緋扇邸のオオカミくん   作:アニアス

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今回はオリジナル回です


第16話 秋宗の料理教室

かるら『それで、その轟紫音という輩は、コガラシ殿に好意を抱いておるのか?』

 

 

秋宗「いや、俺が見た感じ、紫音はコガラシのことが好きって感じじゃなさそうだ」

 

 

 

ゆらぎ荘の秋宗の自室にて、秋宗はスマホ越しでかるらに定期報告をしていた。

その内容は、新しい後輩の紫音についてだった。

 

4月になり、昨日、湯煙高校は入学式を迎えた。

入学生の中には、夜々と紫音の姿もあった。

紫音がゴクチューの番長である噂が広まっていた為、クラスメイトたちは紫音を避けていた。

しかし、夜々と夜々の中学校からの友人の日暮なずなと仲良くなり、クラスにも少しずつ馴染んでいった。

 

 

 

かるら『そうか、なら安心じゃな!これ以上コガラシ殿に好意のある輩が増えてはたまらんからのう』

 

 

秋宗「そういやお嬢、バイト先でのコガラシとの進展はあったか?」

 

 

かるら『うむ!もうコガラシ殿と話すことにも慣れて、足手まといも卒業できたぞ!』

 

 

 

かるらが嬉しそうに自慢をした。

 

 

 

秋宗「ならよかった。じゃあお嬢、そろそろ切るから、姐さんにもよろしく言っといてくれ」

 

 

かるら『分かったのじゃ。ではまたのう』(ピッ

 

 

 

通話が切れたことを確認すると、秋宗は部屋から出て、厨房へと向かった。

 

少し小腹が減ったため、何か摘まむものがないかと思ったからなのだ。

 

秋宗が厨房へ入ると、厨房には誰もおらず、調理器具や皿などが綺麗に並べられていた。

 

 

 

秋宗「さてと、何か摘まめるものはあるかな?」

 

 

 

秋宗が冷蔵庫の中を確認しようとすると、調理台の上にあるものが置かれていることに気がついた。

 

 

 

秋宗「・・・これって、確か」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

~午後7時~

 

外も暗くなり、ゆらぎ荘には灯りがついていた。

 

夕飯の時間となったため、コガラシたちは大広間へ向かっていた。

 

 

 

コガラシ「あぁ~、腹減ったなぁ~・・・」

 

 

呑子「コガラシちゃん、今日は相当疲れてるみたいねぇ」

 

 

幽奈「大丈夫ですか?コガラシさん?」

 

 

狭霧「少し休みを取ったらどうだ?」

 

 

 

コガラシの顔から疲れが取れていないのが伺え、幽奈たちは心配していた。

 

 

 

夜々「・・・ッ!クンクン」

 

 

 

すると夜々が漂っている匂いに気がついた。

 

 

 

夜々「いい匂い・・・!」

 

 

雲雀「ホントだ!すごくいい匂いがするよ!」

 

 

朧「今日は一体なんだ?」

 

 

こゆず「楽しみ~!」

 

 

 

大広間から漂っている匂いに、コガラシたちの空腹が更に増してきた。

 

大広間の襖を開けると、

 

 

 

仲居さん「あ!皆さんお揃いですか?」

 

 

秋宗「もう夕飯できてるから座っとけ」

 

 

 

仲居さんと秋宗がちょうど料理を机に並び終えていた。

 

机は、大皿に盛られた酢豚や麻婆豆腐、野菜炒めなどの中華料理で埋めつくされていた。

 

 

 

こゆず「うわ~!おいしそ~!」

 

 

呑子「今日は中華なのねぇ」

 

 

コガラシ「これ全部仲居さんが作ったんすか?」

 

 

 

みんなは中華料理を見て目を輝かせており、コガラシは仲居さんに質問した。

 

 

 

仲居さん「いえ。実はこれ全部、秋宗くんが作ったんですよ」

 

 

コガラシ「西条が?」

 

 

 

コガラシたちは秋宗の方を見た。

 

 

 

秋宗「まぁな。仲居さんにはいつも世話になってるし、たまにはゆっくりさせようと思ってな」

 

 

 

実際、仲居さんが厨房に入った時には、既に秋宗が料理を作っており、手伝おうとしたものの、『今日は俺が作りますから、ゆっくりしといてください』と言われたため、仲居さんは秋宗に任せたのだ。

 

 

 

幽奈「ゆっくりできてよかったですね、仲居さん」

 

 

狭霧「・・・西条秋宗、何か変なもの入れてるんじゃないだろうな?」

 

 

雲雀(狭霧ちゃん!人のこと言えないからね!)

 

 

 

全員が座り、手を合わせて、

 

 

 

『いただきまーす!』

 

 

 

と、同時にコガラシが麻婆豆腐を自分のさらによそいで恐る恐る口の中へ運んだ。

みんなが麻婆豆腐を食べたコガラシの様子を確認すると、

 

 

 

コガラシ「ッ!うまい!」

 

 

 

思ったよりも麻婆豆腐の味が美味しかったコガラシは食リポのように声を出した。

 

みんなはコガラシの様子を確認すると、一斉に麻婆豆腐や酢豚、野菜炒めを自分の皿によそいで食べた。

 

 

 

夜々「おいしい・・・!」

 

 

雲雀「麻婆豆腐ちょっと辛いけど、辛さがクセになりそう!」

 

 

呑子「酢豚の酸っぱさ加減も絶妙ねぇ!お酒のおつまみに合うわぁ!」

 

 

こゆず「野菜炒めもすごくおいしい!手が止まらないよぉ!」

 

 

朧「これは箸が進むな」

 

 

狭霧「く、悔しいが、うまいと言わざるを得ないな・・・!」

 

 

幽奈「秋宗さん!料理お上手なんですね!」

 

 

仲居さん「秋宗くんの作る味噌汁も美味しいですけど、こちらの中華料理も絶品ですね!」

 

 

 

みんなは秋宗の料理を大絶賛して、秋宗は少し照れてしまう。

 

 

 

秋宗「へへっ。気に入ってもらえてよかった。実はこの中華料理、ある食材が全部の料理に入ってるんだが、何か分かるか?」

 

 

コガラシ「ある食材?」

 

 

 

コガラシたちは料理をよく味わって、考えてみた。

 

 

 

雲雀「なんだろう?レモンって訳でもなさそうだし・・・」

 

 

仲居さん「うーん、唐辛子は麻婆豆腐にはいってますけど・・・」

 

 

朧「西条、一体何が入っているのだ?」

 

 

 

すると秋宗の口からとんでもない言葉が出てきた。

 

 

 

秋宗「雨野家秘伝の生薬」

 

 

コガラシたち一同『ブウゥッ!』

 

 

 

コガラシたちは思わず吹き出してしまった。

 

"雨野家秘伝の生薬"とは、狭霧が料理を作る度に入れる雨野家の生薬のことである。

しかし、その味はとても苦く匂いもきついため、料理に入れると、とても食べられない味へと変貌してしまう。

コガラシたちはそれを食べて、何度も気絶したことがあるのだ。

 

 

 

コガラシ「あれが入ってるのか!?」

 

 

狭霧「言われてみれば!僅かだが雨野家秘伝の生薬の風味がある!」

 

 

雲雀「でも全然気にならないし!それにあの独特な苦味もない!」

 

 

夜々「ホントに入ってるの?」

 

 

 

コガラシたちは、あの生薬が入ってるとはとても信じられない様子である。

 

 

 

秋宗「実は、厨房に入ったら調理台に雨野家秘伝の生薬が置いてあって、これで何か上手いものでも作れないかと試行錯誤をした結果、意外にも中華料理の辛さが苦味や匂いを抑えてな、これはいけると思って出してみたんだが、誰も気がつかなかったみたいだな」

 

 

 

秋宗は自慢話をするかのうように話しだした。

 

 

 

呑子「へぇ~、中華との相性がいいのねぇ」

 

 

朧「まさかここまで苦味を抑えられるとは」

 

 

こゆず「秋宗くんすごーい!」

 

 

秋宗「だろ?」

 

 

 

コガラシたちは秋宗を褒めた。

 

 

 

狭霧「・・・・・」

 

 

 

だが、狭霧だけは秋宗に鋭い眼光を向けていた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

~湯煙高校~ 午前10ごろ

 

今は休み時間で、教室でコガラシたちが話しをしていた。

 

 

 

兵藤「そういや冬空と雲雀ちゃん、今日はなんだか気分がよさそうだな?」

 

 

柳沢「何かいいことでもあったのか?」

 

 

 

コガラシと雲雀がいつもよりも気分がいいことに気がついた兵藤と柳沢は、何かあったのかと質問をした。

 

 

 

コガラシ「いや、なんか朝起きたらバイトの疲れが取れてたんだ」

 

 

雲雀「雲雀も十分睡眠を取った感覚なんだよね」

 

 

 

それはコガラシと雲雀に限った話ではなく、呑子もいつもよりも早く起きて、仲居さんの肩こりも治り、ゆらぎ荘の入居者全員の体調が優れていた。

 

 

 

幽奈「・・・ひょっとして、秋宗さんがお作りになられた中華料理の効果では?」

 

 

千紗希「西条くんの、中華料理?」

 

 

 

幽奈は千紗希たちから姿が見えないため、いつもメモ帳にペンで字を書いて千紗希たちとコミュニケーションを取っていた。

幽奈が書いた文字を見て、千紗希たちは秋宗の方を見た。

 

 

 

秋宗「えっと、実はだな・・・」

 

 

 

秋宗は、昨日自分が作った"雨野家秘伝の生薬入り中華料理"について千紗希たちに説明をした。

 

 

 

千紗希「へぇー、そんなことがあったんだ」

 

 

秋宗「まぁな。そうだ、今日3人ともゆらぎ荘に来いよ。特別に作ってやるから」

 

 

兵藤「マジで!?サンキュー西条!」

 

 

柳沢「忘れんなよ?」

 

 

 

秋宗は千紗希たちに作ることを約束して、3人は楽しみにした。

 

そんな時、クラスメイトの男子生徒が秋宗を呼んだ。

 

 

 

「おーい西条、なんかお前に客が来てるけど」

 

 

秋宗「客?」

 

 

 

秋宗が扉の方を見ると、隣のクラスの狭霧が立っていた。

 

 

 

雲雀「あ、狭霧ちゃんだ」

 

 

コガラシ「珍しいな、アイツが西条に用があるなんて」

 

 

秋宗「ま、とにかく行って来るわ」

 

 

 

秋宗は狭霧のところへ歩いて行った。

 

 

 

秋宗「どうした狭霧?俺に用って?」

 

 

狭霧「・・・西条秋宗、今日の昼休み、屋上に来い。もちろん1人で」

 

 

秋宗「・・・え?」

 

 

 

突然のことに秋宗は聞き返してしまう。

 

狭霧は眼光を鋭くして、

 

 

 

狭霧「もし来なければ、貴様のゲームソフトを1つ残らず叩き割るからな」

 

 

 

そう言い残して、自分の教室へと戻って行った。

 

コガラシたちは、2人の会話を聞いていた。

 

 

 

柳沢「・・・西条、お前狭霧に何かしたのか?」

 

 

秋宗「いや、特に何もしてないんだが・・・」

 

 

 

秋宗は少しだけ考えたが、教師が入ってきたため、考えるのを後回しにした。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

~昼休み~

 

 

 

 

秋宗「で?急に呼び出して一体何の用だよ?」

 

 

 

屋上で、秋宗と狭霧は向かい合っていた。

 

しかし、狭霧は何か言おうとはしているものの、中々口に出せずにいた。

 

 

 

狭霧「え、えっと・・・その、だな・・・」

 

 

秋宗「・・・用がないなら戻るからな?」

 

 

狭霧「ま、待て!西条秋宗!」

 

 

 

いつまで経っても何も言わない狭霧にイラついた秋宗は教室へ戻ろうと背を向けるが、狭霧が後ろから秋宗の肩を掴んだ。

 

そして、狭霧は覚悟を決めて、口を動かした。

 

 

 

狭霧「西条秋宗・・・!私に、昨夜お前が作った料理の作り方を教えてくれ・・・!」

 

 

秋宗「・・・は?」

 

 

 

秋宗は狭霧の方を振り向いた。

 

 

 

秋宗「・・・訳を聞いてもいいか?」

 

 

 

狭霧は少しうつむいて話し始めた。

 

 

 

狭霧「私は今まで、料理を作る度に雨野家秘伝の生薬を入れてきたのだが、どれも酷評の嵐だった。だがそれでも諦めず何度も試みたのだが結果はうまくいかず、バレンタインの時も、冬空コガラシを気絶させてしまう始末だった。しかし貴様は昨夜、秘伝の生薬を使用して絶品の料理を作ってみせた!だから私も証明したいのだ!私が秘伝の生薬を使用しても絶品の料理を作れると!」

 

 

秋宗「・・・事情は分かった。しかしだな」

 

 

 

秋宗は狭霧に昨日の料理を教えるか悩んでいた。

2日連続で中華料理を作ってしまえば、コガラシたちが飽きると考えたからなのだ。

 

 

 

狭霧「頼む!この通りだ!」(バッ

 

 

 

それでも狭霧は秋宗から教わろうと、なんと頭を下げてお願いした。

 

 

 

秋宗「お、おいよせ!分かった!料理教えてやるから!頭をあげてくれ!」

 

 

 

頭を下げた狭霧の姿を見て、とうとう秋宗は折れて料理を教えることにした。

 

狭霧はゆっくりと頭をあげた。

 

 

 

秋宗「じゃあ学校終わってから教えるから、予定とかは入れるなよ?」

 

 

狭霧「・・・恩にきる」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

~ゆらぎ荘~ 午後5時

 

放課後、秋宗と狭霧は即座にゆらぎ荘へ帰り、エプロンを身につけ厨房にいた。

調理台には、様々な食材をはじめ、雨野家秘伝の生薬もあった。

 

仲居さんには、千紗希たちが昨夜作った自分の料理が食べたいから今夜来ると言ったため、仲居さんは秋宗に任せて厨房にはいなかった。

 

 

 

秋宗「よし、じゃあ早速始めるぞ」

 

 

狭霧「よろしく頼む」

 

 

 

狭霧は、誅魔忍の任務並みに気合いが入っていた。

 

 

 

秋宗「今日作るのは、蒸し鶏と冷奴だ」

 

 

狭霧「・・・中華じゃないのか?」

 

 

秋宗「流石に2日連続で中華はコガラシたちが飽きるだろ?」

 

 

狭霧「た、確かに」

 

 

 

狭霧はごもっともとだと思った。

 

 

 

秋宗「とは言え、ただの蒸し鶏と冷奴じゃない。その上に豆板醤を乗せてオリジナルの料理にする」

 

 

狭霧「成る程、その豆板醤に雨野家秘伝の生薬を入れるのだな?だが、確か豆板醤は1ヶ月程度寝かさなければできないはずだが?」

 

 

秋宗「大丈夫だ。実はかなり前に作って寝かせてるやつがある」

 

 

 

そう言って、秋宗は戸棚を開けて中に入っていたガラス瓶を取り出した。

瓶の中には秋宗が作った豆板醤が入っていた。

 

 

 

狭霧「いつの間にこんなものを・・・」

 

 

秋宗「細かいことは気にするな」

 

 

 

秋宗は瓶から豆板醤をスプーンですくい、ボウルの中へ入れた。

 

 

 

秋宗「さて、この豆板醤に生薬を入れる訳だが、そのまま入れても生薬の苦味と臭みが豆板醤の良さを掻き消してしまう」

 

 

狭霧「ではどうするというのだ?」

 

 

秋宗「まずは生薬をみじん切りにする」

 

 

 

秋宗は生薬を手に取り、まな板の上に乗せて、トントンと包丁でみじん切りにしていった。

狭霧も秋宗の手つきをマネて生薬をみじん切りにしていった。

 

 

 

狭霧「こんな感じか?」

 

 

秋宗「そうだ。もう少し細かくしてもいいかもしれない」

 

 

 

そして用意された生薬はすべてみじん切りの状態になった。

 

 

 

秋宗「次はすりこぎを使って粉末状にする」

 

 

狭霧「ならば最初からすりこぎを使った方がよかったのではないか?」

 

 

秋宗「最初でみじん切りにしておいた方がより細かい粉末状になるんだよ」

 

 

 

秋宗は説明しながら、みじん切りになった生薬をすり鉢の中へ入れ、ゴリゴリとすりこぎで粉末状にしていった。

再び狭霧は秋宗をマネて、すりこぎで生薬を粉末状にしていった。

 

そして生薬は完全な粉末状になった。

 

 

 

秋宗「じゃあいよいよ、これを豆板醤に入れるぞ」

 

 

狭霧「・・・粉末状しただけで生薬の苦味と臭みを抑えられるのか?」

 

 

秋宗「いや、完全には抑えられない。そこで生薬と一緒にあるものを入れる」

 

 

 

冷蔵庫を開けて、秋宗はあるものをとりだした。

それを見て狭霧は目を丸くしてしまう。

 

 

 

狭霧「・・・トンカツソース、だと?」

 

 

秋宗「そう、これが意外にも中華の辛さと相性抜群で、しかも生薬の苦味と臭みを抑えてくれて、流石に俺も驚いた」

 

 

 

秋宗はトンカツソースを狭霧の前に置くと、

 

 

 

秋宗「じゃあ狭霧、ここからは1人で味の調整をしてみろ」

 

狭霧「・・・私1人で!?」

 

 

 

狭霧1人に味付けを任せようとした。

 

 

 

秋宗「俺はその間に鶏肉の下ごしらえをしとくから。生薬とトンカツソースの分量を気をつければ大丈夫だ」

 

 

狭霧「しかしだな・・・!」

 

 

 

料理の自信がない狭霧は秋宗に協力を仰ごうとするが、

 

 

 

秋宗「自分が生薬を使っても旨い料理つくれるって証明したいんだろ?自信を持て」

 

 

 

秋宗は狭霧に1人でさせようと自信を持たせようとする。

狭霧は少し俯いて、フッと笑った。

 

 

 

狭霧「・・・そうだった。一体何のために貴様に頭を下げたのかという話だな・・・。いいだろう!ここからが修羅の道というならば!これを乗り越えて!絶品料理を作ってみせよう!」

 

 

秋宗「その意気だ」

 

 

 

狭霧はトンカツソースを手に取り、豆板醤の味付けに取り掛かり、秋宗は蒸し鶏の下ごしらえに取りかかった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

~ゆらぎ荘~ 午後7時

 

約束通り秋宗の料理を食べに来た千紗希、兵藤、柳沢の3人は秋宗とコガラシに案内されて、ゆらぎ荘の廊下を歩いていた。

 

 

 

兵藤「楽しみだな~!西条の元気になる中華料理!」

 

 

秋宗「悪い兵藤、中華料理は昨日コガラシたちが食ったから流石に飽きると思って別の料理作ったんだ」

 

 

コガラシ「わざわざ俺らに気を遣わなくてもよかったんだそ?」

 

 

千紗希「でもその料理にも生薬を使ってるんだよね?」

 

 

秋宗「あぁ。少し苦味が残ってるかもしれないが、そこは我慢してくれ」

 

 

柳沢「紫音も連れて来ればよかったなぁ」

 

 

 

話しながら歩いていると、大広間の前に着き襖を開けると、ゆらぎ荘の入居者たちが既に座っており、机の上には蒸し鶏と冷奴があり、その上に豆板醤が乗せてあった。

 

 

 

仲居さん「皆さんようこそ」

 

 

こゆず「いらっしゃい千紗希ちゃん!」

 

 

 

仲居さんたちが歓迎すると、千紗希たちは机の料理に視線を移した。

 

 

 

兵藤「蒸し鶏と冷奴か。結構旨そうだな」

 

 

千紗希「その上に掛けてあるのは、豆板醤?」

 

 

柳沢「この豆板醤に生薬が入ってんだな?」

 

 

秋宗「その通り。冷める前に早く食おうぜ」

 

 

 

秋宗たちが座り、全員が揃ったところで、

 

 

 

『いただきまーす!』

 

 

 

みんなが蒸し鶏や冷奴を箸で口の中へ運んだ。

 

 

 

兵藤「・・・うまっ!」

 

 

千紗希「鶏肉柔らかい!それに豆板醤も鶏肉と冷奴によく合ってる!」

 

 

柳沢「お前専業主夫向いてるんじゃねぇか?」

 

 

 

3人からも大絶賛された。

 

 

 

秋宗「ありがとう3人とも。でも、苦味までは昨日より抑えられなかったな」

 

 

コガラシ「いや、これでも十分うまいぞ」

 

 

 

秋宗は困った表情で頬を掻くが、コガラシは気にするなと言わんばかりに料理を頬張っていく。

ゆらぎ荘の入居者たちもどんどん食べていった。

 

 

 

秋宗「・・・コガラシ、今うまいって言ったか?」

 

 

コガラシ「え?あ、あぁ、言ったけど?」

 

 

秋宗「そうか、うまいか・・・。だそうですよ狭霧さん?」

 

 

コガラシ「・・・は?」

 

 

狭霧「///・・・」(もじもじ

 

 

 

秋宗は隣に座って頬を赤めている狭霧の方を見て、それにつられてコガラシたちも狭霧の方を見た。

 

 

 

幽奈「あ、秋宗さん?もしかして、この料理・・・」

 

 

秋宗「あぁ、狭霧が生薬入り豆板醤の味付けをしたんだ」

 

 

コガラシたち一同『・・・えぇぇぇぇぇ!!??』

 

 

 

コガラシたちは驚きを禁じ得なかった。

それもそのはず、今まで狭霧が作った料理はとても食べられるものではなかったのだから。

その狭霧が味付けだけとはいえ、ここまで美味しくできるとはコガラシたちは思わなかった。

 

 

 

雲雀「狭霧ちゃんが味付けしたの!?」

 

 

兵藤「本当なのか!?」

 

 

呑子「全然分からなかったわぁ」

 

 

朧「西条が嘘をつくとは思えない、おそらく本当なのだろう」

 

 

千紗希「狭霧さんすごく美味しいよ!」

 

 

 

みんなは豆板醤の味付けをした狭霧を好評価した。

 

狭霧は照れてしまい、顔が一気に赤くなってしまう。

 

 

 

狭霧「・・・西条秋宗」

 

 

秋宗「ん?」

 

 

狭霧「・・・ありがとう」

 

 

 

狭霧は小声で秋宗にお礼を言った。

 

 

 

秋宗「・・・いいってことさ。それより狭霧、これはチャンスだ。コガラシにあーんしてやれ」

 

 

狭霧「なっ!?///こ、こんな大勢の前でできる訳ないだろ!///」

 

 

秋宗「自然な感じでやりゃあいいんだよ。『冬空コガラシ、私が食べさせてやる。口を開けてくれ』みたいな感じで」

 

 

狭霧「余計できるか!///」

 

 

 

秋宗と狭霧が小声で口論している時、コガラシがあることに気がついた。

 

 

 

コガラシ「ん?これはほうれん草のおひたしか。まだ誰も食べてねぇみたいだな」

 

 

兵藤「これも旨そうだ。豆板醤は乗ってないみたいだけど」

 

 

 

コガラシと兵藤はほうれん草のおひたしを箸で取った。

 

 

 

朧「凄いな西条は、ほうれん草のおひたしまでもこんなに色鮮やかに作れるとは」

 

 

秋宗「ん?」

 

 

 

狭霧と口論していた秋宗は、2人がほうれん草のおひたしを食べようしていることに気がついた。

 

 

 

秋宗「・・・ちょっと待て。俺ほうれん草のおひたしなんか作ってねぇぞ?」

 

 

コガラシ・兵藤『え?』(パクっ

 

 

 

秋宗が言ったと同時にコガラシと兵藤はほうれん草のおひたしを口に運んだ。

 

次の瞬間、

 

 

 

コガラシ・兵藤「・・・・・」(バタッ

 

 

幽奈「コガラシさん!?」

 

 

柳沢「兵藤!?どうした!?」

 

 

 

コガラシと兵藤は2人揃って仰向けに倒れて口から泡を吹き出していた。

 

みんなが心配する中、秋宗は狭霧の方を見た。

 

 

 

秋宗「・・・狭霧、さては俺に内緒でこっそり作ったな?」

 

 

狭霧「・・・雨野家秘伝の生薬から出た煮汁の湯でほうれん草を茹でたのだが、駄目だったのだろうか?」

 

 

秋宗「駄目に決まってるだろ!2人とも倒れて気絶したじゃないか!」

 

 

狭霧「貴様が自信を持てと言ったではないか!」

 

 

秋宗「だとしても限度ってもんがあるだろ!」

 

 

 

狭霧が絶品料理を作れるのは、まだまだ先の話になりそうだった。

 

翌日、コガラシと兵藤の体調がかなり優れて元気ハツラツになっていた。

 

 

 




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