緋扇邸のオオカミくん   作:アニアス

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前回のあらすじ

兵藤の背中の皮が剥がれた。


第21話 命懸けの接待

ボルグが力いっぱい兵藤の背中を擦ってしまい、兵藤は倒れて血が吹き出していた。

 

 

ボルグ「え?お父さん?」

 

三郎「背中の皮が剥がれてるぞボルグ兄さん!」

 

ボルグ「そんな馬鹿な!?お父さんはピラニアのドクターフィッシュを受けても何ともなかったのだぞ!?」

 

イツ子「いつの間にここまで弱体化してしまったの!?」

 

秋宗・コガラシ((ひ、ひ、兵藤おぉぉぉ!!??))

 

千紗希(あれスポンジだよね!?タワシで擦ったわけでもないのに何で背中の皮が剥がれたの!?)

 

柳沢(そもそも背中を流す時に背中の皮が剥がれるってどういうことだ!?)

 

紫音(ボルグさん!その人お父さんじゃねぇッス!これ以上傷つけるのはやめて下さい!)

 

 

倒れている兵藤を見て、秋宗たちの顔が青ざめてガタガタ震えてしまった。

 

 

秋宗「そ、それはきっと石鹸が身体に合わなかったからなのでは!?」

 

ボルグ「え?石鹸?石鹸が合わなかったくらいでここまで大量出血するものなのですか?」

 

秋宗「日本製の石鹸は取り扱いに気をつけないと皮膚が溶けてしまうんですよ!」

 

ボルグ「そうだったのですか、申し訳ありませんお父さん」

 

 

背中の皮が剥がれて瀕死の状態になっている兵藤にボルグは謝罪をした。

 

 

秋宗「や、やっぱりやり方が分からないと大変そうですね!俺らが日本での正しい方法を教えますので、みなさんどうぞお座りになって下さい!」

 

 

その結果、

 

 

 

 

 

次郎「日本の方々はなんて親切なんだ!」

 

ヨシ子「貸し切っていた銭湯に入れて下さった上に、背中まで流して下さるなんて!」

 

 

ボルグ兄妹が椅子に座り、その後ろに秋宗が立ち背中を流すことになってしまった。

 

 

柳沢「オイ!なんでこんなことになったんだ!?」

 

秋宗「背中の皮剥がされるよりはマシだろ!」

 

柳沢「背中の皮剥がす化け物の背中を流すのも十分危険すぎるだろ!」

 

宮崎「だけど洗い方を教えることで、兵藤くんがこれ以上傷つくことを防げるよ」

 

 

言い争っている秋宗と柳沢を止めて、宮崎はチラリと兵藤の方を見た。

 

 

ボルグ「せっかくですから、日本のやり方で体を洗いましょうね、お父さん」

 

兵藤「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」(ガタガタ

 

 

背中の皮を剥がされた兵藤は呼吸が荒くなっており恐怖で顔も青ざめていた。

 

 

コガラシ「・・・相当優しく洗わねぇと兵藤の身はもたねぇぞ」

 

秋宗「分かってる、俺に任せろ・・・じゃあボルグさん、俺のやり方を見ておいて下さい。いくらスポンジとはいえ、強く擦り過ぎてはいけません。日本では優しく洗ってあげることが大切なんです。その証拠に、みなさんの目の前にボディソープが設置されてあります」

 

 

秋宗の言うとおり、この銭湯には鏡の下辺りに、シャンプーとボディソープが入ったボトルが設置されていた。

秋宗はボトルからボディソープをスポンジの上に出した。

 

 

秋宗「まずはボディソープをスポンジの上に出したら、泡出たせずに、そのままダイレクトに洗って下さい」

 

 

そう言いながら、秋宗は次郎の背中をそのまま泡出たせずにボディソープを塗り出した。

 

 

ボルグ「えっ?そのままでいいんですか?」

 

秋宗「はい、壁にペンキを塗るように優しく洗って下さい」

 

ボルグ「なるほど、これが日本流の洗い方なんですね。そもそも私たちは石鹸派でしたから、ボディソープ初めてなんですよねぇ」

 

 

ボルグは秋宗のやり方通りに、スポンジの上にボディソープを出した。

そして、コガラシたちはボルグより一足先に秋宗のやり方通りにボルグ兄妹の背中を洗い始めていた。

 

 

コガラシ「・・・なぁ西条、思うんだが、このやり方・・・」

 

秋宗「分かってる。このやり方だと兵藤の傷口にボディソープが染み込んでしまうが、強く洗われるよりはマシだろ」

 

柳沢「いや、でも西条・・・」

 

秋宗「何も言うな。兵藤には悪いが、ここは耐えてもらうしかない」

 

紫音「・・・秋宗兄さん」

 

秋宗「だから何も言うなって言ってるだろ!」

 

 

質問責めされた秋宗はイラついてしまい、紫音を叱りつけるように言ってしまった。

しかし、紫音は違うことを言おうとしていた。

 

 

紫音「いや、そうじゃなくて・・・。なんか、煙出てんスけど・・・」

 

秋宗「えっ?」

 

 

秋宗が振り向くと、紫音に背中を洗われていたイツ子の体から煙が出ていた。

よく見ると、イツ子だけでなく、次郎と三郎、ヨシ子の体からも煙がのぼっていた。

 

そして次の瞬間、

 

 

 

 

 

ボオオオォォォッ

 

 

 

 

 

ボルグ兄妹の体から火が出てきた。

 

 

次郎「ギャァァァァァ!!」

 

三郎「せっ、背中が焼けるようだぁ!!」

 

ヨシ子「一体何をしたんですかぁ!?」

 

イツ子「熱いぃ!!熱いぃ!!」

 

 

突然のことにボルグ兄妹は何がなんだか理解できず、背中の熱さに苦しみだした。

それはまさに、阿鼻叫喚の地獄絵図だった。

 

 

千紗希「何これ!?なんか急に体が火が出たよ!?」

 

柳沢「ヤベェぞ!どうやらオーガたちボディソープが弱点みたいだぞ!」

 

秋宗「はあぁぁぁぁぁ!?」

 

 

オーガ族の意外すぎる弱点に秋宗は驚いて声をあげてしまった。

 

 

兵藤「ぎゃぁぁぁぁ!?背中の傷口にボディソープがぁ!!」

 

 

そして、ボルグに背中を洗われていた兵藤もボディソープが傷口に染み込んで激痛が走り、ボルグ兄妹と同じように苦しんでいた。

 

 

ボルグ「あの西条くん、大丈夫なんですかこれ?」

 

 

ボルグが自分の兄妹と兵藤の苦しむ姿を見て心配になり、秋宗に声を掛けた。

 

 

秋宗「だ、大丈夫です!このボディソープには殺菌作用があるんです!熱いのは除菌されている証拠ですので問題ありません!」

 

コガラシ「ではそろそろ洗い流しますね!」

 

 

コガラシは洗面器に水を入れて、急いで三郎の背中を洗い流そうとした。

 

だが、

 

 

ツルッ

 

 

コガラシ「あ」

 

 

ガシャァーン!

 

 

コガラシは足元を滑らせて、洗面器を三郎の後頭部にぶつけてしまい、三郎の顔が鏡にめり込んでしまった。

 

 

秋宗「何やってんだよお前!?ここでミスってどうすんだよ!?」

 

千紗希「取り敢えず洗い流さないと!」

 

 

そう言って千紗希は水の入った洗面器を持ってヨシ子の背中を洗い流そうとするが、

 

 

ツルッ

 

 

千紗希「あ」

 

 

ガシャァーン!

 

 

千紗希もコガラシと同じように、足元を滑らせて、洗面器をヨシ子の後頭部にぶつけてしまい、ヨシ子の顔が鏡にめり込んでしまった。

 

 

柳沢「千紗希!?お前までミスってどうすんだよ!?」

 

 

ガシャァーン!

 

 

また大きな音が響き、今度は何だ!?と思い秋宗と柳沢が振り向くと、紫音が掃除用のデッキブラシを使ってイツ子の顔を鏡にめり込ませていた。

 

 

秋宗「お前に至っては何してんだよ紫音!?」

 

紫音「秋宗兄さん!芹姐さん!こうなったらやるしかねぇッス!これが日本の風呂の入り方と思わせるんス!」

 

柳沢「んなことできるかぁ!」

 

 

秋宗も柳沢も絶対そんなことやりたくないのだが、

 

 

紫音「できなかったら全員ああなるッスよ」

 

 

紫音の視線の先を見ると、そこにはコガラシたちのマネをして既にボルグが兵藤を壁に叩きつけていた光景が広がっていた。

しかし、ボルグの力が強すぎた為、壁に大きな穴が開き、兵藤は気を失ってぐったりしていた。

 

 

ボルグ「みなさん、本当にこのやり方でいいんですか?」

 

 

その光景を見た秋宗と柳沢は、

 

 

ガシャァーン!

 

 

次郎の後頭部に回し蹴りをかまして鏡に顔をめり込ませた。

 

 

秋宗「大丈夫です・・・」

 

柳沢「これが日本人の粋ってやつなんで・・・」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

~銭湯前~ 午後7時

 

あの後、なんだかんだあって乗りきった秋宗たちは、ボルグ一家と一緒に大浴場を出て外で合流した。

ボルグ一家は幻術で人間の姿になっていた。

ちなみなお父さんはフンドシがほどけたため、元に戻ったと言い訳した。

 

 

ボルグ「お父さんいかがでしたか?今回の日本旅行は?」

 

お父さん「いかがもなにも、風呂に浸かってからの記憶があやふやで何も覚えてないぞ。ただ、さんざんな目にあったような・・・」

 

 

ボルグから感想を聞かれたお父さんは、眉間にシワがより少し不機嫌な様子だった。

 

 

秋宗「ヤベェ!親父さん少し怒ってる!」

 

コガラシ「当たり前だろ!」

 

柳沢「溺れて気を失ってる間、ずっとフンドシ扱いしてしまったんだぞ!」

 

千紗希「もう取り返しがつかないよ!」

 

紫音「バレたら全員血祭りッスよ!」

 

 

お父さんの様子を見て、秋宗たちは小声でどうするか口論していた。

 

 

ボルグ「そうですか、お気に召されませんでしたか」

 

 

ボルグは申し訳なさそうに顔をうつむかせてしまう。

 

その様子を見てお父さんは少し笑い、

 

 

お父さん「・・・ボルグ、今回我らが日本に来たのは家族サービスを満喫するためではない、お前が心配だから様子を見に来ただけだ」

 

ボルグ「えっ?」

 

秋宗たち『えっ?』

 

 

お父さんの意外すぎる答えにボルグは思わず顔をあげて、秋宗たちもお父さんの方を振り向いた。

 

 

お父さん「お前が小さき頃からの夢、和菓子職人になりたいという夢を実現するためにこの日本に移住したのは、家族全員が納得している」

 

秋宗「和菓子職人になりたかったんだ・・・」

 

 

ボルグの意外すぎる夢に秋宗は思わず声に出してしまう。

 

 

お父さん「だがな、お前がこの日本でたった1人で生活できているのか全員が不安だったんだ。だからこうして家族全員でお前の今の様子を見にきたんだ」

 

 

お父さんは視線をボルグから秋宗たちに移した。

 

 

お父さん「正直言って日本の印象はあまりいいものとは言えん。だが、幻術が解けてオーガの姿となっていた我ら一家に対して、何事も怯えず必死にもてなしてくれた素敵な皆さんに出会えたのだから。ボルグ、いい友人ができたな」

 

ボルグ「お、お父さん・・・」

 

 

ボルグは耐えきれず、涙になってしまった。

 

ボルグ一家は横一列に並び、

 

 

ボルグ一家『皆さん、どうか兄を今後ともよろしくお願いいたします』

 

 

一斉に秋宗たちに頭を下げた。

秋宗たちはこの光景を見て、どこの一家とも変わらないいい家族だと思った。

 

そして、ボルグ一家は夕食を食べるために秋宗たちと別れてその場を後にした。

 

 

千紗希「・・・なんだか、見た目だけで判断して怖いって思ったけど、とてもいい家族だったね」

 

コガラシ「妖怪にもいいやつはいるってことさ。幽奈たちだってそうだろ?」

 

柳沢「確かにな、少し悪いことしたかもな」

 

秋宗「今度ボルグさんが働いている店に行こうぜ。住所も聞いたし」

 

紫音「いいッスねそれ!」

 

 

緊張の糸が切れた秋宗たちは、ボルグ一家の背中を見ながら談笑していた。

 

 

秋宗「・・・よしっ!じゃあ俺らも飯食いに行くか、今日は奢ってやるよ」

 

柳沢「マジで!?サンキュー西条!」

 

コガラシ「何処の店にする?」

 

紫音「じゃあ駅前のラーメン屋はどうッスか?」

 

千紗希「私は何処でもいいよ」

 

 

秋宗たちは歩きながら町の方へ歩いていき銭湯を後にした。

 

すると秋宗はふとあることに気がついた。

 

 

秋宗「・・・そういや兵藤どうした?」

 

コガラシたち『・・・・・あ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

兵藤「何で俺って、いつもこうなんだ・・・?」

 

 

銭湯の更衣室で、背中の皮が剥がれた兵藤がうつ伏せで倒れており、しくしくと泣いていた。




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