよりも不安だらけだったが、現在は問題なくチームをしきれている。そんな俺とチームに今年は新たな課題が課せられた。それは「大きな祭りで大賞を取る」ということである。大きな祭りとなると、全国から集まった100以上のチームと戦うこととなる。その中から勝ち抜いて大賞を取るのは至難の業。それを成し遂げる為に俺は代表として速やかに動き始めるのであった。


新しい住民が来た

今日は新学期の始まり。俺にとっては高校生活2年目の始まりである。

「なぁ真舞…!」

ホームルームが始まる直前、隣の席の奴が話しかけてきた。

「ん?なに?」

「この学年に転校生来るらしいぞ!」

「絶対嘘だそれ…」

「いや、おそらくガチ」

すると間もなく先生が入って来た。

「んじゃ、ホームルーム始めるぞー」

高校2年生一発目のホームルームが始まった。

「えー早速ですが、この学年に転校生が来ました」

「おぉぉ!!」

一同一斉に声を上げた。早くもイベント発生である。

「しかも……このクラスです」

「おうおうおうおう!!」

教室はあっという間にどんちゃん騒ぎ。

「んじゃ、入ってきて貰う。…入って、どうぞ」

開かれた扉より例の転校生が現れた。

「…おぉ」

長く、流れるような美しい金髪。

「…やばいやばい」

宝石のように輝く美しい瞳と白い肌。

「…ぱねぇ」

スラーっとした細く美しい体型。正に美少女である。

「んじゃ、黒板に名前書いてくれるかな」

そう言われカツカツと転校生は黒板に字を書いていく。

「し…い…な…ま…し…ろ……」

それが転校生の名前である。

「何か一言

「…椎名ましろ。ましろでいいわ。…よろしく」

こういう場面は苦手なのだろうか、小さな声で美少女は喋った。

「えーと彼女はイギリスから編入してきました。まぁとにかく皆仲良くしてあげて下さい」

「はーい」

一同ゆるーく返事した。

「じゃあ、椎名…えーと……あ、あそこ座って」

先生に言われるがままに転校生は席に座った。…俺の横に。

「「まじかよ…」」

俺ついてる。直ぐにそう思った。

「真舞ぁぁ…」

隣の席の奴、いや…クラスの男子全員が俺に妬みの目を向けてくる。非常に気まずい。

「いや先生に文句言えよ…」

「お前、その椎名さんと付き合ったらマジで殺すからな」

「なんでそうなるんだよ…」

こんな美少女と付き合うのは誠に恐れ多いことだ。この後はクラスの目標や行事予定の連絡でホームルームが終わった。

「椎名さん!」

「ましろさん!」

早速クラスの者共は美しき転校生の元に集う。隣の席だから騒がしくて仕方ないのだが…。

「…マスコミかよ」

暫く皆が椎名の元に群がる様子を見ていたが飽きて来たので帰ることにした。

「じゃあバイバイ」

「うん。気をつけて」

隣の席の奴に一声かけてその場を後にした。

「「これから暫く騒がしくなるな…」」

そう思っていた矢先

…ブゥゥー!!…

と携帯が鳴った。

「誰…」

電話だった。慌てて繋げる。

「もしもし……ハイ」

相手は我がよさこいチーム「華咲舞乱歌」の旗師だった。

「新しい旗を作ると…。…まぁ今年は大賞目指しますからね…」

旗師も大賞獲得に向けて士気が高まっているようだ。嬉しいことである。

「え……絵が上手い人?いつもの旗屋さんじゃなく?…」

旗を作って貰う時に毎回お世話になる旗屋さんがあるのだが、今回はそこに頼らず違う人に書いてもらってイメチェンをしたいらしい…。

「んー…絵が上手い奴なんて近くに居りませんよ~…」

美少女は真横の席に来たのにこういう所はついてない俺である。

「まぁ…なんとか探しましょ。…ハイ。ハーイ」

絵が上手い人を見つける…という新しい任務が与えられた。その時

「絵が書ける人を探しているの?」

と聞き慣れない声がした。

「…ん?」

振り向くと

「き…君は…!」

あの転校生が居た。

「絵なら私書けるわ」

「ま…ましろ…ちゃん…」

「ましろでいいわ」

「ま…ましろ……絵が書けるのか?」

正直言って全然絵を書いてそうに見えない。

「うん」

「ど…どんな絵?」

「色々よ」

「色々…とは」

淡々と静かに答えるましろ。まるで感情がないみたいだ。

「書いて欲しい絵とかある?」

「…か…書いて欲しい絵………じゃあ…」

俺は携帯に保存してある画像を見せた。

「これとか…」

「分かったわ」

「あ、でもここだと場所が悪い。…図書室にでも行く?」

「行くわ」

という訳で1階上の図書室へ。

「んじゃ、頼む」

さっきの画像を見せた。

「うん」

ましろはカバンの中から紙を取り出してシャーッと鉛筆を走らせ始めた。

「…」

黙って鉛筆が動く様を見つめる。

「…なに?」

「あ…いや!?ごめん…集中出来ない?」

「大丈夫よ」

「OK…」

その後もましろは静かに鉛筆を走らせた。

「ねぇ…」

「ハイ…?」

「ブランカ荘て知ってる?」

という質問を唐突にされた。

「ブランカ荘?それなら当然知って…ええええっ!?」

「うるさいわ」

「あぁ…ごめん…。って…どうして君がブランカ荘の名前を知ってるんだぁ!?」

「今日からそこで暮らすことになったの」

「なにっ!?…」

ブランカ荘。それは我がよさこいチーム華咲舞乱歌に所属するに当たり、同じ県内でも場所によっては自宅等から通うには困難だったり、両親等の都合で練習等への参加が困難なメンバーの為の荘である。俺も両親が仕事の都合上、当分家に帰ってこれないのでここに暮らしている。前述のような状況であろうと華咲舞乱歌に来てくれるメンバーの熱意に応えるこの荘があるのは、華咲舞乱歌に大多数のメンバーや大きなバック、資金源があるからこそだ。…で、なんでその荘に全くの部外者が暮らすことになったのだろうか。

「真舞っていう人と同級生っていう理由でそこの管理者にOKして貰ったの」

「……井田のおばちゃんか…」

なんで部外者をあの荘に住ませるのか…。偶然管理者が昔から良くしてもらってる叔母だったのもあるだろうが管理者さんよ、あなた一体どんなおつもりですかい?

「あなたが真舞なの?」

「そうだよ」

「よろしくね」

「あ…あぁ…よろしく」

華咲舞乱歌の将来が心配になってきた…。

「じゃあ続き書くね」

「うん…」

20分くらいでましろは絵を書き上げた。

「出来たわ」

「ありがとう……おぉ…!」

書いて貰った絵はスポーツカー。バンパーの起伏で生じる影や、ボディの艶…等とても細かく描かれている。今にでも動き出しそうだ。

「すげぇなましろ!こんなべらぼう立派な絵を書けるなんて余程才能があるんだな!」

「ありがと」

驚こうが褒めようがとにかく静かに返答するましろ。こちらとの温度差が激しい。

「この絵貰っていいか…?」

「いいわよ」

「ありがと」

いいものを手に入れた。

「じゃあ、行くかい?」

「うん」

図書室を出た。

「……うぅ…」

「どうしたの?」

「皆の視線が冷たい…」

1階下りればそこは我らが2年生ゾーン。何故か皆何も言わずにジーッと見つめてくる。…恥ずい。

「私は冷たくない」

「だろうな…。君は転校生で尚且つ別嬪さんだから皆に温かく歓迎される。…でも俺はそんな別嬪さんな転校生と初日から一緒に帰ろうとしている!女子はともあれ男子からは妬みの目を向けられて当然だ!」

「私…別嬪さん?」

きょとんとしてましろは聞いてくる。

「まぁな…。どうした?」

「…ありがと」

「なーに、事実を申し上げただけさ。それより早く出よう」

「うん」

逃げるかの様に校舎を後にした。

「なんで絵を書ける人を探してるの?」

「それはな…あー…荘に着いたら説明する」

「なんで?」

「その方が多分ましろも理解しやすいから」

学校から徒歩約10分で例の荘に着いた。

「ここがブランカ荘」

「思ってたより綺麗ね」

「どんなのを想像してたんだ…」

「ボロくて汚くて歩くとギシギシ鳴る感じのよ」

そんな荘だったら俺だって住みたくない。

「…そんな建物だったらここはブランカ荘になってないよ。さぁ上がった上がった」

ガラガラと扉を開き中にあがる。

「何号室て言われた?」

「21号室」

「俺の隣かい…」

「席も部屋も隣同士ね」

「お、そうだな」

これも何かの縁か。2階に上がり部屋へ。

「ここが21号室だ。あ、風呂とトイレは共用な」

「うん」

「じゃ、後はご自由に」

「教えて」

呼び止めるかのようにましろは言った。

「…なにを?」

「なんで絵を書ける人を探してるの?」

「あぁ…そうだったな。じゃ、俺の部屋に来て」

「うん」

荘とは言え、自分の部屋に女子を招き入れるのは初めてである。

「で、なんで俺が絵を書ける人を探してるのか…だったな」

「うん」

「…よさこいって知ってる?]

「何それ」

「やっぱ知らないよな…」

最初から察しはついていた。

「よさこいっていう踊りがあってな。それを踊るチームに俺は入ってる訳なんだが、そのチームの新しい旗を作るに当たって絵を書ける人を探してる訳さ」

「ふーん」

興味あるのかないのか…。

「もし良かったら、ましろに頼もうかなー」

「私に?」

「あぁ。さっき書いてくれた絵を見てそう思った」

「どんな絵を書けばいいの?」

案外すんなりと食いついてきた。

「それは今言えないな。チームでどんな絵にするか話し合ってからだ」

「ふーん」

「という訳です」

「あれは何?」

ましろが指さした先には……一着の衣装がかかっていた。

「あぁ、これか?」

「うん」

「これは俺がよさこいで着る衣装さ」

「…渋いわ」

「良く言われるよ」

するとましろはかけてある衣装の目の前に立った。

「どうした?」

「すごい生地ね」

「あぁ。50万か60万くらいかかったらしいからね」

「真舞ってリッチね」

そう言いながらましろは衣装を撫でている。

「俺はリッチじゃない。俺のチームがリッチなだけ」

「真舞のチームって強いの?」

「どうかなな。自分達の強さなんて分からんよ」

「賞とか取ったことある?」

美味しい質問が飛んできた。

「あるある」

「どのくらい?」

「いっぱい…」

「…真舞のチームってすごいのね」

ありがたき言葉を頂いた。

「あ…ありがとう。…あ、ちなみに俺のチームの代表は誰だと思う?」

「真舞のお母さん?」

「惜しい」

「お父さん?」

「惜しい!去年の春まではお父さん代表してたけど」

「…真舞?」

ハイ来たぁ。

「そう!俺実は代表なのです」

「…偉いの?」

「…他人から見たら偉いのかも知れないが、代表だからと言って偉そうにするのは嫌いだな」

「…真舞ってすごい」

いきなりすごい言われてもどんな反応すれば良いのだろうか…。

「いや別にすごくないと思うけど…まぁありがとう」

「うん」

色々教えたり聞かれたりしてたら次第に眠くなってきた。

「あぁ…ちょっと寝ていい?」

「うん」

「ありがと」

速攻ベッドに寝転んだ。

「じゃあおやすみ」

「おやすみ」

目を瞑るとすぐに意識が遠のいて行った。

「うぅ……」

果たして何時間くらい寝ただろうか。目が覚めてきた。

「何時…?」

携帯をつけて確認しようとしたその時

「え…」

となった。

「こいつ…」

俺の横にあろうことかましろが寝ていた。

「自分の部屋があるだろ…」

するとましろがゆっくりと起きてきた。

「……真舞…」

「おい…」

「おはよう…」

「おはようじゃねえ。お前なんで自分の部屋で寝ないんだよ」

「面倒くさかった」

聞いて呆れる理由だ。

「すぐ隣じゃんか…」

「でも面倒くさかった」

もうなんとも言いようがない。

「あぁ…」

「ご飯どうするの?」

挙句の果てに急に話を変えられた。

「ご飯は作ってくれる人が居るけど、もうそろそろ出来上がるかな」

「お腹が空いたわ」

「もう19時だからな。食事処に行くとするか」

「うん」

スタスタと1階の食堂へ。

「皆ー出来たよー」

この荘で皆に通称「お母さん」と呼ばれているメンバーの声が聞こえてきた。ちなみにこの人が毎日ご飯を作ってくれている。

「はぁーい」

1階で先に待機していたメンバーの良い返事も聞こえてきた。

「ましろ、こっち」

「うん」

そして食堂のドアを開けた

「皆聞いて欲しい。今日からこの荘の住民が1人増えることになった」

「え!?聞いてないぞ!?」

「俺も今日の午後に初めて聞いた。…さぁ入ってこい!」

ましろを呼ぶ。

「…おぉ!」

「こちらは椎名ましろ。俺の学校に今年編入してきた同級生です。…で、どういう訳か俺の叔母さんがこの子が俺と同級生ていうだけでここに住むことOKしたからブランカのメンバーではないけど…大事にしてやって下さい!……ほら、なんか一言言え!」

「よろしくお願いします。」

丁寧にお辞儀をするましろだった。

「可愛い!可愛い!」

一同同じ反応をした。

「じゃあ適当に空いてる席に座って」

「うん」

「ほら皆座った座った!」

さっさと食卓につく。

「んじゃ、頂きまーす」

一同一斉に食事開始。

「…あ、後で皆に見て欲しいものがある」

「なにー?」

「食べてからのお楽しみ」

今日のメニューは肉じゃがと白ご飯と味噌汁というシンプルなものだったがお代わりも出来たし、普通に満足出来た。

「ごちそうさまでした」

「んじゃ、例の奴を持ってくる」

俺は急いで自分の部屋に戻って例の物を取ってきた。

「…ハーイ皆注目!」

俺は例の物を高らかに掲げた。

「この絵を見てなんと思う?」

「それ…ト〇タのスープラじゃん」

「そうだけど、見て欲しいのはそこじゃない。この出来栄えよ!」

「どれどれ……うわ…」

皆の視線が絵に集中する。

「めちゃくちゃ上手い!書いたの誰!?」

「さぁ?誰でしょ…」

「でもスープラ書いてくる辺り……シンシンじゃない?」

シンシン…とは俺に付けられたあだ名である。まぁそれは置いといて。

「俺にこんな画力あったっけ?」

「…ない」

「…てことは?」

「…ましろちゃん?」

「そうだよ!」

代表の俺にこんな画力があったのなら旗作りも何も苦労することはない。

「えぇー!?すごいなましろちゃん!」

「…ありがと」

相手がどんなに騒がしかろうと静かに返答するましろ。

「…で、これ程の画力がある彼女に新しい旗に入れる絵を書いてもらおうと思うけど…どう?」

「賛成!」

「賛成かな」

「賛成するしかない!」

その後も一人一人から賛成という言葉が聞こえてきた。

「OK!皆賛成ね!…後はましろ、お前次第」

「…書くわ」

「おぉぉぉ!!」

一同歓喜する。

「ありがとう!!じゃあ皆さん、ましろに書いてもらう為には一秒でも早く絵の具体案を出さねばなりません。今週の練習で他の皆にも言うから、まずは絵のデザインを考えましょう。OK?」

「ハイ!」

「よーし!んじゃ解散!」

ちょっとした宴が終わった。

「騒がしくしてごめんな。風呂に入らんとな」

「混浴?」

「ちゃんと別れてる!風呂は2階にもあるから」

「ふーん」

風呂の用意を持ちに自分の部屋へ。

「お前…俺の部屋に荷物置きっぱなしかよ…」

「寝てたから」

「知ってる」

ましろと共に浴場へ。

「じゃあゆっくりしておいで」

「うん」

今日の疲れを洗い流すとしよう。

「あーさっぱりした」

風呂から上がったら特にましろを待つ訳でもなくそのまま部屋へ直行した。

「真舞」

部屋に戻ってから10分くらいだろうか、ガチャっとドアを開けましろが入ってきた。

「荷物持っていけよ。まとめておいたから」

「真舞、変態」

女の子の荷物を勝手にまとめたのだから言われても仕方ないがもうちょっとマシな言い方が無かっただろうか…。

「…いいから早く寝る!明日も学校だぞ?」

「うん」

ましろは大きなカバンを持ち部屋を出ていった。

「…一件落着」

それからはただ1人でテレビを見て、お菓子を食べて、華咲舞乱歌の過去の演舞のyoutubeを見たりしていた。

「いい加減寝よ」

そんなことをしていたら0時を回っていた。至急ベッドに入り眠る態勢に入った。

「…椎名ましろ…か…」

例えメンバーでなくても自分が代表を務めるチームが管理運営する荘の住民。決して命じられた訳でもないがあの子の面倒は自分が見なきゃと思うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公→ 天崎(てんさき) 真舞(しんま) 16歳
ヒロイン→ 椎名(しいな) ましろ 16歳
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