東方戦愛録   作:島夢

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更新遅くなって申し訳ないです。


96話

「なぁ」

 

「ん?」

 

 

 俺は今正太郎とイザナギと月見酒をしている。

 今日は綺麗な三日月だ。

 まぁ、別に突きが出てなくても酒盛りくらいは普通にするんだがな。

 

 

「知ってるか?」

 

「何をだよ?」

 

 

 ちなみにこの場にいない龍哉だが、あいつは俺たちと違ってかなり忙しいからな、あいつが治めてるのは俺らと違って倭国じゃないからな。

 正太郎と伊弉諾がなんか話をしているが、どうせくだらないことだ、俺はスルーして酒を飲む。

 

 

「生八つ橋の柔らかさと」

 

 

 そういいながら正太郎は手に生八つ橋を出現させる。

 この時代に存在しないということを逆にして、今手元にないということを逆にしたのだろうか?

 相変わらず便利な力だ。

 

 

「これは生八つ橋って言うのか…食い物、だよな?」

 

 

 イザナギがそう質問するが正太郎は完全に話を聞いていない。

 つまりは無視をして話を続ける。

 

 

「女子小学生の胸の柔らかさって、同じなんだぜ」

 

 

 なんか馬鹿なこと言いだしやがった…。

 はぁ、もういいや、ツッコミ入れるのめんどい、イザナギがツッコミいれるだろ。

 

 

「じょし…しょうがくせい?」

 

「なに!? イザナギは女子小学生を知らないというのか!?」

 

 

 知ってるわけないだろ、この時代に女子小学生なんて言葉は存在してねぇよロリコン。

 というかツッコミ入れて終わりだと思ったのに妙な方向に話がこじれだしたんだが…。

 

 

「あ、ああ」

 

 

 イザナギは唐突な正太郎のテンションに若干引きながら返答する。

 そりゃそうだ、いくら神でも存在してない言葉なんぞ知ってたらこっちが驚くわ。

 いや、俺たちみたいな転生者がいるから女子小学生という言葉は存在してるのか?

 

 

「女子小学生、それは夢だッ!!」

 

「夢?」

 

「そうだ! 夢だ! 彼女ら一人一人が人類全ての夢を凝縮した存在だと言っても過言ではない!!」

 

 

 過言だよ、女子小学生は普通の女子小学生だよ。

 

 

「へぇ、つまり、女子小学生というのは神のようなものだってことだな?」

 

 

 ちげぇよ、何を思ってそう考えたんだ。

 馬鹿か…? おい、お前それでも最古神か? 本当に女子小学生って名前の神が出来ちまったらどうするんだよ?

 

 

「そう! その通りだ! 女子小学生! つまりそれは神! いや、神などという器に当てはめてはならない!」

 

「神より神聖な存在だってのかよ?」

 

「女子小学生とは考えるのではなく感じるものだ!」

 

 

 俺は正太郎が何を言いたいのか欠片も理解できねぇ…。

 というかイザナギも信じ始めてやがる。止めた方がいいかもしれん。

 

 

「そんなに崇高な存在なのか、何ものなんだ女子小学生」

 

 

 何ものでもねぇよ、女子小学生は女子小学生だ。

 

 

「女子小学生のすばらしさがわかったよな!? イザナギ!」

 

「おう、なんかわからんがすごい存在だってことはわかった!」

 

「ならば共に女子小学生を崇めようではないか!」

 

「よし! 崇高な存在にはそれ相応の敬意と信仰をってことだな!」

 

 

 いかん、イザナギが洗脳されたこれはまずいな…。

 

 

「いやいやちょっと待てお前ら、というかイザナギは騙されてるぞおい」

 

「異端者だ! 殺せ!」

 

「敬意を向けるべき存在に敬意を向けんのは感心しねぇな、晴夢」

 

「話を聞けお前らってあぶねぇ!?」

 

 

 俺の隣に座っていた正太郎が裏拳を放ってきた。

 それに反応で来た俺は後ろに倒れることで回避する。

 

 

「チッ! 外したか」

 

「お前今の攻撃能力を使って本当なら周りへの被害になる要素全部(拳圧、摩擦熱、空間の歪みetcetc……)拳に纏って攻撃しただろ!! 殺す気か!?」

 

「異端者死すべし、慈悲はない」

 

「ちょっマジか!?」

 

 

 サッと庭に出た正太郎。

 その手には霊力で作られた槍が握られている。

 その霊力の密度たるや、驚きの軽く地球が割れるレベル。

 

 

「自重しろ自重!」

 

 

 俺は叫びながら自分の世界を正太郎とついでにイザナギを巻き込んで展開する。

 ちょっとテンションのおかしくなっているイザナギを放置していったら何が起こるかわからないからな。

 世界が塗り替えられ、黒い荒野が広がり、黒い雲の隙間から光が差し込む幻想的な場所…。は次の瞬間にはクレーターを残すのみとなった。

 正太郎の手に持たれた槍がその手から離れ凄まじい勢いで飛んできて地に着弾したからだ。

 

 

「てめぇこのロリコン野郎! ふざけやがって! そっちがその気なら存分に相手してやるぞ!」

 

 

 そういいながら俺は右手の指を揃えて地面に貫手で右手を突き刺す。

 そのまま霊力を地面に流し込み、地を固めてから思いっきり地面ごと手を引き抜く。

 

 

「そらよっ!!」

 

 

 俺の眼前に広がる地面のほとんどを剥がし、それをそのまま正太郎に向かってぶん投げる。

 だが正太郎に迫る巨大な地面そのものは正太郎に当たる直前で俺に向かって帰ってくる。

 

 

「俺にそんなものが効かないことくらい、わかってんだろうが! 晴夢!!」

 

 

 帰ってきた地面を砕いて正太郎に向かって空間を蹴りながら突き進む。

 だが正太郎との距離は一向に縮まらない。

 

 

「近づけねぇなぁ? この距離なら俺の方が有利だぜ? なんてたって」

 

 

 正太郎が右手を振るう。

 俺の腹部に殴られたような衝撃、次いで俺の体が地面にたたきつけられる。

 到底当たる距離ではないはずなのに何故? とは思わない。

 何故ならあいつの能力は逆にするという能力なのだから。

 

 

「俺の攻撃は当たるからよ。 お前と接近戦の殴り合いなんて俺は勘弁だぜ」

 

 

 俺は相手の能力を無効化出来る。だがあくまで俺に対する能力の行使だ。

 あいつは俺ではなく俺とあいつの距離に対して能力を使用した。

 

 故に能力の無効化は出来ない。

 

 距離を詰めれば俺の有利になる。だがあいつは距離に干渉して来る。

 つまり、俺があいつと距離を詰めるのは難しい。

 

 相手と自分の距離を書き換えるなんて、事象に関与することだし、逆にするという能力じゃ普通は出来ないが…あいつの持つ膨大な霊力でなんとかなっちまってるんだよなぁ。

 厄介だ。

 

 ―――けど、それ以上に

 

 

「楽しいなぁ」

 

 

 俺はそれを口にした瞬間、あいつと俺の間の距離を捕食し、一気に距離を詰める。

 右の掌に圧縮し、捕食の力を混ぜた霊力弾を作りだし、そのまま正太郎にぶつけに行く。

 

 

「よめてるぜ?」

 

 

 当たる直前で右手首を弾かれ、そらされる。

 そらされた勢いのまま左腕の肘打ちを放つ、がこれもそらされる。

 

 

「そら、喰らえ!!」

 

 

 気付いた時には霊力弾が夥しい数で俺を囲んでいた。

 

 俺が霊力を喰えるなどということはこいつも知っている、ならば…。

 この弾幕には俺にダメージが通る何らかの細工がしてあるはずだ。

 避けるのが正解だな。

 

 

「避けることは許さんぜ」

 

「チィッ」

 

 

 ホーミング性能が高い、能力使いすぎだろあいつ!

 このホーミング性能でこの数、よけきれん。ならば!

 

 

「この一区画分の空間ごと喰らい尽くす! 」

 

 

 その瞬間、いっしゅんだけ世界に歪みが出来、それと同時に弾幕もすべて消え去る。

 確かに弾幕の捕食は出来なかったが、空間の捕食は可能だ。

 

 

「それは反則だろクソが!」

 

「戦いに反則は無い!」

 

 

 ある程度離れていた正太郎との距離をはかる。

 普通は無理だが俺なら…。

 

 

「二歩で詰めれる」

 

 

 そろそろ終わらせよう。とそう言いながら俺はにやりと笑う。

 自然体で立って気を静め、正太郎を見据える。

 正太郎はそんな俺を見て周囲に弾幕を展開し、俺に向かわせる。

 

 

「一歩で崩し、二歩で撃ち、三歩で必殺。さぁさご照覧あれ、受けきれたらお前の勝ちだ」

 

 

 まずは一歩目。

 正太郎との距離が二分の一詰まる。

 

 

「崩し」

 

 

 俺が全力を持って空気を、空間を踏むことで世界が揺れ、砕ける。

 世界の一部の崩壊や俺の一本衝撃で弾幕は消し飛び、正太郎は体制を崩す。

 

 

「撃ち」

 

 

 二歩目、正太郎との距離をほぼ零にしながら俺は拳を放つ。

 衝撃は相手に届くが相手は飛ばず。

 身体の中を駆け巡るような一撃。

 

 

「三歩必殺ッッ!!!」

 

 

 更にもう一歩踏み込みながら拳をえぐりこむ、それと同時に霊力、妖力、神力、そしてあとは不思議な力と捕食の力を目一杯送り込む。

 が危ないので今回は霊力だけにしておこう。

 特に捕食なんて送ったら本気で死ぬ可能性が出てくるからな!

 

 

「さて、帰るか」

 

 

 気絶した正太郎を抱えながら帰る。

 元の世界に戻り、酒でも飲むかと思いながら最初に座っていた縁側を見ると。

 

 

「イザナギ、貴方はもう少し人を疑うことを知るべきだと思います。今回、友であるとはいえ晴夢さんに多大な迷惑をかけた罰としてしばらくご飯はなしです」

 

「そ、そんな馬鹿な!」

 

「ではしばらく天照の料理が貴方の御飯です」

 

「慈悲を! お慈悲を! あれ食べるくらいならなしでいいです!」

 

「大体貴方は」

 

 

 イザナギが先に帰ってきていたようでイザナミに説教されていた。

 その隣にはイイ笑顔を浮かべた鈴音がいる。

 

 その視線は俺に抱えられている正太郎に向けられている。

 

 

「ん…うぅむ…」

 

 

 正太郎が目を開けると同時に鈴音を見つけてまた目を閉じる。

 

 

「俺は何も見なかった俺は何も見なかった俺は何も見なかった俺は何も見なかった俺は何も見なかった俺は何も見なかった」

 

 

 なんかぼそぼそと言っているが…。

 鈴音に引き渡そう。

 相思相愛で仲のいい二人だし、たまには二人で話もしたいだろう。

 うんうん、俺優しい。別に鈴音にたっぷり説教されてこいとかたっぷり怒られてこいとか、そんなこと考えてないさ。

 全然考えてない。

 

 

「ほい、鈴音、正太郎渡すよ」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 

 そういって正太郎を地面に降ろすと、鈴音は正太郎の首根っこを掴んで引きずりながらどこかへ行ってしまった。

 そういえば、何故この二人はことの顛末を知っているのだろうか?

 と考えているとてててっと名無花が小走りで寄ってきた。

 

 

「お前が知らせたのか?」

 

「…………」

 

 

 名無花にそう聞くと無言でこくんと首を縦に振った。

 丁度いい高さにあるので思わず頭をなでてしまうが、本人も嫌そうな顔はしていないのでよしとしよう。

 

 

「こんな夜中まで起きてちゃダメだろ? 夜更かしばっかりする子はイイ女になれねぇぜ? 」

 

 

 そういいながら名無花を抱えての名無花の寝室に一瞬で移動し、布団の中に寝かせる。

 

 

「もう寝な、おやすみ」

 

 

 俺はそう言い残してイザナギたちと酒盛りをしていた縁側に歩いて戻る。

 そこには正太郎もイザナギもいなかったが…。

 綺麗な金色の少し短い髪をした女性が背中から黒い羽を出して座っていた。

 

 

「なんだルーミア、お前も起きていたのか」

 

「お前もとは心外だな。私は元々常闇の妖怪だ。夜に起きていることが普通だ。晴夢こそ」

 

「俺は睡眠は取らなくても大丈夫だからな、今日は月が綺麗だから月見酒だ」

 

「私としては新月の方が好きだがな」

 

「そうかい。まぁ、それはそれで風情があるか。それはそうと、一緒に酒飲まないか? 丁度相手がいなくなって困ってたんだ」

 

「ふむ。まぁ構わん。暇だったしな」

 

「いいねぇ、綺麗な月を見上げて美女と酒盛りなんて、うれしいよ」

 

「す、すぐにそういうことを言う…。さっさと座ったらどうだ?」

 

「そうさせて貰おうかな」

 

 

 俺は軽口をたたきながらルーミアの横に座る。

 ――でもまぁ、言ったことは全部本心なんだけどな。

 さて、酒盛りを再開しようかな。

 

 

「あー。幸せだな。ずっとこんな日が続けばいいのに」

 

 

 自分の発作のことを思い出しながらそんなことを思わず呟いてしまう。

 

 

「続くだろうさ、ずっとな」

 

 

 ルーミアはそう言ってくれた。

 そうだな、続く、ずっと、ずっと…。

 俺がこんな日々をずっと守って見せる。

 

 

 

 

 ずっと  ずっとな。







補足、正太郎さんが無理やり気味に戦闘したのは晴夢さんの様子が最近おかしいことに気づいていたため少しでもストレスを発散させようとして、戦闘を開始しました。
 彼らの中では戦い=ストレス解消が成り立つんですねぇ…。

 晴夢さんは余裕がないので正太郎さんの気遣いには気付きませんでしたが、ストレスというか少し心に余裕が出ました。

 イザナギさんは素です。

 次回も頑張って編みます。
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