『え・・・・・!?』
観客たちには何が起こったのか理解出来なかった。
目の前で歌っていた女の子たちの内の1人が突然消えてしまったからである。
千紗希(ゆ、幽奈さんが・・・!)
紫音(消えた・・・!?)
一緒に舞台に立っていた千紗希たちも突然幽奈が消えてしまったことに驚いてしまった。
しかし、狭霧は何が起こったのか理解できた。
狭霧(まさか!?幽奈の身体に化けていた葉札の術が解けてしまったのか!?)
今の幽奈は幽体の状態で霊力が弱い観客たちからは幽奈が見えずにいる。
幽奈自身も、一瞬何が起こったか理解出来なかったが、少しずつ理解していき内心はパニック状態になっていた。
こゆず「ボ、ボクが無理矢理間に合わせたから・・・!葉札のデキが悪かったんだ・・・!」
舞台袖から見ていたこゆずは自分が育てた葉札がこのような事態を起こしてしまったことに責任を感じて思わず泣いてしまう。
それを見た幽奈は、
幽奈(こゆずさんのせいではありません。これは無理にお願いした私の・・・!)
実際幽奈は何度も不安に思うことがあった。
幽霊である自分が舞台に立ってしまえば何か不測の事態が起こってしまうのではないのかと。
それでもみんなの役に立ちたい、頑張りたいと決心した。
幽奈(なのに、結局私は・・・!台無しに・・・!)
秋宗(っ!マズイ!!)
秋宗は幽奈の様子を見て焦りを表してしまう。
幽奈は感情が高ぶると無意識にポルターガイストを起こしてしまうため、今ここで幽奈がポルターガイストを起こしてしまえばさらに会場は大混乱になってしまう。
秋宗は幽奈を落ち着かせるために一旦演奏を止めようとした時、
パンッ
幽奈「!!」
狭霧と雲雀、夜々の3人が幽奈の背中を叩いた。
突然のことに幽奈は振り向くと、
狭霧(気にするな!)
雲雀(大丈夫だよ幽奈ちゃん!)
夜々(夜々たちがフォローする!)
3人はパフォーマンスを続けながら幽奈を励まそうとしていた。
言葉には出さなかったが、他心通を使えない幽奈でも狭霧たちが自分を励ましていると伝わった。
幽奈「・・・っ!」(ピシャッ
くよくよしている場合ではないと思い幽奈は自分の頬を叩いて気を取り直した。
秋宗は心配いらないと思い演奏を続けることにした。
幽奈(そうです!きっとまだ私にもできることはあるハズです!)
幽奈はこれからどうすればよいかと考えながら落ちた服を舞台袖へ運んで行った。
一方、呆気に取られていた観客たちは、
「・・・す、すげぇぇぇ!!」
「女の子がいきなり消えたぞ!?」
「イリュージョンかよ!?」
突然幽奈が消えたことに驚きこれもパフォーマンスの1つだと思った。
観客の反応に幽奈を始め秋宗たちも予想外であった。
そして、最初の曲が終了した。
狭霧「さて、どうしたものか・・・!?」
次の曲でどのように挽回するか考えていると、
幽奈「皆さん!ご提案があります!」
幽奈があることを提案した。
みんなは幽奈の提案に耳を傾けた。
幽奈「トゥインクルスの御三方が仰ってたんです!一番大切なのはお客さんに楽しんでもらうことだって!そのためならやれることはなんでもやるって!!」
幽奈はパフォーマンスを終えたトゥインクルスと話をしたことを思い出して、今自分たちがやれることは徹底してやろうと言った。
幽奈の提案を聞いたみんなはアイコンタクトを取り頷いて提案に乗った。
後輩1「なんか、止まってんぞ?」
兵藤「幽奈ちゃんは?」
観客に混じり兵藤たちはハラハラしながら幽奈たちの心配をしていた。
そして2曲目が始まったと同時に、
ぽむんっ、ぽむんっ、ぽむんっ
みんなの衣装が制服をモチーフにした衣装から浴衣をモチーフにした衣装へと変化した。
こゆずが舞台袖から葉札を飛ばして衣装チェンジしたのである。
「うおおお!?」
「今度は早着替えか!?」
「すげぇぇぇ!!」
突然衣装が変わったことにより、観客たちは更に盛り上がっていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
プロデューサー「ど、どうなってんだいアリャ!?」
観客たちから少し離れたところから見ていたプロデューサーとトゥインクルスは驚きを隠せずにいた。
最初はプロデューサーの予想通り観客が盛り上がらなかったが、その最中に突然女の子が消えてしまった。
その影響で観客は動揺したものの、パフォーマンスと思い少しずつ盛り上がっていった。
2曲目が始まったと同時に今度は衣装が変わり、プロデューサーとトゥインクルスは何がなんだか分からずにいた。
???「オオカミさんが言ってたでしょ?この町を甘く見てると痛い目みるって」
突然隣から声をかけられて咄嗟に見ると、昨日の紫髪のツインテールの女の子の七海が舞台を見ながら立っていた。
「七海ちゃん!」
トゥインクルスの長髪の子はいつの間にか隣にいた七海に驚いて声を出してしまう。
七海「貴女たちはこの町に関しては素人同然。まさにオオカミさんの言った通りね」
七海は舞台を見ながらパフォーマンスを楽しそうに観ていた。
すると、
ジャラララララッ!!
狭霧の周りに数十本のクナイが出現した。
クナイは勢いよく空へ飛び上がり、
ドンッ!ドンッ!ドンッ!
クナイが弾けて、まるで花火が打ち上がったかのようにキレイに輝いていた。
すると今度は、雲雀がその場でジャンプすると、なんと観客の頭上を空中でアイススケートをするかのように飛んでいた。
雲雀は霊力で作り出した手裏剣に乗り空を飛んでいたのだ。
更に夜々は猫神を召喚して上に乗り飛び上がり、こゆずは葉札で空に星形の照明を取り付けた。
そしてなんと、観客から幽奈が見えるようになっていた。
うららが式神を使って会場内の人たちの霊感を一時的に強化して幽奈を見えるようにしたのである。
次から次へと様々な現象が起こる舞台に観客のボルテージはマックスになっていた。
プロデューサーとトゥインクルスも呆気に取られていた。
七海「・・・流石はオオカミさんたちね」
七海はパフォーマンスに魅了されながらも演奏しているであろう秋宗の方を見ると、そこに秋宗はいなかった。
それどころか、舞台のどこを見ても秋宗の姿が見当たらなかった。
七海「・・・オオカミさん?」
「あれ?オオカミくんがいないな?」
「・・・どこ行ったんだろ?」
「もしかして具合でも悪くなったのかな?」
トゥインクルスも秋宗がいないことに気がついてどこに行ったのかと疑問に思ったその時、
「オ、オイ!照明のところに何かいるぞ!!」
観客の1人が舞台に設営されてある照明の上に何かいることに気がつき、それに伝染されるかのように次々に観客たちが上の方を見た。
確かにそこには何か大きな黒い影があった。
そしてそれは照明から落ちてきて、舞台の上に降り立った。
その正体は、体長が約2メートルにも思わせる灰色の毛並みで目が緑色の大きなオオカミだった。
「なんだあれ!?でかい犬!?」
「いや!犬っていうかオオカミじゃねぇか!?」
「これもパフォーマンスなの!?」
突如上から降ってきたオオカミに観客たちは激しく動揺してしまう。
七海「・・・オオカミさんったら、大胆な行動に出たわねぇ」
七海は驚きながらも感心しながらオオカミの様子を観ていた。
プロデューサー「えっ?オオカミ、さん?」
プロデューサーは七海の発言に反応して、改めて舞台にいるオオカミをよく観察した。
灰色の毛並みに緑色の目、そして七海は昨日あの少年を『オオカミさん』と呼んでいたことを思い出した。
プロデューサー「ま、まさか・・・!?」
七海「そのまさかよ」
プロデューサーはあのオオカミが秋宗だと思い、それを肯定するかのようにプロデューサーに声を掛けた。
「えぇっ!?あれオオカミくんなのか!?」
「言われてみれば確かに似てる・・・!」
「オオカミくんって本当にオオカミだったの!?」
トゥインクルスも薄々あのオオカミが秋宗と気付き驚きを隠せずにいた。
人間がオオカミに変身できるなんて聞いたことがないため信じるには無理があるかもしれないが、舞台で起こってる人間離れしたパフォーマンスを見れば辻褄があうだろう。
七海「それにしてもオオカミさん、一体あの姿で何をする気なの?」
獣型の秋宗にできることは少なく、パフォーマンスも限られてくるだろう。
七海が考えていると、
秋宗「スゥゥゥゥゥ!!」
秋宗は勢いよく空気を吸い込み肺に溜め込み始めた。
観客たちはもちろん、コガラシたちも何をするのかまったく予測できずにいた。
そして秋宗が空気を吸い込むのを止めた次の瞬間、
秋宗「ブゥゥーーーー!!」(ビュォォォ!!
秋宗は一気に溜め込んだ空気を吐き出した。
そして吐き出された空気は渦を描くように空へ上がり舞台に大きな竜巻が発生した。
コガラシたちは竜巻に飲み込まれそうになりながらも何とか耐えきりながら演奏を続けた。
すると、観客たちの足元に落ちていた桜の花びらが竜巻へ吸い込まれるように舞い上がった。
今は5月の始めだが、まだ桜が散っているため地面には桜の花びらが落ちていた。
竜巻に飲まれた花びらは鮮やかに舞っており、まるでピンク色の竜巻のようでもあった。
「あのオオカミすげぇ!!」
「竜巻を起こすなんてまるで3匹の子ブタみたい!」
「桜もキレイに舞ってる!!」
観客たちは目の前の光景に魅了された。
そして秋宗は息を少し吸い込むと、
秋宗「ウオォォォォォォォォン!!」
遠吠えを起こして竜巻をかき消した。
それにより、桜の花びらは観客たちの頭上をヒラヒラと舞い上がっていった。
「すごーい!!」
「俺!生でオオカミの遠吠えなんて初めて聞いたぞ!」
「まるで夢を見てるみたい!!」
観客たちは今日で最高に盛り上がり今まで見てきたミュージシャンたちのパフォーマンスなど忘れているかのようであった。
こうして、秋宗たちのパフォーマンスは最高に盛り上がったまま終わりを告げた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
湯煙温泉郷フェスも幕を閉じて、コガラシたちは呑子たちと合流して舞台裏にいた。
湯野田さん「凄かったよみんな!ゆらぎ荘には不思議な子たちが住んでるとは聞いてたがここまでとは!ありがとう!期待以上だったよ!」
フェスを盛り上げてくれた幽奈たちを大絶賛していた。
褒められた幽奈たちは照れていた。
プロデューサー「あんなのマジックショーでやるもんだよ」
すると、声をかけられて幽奈たちが振り向くと、プロデューサーとトゥインクルス、そして七海の姿があった。
七海「もう、素直じゃないんだから」
七海はプロデューサーの態度に呆れていた。
「七海ちゃんの言う通りですよ」
「プロデューサー頭かたーい!」
短髪の子とツインテールの子は七海の意見に賛同するようにプロデューサーに反論した。
「少なくともお客さんはみんな、最高に楽しんでいた」
そして長髪の子はコガラシたちにウインクをして絶賛した。
プロデューサー「・・・分かってるよ。あれだけの芸当、たとえどんな才能があろうと一朝一夕でできるもんじゃない」
幽奈たちの舞台に対する熱は違うかもしれないが、日々の鍛練や強い思い、紡がれた絆があって初めて成し遂げられたステージだったのだろうとプロデューサーは感想を述べた。
プロデューサー「昨日は失礼なことを言ってしまってすまなかったね」(スッ
言い終えたプロデューサーは頭を下げて幽奈たちに謝罪をした。
そして頭を上げて、
プロデューサー「熱かったよ!キミら!」
笑顔で幽奈たちを絶賛した。
プロデューサーから認められた幽奈たちは思わず笑みを溢してしまう。
雲雀「それにしても秋宗くんのあの竜巻凄かったよねぇ!」
こゆず「まるで3匹の子ブタみたいだったよ!」
みんながワイワイと話していると、
秋宗「アァ~、やっと解放された・・・」
聞き覚えのある声が聞こえて振り向くと、獣型に変身したままの秋宗がコガラシたちの元へ歩いて来ていた。
紫音「あれ?秋宗兄さん着替えなかったんスか?」
秋宗「フェスを見に来てた子供たちにモフられて着替えられなかったんだ」
朧「それは災難だったな」
事情を手短に済ませた秋宗はプロデューサーとトゥインクルスの前へ歩いて行き、
秋宗「あの・・・すいませんでした」(ぺこっ
頭を下げてプロデューサーとトゥインクルスに謝罪をした。
秋宗「腹が立っていたとはいえ、貴女たちには失礼なことを言ってしまいました。本当に申し訳ありません」
秋宗も強く言いすぎたことに罪悪感を感じており、フェスが終わった後に謝っておこうと決めていたのである。
プロデューサーは頭を下げたままの秋宗の前にしゃがみ込み、
プロデューサー「頭を上げて。むしろ謝るのはこっちの方さ。キミの言ってた通り、私たちはこの町に関して素人だったよ」(なでなで
オオカミの容姿のためか秋宗の頭を優しく撫でた。
秋宗は撫でられながらもゆっくりと頭を上げると、
プロデューサー「キミもすっごくカッコよかったよ!」
プロデューサーが笑顔を向けて自分を褒めてくれた。
秋宗「・・・恐縮です」
秋宗は照れくさそうに顔を反らした。
すると今度は、
「オオカミくんの毛並みってサラサラだね!」
「自分で手入れとかしてるの?」
「ずっと撫でてたいなー!」
トゥインクルスの3人が秋宗の頭や背中、尻尾まで撫でて毛並みの感触を楽しんでいた。
秋宗「ちょっ、ちょっと!?///」
秋宗はアイドルたちに身体を触られていることに動揺を隠せずにいた。
七海「あら、オオカミさんったらモテモテね」
七海は秋宗の様子を見て楽しみ、
兵藤「くっそー!西条のヤツなんて羨ましいんだ!俺もオオカミ人間だったら!」
兵藤は大ファンのトゥインクルスと触れ合っている秋宗を親のかたきのように睨み、
柳沢「お前も触ってきたらどうだ紫音?」(ニヤニヤ
紫音「なっ!?///何言ってるんスか芹姐さん!?///」(正直言って羨ましいッス!///
羨ましがっている紫音を柳沢がからかっていた。
秋宗の毛並みを一通り楽しんだトゥインクルスは幽奈たちに別れを言ってプロデューサーとホテルへ戻って行った。
そしてこの後、ゆらぎ荘で打ち上げが行われみんなは夜が明けるまで楽しんだ。
感想の程、よろしくお願いいたします。