3月の末、湯煙高校は春休み期間に入っていた。
秋宗にとっては、ゲームを長時間できる至福の期間なのだが、2日間徹夜してゲームをしてしまい、仲居さんから『ゲームばかりしていたら目を悪くします!今日は1日外出してきてください!』と注意を受けてしまい、今日は仕方なく町のショッピングモールの方に来ていたのだ。
春休み期間のためか、ショッピングモールには、秋宗と同級生の人たちも沢山いた。
秋宗「さてと、どうしよう。ゆらぎ荘には戻れないし、かといってここですることも限られてくるしなぁ」
秋宗は辺りを見回して何かないかと探していると、ふと視界に、コガラシと千紗希、兵藤と柳沢の姿が見えた。
秋宗「よぉ、お前らここで何してんだ?」
秋宗は歩きながら4人に声をかけた。
コガラシ「あ、西条!」
千紗希「西条くんまで来たの?」
柳沢「兵藤、お前西条にまで声かけたのかよ?」
兵藤「いや、俺は誘ってねぇぞ?」
秋宗は4人の会話に疑問を持ち、率直に聞いてみた。
秋宗「西条くんまでって、一体何をして・・・ん?」
秋宗は4人以外にもう一人居ることに気がついた。
長髪の金髪に頭からアホ毛が飛び出て、顔はメイクをしているのだろうが目付きが少し鋭く、スカジャンを羽織っており、小柄な女の子が柳沢の側にいた。
おそらく、女の子が小柄なせいで遠くから見ても気づけなかったのだろう。
秋宗「えっと、その子、誰?」
柳沢「あぁ、紹介しとくよ西条、コイツは・・・」
???「初めまして!自分は轟紫音と申します!今年から湯煙高校1年ッス!」
柳沢が紹介する前に、女の子、轟紫音は元気よく自己紹介をした。
秋宗「お、おう、よろしく。コガラシ、この子一体?」
コガラシ「えっと、実はだな・・・」
紫音の自己紹介に呆気に取られてた秋宗に、コガラシは事情を説明した。
柳沢は中学3年に千紗希と兵藤の中学校に転校する前は、有名な不良学校、仙石中学校(略してゴクチュー)でアタマを張っていたらしいのだ。
その当時の柳沢の後輩である紫音が、今年から湯煙高校に入学することになったらしく、今日は柳沢が千紗希を誘って会うことになっていた。
偶然にも兵藤がその時の会話を聞いていて、心配になりコガラシに声を掛けて様子を見に来たのである。
秋宗「おい、だったら何で俺にも声掛けなかったんだよ?」
兵藤「お前を誘っても『ゲームで忙しい』って言いそうだっから」
千紗希「確かに西条くんだったら言いそうだね」
兵藤が秋宗を誘わなかった訳を話し、千紗希は思わず笑ってしまう。
秋宗「兵藤、お前なぁ・・・」
紫音「あの、芹姐さんの同級生の方ッスか?」
呆れている秋宗に、紫音は話しかけた。
秋宗「あぁ、西条秋宗だ、これからよろしくな、轟」
紫音「よろしくお願いします!西条さん!」
紫音は勢いよく頭を下げた。
紫音「あの皆さん!あそこでちょっと休まないッスか!?自分飲み物とか買って来るッス!」
千紗希「あ、うん、そうしよっか」
紫音はカフェを指差して休憩しようと提案して、みんなは賛成した。
紫音「あの、西条さん!ちょいとツラぁ貸してもらえるッスか・・・!?」(ゴゴゴ・・・
秋宗「お、おう・・・?」
おそらく、一人で飲み物全部持つのは大変だから一緒に持ってほしい、とのことだろうが、紫音の目付きが急に鋭くなった為、第三者から見れば校舎裏まで来させてカツアゲをする光景にしか見えない。
秋宗と紫音は飲み物を買いにレジまで行き、コガラシと千紗希と兵藤と柳沢は空いているテーブル席に着いた。
秋宗と紫音が並んでレジの順番を待っていた。
秋宗「それにしても轟、あのゴクチューの番長とは思えないな。どこにでもいる学生って感じだけど」
紫音「いやぁ、実は自分、高校デビューしたくて、でも普通の女の子ってどういう感じなのかよくわからなくて。芹姐さんに相談したら、千紗希姐さんがバッチリ決めてくれたんッスよ!」
紫音の前の服装は、髪型はリーゼントで黒いマスクを着け、目付きもかなり鋭く、正に漫画から飛び出して来たヤンキーそのものだった。
それを千紗希が今風の女子高生らしく直したのだ。
紫音(ホントに千紗希姐さんには感謝しきれないッス!恩返しのためにもあの事を聞き出さなければ!)
あの事とは、コガラシの好きな人の事である。
千紗希がコガラシに対して好意を抱いている事を柳沢から聞いたのだが、実際にコガラシの好きな人までは分からない。
そこで紫音は、千紗希への恩返しのために秋宗からコガラシの好きな人を聞き出そうとしているのだ。
本人に聞いても、しらばっくれそうと考えたかららしい。
紫音は勇気を振り絞り、秋宗に話しかけた。
紫音「あ、あの西条さん・・・!」
???「紫音姐さん!?」
突然誰かから声を掛けられて秋宗と紫音が振り向くと、そこにはゴクチューの制服を着ている2人の女子がいた。
紫音「お、おまえらなんでここに・・・!?」
秋宗「知り合い?」
紫音「え、えぇ、コイツらは自分の後輩でして」
紫音は簡単に自分の後輩たちを秋宗に紹介した。
後輩1「やっぱり紫音姐さんだ!どうしたんスかそれ!?イメチェンッスか!?」
後輩2「スッゲー可愛くなってるじゃないッスか紫音姐さん!」
後輩たちは紫音のイメチェンに大変驚いていた。
そして今度は秋宗に視線を移した。
後輩1「まさかこちら彼氏さん!?」
後輩2「紫音姐さんにこんなに早く彼氏さんができるたぁ・・・!今夜はお赤飯ッスね!」
紫音「バッ・・・ちがうッつの!」
後輩たちから秋宗を自分の彼氏と思われた紫音は慌てて否定した。
後輩1「ウチらがあんまりお邪魔しちゃ悪いッスね!紫音姐さん泣かせたら酷いッスからね彼氏さん!」
後輩2「そんじゃお幸せに~」
紫音「だからちげぇっつんてんだろぉ!」
秋宗「まぁまぁ落ち着け轟」
後輩2人は走り去り、からかわれた紫音は今にも追いかけそうな雰囲気だったが、秋宗が落ち着かせていた。
紫音「す、すみませんッス!」
秋宗「別に気にしていないさ。でも、結構いいやつらだな。あの2人も、とてもゴクチューの不良とは思えないな」
紫音は秋宗に謝ったが、秋宗は気にせず後輩2人の様子を見て、不良とは思えないと感想を漏らした。
そして、レジの順番が回ってきて、人数分の飲み物を頼みトレーにのせてコガラシたちの方へ戻っていった。
秋宗「そういや轟は、不良を卒業したくて高校デビューしたいんだよな?」
紫音「そうッス!不良なんて誰も怖がって誰も近寄らないッスからねぇ」
秋宗と紫音は歩きながら話していた。
紫音「でも、このスカジャンもまだ脱げてないし、言葉遣いも直さないといけないんスよねぇ。けどこれ着てないと落ち着かないといいますか・・」
紫音は困ったようにため息をついてしまう。
そんな紫音の様子を見て秋宗は、
秋宗「・・・そのままでもいいんじゃないか?」
紫音「えっ・・・?」
無理に変えなくてもいいと言った。
秋宗「人にはそれぞれの魅力が必ずあるんだ。そしてその魅力を理解する人も必ずいる。だから無理に変えるよりも、轟の魅力をアピールした方がいいと思うけど」
秋宗の言葉に紫音は少し頬を赤くしていまい、
紫音「そ、そういう訳にはいかないッスよ!自分は不良を卒業して高校デビューするんスから!」
秋宗「・・・まぁ、別にいいけど。そこは轟が決めることだからな」
紫音は自分の不良らしさを完全に直すと言いきった。
紫音(そうッス!そんな簡単な話じゃないんスよまったく・・・!ていうかさっきからなんかドキドキしてないッスかこれ!?アイツらが彼氏なんて変なこと言うから・・・!)
紫音は先ほどの後輩たちの言葉を意識していまい、緊張してきていた。
秋宗「そういや轟、なんか俺に言いたいことがあるんじゃなかったのか?ほら、お前の後輩たちが話しかける前」
紫音「あっ!そうでした!実はお聞きしたいことが・・・!」(ブーッ!ブーッ!
紫音があの事を聞き出そうとしたとき、紫音のスマホのバイブがなり、紫音がスマホを取り出して確認した。
それと同時に紫音の顔が険しくなった。
秋宗「・・・どうした?何かあったのか?」
紫音「・・・西条さん!すみませんがこれお願いするッス!野暮用できたんで芹姐さんたちにはよろしく伝えて置いて下さい!」(ダッ
秋宗「おいっ!轟!」
紫音は秋宗にトレーを渡して駆け出した。
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場所は変わり、ショッピングモール裏の自販機のあるところでゴクチューの制服を着ている不良たちが集まっていた。
その中には先ほどの紫音の後輩たちもいたが、2人ともボロボロの状態で2人の不良に押さえられていた。
その中に1人、黒髪の長髪に頭を団子で纏め、黒いマスクを着けて、目元をメイクで目付きを鋭くしたスケバン風のゴクチューの女子がスマホを見ながら笑っていた。
???「くくっ、紫音にアンタらのザマを送りつけておいてやったよ」
後輩1「くっ!アズサ!テメェってやつは!」
後輩2「どこまでも紫音姐さんの邪魔を・・・!」
彼女の名前はアズサ。ゴクチューのナンバー2で紫音のことが気にくわないらしく、度々ちょっかいを出していた。
なぜこんなことになったのかというと、後輩たちが紫音の高校デビューを話していたところを偶然にもアズサが聞いてしまい、後輩たちから紫音のことを詳しく聞き出して、紫音を誘き出すように後輩のスマホで今の状況を撮って送ったのだ。
後輩1「やり方が汚ねぇんだよテメェ!」
後輩2「タイマン張れやコラァ!」
後輩たちがギャーギャー騒いでいると、アズサは側にいた2人の仲間の内の1人が持っていた金属バットを手に取り、
アズサ「ったく、ギャーギャーギャーギャー、うっせぇーんだよ!」(ブンッ
バットを後輩たち目掛けて振り下ろした。
バットが当たる直前、
ドゴォンッ!
何者かが突然アズサの顔目掛けて飛び蹴りをお見舞いした。
その拍子にアズサは吹き飛ばされて倒れてしまう。
飛び蹴りをしたその正体は、
後輩たち『し、紫音姐さん!!』
地面に着地すると同時にアズサを睨み付けた。
紫音がメールを見た後、すぐに駆けつけて来たのだ。
アズサ「・・・いよぉ紫音、聞いたよぉ?喧嘩なんてしていいのかい?」
アズサはまるで蹴りが効いていないかのように、立ち上がった。
アズサ「不良は卒業するんだろう?コイツらなんかほっておいてデートでもしてりゃあいいじゃねぇか」
アズサはニタァと笑いながら紫音を嘲笑っていた。
紫音「・・・ほっとく?ありえねーッスから」
紫音は後ろにいる後輩たちを親指で指して、
紫音「不良は卒業しても、コイツらのダチまでは卒業する気はねーんスよ!」
後輩2「し、紫音姐さん・・・!」
紫音の後輩思いの発言に、後輩たちは嬉しくて涙目になってしまう。
アズサ「ハッ、紫音!アンタのそういうところがキライなんだよ!いっそ人生まで卒業させてやるよぉ!」
アズサが側にいる2人の仲間に指示を出すと、2人が紫音目掛けてバットを振り下ろした。
咄嗟のことに紫音は反応が遅れてしまい、目を瞑り、動けなくなってしまう。
バキィンッ!
バットで叩く音が響くが、紫音にはその衝撃が来なかった。
紫音は恐る恐る目を開けると、
秋宗「よぉ、無事か轟?」
紫音「さ、西条さん!?」
後輩1「紫音姐さんの彼氏さん!?」
アズサ「なっ・・・!?」
なんと、目の前に秋宗がいたのだ。
秋宗は紫音を庇うように前に立ち、バット2本を左腕1本で盾のように防いでいた。
あの後、ただ事じゃないのを察した秋宗は、コガラシたちに飲みのもを渡して紫音を探していたのだ。
そして紫音を見つけて、即座に駆けつけたのである。
そして秋宗がバットを振り払うと同時に、アズサの仲間たちはその拍子で尻餅をついてしまう。
「あ、あいつ今!左腕だけでバット防いでなかったか!?」
「腕折れてもおかしくないだろ!?なんで平気なんだよ!?」
後輩2人を取り押さえていたアズサの仲間たちも突然現れた秋宗にも驚いたが、バットを防いで無事なことにも驚いていた。
秋宗は周りの状況を見渡して轟の方を見た。
秋宗「轟としてはコイツらと仲間と思われたくないってことなんだろうけどさ、どんな格好していようが、どんな噂が広がっていようが、理解してくれているヤツはいるさ。少なくともこの場に3人はな」
紫音「ッ!・・・」
秋宗の言葉に紫音は嬉しく思った。
初対面にもかかわらず、ここまで言ってくれる人などそうはいないからだ。
アズサ「ア、アンタが紫音の彼氏・・・!?」
秋宗「いや、俺は轟の彼氏じゃねぇよ」
秋宗は振り向いて、今度はアズサの方を見た。
秋宗「もう今後一切、轟や、轟の後輩たちに関わるのはやめろ」
アズサ「ふ、ふざけんな!なんで赤の他人のヤツの言うこときかなきゃいけねぇんだよ!」
秋宗の言うことを素直に聞く気のないアズサは落ちているバットと拾って秋宗に向けた。
秋宗「・・・言うこと聞く気はないってか?」
アズサ「当たりめェだろうが!」
気がつくと、秋宗はアズサの仲間たちにも囲まれていた。
後輩たちを取り押さえていた2人も含めて。
紫音「西条さん!」
紫音が心配するも、秋宗は動じなかった。
秋宗「・・・警告としてもう一度言うぞ?」
『!!??』
その場の全員が秋宗を見て驚きを禁じ得なかった。
なぜなら、秋宗の顔がどんどん変わっていっているからなのだ。
秋宗「今後一切、轟や、轟の後輩たちに関わるのはやめろ。もう一度こんなことしてみろ・・・。次はテメェら全員の喉を噛みちぎって肉の塊にするぞ・・・!!」
秋宗は完全にオオカミ人間の姿になり、グルルルと唸りアズサたちをにらんだ。
まるで獲物を狙う獣のように。
アズサ「ば、ば、化け物だぁー!?」
アズサは秋宗の姿を見て涙目になり、殺されると思いその場から逃げてしまった。
「ア、アズサさーん!」
「置いてかないでくださいよぉー!」
アズサの仲間たちも追いかけるように走り去ってしまった。
秋宗「ふぅ・・・」
秋宗はオオカミ人間から、普通の人間へと戻っていった。
紫音「さ、西条、さん・・・!?」
紫音は恐る恐る秋宗に声を掛けて、秋宗は紫音たちの方を振り向いた。
後輩1「か、彼氏さん・・・!?」
後輩2「アンタ一体、何者ッスか!?」
後輩たちから質問された秋宗は、
秋宗「あぁ、俺、オオカミ人間だから」
さらっとカミングアウトをした。
紫音たち『・・・えぇぇぇぇぇぇ!!??』
紫音たちは秋宗があっさり正体を暴露したらことに驚いて声をあげてしまった。
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あの後、後輩たちと別れた秋宗と紫音はコガラシたちのところへ戻るために並んで歩いていた。
後輩たちには一応、秋宗がオオカミ人間であることを内緒にしておくようにと、本人が頼んでおいた。
アズサたちには頼まなかったが、多分話しても誰も信じないだろう。
紫音「まさか秋宗兄さんがオオカミ人間なんて、まだ信じられないッスよ」
秋宗「まぁ無理もないか、でも轟も絶対誰にも言うなよ?正体知ってるヤツも何人かいるけど」
紫音は歩きながら秋宗のオオカミ人間について話していた。
紫音「・・・自分、気にしすぎたのかもしんないッスね。でもやっぱりかわいい格好したいんで今くらいがちょうどいいのかもしれないッス!」
秋宗「ま、そこはゆっくり決めたらいいさ、ってあれ?」
紫音「どうしたんスか?」
秋宗は思い出したかのように立ち止まった。
秋宗「そういや轟、俺のこと名前で呼んだか?」
紫音「先輩っ呼んだ方がいいッスか?」
秋宗「いや、別にいいけど・・・。俺も名前で呼んでいいか?」
紫音「え?」
紫音は目を丸くしてしまう。
秋宗「お互い名前で呼ばないと不公平な気がするからさ、いいか?」
紫音「・・・いいッスよ!高校入ったらよろしくッス!秋宗兄さん!」
秋宗「おう!よろしくな、紫音」
秋宗と紫音は笑いながら、コガラシたちのところへ戻って行った。
しかし、紫音の内心は、
紫音(な、なんでドキドキが止まらないんスか!?///こ、これってまさか・・・!?///)
彼女の高校生活が始まると同時に、彼女の新しい何かが始まったのかもしれない。
投稿が遅れてしまい申し訳ありませんでした。
感想のほど、お願いいたします。