待っていた方がいらっしゃったら申し訳ない!
リアルの事情も片付いて、更新再開です。
そして、戦愛録の物語も少し動き出します。
では、感想ありがとうございました。
ゆっくりしていってね!
side晴夢
「ガァァァあああああああああああ嗚呼アアアアアアアアアアア!! はぁ……はぁ…フゥ…前に起こってから二百三年と三ヶ月十日。段々間隔が短くなって来てやがるな………
時間の問題…か……」
side龍桜
「のう、龍桜」
一人、縁側で夜空を眺めていたら、老人のような口調でそして、美しい声を後ろから投げ掛けられた。
振り向くと、長く美しい黒髪で額に角がはえた女性が、つまり鬼姫が立っていた。
少し疑問を感じた私は鬼姫に問いを投げ掛ける。
「どうしたんだ? こっちにいるのは珍しいじゃないか、鬼姫」
そう、珍しい。普段は妖怪の山にいるはずの鬼姫がここ、高天原にいるのは珍しいのだ。
鬼姫はいつもと少し違う笑みを浮かべながら答える。
「お前様と話がしたかったのじゃよ、龍桜」
「私と?」
「どうじゃ? 一緒に飲まぬか? 極上物の酒じゃぞ」
鬼姫は手に持った酒瓶をゆらゆらと左右に降りながら微笑んでいる。
「そうだな…。では貰うとしよう」
こうして、二人だけの宴が始まった。
今日は月が綺麗に見えているので月見酒となるだろうな。
鬼姫は私のとなりに腰を下ろす。持っている酒瓶のふたを開ける。
蓋が開かれた瞬間、瓶のなかから酒の匂いが出てくる。
鬼姫が極上物というだけあっていい香りがする。
「それで? 話と言うのは?」
「ああ、まぁ、察しておるじゃろうが…晴夢のことじゃよ」
やはり…。いつかこの話題で、晴夢の誰かと話すことになるだろうとは思っていた。
なぜなら……。
「晴夢の精神は異常、という話か?」
だからだ。
なぜ?と思うかもしれない。普段の晴夢を見ていればおかしいとは思わないかもしれない。私も、日常生活のなかで晴夢の異常性に気づくのは難しかっただろう。
だが、晴夢は戦闘が終わり相手の命を奪う瞬間。本当にその瞬間だけ目から感情の色が消える。それが異常…。
晴夢が命を奪う瞬間。表情は笑っていたり、怒っていたり、言動もそうだ、分かりやすく感情を表に出している。だが、目だけは違う、なにも感じられない。それ故に異常。
まるで、自分の感情を食い殺しているかのように…。
例外は相手も自分が死ぬかもしれないことを認めた戦い…。つまり、いつも鬼姫や異世界のものたちとやっている殺し合いだけだ。あのときの晴夢は本当に純粋に楽しんでいる。
「やはり気付いておったな、まぁ、晴夢の周りの者らの中で気付いておらんのは最近新しく来た者たちだけじゃろうて…いや、そのものたちも気付いておるやもしれんがな」
鬼姫はいつにもなく真面目な、そしてどこか悲しそうな表情だ。
「さて、話を戻すとしようかのぅ。龍桜、晴夢がいつからああなったか、わかるか?」
「いや、分からない。少なくとも、私と出会ったときには……」
「もうなっておったか…」
私と鬼姫、二人の間に重い沈黙が落ちる。
ぽつりと私は呟く。
「晴夢は…あの時代を生きるには優しすぎたんだろうな…」
あの時代、つまり、神代の更に前の時代。まだ人間すら存在しなかった時代。
私のような祖龍や晴夢のような特異なもの、もうすでにただの伝説になりつつある神獣たちが地上を支配していた時代のことだ。
まさしく弱肉強食、弱ければ死ぬ、強ければ生きる、シンプルでそれ故に厳しい世界。
「晴夢も最初から強かった訳じゃないだろうし…な」
晴夢と一緒じゃなかったころを思い出す。
私は…最初から強かった。龍という種族であるアドバンテージ故に、相手を殺さずに無力化することが出来た。
だが、晴夢は違う。最初はただ特異な力を持った、今の時代で言う人間だったと本人が言っていた…。
ならば…。
「まだ強くない晴夢は生きていくには殺すしかない。殺して喰って、強くなるしかなかったんだろうな…。まぁ、本当に…優しかったのだろうな、それ故に世界も厳しさを知って、手加減を忘れたのだろう」
晴夢は一のために全を捨てられる人間。一か全か、どちらかしか救えず、そして一が身内だった場合迷わず全を捨てる。どちらも助けようなどと微塵も考えないだろう。いや、考えれば迷ってしまう故に考えない。
現実主義者なのだろう、どこまでも…。そして憧れているのだろう、全も一も救おうとする理想主義者たちに、どこまでも…。
もしかすると、晴夢も元々は理想主義者だったのかもしれない。だが、世界の厳しさがそれを許さなかった。
「今の晴夢強さなら…晴夢も自分の気持ちに心から従って戦えるのだろうな…」
「ああ、じゃろうな。じゃが、晴夢の考えはまだあの時代のままじゃ。考えを治すのにわしらの存在も邪魔しておるんじゃろうな」
晴夢には守りたいものがある、それを守るためならなんだってするだろう。そういう人だ。身内にはとことん優しい、だが元々は身内だけではなかったのかもしれない。
晴夢は何処かで一度壊れたのだろう、私に出会う前の…何処かで…。
そして段々守りたいものが増えてきた晴夢は壊れたまま、狂ったまま、折れたまま直ったのだろう…。いや、直らざるおえなかったのだろう。
「本当に…難儀なことじゃ…。のう、お前様もそう思わぬか?名無花よ」
鬼姫は私たちの背にある襖の向こうに向かってそう訪ねる。
すると、その襖がゆっくり開いていく。そこには金髪のウェーブのかかった短い髪の少女が申し訳なさそうにしょんぼりとしながら立っていた。
「なんじゃ、盗み聞きくらいでそんなにしょんぼりとするでない。ほれ、酒は飲ませぬがこっちへ来い」
鬼姫は名無花にそういいながら自分の膝を指差す。
「……………(こくり)」
いつも通り、声を出さず、首を縦にふって応答すると。小さくかすかな足音を立ててこちらに来て鬼姫の膝に座る。
私はいつの間にか手に持っていて、中身の注がれた盃を見る。
鬼姫がいれたのだろう。私に気づかせないように持たせるだなんて器用な真似をする…。しかも中身が入っているのにだ。
「本当に、難儀なことだな」
私はそう呟きながら手に持った盃を煽り酒を飲む。
「あぁ…おいしいな…」
side晴夢
「はぁ…また妖怪か…。みんなにバレないためとはいえ、少し遠くに来すぎたな。帰るのに時間がかかってしょうがないぜ」
目の前の妖怪を見ながらそう呟く。
妖怪たちは何かを察したのか、油断なく構えて隙を伺っている。
「もう少し早く気付けてれば…まだ自分の生を楽しめてたかもな」
俺はそう言うと同時に一番手前にいる妖怪と距離を詰め、手刀で妖怪の首を撫でるように斬る。
「ッ!?」
首を切られ、絶命した妖怪以外の妖怪たちが顔に驚愕を表す、それと同時に彼らの命も刈り取る。
「御馳走様でした」
血で真っ赤に染まった自分の手を眺めてみると、その血は光となって俺の体のなかへ消えていく。
「さてと、あとどれくらいかなぁ…考えがまとまったら普通に走って帰るとするかな」
帰り道を歩く、そりゃあ、走ればすぐ帰れるけど、今は一人でのんびり歩きたい気分だ。
何年前からなんだろうなぁ…。
発作が起こるようになったのは…、一番初めはのときは本当に驚いたし危なかった…。
幸い、龍桜は寝ていたから心配かけずにすんだけど…。
一度目を抑えられたのは奇跡だな…。二回目からはなんとなく、抑え方がわかったからまだ大丈夫だったが…。
最近は抑えるのが難しくなって、間隔も短くなっている。
「さぁて、どうするか…」
誰かに相談する? だが誰に? 余計な心配はかけたくはない。 そもそも相談したとして、解決するとも思えない、心配をかけるだけじゃないか。
そもそもこれは自分の問題。自分でなんとかするべきだろう…。
発作が起こる前には前兆がある、なんとなくいやな感じがするから、いつ起こるかなんとなくわかる。だからこうしてみんなに見つからないようにできているわけだ。
なんとかするしかないな。俺の大好きな、この日常のためにも…な。
side 鬼姫
「それで? 龍桜は晴夢の精神状態知っておるのに、なにもしないのかのぅ」
「私は…そう、だな…なにもしないのではなく、なにもできない…のほうが正しいな」
龍桜は少し悲しそうに、悔しそうに感情を圧し殺すようにしてそう呟くように言う。
「ほう?何故じゃ?」
「なんと言えばよいのかわからないのだ…。いつまで考えても…。何を言っても今のこの心地よい日常が変わってしまうような気がするんだ。
それを言ってしまったら晴夢をさらに追い詰めることになりそうなんだ…」
そこまで言って、龍桜は首を振りながら自分の言葉を否定する。
「いや、これは言い訳だな…。私は変革が怖いだけの臆病者なのだろう、私は自分のために晴夢を追い詰めるような卑怯者なのかもしれんな…」
俯きながらそう消え入りそうな声で言う龍桜。
龍桜が言っていることは正しいと思うし、わしに口出し出来ることでもない…が――
「そういえば、ずっと昔に晴夢が言っていたのぅ…「変革に犠牲は憑き物だ」と、あいつらしい答えよのう…。大事なのは、その憑き物をどう落とすか…とも言っておった」
「鬼姫…?いきなりなにを言い出すんだ…?」
龍桜はわし唐突な話題変更に動揺を隠せないようじゃ…。
わしは龍桜の目を見て笑いかける。
「龍桜よ、お前様が卑怯者ならわしらもそうじゃろうて、少なくとも、わしは龍桜と同じ理由で踏み込めんでおったのじゃから…。じゃがのぅ」
わしは自分の膝の上の名無花の頭を撫でながら続ける。
「時代は代わった…じゃから、そろそろ…わしらも変わらねばならんのかもしれんのぅ。わしらと、そして誰よりも…晴夢が…の。
もしも、晴夢のいった通り、変革に犠牲が憑き物ならば、今回の憑き物は晴夢の考え方じゃの」
「鬼姫…」
「大丈夫じゃ、わしらならばやれるじゃろうて、なんといっても、わしらは影神 晴夢の恋人じゃからな」
「ああ…そうだな」
そう言いながら頷いた龍桜の顔は決意に満ちていた。
さて、晴夢さんには何が起きているのでしょう?
まぁ、簡単にわかることですけどね。
感想待ってます!
次回も頑張って編みます!