緋扇邸のオオカミくん   作:アニアス

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第22話 かるらVS朧

~ファミレス~ 午前11時40分

 

今日は土曜日で学校も休みの為、秋宗はかるらとコガラシが働いているファミレスへ赴き昼飯を取ることにした。

秋宗はファミレスの席に座りメニューを眺めていた。

客が混む時間帯の中、かるらとコガラシは少し忙しそうだ。

 

 

秋宗「さてと、何にしようか・・・?」

 

 

秋宗がメニューを見ながら何を食べるか悩んでいる時、

 

 

かるら「おい秋宗」

 

 

名前を呼ばれて顔をあげると、テーブルの隣にかるらが立っていた。

しかし、その表情は少し不機嫌に思える。

 

 

秋宗「・・・どうしたお嬢?」

 

かるら「相席いいか?」

 

秋宗「えっ?」

 

かるら「席が全部埋まっとるのじゃ。主と相席になってもよいかと聞いとるのじゃ」

 

 

かるらから言われて秋宗が店内を見渡すと、確かに席が全部埋まっていた。

秋宗は少し考えて、

 

 

秋宗「別にいいけど・・・」

 

 

と言いつつ、グラスのお冷やを手に取り口へ運んだ。

 

そしてかるらは、秋宗と相席になる客を連れて来たのだが、

 

 

かるら「じゃあこの席に座っとけ」

 

朧「承知した」

 

 

なんとその客は朧だったのだ。

 

 

秋宗「ッ!?げほっ!げほっ!」

 

 

予想外な人物に秋宗は驚いて口からお冷やを吹き出しそうになるが、何とか堪えて飲んだが、噎せてしまった。

 

そんな秋宗をよそに、朧は秋宗の正面の椅子に座った。

 

そしてかるらは他の客の注文を取りに行った。

 

 

秋宗「朧!?何でここにいるんだよ!?」

 

朧「なに、ただ昼食を取りに来ただけだ、気にするな」

 

秋宗「お前ファミレスってイメージ全然ないぞ?大方、コガラシに会いに来たってところだろ」

 

 

秋宗の言う通り、朧は和のイメージが強くいつも着物を来ている為、ファミレスで食べるというイメージが全然湧いてこないのだ。

 

 

秋宗(・・・朧のやつ、何考えてるか分かんねぇし、行動パターンも読めねぇんだよなぁ)

 

 

秋宗はメニューを見ている朧を見ながら朧について改めて考えてみた。

 

神刀 朧。

神に分類されている龍雅湖の先代黒龍神の尾から誕生し、現代黒龍神である玄士郎の護り刀を勤めている。

強いて言えば、朧は玄士郎の姉に当たるのである。

昨年の5月頃、幽奈に一目惚れした玄士郎は自身の妻にしようと幽奈を拐ってしまうが、助けに来たコガラシに拳一発でやられてしまう。

その力を見て、朧は強い龍雅家を作るためにコガラシとの間に子供を授かろうと毎日大胆なアタックをしているのだ。

 

 

秋宗(ま、そのせいでお嬢とは対立してるんだよなぁ)

 

 

秋宗はかるらが不機嫌な原因が理解できた。

 

 

コガラシ「朧がファミレスなんて珍しいなぁ」

 

 

秋宗が考えていると、コガラシがお冷やが入ったグラスを持ってきて朧の前に置いた。

 

 

朧「こゆずから冬空のバイト先を聞いてな。それに・・・」(チラリ

 

 

朧は視線をコガラシから秋宗に移し変えた。

 

 

朧「西条とは個人的に話がしたかったからな」

 

秋宗「・・・俺に?」

 

 

秋宗は思わず目を丸くしてしまう。

一体朧は自分に何の話があるのだろうと疑問に思ってしまう。

 

 

朧「西条、お前は何かと私を避けているな?」

 

秋宗「うっ!?」(ギクッ

 

 

朧に指摘されて、秋宗は少し体がビクッと震えてしまう。

 

朧の言う通り、秋宗はゆらぎ荘で朧と2人きりになることを回避し続けているのだ。

 

 

コガラシ「・・・言われてみれば確かにそうだな。朧が嫌いなのか?」

 

秋宗「・・・だって俺、朧を一撃で沈めちまったんだぞ?少し気まずいんだよ」

 

 

かるらたちが襲撃してきたとき、秋宗は朧を裏拳で撃沈させてしまったため、何かと気まずかったのだ。

 

 

朧「言っただろ?あの時は私の未熟さが招いた結果だと。そんなに気にするな」

 

秋宗「そう言われても・・・」

 

 

朧は水に流しているのだが、秋宗の気持ちはまだ複雑な状態だった。

 

 

朧「それにしても・・・」(チラリ

 

 

次に朧は視線を秋宗から向こうで接客をしているかるらへ移し変えて興味深そうに見た。

 

 

朧「あの女にまともな接客ができるとは、意外だな」

 

コガラシ「ははっ、だよなぁ~」

 

秋宗「俺も最初はびっくりしたな」

 

 

コガラシと秋宗もかるらのバイト初日を思い出しながらかるらの方を見ていた。

 

 

コガラシ「緋扇のヤツ案外常識あるし、努力家なんだよなぁ」

 

朧「ッ・・・・・」

 

秋宗(・・・なんだろう?何だかものすごく嫌な予感が)

 

 

コガラシがかるらの仕事ぶりを好評価しているのを見て、朧の目付きが鋭くなった。

その時、秋宗の直感が警告を促したが、取り敢えず何も起こらないようにと祈った。

 

 

秋宗「まぁいいや。コガラシ、取り敢えず焼き魚定食とドリンクバーを頼む」

 

コガラシ「分かった、朧は何にする?」

 

朧「・・・いや、私はまだいい」

 

コガラシ「そうか。じゃあ決まったら呼んでくれよ」

 

 

秋宗の注文を受けたコガラシは厨房へと戻って行った。

 

 

秋宗「さてと、何か取ってくるか・・・」(ガタッ

 

 

秋宗は席から立ち上がり、ドリンクコーナーへと歩いていった。

 

 

秋宗「うーん、何にしようか?」

 

 

秋宗がどの飲み物を飲もうか考えていると、

 

 

かるら「秋宗!」

 

 

目がつり上がっているかるらがづかづかと秋宗へ詰めよって来た。

 

 

秋宗「何だよお嬢?」

 

かるら「何だよではない!朧は何処へ行ったのじゃ!?」

 

秋宗「はぁ?」

 

 

秋宗が朧が居るであろう席の方を見ると、そこには朧の姿がなかったのだ。

 

 

秋宗「あれ?何処行ったあいつ?」

 

かるら「なぜあやつから目を離したのじゃ!?この間にコガラシ殿を連れ去ったかもしれんのじゃぞ!」

 

秋宗「いやコガラシならあそこにいるだろ」

 

 

かるらの圧が鬱陶しい秋宗は落ち着かせるために、店内の方を指さした。

秋宗の指の先には、コガラシが料理を運んでいた。

 

 

かるら「た、確かに・・・。ではあやつは何処へ?」

 

秋宗「どうせトイレにでも行ってるんだろ?」

 

 

考えて込んでいるかるらを秋宗は呆れて見ていると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朧「この盆を4番テーブルにだな。承知した」

 

秋宗、かるら『・・・ん?』

 

 

従業員の出入口から聞き慣れた声が聞こえてきて、秋宗とかるらが振り替えると、そこには従業員の制服を着こなしてお盆に料理を乗せた朧が出てきた。

 

 

かるら「お、朧!?」

 

秋宗「何してんだよお前!?」

 

 

朧の格好を見て、2人は揃って驚いてしまう。

 

 

朧「見ての通り、うぇいとれすだが?」

 

かるら「な、何故ウェイトレスを・・・!?」

 

朧「先刻、冬空が緋扇の仕事ぶりを褒めていたのでな」

 

秋宗「嫌な予感が当たっちまった・・・」

 

 

先ほどの目付きが鋭くなっていた朧を見て、秋宗は嫌な予感がしていたのだが、早速当たってしまった。

一方で、コガラシが自身の仕事ぶりを褒めていたことを知ったかるらは、

 

 

かるら「こ、コガラシ殿が妾を・・・!?///」

 

 

嬉しくて顔が赤くなっていた。

 

 

朧「冬空に見せつけてくれる・・・!私として負けぬ・・・!」

 

秋宗「ってオイオイ朧!逆にコガラシに見つかったら不味いだろ!お嬢も照れてる場合か!」

 

 

秋宗は朧を呼び止めるが、朧は料理を運びに向かってしまった。

 

すると、

 

 

「また色んな飲み物混ぜてるー!」

 

「へへっ、これ罰ゲーム用な!」(タッタッタッ

 

 

ドリンクバーから1人の子供が飲み物が入ったグラスを持って走っていた。

しかし、よそ見をしている為、目の前に朧がいることに気づいていない。

 

そして、

 

 

ドンッ!

 

 

案の定、朧にぶつかってしまい、持っていたグラスが手から落ちてしまった。

 

次の瞬間、

 

 

 

シュッ!パシッ!ビュッ!

 

 

朧は目にも止まらぬ速度でグラスから溢れた飲み物を救い入れて、子供の手に持たせて何事もなかったかのように料理を運んで行った。

 

 

「えっ?あ、あれ?」

 

 

子供も何が起こったのか理解出来ずにいた。

 

それを見ていた秋宗とかるらは、

 

 

秋宗「・・・お嬢、今の見えたか?」

 

かるら「辛うじて目で追えたが、なんという速度じゃ・・・!」

 

 

朧の素早い行動を見て、少し興味深く感じた。

 

しかし、

 

 

コガラシ「朧!?何してんだ!?」

 

朧「冬空!これはだな・・・」

 

店長「えっ!?君誰!?明らかにウチの従業員じゃないよね!?その制服どうしたの!?」

 

朧「すまない、少々借りているぞ」

 

コガラシ「すぐ返してこい!」

 

 

コガラシと店長に見つかってしまい、コガラシから制服を返すように言われてしまった。

 

 

かるら「くくく・・・、当然の帰結よのぉ」

 

 

朧の様子を見て、かるらはざまぁ見ろと言わんばかりの顔になっていた。

 

それを見た秋宗は、

 

 

秋宗「・・・仕方ないな」(スタスタ

 

かるら「秋宗・・・?」

 

 

ため息をつきながら、朧の方へ歩いて行った。

 

 

秋宗「すいません店長さん、少しいいですか?」

 

店長「えっ?あぁ西条くん」

 

 

秋宗は店長に声をかけて、店長は軽く返事を返した。

店長とは顔見知りの関係で、よくかるらの仕事ぶりを聞いていた。

 

秋宗は朧の隣に立ち、

 

 

秋宗「あの~この子はですね、コガラシの親戚の妹の朧っていう子なんですよ」

 

コガラシ「は!?西条!?」

 

 

コガラシの妹と店長に紹介した。

突然のことにコガラシと遠くから見ていたかるらは驚いてしまう。

 

 

店長「冬空くんの親戚の妹?」

 

秋宗「そうなんですよ。この子少しブラコンな部分があって、コガラシが大好きなんですよ。それで働いているコガラシを見て一緒に働きたいって強く思ってそれが行動に移ってしまったんですよ」

 

朧「・・・そうだ、私は冬空の妹だ。1日だけでいいからここで働かせてもらえないだろうか?」

 

 

秋宗の話に乗り、朧が店長にお願いした。

 

店長は少し考えて、

 

 

店長「うーん・・・じゃあ今日だけ働いていいから。冬空くん、ちゃんと面倒見ておいてね」

 

コガラシ「店長!?」

 

 

秋宗の話を信じた店長は、コガラシに朧を任せて厨房へと戻っていった。

 

 

秋宗「・・・これでヨシ!」

 

朧「そうだな」

 

コガラシ「いやよくねぇだろ!」

 

 

何とか乗りきって満足している2人を見て、コガラシは思い切り突っ込んだ。

 

 

秋宗「いいだろ別に、何事も実践あるのみって言葉があるだろ?」

 

コガラシ「ここで使う言葉じゃねぇだろ!」

 

秋宗「まぁまぁ落ち着けよコガラシ。それに朧にとってもいい経験にッ!?」(グイッ

 

 

突然、秋宗の胸ぐらを誰が勢いよく引っ張った。

 

 

かるら「秋宗ぇ!何故朧なんぞにフォローを入れたのじゃ!?」

 

 

かるらが目をつり上がらせて秋宗を問い詰めていた。

 

 

秋宗「いや、朧を倒してしまったからさ、そのお詫びってやつで・・・」

 

かるら「余計なことをするでない!」

 

コガラシ「緋扇!取り敢えず落ち着け!」

 

 

かるらが秋宗を怒り任せで揺さぶり、コガラシは必死になってかるらを止めていた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

~17時30分~

 

空も茜色になった頃、コガラシと朧、秋宗とかるらはゆらぎ荘へ戻って行った。

 

 

かるら「気に喰わぬが認めるのじゃ、朧にもコガラシ殿に求愛する資格有りとな」

 

朧「私も認めよう、お前のやり方や意志の強さには多いに共感できる」

 

 

何があったか秋宗は分からなかったが、バイトが終わった後、かるらと朧がそれぞれの思いをコガラシにぶつけて、お互いにコガラシに対する思い認め合った。

 

だが、

 

 

かるら「じゃったらその手を離さぬか朧!」

 

朧「断る。それとこれとは話が別だ、緋扇」

 

 

歩きながら、コガラシの両サイドからかるらと朧がコガラシの腕を絡めていた。

コガラシは2人に両サイドから攻められて困った表情で顔を赤くしていた。

 

 

秋宗「いやぁ~、両手に花で羨ましいねぇコガラシくぅん」(パシャパシャ

 

コガラシ「楽しむな西条・・・」

 

 

秋宗はニヤニヤしながらスマホのカメラでこの光景を撮影していた。

 

 

朧「・・・西条」

 

秋宗「ん?」

 

 

面白がっている秋宗に朧は声を掛けて、

 

 

朧「今日は助かった、礼を言うぞ」

 

 

自分のためにフォローを入れてくれた秋宗にお礼を行った。

 

 

秋宗「気にすんな、困ったらまた力貸してやるさ」

 

かるら「だったら妾にもフォロー入れんか!このサディストオオカミ!」

 

 

しびれを切らしたかるらは秋宗に悪口を言ってしまった。

それを聞いた秋宗は、

 

 

秋宗「・・・へぇ~、そんなこと言っていいんだお嬢。そっか~残念だなぁ~」

 

 

懐から何かを取り出して、かるらに見せびらかした。

 

 

秋宗「お嬢がバイト頑張ってるから、せっかくこの水族館入場無料券2人分をあげようと思ったのになぁ」

 

かるら「な、何じゃと!?」

 

 

かるらがよく見ると、確かにそれは水族館入場無料券2人分だった。

これがあれば、かるらはコガラシをデートへ誘うことができるのだ。

 

 

秋宗「でもお嬢がそんなこと言うからあげる気がなくなったなぁ。仕方ない、これは雲雀にあげることにするか!」(ダッ

 

かるら「ま、待て秋宗!」(ビュゥッ

 

 

秋宗が走り出して逃げたため、かるらは慌てて背中から羽を生やして秋宗を追いかけて、2人による鬼ごっこが始まった。

その光景をコガラシと朧はただただ眺めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~湯煙高校~ 同時刻

 

校内にある階段に誰かが座っていた。

その人物はこゆずと同い年にも思える少女の見た目でもあった。

 

 

???「・・・ふふっ」

 

 

その少女は少し口をニヤつかせて笑っていた。

 

 

???「あと少し、あと少しで・・・!フフフッ!ハハハッ!アーハッハッハッ!」

 

 

誰もいない校舎で、少女の不気味な笑い声が響いていた。

 

 

 




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