物語の始まり始まり……。
その巨大な体躯をしたモンスターは翻弄されていた。強くなっていたつもりが、攻撃を喰らうなど想定外の事に、体勢を直すのに間がかかってしまった。
エリア4の場にいたモンスター達は、本能が危険を察知して一目散に他のエリアへと逃げ出していく。この特殊なモンスターに暴れられたら、このエリアと付近のエリアの形が無くなってしまうからだ。自分たちの身の保全のため、遠くへと逃げるのだった……。
そのエリアは沈黙が訪れる。ブナハブラすら居なくなったそのエリアで、追いかけて来るであろう奴らの攻撃に備えるため、スタミナを蓄える……。そのアギトの中にブレスを溜めながら……。
「居たな、あそこだ!」
ラジックが叫ぶとイビルジョーも気付く。崖上からそれぞれが別方向から飛び降りていく。
「今度は気を抜かねえ!ガハマや他のハンター達の思い、晴らさせてもらう!!」
大剣を構え、崖を一気に飛び降りて向かっていく。しかしイビルジョーも、ただ待ち構えている訳ではない。ラジックの事を覚えていたのだろうか、顔を真上に持ち上げ振り下ろすように直線状の恐竜ブレスを照射する!!
「ラ、ラジック~~!!」
「ちぃっ……!!」
ネージュが叫ぶも間に合う距離ではない。ラジックも大剣を盾代わりに構えるが、以前このブレスに大剣もやられ、しかもガハマのハンター生命をも失うきっかけとなったのだ。
それは分かっていたのだが、誰も間に会う事が出来ない!
「けっ、俺が居なくなってもコイツを必ず仕留めろよ!!」
ラジックがそう覚悟を決めた時だった……。
「間に合ったぁ!!」
「なっ……お前!!」
ラジックの前に立ちはだかったのは小柄な女性ハンター、しかし大きな太刀を軽々と振りかざす……その姿は沙耶であった……。
「ばっ馬鹿野郎!!逃げろ!!俺と一緒に犬死にしたいのかっ!!」
ラジックもガハマの姿が重なり、思わず怒鳴っていた……。しかし沙耶は太刀を構え、その場から動こうとしない。
「大丈夫!誰も死なないし、死なせやしない!!」
「なっ、お……お前……。」
「もう、これ以上アイツの犠牲者を出したくない、いや出させない!!」
沙耶が太刀を垂直に構えて姿勢を低くして、静かに目を閉じる。すると白き刀身に刻まれた古代文字が真っ赤に浮かび上がる!ラジックも沙耶を信じるしかなかった、いや見ているしかなかったと言おうか……。
「おおおおおぉぉぉ…………!!!」
目を見開いた沙耶が全身の気を放出して、手に持つ太刀に力を込める!
狂竜ブレスが一瞬に迫り、沙耶を!ラジックを!突き抜けて行く!!
「さ、沙耶様~~!!」
「ラ、ラジック~~~!!」
…………!?!?
沙耶の居た位置からブレスが左右に分かれていく!そのブレスは片や空中にそのまま消えていき、片や崖の一部を貫通して穴を空けていた……。
「すっ、すげぇ……。」
危険な状態にも関わらず、ラジックは感嘆していた。その太刀は折れることも、溶かされることも、消失することもなく……進化した狂竜ブレスを真っ二つにしていた……。
彼女も傷付くこともなく、その後ろに居るラジックにもダメージが及ぶこともなく………。
「おおっ…!」
「す、すごい…!」
「やるじゃん!沙耶!!」
「すげぇな……。」
(流石じゃの。白龍の力を受け継いだだけのことはあるのう。)
「そうですね、とんでもない仲間が出来たものです。」
周りが驚くなか、一番驚いていたのはブレスを放った当のイビルジョーであった。二人ないし一人は消し去る事が出来ようと予測していたのが、裏切られたからだ。二人とも生きているとは、信じられなかった。しかも自慢のブレスが真っ二つにされたのだ。馬鹿な!と言わんばかりに雄叫びをあげていた……。
「もう……あんたの好きにはさせないよ……。」
沙耶の思い……。2度と大事な人を失いたくない……、いや守ってみせる大切な仲間を……。
「いくよ!みんなっ!総攻撃だ!!」
「「「「「「おおっ……!!」」」」」」
全員イビルジョーに向かって走り込んでいく!ジャンプして斬り込んでいく者、足を狙って剣を振るう者、腹部を狙うもの、尻尾を叩き斬ろうとする者、背中を、顔面を、同時に斬りつけていく!!
しかし、イビルジョーもそのままではない。その場で暴れ回る!狂竜ブレスを撒き散らし、体当たりや尻尾を駆使して応戦してくる!
「ぐっ……!」
「くそっ……!」
「ま、まだまだぁ!!」
手足が痺れ…防具も傷つき…体力も削られながら命懸けで剣を振るっていた。全員がここで止めないと大勢悲しむ者が増える……絶対に止めると……。そのためにそれぞれが武器や防具を強くして磨いてきたのだ……止めてみせる!!その思いと気力で戦っていた……。
持久戦のようになってきた。少しずつではあるがイビルジョーの体力を削ってきてもいるのだった。
しかし、その時スタミナがピークに達していて足がもつれてしまい転倒してしまった者が……。
「し、しまった!!」
アルマンドが直ぐに立ち上がろうとするが、イビルジョーもそれを逃さない!ジャンピングして巨体でアルマンドを押さえつけた!
「ぐわっ!くそっ!」
もがいて逃れようとするが、ビクともしない!それどころか牙を剥き出し、噛みついて身を引き裂かんとアギトに力を込める!
「ア、アルマンド!!」
「ま、まずい!!」
リックスとラジックがそう叫んだ時、その横を走り抜ける2つの影が……。
「「おおおおおっ!!」」
お互いの太刀を斜め下に構えながら走り込んでいく沙耶とアルビナ!!
「なっ……!」
「あいつら……!」
下から空へ向かって突き上げるようにイビルジョーの顎に二人の太刀を叩き込んでいく!!
「グギャァァァッ!!」
2刀の太刀でアッパーを見舞い、激痛と勢いでひっくり返るように後方に吹っ飛んだ!
「大丈夫か!?」
アルビナが手を差し伸べる。アルマンドも、手を掴んで起き上がる。
「済まないっ!助かった!」
流石に今の攻撃が効いたのかイビルジョーは顎から血を流してのたうち回っている。その間に距離を取り、構えを取り直した。
「済まない!助けてもらってばかりだな。」
「そんな事ないよ。ラジック達の攻撃もかなり効いてるし、仲間が居てくれるのは助かるし。」
「あたしらでも頼られるんなら本望だね。」
「うん!みんなで力を合わせて奴を倒す!」
「よし、ネージュ!アルマンド!3方向から同時だ!」
「「おうっ!」」
ネージュは右から、アルマンドは左から、ラジックは正面からそれぞれ狩技を繰り出していく!
イビルジョーも後方に避けようとしても後ろは崖……3方向からの攻撃なので避けられない!
「ガカッ!!」
3人の狩技を食らい、その場に倒れ込むイビルジョー。もがいてあがいて起き上がろうとするも体力もスタミナも削がれ、逃げ出そうとすることも叶わない。
「ガフッ、ガフッ、ガフッ……。」
荒い息を吐きながら、アギトにブレスを溜める事も叶わず、横たわったまま目は沙耶達を見据えていた……。
沙耶とアルビナはイビルジョーの顔の前に立つ。なかなかに会えなかった因縁の相手……。最愛の友を目の前で殺し……。大暴れして逃げて行った狂暴竜……。背中に傷を負った加減で異常発達し、直線状の狂竜ブレスを放つようになった進化したイビルジョー。その敵をやっと目の前にしている。2人は異常なほどの冷たい目線でその横たわるモンスターを見据えていた。
リックやラジック達は少し距離を取って2人を見守っていた。決して気を抜く訳ではなく、イビルジョーの最後を彼女達に託したのだ。万が一の時はすぐに動けるように待機していた。
「どうします?紗耶さま?」
狂暴竜を見据えたまま沙耶に問いかける。また沙耶も見据えたまま答えた。
「うん、そうだね……どうしようか……。」
2人の会話は相談している会話ではあったが、低めの声で冷やかな口調である。(私も怖くて近寄れない……。)
「あんたさ……。」
今度は、イビルジョーに話しかけた。
「もう、いいかな。結局、こいつを倒したところで明日美が戻ってくる訳でもなし。」
「そうですね……。確かにご友人が生き返る訳ではないですね。そうしましょうか?」
「うん、そうする。あんたさ、これ以上悪さを続けるようなら、容赦しないからね。」
「そうだな、次はないと思った方が良い……。」
「行こう、アルビナ。」
「参りましょうか、紗耶さま。」
2人は後ろに向き直り、皆の元へと歩き出す。3Mぐらい離れた時、そのモンスターは起き上がった!
「グウゥルルル……。」
「なっ!?危ない!沙耶っ!アルビナっ!」
血走った形相で、後ろから襲い掛からんとジャンプして後ろ足を突き出してきたのだ!だがその時である。
”ガガガッ……!!!”……斬っ!!閃光玉より激しい光がエリア全体を照らし出す!
「な、なんだ!今のは!!」
「さ、沙耶!?アルビナ!?」
やがて見えるようになると、ラジック達は驚いて固まっていた。真っ赤な巨大な雷が1本被雷してイビルジョーの胴体に突き抜け、地面に刺さっていた……。イビルジョーはジャンプした状態のまま、絶息していた……。
当の2人は目を瞑ったまま、皆の元に歩いて来る……。まるでそうなる事が分かっていたかのように……。
「知っていたのか?」
「いえ、どうする気か賭けてみたの。」
「賭け!?」
「そのまま引き下がるか、あるいは……。」
「で、後者だったからあの状態か……。」
「そうだね。あくまでも私達を殺そうと動いた……。」
「ああなると、つくづく馬鹿なやつと思えるな。」
「あれもモンスターの一つの本能でもあるかもね。」
全員、雷の槍に刺さったモンスターを眺めてそれぞれの思いを感じていた……。
「クスッ……強くなったものね……。」
後方で声がして全員一度に振り向く!!その姿は黒いマントを羽織っていたが、顔を晒している。
沙耶とアルビナは絶句していた……。
「なん……で……。」
「なん……という事だ……馬鹿な……。」
「久しぶりね。あの時以来かな?」
普通に話しかける相手に動揺が隠せない。そうなのだ、それこそちょっと前まで戦っていたイビルジョーが沙耶の世界に現れた時沙耶をかばって殺されたはずの……親友であった明日美が目の前に居るのだ!
「ど、どういうことだよ、おい!久しぶりって、アイツを知ってるのか?」
リックスとリシェル、ラジック達も訳が分からなくなっている。
「うむ、あの人は……紗耶さまの目の前でイビルジョーに殺されたはずのご親友……明日美様だ……。」
「「「「「なっ!なにぃぃっ!!」」」」」
全員、その黒マントの女性を見つめる……。女性は妖艶に微笑みながら沙耶達を見据えていた。
「なんでよっ!!……………………。」
沙耶がエリア中に響くほどに叫び声を上げる……。虚しくもそれは遠い空に消えていくのだった………………。
読了ありがとうございます。忘れた頃にやって来る~~……。というわけで、最初に投稿を始めた作品を久々に復帰してみました。至らない所いっぱいなんですけど。今も至らなくてスイマセン。でも、投稿を始めさせていただいて、約2年半になりました。変わらずのご愛読をよろしくお願いいたします。では。紅龍騎神でした……♪♪