「いや~。しかし、本当にいいのかい?コイツを作っても。」
とある船内の3階にある武具屋に、アルビナの姿があった。
「良いんです。おやじさん、お願いします。是非そうしたいんです。」
「分かった。あんたがそこまで言うなら作らせて貰うよ。だが、この防具の為に、アイツの素材がほとんど使われちまうが、あんたがそれでいいのなら、だが?」
「えぇ、構いません。あの方を苦労させてしまった分、私からのせめてもの償いです。これでも足りないぐらいかと思います。」
「そうか、本当はあんたが装備したかっただろうに。よし、あんたの依頼請け負った。素材とその分の費用は預かる。3日程で完成する。出来上がったら呼びに行くから、来てくれ。」
「了解しました。無理言ってすみません。感謝です。」
「いいってことよ、気持ちは分かるしな。じゃあ、工房に籠るからよ。よろしくな。」
「はい、よろしくお願いします。」
武具屋の主人は手を挙げて奥へと消えていく。受け取った費用とあるモンスターの素材を一通り持って…。
アルビナは3人に内緒で来ていた。サプライズしようと、バレないように単独行動をしていた。本当は他の二人と一緒に沙耶の部屋を案内したかったが、後でもゆっくり話しは出来るとも思ったのだ。いいのか悪いのか、リシェルはクシャルダオラに夢中の様子だし、かろうじてリックスが沙耶を案内している。キャプテンがフォローしてくれているので、安心はしていた。
(守ると決めた私が逆に守られることになってしまった。それだけでも償うに値する。それに生きて戻って来てくれただけで満足だ!だから修復も不可能な位になった防具を一新して貰えたら、嬉しいことはない。)
そんなことを考えながら武具屋から離れた。
猫飯屋を通りかかると、沙耶のオトモのアイルーが、料理人のアイルーと話しに盛り上がっていた。
「あれ?君は沙耶さまの?」
「あ、アルビナさんでニャスね。先ほどは失礼しましたニャス。」
改まって、挨拶をしてきた。自由そうな感じだが、意外と律儀なところもあるのかと感心していた。
「でもニャんでご主人と一緒じゃニャいすか?」
「あ、あぁ。他に用事があってね。後でゆっくり話すことにしたのさ。」
「そうでニャしたか。あっしは飯屋を手伝おうと話したら、意外と自分が有名猫にニャってたらしいニャす。
ニャので、逆にアッシの方が料理の腕を振るうことにニャったス。
それで、料理談義に盛り上がっていたニャス。後で皆さんにも振る舞うので、待っててほしいニャス。」
と前足を上げて前に出してくる。アルビナも手を上げてはいタッチしていた。沙耶のオトモは又、料理の話の続きに勤しんだ。
アルビナは一度甲板まで出てきた。何故か外の空気を浴びたい気分だった。龍騎船は雲の上をクシャルダオラのゼシムに引かれ、ミラルーツの居る高山の山頂へと向かっていた。舵は交代で就ききりで、バランス取りをしている。今は夜だが、雲の上を航行しているので、月明かりが船全体や前方の古龍を照らしていた。よく見ると、古龍の背に人が乗っている。
「フフフ…、よほど助けられたのが、嬉しかった様だね。リシェルがあんなにご執心だとは。」
アルビナは背に乗っている人物が分かってそう呟いた。
その微笑ましい様子を横目に周りの景色を見ながら、もう1つの懸念を抱いていた…。
「沙耶さまが戻って来たのは、一安心ではあるが、アイツは一体何処に居るのだ?ほっとく訳にもいかないんだが…。」
月明かりを浴びながら、不安と心配と苛立ちで独り思い込むのだった…。
※※※※※※※※※※※※※※※※※
旧砂漠のオアシスのあるエリアに食事!?をしに来ている、大型個体がいた。群青色の体躯に強靭な後ろ足に、二足歩行で最大の特徴は尻尾であり、青白く光るその尻尾は、簡単に岩を切り裂いてしまうであろう刃と化しており、不気味に切れ味さを醸し出していた。美味しそう!?にエサ!?肉!?を咀嚼していると、同じエリア内に現れた物!?がいた。
それは同じ二足歩行ではあるが、深緑色っぽい体躯に、やはりこの個体も強靭な後ろ足を持ち、違うのはゴツゴツとした厚みのある岩を噛み砕いてしまいそうな特徴的な顎であった。
ただ、この個体、通常見かける個体と違い、ひとまわり大きい体躯に、背中には大きな十字傷があった。
お互いに気付いて、顔を見合わせると、戦闘開始とばかりに双方勢いよく咆哮をあげる!
ディノバルドとイビルジョーの戦いが始まった。ギルドの探査気球も、それに気付いて注視していた。
お互いに突進を開始する!イビルジョーは頭を屈めて後ろ足で地面を蹴って体当たりを繰り出していく!しかし、ディノバルドはそれをかわして走り抜けながら唾液の様な炎の塊を三つ吐き出す!体当たりをかわされたイビルジョーも、その塊から離れる!少し間があってそれぞれ爆発した!両雄!?相手の強さを探ったようだった。そして今度はお互いゆっくりと前進する。今度は先に仕掛けたのはディノバルドの方で、身体をしならせ、反動を使って尻尾の刃を剣の様に繰り出してくる!イビルジョーも一度はかわせたものの、2連続、3連続はかわしきれず、傷を負っていた。が、傷を付けられた怒りで、咆哮をあげ、体躯が赤黒く変わると顔を斜め上から横に円を描くように赤い雷を纏った黒いブレスが放たれる!尻尾を戻し、してやったりと思ったディノバルドはかわしきれず、恐竜ブレスをまともに受けて、吹き飛ばされる!
「ゴガァァ!!」
さすがにダメージを食らい、起き上がれず暫くもがく!イビルジョーはその隙を逃さず、大ジャンプで倒れているディノバルドを後ろ足で押さえつけようとする!だが、ディノバルドも間一髪で起き上がり、イビルジョーから離れられた!何もない地面に勢いよく着地するイビルジョーであった。チィッ逃げられたか、と思ったどうかは別にして、そのまま攻撃に転じようとした瞬間!身体に焼け付くような激痛と共に吹き飛ばされることになった!こちらも怒ったディノバルドが、ゼロ射撃でフャイヤーボールブレスを放ってきたのだ!
「グアガァァ!!」
今度はイビルジョーが暫くもがくことになった。ディノバルドも隙を逃さず、尻尾をくわえ、身体をしならせ、反動を利用し、口から尻尾を解き放つ!身体を軸として尻尾の刃が真横に一回転して、イビルジョーに斬りかかる!これも間一髪で起き上がり、攻撃をかわしていた。攻防一体、互角の戦いと思われたこの戦いに、ある変化によって終息が訪れる。イビルジョーの身体に異変が起きる!身体の一部の赤黒が金黒に変わり、ノーモーションで直線状の金色の雷を纏った黒いブレスが放たれたのだ!この動作には反応出来ず、まともに直撃する!ディノバルドは暫くその場から動くことが出来なかった…。何故ならディノバルドの腹部から背中にかけて大きな穴を開けられていた!ディノバルドも何が起こったのか分からずに絶命する!イビルジョーは当然!と勝ち誇ったように無惨に肉塊となったディノバルドを咀嚼し、そのエリアから去っていった。そこで一気に戦闘が終息する!
「こ、こ、こ、こりゃ大変じゃわい!!」
探査気球から一部始終を見ていた観測団はその狂暴さに身震いしながらも、ギルド本部に伝書鳩を向かわせていた。そして、ギルドでも超特殊許可クエストの1つとして認定し、正式に討伐することとなった。但し、報酬は高額だが、受注条件は最低でもHR解放している者に限る。となった。このことが沙耶やアルビナ達に伝わるのは、もうしばらく後での事だった…。
※※※※※※※※※※※※※※※※※
船では誰も知ることのない出来事から3日後、古龍の体調も鑑みて、その日その日で空中停泊し、休ませていた。連続でも飛べるが?とも言っていたがリシェルが余りに心配しているので、その方法にしたのだった。
アルビナは武具屋から呼び出しがあり、理由を言わずに沙耶を無理に連れだって来ていた。
「オヤジさん連れてきたよ!」
「ね、ねぇ、何なの?何であたしが?」
アルビナのことだし、嫌な予感はしなかったが、不安だけはあった。
(あたし、なんか悪いことしたかな?全然記憶ないんだけど?)
やがてオヤジさんが、カウンターに出てきた。
「おぅ!来てくれたか、待ってたぞ!じゃ、二人とも付いてきてくれ。」
オヤジさんが奥の工房に入って行く。二人もそれに習って工房に入っていった。
「実はアルビナさんから頼まれてな、あんたの為に作ったんだ、これだ!」
と、沙耶の前に出された物はフル装備の防具で、その形は知っていた。
「こ、これディノバルドの…へっ!まさか!」
「そうです。燼滅刃の防具です。」とアルビナが捕捉する。
「そうだ、あんたの為に自分用にと集めていた素材を全て使い、作って欲しいと俺に頼み込んできた。感謝しなよ!」
「そんな、アルビナ、何で…。」
申し訳なさそうにアルビナを見つめる。アルビナはニッコリ笑い、両手を肩にかけ、防具の方を向かせて、囁きかける。
「これは、無事に帰って来てくれた、私からのささやかなプレゼントです。この防具は沙耶さまに装備して欲しいのです。その姿を私も見たいと思います。」
「ア、アルビナ……。」
沙耶は声に詰まり涙が溢れる。沙耶は振り返ってアルビナを抱き締める。アルビナも涙しながら沙耶を抱き締めていた。
「じゃ、良いところ悪いが、サイズの調整をしたいんでな。その個室で装備してもらえるか。終わったら、こっちに出てきてくれ。」
オヤジさんに促されて個室に防具を持って入る。ガサゴソ、ガチャガチャと音がしていたが、コツッ…。と一歩踏み出して個室から出てきた。
「おぉぉぉ…。」
感嘆の息が漏れる。
「なんか、凄くピッタリで、調整要らないぐらいだよ。」とクルリと回って見せる。
「やはり沙耶さまで良かった。」アルビナも満足がいった。これならばちょっとやそっとじゃ、ダメージを受けないだろう。
「レベルもオールMAXだ!頼んだぜ。」と肩を叩いて、二人にそれぞれ握手していた。
「オヤジさんもありがとうございます。」
「いいってことよ。お陰でこっちも良いもん作らせてもらえたしな、がっはっは!」
二人は、そのまま甲板に上がってきた。丁度休憩時間だったようだ。ゼシムも休んでいた。リックスもリシェルと話していが、沙耶達に気付いた。沙耶の姿を見て驚愕する!
「え、ウソ、沙耶、それ、燼滅刃の?」
その問い掛けに嬉しそうに頷く。
「おいおいマジか、その装備は滅多に見れるもんじゃないぞ!」
「ほう。防具を新調したのだな。孫にも衣装という言葉を聞いたことがあるが、そういうことか?」
と、ゼシムが茶化しているのかいないのか、そう聞いてきたので、
「「違います」」
と二人で即答していた。この後々その防具でもって、仇を打ちに行く事になろうとは、この船にいる全員が知るよしもないことであった………。
読んで頂き、ありがとうございます。日々仕事をしながら妄想と手帳にペンを走らせておりまする。次話もまたお付き合いよろしくお願いいたします!
では!