~ゆらぎ荘~ 午後7時25分
ゆらぎ荘の屋根の上では、幽奈がコガラシの帰りをそわそわしながら待っていた。
その手には、昨日千紗希と一緒に作ったバレンタインデーの手作りのチョコが入った箱を持っている。
幽奈(そろそろコガラシさんがバイトからお戻りになるはず、昨日一生懸命作ったこのチョコをコガラシさんへ・・・!)
幽奈はコガラシが帰ってくると同時にチョコを渡すつもりなのだ。
学校で渡せなかったのは、第3者からは幽奈の姿が見えず、物が浮いているように見えて大騒ぎになってしまうからだ。
その為、ゆらぎ荘でコガラシにチョコを渡すことにしたのだ。
すると、ゆらぎ荘に向かって来る人影が見えて、もしかしたらコガラシかもしれないと思い、幽奈は地上へ降り立った。
秋宗「おう幽奈か、ただいま」
しかし、その人影はコガラシではなく、最近ゆらぎ荘に入居した秋宗だった。
千紗希がコガラシにチョコを渡したことを確認した後、まっすぐゆらぎ荘に帰ったのだ。
幽奈「あ、秋宗さんでしたか、お帰りなさいませ。はぁ・・・」
秋宗「おい、人の顔見るなりため息ってどういうことだ?」
幽奈「っ!す、すみません!」
コガラシじゃなかったことに思わずため息をついた幽奈に秋宗はイラついてしまい、幽奈は慌てて秋宗に謝罪した。
秋宗「悪かったな、愛しのコガラシくんじゃなくて」
幽奈「本当にすみませ、っ!?///い、愛しの!?///からかわないで下さいよぉ!!///」
秋宗の発言に幽奈は顔を赤くして慌てふためいてしまう。
秋宗「あいつなら、宮崎を家まで送ってるから、もう少しで帰ってくると思うけど」
幽奈「そ、そうですか」(ということは千紗希さんはすでにコガラシさんにチョコを渡してるはず!私も早く渡さなければ!)
秋宗からコガラシのことを聞いた幽奈は、早くコガラシが帰ってこないかと、辺りを見渡している。
秋宗「・・・あいつにチョコ渡す気なのか?」
幽奈「えぇ!?///ど、どうしてそれを!?///」
秋宗「今日が何の日かくらい分かるわ。宮崎と同じくらいバレバレなんだよ」
幽奈「うぅ///・・・」
幽奈は顔を伏せて赤くなっていた。
そんな幽奈の様子を見て秋宗があることを提案した。
秋宗「・・・帰って来た時に渡さないほうがいいと思うぞ」
幽奈「え?どうして、ですか?」
幽奈は思わず目を丸くしてしまう。
秋宗「コガラシはバイト帰りで疲れてるんだ。渡すなら、本人がゆっくりしている時がいいだろ」
秋宗のアドバイスに幽奈は少し考えて
幽奈「・・・確かにそうですね。分かりました!じゃあコガラシさんがゆっくりしている時に渡しますね!」
幽奈はコガラシの提案を受け入れて、ゆらぎ荘の中へ入って行った。
秋宗「・・・さて、風呂にでも入るか」
秋宗は幽奈に続いて、ゆらぎ荘へ入って行った。
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秋宗は風呂から上がったあと、厨房にて、仲居さんと夕飯作りの手伝いをしている。
秋宗はゆらぎ荘に入居してから、かるらへの報告をしながらも、家事の手伝いもこなしているのだ。
秋宗「仲居さん、味噌汁の味の確認お願いしてもらっていいですか?」
仲居さん「はい、わかりました」
仲居さんが、秋宗の作った味噌汁をお玉ですくって小皿に注いで味を確認した。
仲居さん「うん、美味しいです。秋宗くん味噌汁作るのお上手ですね」
秋宗「いやいや、仲居さんには負けますよ」
仲居さんからOKを貰った秋宗は、味噌汁を器に注いでいく。
秋宗が手伝ってくれたことにより、予定よりも早く夕飯が出来上がった。
秋宗「じゃあ俺、これ大広間まで運んで来ますね」
仲居さん「あ、すみません秋宗くん、少し待っていただけませんか?」
仲居さんは秋宗を呼び止めて、冷蔵庫からあるものを取り出した。
仲居さん「こちらをどうぞ、秋宗くん!」
秋宗「えっ、これって、」
仲居さんが取り出したものは、秋宗のために作っておいた、手作りのチョコだった。
皿に載せられたチョコは緑色で、抹茶であることを物語っていた。
仲居さん「お抹茶のチョコです。お口に合うといいんですけど」
秋宗「い、いいんですか?」
仲居さん「はい、秋宗くんもコガラシくんと同じくらい手伝って貰ってますからね」
仲居さんの笑顔に秋宗は癒されてしまう。
秋宗「ありがとうございます。で、では、いただきます」
秋宗はチョコを一つ手に取り、口に運んだ。
秋宗「・・・やっぱり仲居さんの手料理凄いですね。こんなに美味しいチョコ初めて食べますよ」
仲居さん「ふふっ、気に入ってもらえて何よりです」
秋宗からチョコの感想を聞かされて、仲居さんは少し照れてしまう。
秋宗「流石に今全部食べたら夕飯入らなくなると思うんで、残りは夕飯の後にいただきますね」
仲居さん「確かにそうですね。分かりました」
秋宗は料理をお盆に乗せて、大広間へ向かった。
すると秋宗は、廊下を歩きながらふと思った。
秋宗(そういや、お嬢と姐さんからチョコをまだ貰ってないな。毎年楽しみにしてたんだけどなぁ。)
毎年、かるらとマトラから手作りのチョコを貰っていたのだが、今年はまだ貰っておらず、少しだけ落ち込んでしまう。
そんなことを考えながら、大広間に着いて襖を開けると、先ほど帰って来て風呂上がりのコガラシと幽奈と呑子と朧の4人がいた。
だが、朧は自分の着ている着物をはだけさせながら、コガラシと身を重ねていた。
そして、棒状のチョコをお互い端から咥えている状態になっていた。
秋宗「・・・とりあえず、お前は日常茶飯事、欲求不満ってお嬢に報告していいか?」
秋宗はコガラシに白い目を向けながらあきれ顔になっていた。
コガラシ「違う西条!これは誤解だ!」
秋宗「誤解?身をさらけ出してる女と身を重ねることの何が誤解なんだ?」
コガラシは朧から離れて秋宗に誤解と話すが、秋宗は軽く流して料理を机の上に並べていく。
朧「違うぞ西条、これは親密度が増す方法と荒覇吐の文献にあったのだ。決してやましいことではないぞ」
呑子「そういえばチョコ関連の色々見せてあげたわねぇ」
朧は着物を着直しながら秋宗に誤解だと話し、呑子も苦笑いを浮かべていた。
すると今度は、天井に白い渦が表れた。
秋宗「あ、アレって、転送術?」
幽奈「ということは・・・!」
そして、転送術の中から、緋扇かるらと巳虎神マトラが出てきたのだ。
かるら「久しいな、コガラシ殿!それと秋宗!」
マトラ「オッス!秋宗!宵ノ坂!」
コガラシ「緋扇!」
秋宗「お嬢!それに姐さんまで!」
秋宗は久しぶりに会うかるらとマトラを見て、少しほっとした。
かるらは顔を赤くしながら、持っていたものをコガラシに差し出した。
かるら「これは、妾からの、バレンタインのチョコなのじゃ!」
かるらが渡したチョコは、かるらそっくりのフィギュアのようで、裸姿のかるらにリボンが結ばれていた。
幽奈「フィ、フィギュアみたいなクオリティですぅ!」
呑子「色つきのチョコ使ってるのねぇ」
朧「器用なものだな」
秋宗「お嬢こういうの得意だよなぁ」
マトラ「ま、作るのに結構時間かかったけどな」
皆、かるらのチョコを見て、それぞれの感想を述べた。
かるら「こ、コガラシ殿!よろしければここで!食べてみせてもらえんじゃろうか・・・!?」
コガラシ「お、おう?」
コガラシはかるらから促されて、チョコを手に取り食べようとする。
かるら(お、おぉ///・・・!妾が!妾が!コガラシ殿に召し上がられてしまうのじゃあ///・・・!)
かるらは自分の作ったチョコを食べようとするコガラシを見て、自信を食べようとするコガラシを妄想してしまい、息が荒くなっている。
コガラシ「すまん緋扇、なんだか妙に食べづらいんだが・・・」
秋宗「ヤバいよ、お嬢絶対変なこと考えてるよ。だって上の空だもの、ちょっとヨダレ出てるし」
かるらの様子を見て、コガラシはチョコを食べるのを躊躇してしまい、秋宗は若干引いていた。
かるらは秋宗に言われてハッとなり、ヨダレをぬぐった。
かるら「すまないコガラシ殿・・・!見苦しいところをお見せして・・・!それと、秋宗!」
秋宗「ん?何?」
かるらは秋宗に赤い包み紙でラッピングされた箱を秋宗にさしだした。
かるら「いつもお前には世話になっとるからのう、ほんの気持ちじゃ!」
マトラ「アタシからもあるぜ!」
マトラは水色の包み紙でラッピングされた箱を秋宗に差し出した。
秋宗「お嬢・・・!姐さん・・・!ありがとう!」
秋宗は二人からチョコを貰えたことに嬉しくて涙目になり笑みがこぼれる。
マトラ「泣くなよ、このくらいで」
秋宗「だって・・・!お嬢絶対コガラシ用のチョコ作るのに集中して、俺の分作ってないと思ったから・・!」
かるら「そんな訳ないじゃろ。全く、お主は強いのか弱いのか分からんやつじゃのう」
かるらとマトラが呆れていると、襖が開き、狭霧とこゆず、夜々が入って来た。
こゆず「わーいご飯だー!」
狭霧「む・・・!?緋扇かるら!?巳虎神マトラ!?貴様らなぜここに!?」
かるら「チョコ渡しに来ただけじゃ!」
夜々「何で秋宗泣いてるの?」
秋宗「いや、何でもない・・・!」
皆が集まって来て、賑やかになってきた。
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夕飯も終わり、皆大広間でくつろいでいた。
机の上には、コガラシが皆から貰ったチョコが並べられていた。
ちなみに幽奈はすでにコガラシにチョコを渡し終えていた。
秋宗「改めて見ると結構貰ってるな、お前」
秋宗はコガラシのチョコを見て、感想を口にした。
コガラシ「西条だって結構貰ってたじゃねぇか」
秋宗「俺は数よりも質がいいんだよ。俺が貰えた質のいいチョコはお嬢と姐さんと仲居さんの3人だけ、お前は全部質がいいやつ貰えたじゃねぇか」
秋宗に言われて、コガラシは頭を掻いて少し困った表情になってしまう。
コガラシ「・・・なんか不思議な感じがするんだよな、俺なんかがこんなに貰っていいのかな、って」
秋宗「・・・はぁ、何を今さら」
幽奈「いいに決まってるじゃないですか」
幽奈はコガラシのチョコを見ながら、
幽奈「このたくさんのチョコが何よりの証拠です。皆さんコガラシさんのことが大好きなんです」
みんな(秋宗とマトラを除く)は少し照れていて、ほんのり顔が赤くなっていた。
幽奈「もちろん私も!コガラシさんのことが大好きです!」
幽奈の発言に、コガラシの顔はどんどん赤くなり、コガラシにチョコを渡した面々もどんどん赤くなっていた。
幽奈はみんなの様子がおかしいことに首を傾げていた。
幽奈「?皆さんどうし・・・・・っ!!///」
幽奈は自分が言ったことを理解して、顔が真っ赤になっていった。
決して告白の意味で言ったのではないのだが、そうと捉える意味にもなってしまったのだ。
こゆず「幽奈ちゃんが告白したー!!」
幽奈「ち、ちち違いますよ!?///いい今のは皆さんと同じように!///」
幽奈は慌てて誤解だとみんなに話そうとするが、
秋宗「違う?これでもまだ同じことが言えるのか?」
秋宗はニヤニヤしながらスマホの画面をみんなに見せる。
みんなはなんだろうと思いスマホ画面を見ると
幽奈『もちろん私も!コガラシさんのことが大好きです!』
幽奈「なっ!?///」
そこに映っていたのは、先ほどの幽奈がコガラシに対して言っていた場面の動画だった。
実は秋宗、何か面白いことが起こりそうと思い、こっそり撮影していたのだ。
秋宗「頬を赤くしながら大好き、これのどこが告白じゃないって言うんだ?」(ニヤニヤ
幽奈「そ、それは///・・・うぅ///」
コガラシ「お、おい西条!幽奈困ってるだろ!スマホよこせ!動画消してやる!」
面白がっている秋宗にコガラシは手を伸ばしてスマホを取ろうとする。
秋宗「ふっ、甘いな。お嬢!」(ガシッ
かるら「え!?」(グイッ
秋宗は咄嗟にかるらの腕を掴み、自分の前まで引き寄せた。
そして、
ムニュッ
コガラシ「なぁ///!?」
かるら「・・・へ?///」
コガラシが手を伸ばしたことにより、突如表れたかるらの胸を揉んでしまう結果になってしまい、かるらも咄嗟のことに頭の整理が追い付かない様子である。
秋宗「ほほう?どうやらコガラシくんはチョコレートよりも、お嬢のマシュマロの方がお好みのようだ」
仲居さん「何うまいこと言ってるんですか!?」
秋宗の例えに仲居さんは思わず突っ込んでしまう。
胸を揉まれているかるらはというと、
かるら(コ、コガラシ殿が妾の胸を!///こ、これはこれで、悪くない、の、じゃ///・・・)バタリ
コガラシ「緋扇!?」
かるらは堪えられず、頭から湯気が立ち倒れてしまう。
マトラ「あーあ、おひいさん完全に気絶しちまってるよ」
秋宗「おいコガラシ、お前がお嬢の胸なんか揉むから気絶したじゃないか」
コガラシ「元凶はお前だろ!」
秋宗は気絶しているかるらを見ながらコガラシのせいにするが、コガラシは秋宗のせいだと主張した。
狭霧「冬空コガラシ!そこに直れ!風紀を乱すお前を成敗してくれる!」
狭霧は我慢出来ず、クナイをコガラシに向けて戦闘体制をとっている。
コガラシ「ま、待て狭霧!これはどちらかというと原因は西条のほうだろ!」
狭霧「問答無用!!」(ビュッ
コガラシ「うぉお!?」
狭霧はコガラシの言い分を聞かず、数十本のクナイを投げ飛ばすが、コガラシは必死に避けていた。
この状況を見て夜々が呟いた。
夜々「・・・カオスだ」
こうして、バレンタインデーは無事に?幕をおろしたのであった。
感想のほど、よろしくお願いいたします。