緑谷「これはこれは、参ったね。」
イレイザーヘッドに拘束され、オールマイトも眼前に立ち塞がる。
まさに絶体絶命。
その辺のチンピラヴィラン達なら即投降してしまう場面ですら、その顔から余裕が消えることはなかった。
オールマイト「ようやく、ゆっくり話ができそうだね。緑谷少年!」
ニカッと笑みを放ち緑谷と相対する
緑谷「・・・そうですね。僕もあなたと話がしたかった、もっとリラックスして話がしたいのでこの拘束を解いてくれると助かるんですが。」
オールマイト「HA!HA!HA!そこは我慢してくれたまえ!」
キラーンと輝きそうな歯を見せてサムズアップで答えるオールマイト
オールマイト「さて、緑谷少年よ。聞けば君は爆豪少年と幼なじみ、本来なら今日の彼等のように未来に向け学び笑い、青春を歩むべきはずだ。」
緑谷「それは一般論ですね、僕は生まれながらにその一般というものから外れてしまった。いや、そもそもこの世界の人間という定義から外されてしまったと言った方が良いかもしれませんね・・・。」
相澤「・・・・・・」
相澤は何も言うことが出来なかった。
幾ら声を上げようともこの世界の八割の人間が個性という超常能力を持ち社会は益々その個性の基に制度を作り直し、新たな価値観、システムを産み出していくだろう
しかし・・・
緑谷「でも僕だって一緒に生きていく権利があるはずだ!彼らと同じように歳を取り、彼等の言葉を理解し、感情を共有できる。
なのに、無個性というだけで弾かれてしまう。」
オールマイト「緑谷少年・・・。」
幾ら平和の象徴と言えども万能ではない、いま世間に根付いている無個性への差別的感情を消すことなど到底無理なことだった。
ましてやこれから無個性というのはどんどん減っていきこれから先いなくなってしまう可能性が高い、いずれ無個性というのは非常に稀な難病のような扱いになってしまっても不思議ではない
緑谷「オールマイト、貴方は確かに素晴らしい英雄だ。」
緑谷の纏う雰囲気が変わる
闇緑谷『だが英雄止まりではこの世界の闇は照らせない!この世界の深淵に光を灯し、救えるのは神に選ばれた王のみだ!』
高らかに告げるもう一人の緑谷出久
相澤「っ!!」
オールマイト「・・・確かに私とて人間だ。どれだけ手を伸ばそうと救えない人がいることなど承知している、
だか!
私が歩みを止めてしまえば今より多くの悲しみが生まれ、希望の灯火が消えてしまう!
私の光が世界を覆えなくても私の光を追い数多の光が灯れば君の言う深淵すらも超えて行ける!
その為に私は平和の象徴であり続ける!
何があろうとこう叫んでみせる!
『私が来た!』とな!」
オールマイトは拳に力を入れ、自戒の念を込めて宣誓する。
緑谷「さすがです、オールマイト。かつて僕が憧れた人・・・」
「オールマイト!イレイザーヘッド!」
声が聞こえたと思えばシンリンカムイを始めMt.レディやデステゴロ等のプロヒーローが応援に駆けつけてやって来た。
緑谷「ふぅー、もっと話したかったですが、残念、時間切れだ。」
オールマイト「緑谷少年よ。君の生い立ちには同情する。
しかし、罪は罪で償わねばならん。
もう一度考え直し。償いが済んだのなら再び世界を見てくれ。世界の闇をも照らす希望の灯火の束を。」
こうしてプロヒーロー達と警察に緑谷出久は連行されていった。
オールマイト「やれやれ、一先ずはってとこかね。」
騒動が去った人目のない廊下でオールマイトはガリガリの骸骨男に戻っていた。
相澤「どうですかね。エンデヴァー達から救出成功の連絡後、詳細な報告が上がってきていませんし、まだ雇い主である敵連合の全貌も掴めていない。」
オールマイト「それならば戦い続けるまでだ。先程の宣誓を早速破る訳には行かないからね。」
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1-A控え室
決勝終了後、閉会式の準備が始まり完了まで控え室で待機を言い渡された1-A一同
「「「「「・・・・・・」」」」」
控え室の中はどんよりとした空気て満ちていた。
結果はどうあれ二人は全力でぶつかり、答えを出した。
あの場にすら立てていない自分達が口を出すことではない。
しかし、このやるせなさを解決する術をまだ若い彼らは持ち合わせてはいなかった。
自分がどちらか片方の立場だったら?
想像するだけで言い様の無い気持ちに苛まれる。
そんな中、
ガラガラ。
爆豪「・・・。」
轟「・・・。」
激戦を終えた二人が帰ってきた。
麗日「爆豪君・・・。」
八百万「轟さん・・・。」
周囲の目線をよそに二人は無言で席に着いた。
轟「これが結果だ。」
爆豪「・・・・・・。」
誰に言うわけでもなく轟が話し出す。
轟「ヒーローになれば、難しい決断を迫られることがあると聞く。」
命を天秤で計らねばならないような、それがどれだけ愚かなことだとしても・・・
轟「今回俺は気づかされた、俺という人間の小ささに、弱さに・・・」ポタッ
誰も何も言うことができない
轟「これじゃ、なにも救えない、決断する以前の問題だ。だから・・・」ポタッポタッ
轟は気丈に語るがその目には必死に堪えた涙が溜まっていた。
他のメンバー達も涙が浮かぶなか、その雰囲気を切り裂くように
ガラッ
相澤「・・・全員いるな?」
飯田「相澤先生・・・。」
相澤は全員がいることを確認して部屋に入り扉を閉めた。
相澤「まず始めに体育祭ご苦労さん、爆豪・・・ほらよ」
爆豪は相澤から手渡されたカードを受けとる
魔法除去 通常魔法
フィールド上の魔法カード1枚を選択して破壊する。選択したカードがセットされている場合、そのカードを確認し、魔法カードなら破壊する。罠カードの場合はもとに戻す。
受けとるやカードら毒々しい紫色に妖しい輝きを放つ宝石が埋め込まれた錠と鍵が現れた。
爆豪「・・・・・・」カチャカチャ、カチン
鍵穴に乱暴に鍵を突っ込み、躊躇いなく回す。
すると、
ズクンッ
爆豪「ッ!?」
あのアザ辺りに違和感を感じた。そして、
ズサァァァー
その鍵も塵となり宙に舞い消えてなくなった。
爆豪はすぐに上着を捲りアザがあった場所を確認するとそこにあったアザは消えていた。
切島「大丈夫か?バクゴー?」
爆豪「あぁ。」
その言葉に皆に安堵の表情が浮かんだ
轟「良かったな、爆豪。」
爆豪「・・・好きなだけ恨んでもらって構わねぇ、それでも俺には成し遂げなきゃいけないことがあるからな。」
爆豪は強い決意で言い放つ
轟「恨みっこ無しと言ったのはお前だろ?俺もそれに乗った上での結果だ。寧ろ・・・俺の方が、俺の方が姉さんに恨まれるべきだ。」
控え室の中にまた沈痛な空気が流れるも、
相澤「・・・お前らは全力で体育祭に挑んだ、奴の企みに付き合わされたとはいえ、各々が未来の為に出し惜しみすることなくやりきってくれた。」
担任の言葉に全員が顔を向ける。
相澤「それに全力で応えるのが大人ってやつだ。」
ポンと轟の肩に手を置く
相澤「轟冬美救出に動いていたエンデヴァーから連絡が来た。
轟冬美、お前の姉さんの救出に成功したってな。」
轟は驚き目を見開く
芦戸「先生、じゃあ、じゃあ轟のお姉さん無事なの?」
相澤「ああ。」
「「「やったー!」」」
先程迄の空気が嘘のような歓喜の声が弾けとんだ。
峰田「スゲー、流石はエンデヴァーだな。」
瀬呂「あいつの悔しがる顔が浮かぶな!」
切島「よかったな!バクゴー!」
爆豪「ハッ、カンケーねーよ、だからひっつくな鬱陶しい!」
笑顔が咲き誇るなか
爆豪「おい・・・デクはどうしたんだ?救出成功なら交戦して退けたってことだろ?」
ピタリ
空気が止まる
相澤「はぁ、お前は変なとこで冷静だな。」
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緑谷「オールマイト、貴方と話せてよかった。やはり僕の進む道は間違っていなかった・・・」ブツブツ
連行中のパトカーに乗せられ、周りを警戒のためにプロヒーローを乗せたパトカーが護衛するなか緑谷出久の瞳は益々その狂気を増していた
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相澤「・・・ってのがさっきあった話だ。」
観念した相澤は先程の顛末を話した。
尾白「捕まったって・・・」
上鳴「ヘヘーン、散々俺らに威張りまくってたクセにすぐに捕まるとかダセェな!」
耳郞「バカ!少しは頭を使え。おかしいと思わないの?」
八百万「今回といい、前回の襲撃といい、彼等の作戦は詰めは甘いですが決して無計画ではありませんでした。
それなのに今回の体育祭観戦は些かリスクが高すぎるような・・・。」
蛙水「ええ・・・あっさりなにもせずに連れていかれたというのは逆に不気味ね。」
障子「なにか狙いがあると?」
常闇「未知なる恐怖・・・」
相澤「まあここで悩んでもしょうがない、現に奴は今、他のプロヒーロー数名で警察に連行中だ。すぐにどうすることもできまい。」
相澤は話に区切りをつける
相澤「今は・・・一人の教師としてお前らが無事に体育祭を終えられる事を嬉しく思う。
さあ閉会式だ。最後までビシッとしてけよ。」
「「「「「「ハイッ!」」」」」」
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オールマイト「轟少年、おめでとう!」
轟「ありがとうございます。」
閉会式のメダル授与にてオールマイトの手で銀のメダルをかけられながら話す轟
オールマイト「君の家庭のことは深くは聞くまい。しかし一つだけ言えるのは、良い顔になった。君はもっともっと強くなれる。」
轟は静かに頭を下げた
オールマイト「爆豪少年、有言実行とは流石だな。」
爆豪「ケッ、あいつに焚き付けられてとったみたいでムカつくぜ。もともと俺が一番になるのは確定事項だったわ!」
金のメダルをかけられながらも不遜に言い放つ爆豪
オールマイト「君は自らの手で自らの運命を掴んだんだ。これはもっと誇って良いことだよ!」
オールマイトは笑顔で返す
オールマイト「さあ、皆さん!今日は彼らだった。しかし、皆がここに立つ可能性を秘めているのは明白だろう!
次代の芽は確実に育ってきている!そんな彼らに称賛と今日一日の労いを込めてこの言葉で締めたいと思います!ご唱和ください、せーの、」
「「「「「「Plus U「お疲れ様でした!!」
盛大にずっこけた締めの挨拶だった。
しかし終わった時皆の顔に浮かんだのは笑顔だった。
そして誰も気が付かなかったオールマイトの大声に紛れて遠くで何かが爆発した音を・・・
生贄の抱く爆弾 通常罠
相手フィールド上にアドバンス召喚されたモンスターの攻撃宣言時に発動できる。
相手フィールド上の表側表示のモンスターをすべて破壊し相手ライフに1000ダメージを与える。
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翌日
体育祭の振替で休日となった校舎に集まった教師一同は愕然とした
[轟冬美救出作戦報告書]
対象の救出:成功
負傷者:数名
行方不明者:1名
行方不明者名:エンデヴァー
戦いはまだ何も終わっていなかった・・・