緋扇邸のオオカミくん   作:アニアス

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今回はオリジナル回でオリジナルキャラが登場します!


第32話 天才発明家

~湯煙温泉郷~ 午後3時

 

5月の半ばを迎えまだ肌寒い時期が続く季節、町では厚着を羽織る人たちが多く見受けられている。

その中に1人の男が歩いていた。

 

男の見た目は高校生、青のジャンパーを着て髪は緑色でおとなしそうにも思える。

そして彼の右手にはケーキ箱、左手には大きなシルバーのアタッシュケースを持っていた。

 

数分後、男が階段の前で立ち止まり上を見上げた。

彼の視線の先には、ゆらぎ荘があった。

 

???「・・・本当にあんなところに、あの子がいるのかな?」

 

地元でも幽霊が出ると噂されており誰もあまり近づかずにいるゆらぎ荘を男は興味深く眺めていた。

 

???「まぁここまで来ちゃったし、挨拶くらいはしとかないとなぁ」

 

男は気だるそうな態度を見せながらもゆっくりと階段を上がって行った。

 

階段を上り終え男はゆらぎ荘の玄関の前に立った。

そして一呼吸おいて扉に手を置き、

 

???「ごめんくださーい!」(ガラララッ

 

扉を開けると同時に大きな声で挨拶をした。

 

するとそこには、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千紗希「やめてよ七海ちゃん!///パンツなら昨日見せたでしょ!?///」

 

七海「何を言ってるのお母さん!昨日は昨日!今日は今日よ!さぁパンツを見せなさい!」

 

かるら「朧!またコガラシ殿を不意に襲いおって!今すぐ離れぬか!」

 

朧「断る。これから冬空と風呂を共にするのでな、これはその下準備だ」

 

コガラシ「そんな約束してねぇだろ!///」

 

七海が千紗希のスカートを握って無理やり捲ってパンツを見ようとしているが、千紗希が必死になってスカートを抑えていた。

更にその横では朧が着物をはだけさせコガラシの服も脱がそうとしており、かるらが顔を真っ赤にして朧をコガラシから剥がそうとしていた。

5人は玄関に人がいることなど全く気づいていない様子である。

 

???「・・・何このカオス空間?」

 

男は呆気に取られてしまい声を掛けた方がいいのかそれとも静かに立ち去った方がいいのか考えこんでしまう。

 

秋宗「またお嬢と朧が揉めてんのか?」

 

マトラ「相変わらずやってんな~」

 

すると向こうから騒ぎを聞き付けた秋宗とマトラが歩いて来た。

見慣れた光景に2人は呆れてしまうが、

 

秋宗「・・・ん?」

 

秋宗が玄関に知らない男がいることに気がついた。

男は秋宗が自分に気がついたと分かると、

 

???「こ、こんにちは・・・」

 

目の前の光景に引きながらも秋宗に挨拶をした。

 

それに気付きマトラを始め、揉めていた5人も玄関に人がいることに気が付いた。

 

コガラシ「・・・誰だ?」

 

目の前にいる男にコガラシたちは動揺してしまう。

 

七海「あら、浩介じゃない」

 

呆気に取られているコガラシたちを余所に七海は男の方へ歩いて行った。

 

???「七海、何やってるの?」

七海「見て分からないの?パンツを見ようとしてたのよ」

???「本当にパンツ好きだね、一体いつからそんな風になったんだか・・・」

 

男は呆れながらも苦笑いで七海と親しげに会話をしていた。

 

秋宗「何だ?七海の知り合いか?」

 

秋宗は2人の会話に入り七海と男の関係を聞こうとした。

 

七海「えぇそうよ。紹介するわ。私の同居人よ」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

~大広間~

 

浩介「初めまして、平賀浩介《ひらがこうすけ》です。七海の遠い親戚です」

 

大広間にて男子高校生、平賀浩介は秋宗たちに自己紹介をした。

大広間にいるのは秋宗、かるら、マトラ、コガラシ、幽奈、千紗希、朧、そして七海と浩介がいた。

 

秋宗「初めまして、俺は・・・」

浩介「西条秋宗くん、でしょ?」

 

秋宗は自己紹介をしようとしたが浩介が遮って名前を答えた。

秋宗は浩介が自分の名前を知っていたことに驚いてしまう。

 

秋宗「何で俺の名前・・・」

浩介「七海からある程度のことは聞いてるさ。もちろん他のみんなのこともね」

 

浩介は秋宗からコガラシたちへと1人1人視線を移していった。

それはまるで博物館の展示品を見るかのような視線でもあった。

 

七海「それにしても浩介、貴方どうしてゆらぎ荘に来たの?」

浩介「七海から聞いてた人たちがどんな風なのかこの目で確かめたくてね。それに七海がお世話になってるから挨拶しないとって思ったから」

七海「そういうことだったの」

 

話に夢中になっている浩介と七海を余所に秋宗たちはヒソヒソと小声で話し出した。

 

秋宗「お嬢、どう思う?」

かるら「他心通で心を読んどるのじゃが、どうやら嘘偽りはなさそうじゃのう」

コガラシ「初対面で何を疑ってんだよ?」

マトラ「にしてもヒョロヒョロで弱そうなヤツだなぁ」

朧「まるで西条の父親みたいな男だな」

千紗希「確かに雰囲気は似てるね」

幽奈「七海さんと仲が良さそうですし、いい人なのでは?」

 

秋宗とかるらは直感で浩介を疑っていたが嘘をついてないと分かると警戒を解いた。

何故浩介を疑っていたのかというと、このゆらぎ荘には霊力の高いコガラシや幽奈がいるため悪用するのではないかと考えたからだ。

 

すると、

 

スゥッ

 

仲居さん「みなさ~ん!ケーキとお茶を持って来ましたよ~!」

 

仲居さんがお盆に浩介が持ってきたケーキとお茶を乗せて運んで来た。

大皿に置かれたケーキはショートケーキやチョコレートケーキなど様々な種類のケーキが数十個もあった。

 

マトラ「オォー!ウマそうだな!」

千紗希「これ全部平賀くんが買ったの!?」

浩介「うん、人数が多いって聞いたから結構奮発しちゃった」

七海「浩介ったら太っ腹ねぇ」

秋宗「なんか悪いな、こんなに頂いて」

かるら「まったくじゃ」

 

秋宗たちは少し申し訳ない気持ちになりながらも小皿とお茶を並べていると、

 

スゥッ

 

こゆず「ただいま~!」

 

出掛けていたこゆずと狭霧、雲雀が帰って来て大広間の襖を開けた。

3人は襖を開けたと同時に数十個もあるケーキが目に飛び込んできた。

 

こゆず「わぁ~!ケーキだ~!」

雲雀「しかもたくさんあるよ~!」

 

こゆずと雲雀はたくさんあるケーキを見て目を輝かせてしまう。

一方狭霧は、

 

狭霧「ん・・・?」

 

七海の隣に座っている浩介に気がついた。

玄関に見慣れない靴があったため誰か来ているのかと疑問に思ったためケーキからすぐに浩介の方へ視線が移った。

 

狭霧「お前は、平賀浩介・・・!?何故ここに・・・!?」

浩介「こんにちは雨野さん」

 

少し驚いている狭霧に浩介は軽く挨拶をした。

 

コガラシ「狭霧?」

幽奈「どうかされたのですか?」

朧「何だ?2人は知り合いなのか?」

 

狭霧の反応を見てコガラシたちは狭霧と浩介は何か関係があるのかと疑問に思った。

 

狭霧「あ、あぁ、私と同じクラスの男だ」

 

狭霧はコガラシたちに自分と浩介はクラスメイトだと説明をした。

それを聞きコガラシたちは浩介へと視線を移した。

 

秋宗「ってことは、平賀は俺らと同じ湯煙高校の学生だったのか?」

浩介「まぁ、そういうことになるね」

コガラシ「マジかよ・・・」

 

浩介が湯煙高校の学生と知った秋宗たちは少し驚いてしまう。

 

狭霧「幽奈、何故あの男がここにいる?」

 

狭霧は周囲に聞こえない程度で幽奈に浩介がゆらぎ荘にいるのかと聞いてみた。

 

幽奈「えっと、どうやら七海さんと同居しているらしいんですよ。それで今日はご挨拶に来たそうです」

狭霧「・・・そういうことだったのか」

 

幽奈から訳を聞いた狭霧は浩介を見ながら雨野祖母の話を思い出した。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

~雨野家~

 

ゴールデンウィーク期間に雨野祖母から呼び出された狭霧と雲雀は囲炉裏を挟んで雨野祖母と向き合っていた。

一体何の用があるのだろうと疑問に思う2人だが取り敢えず話を聞くことにした。

 

雨野祖母『狭霧!雲雀!お主らに長期任務を命ずる!』

 

雨野祖母から長期任務を言い渡された狭霧と雲雀は思わず身を引き締めてしまう。

長期任務は過酷なものが多いため腕の立つ誅魔忍でも一苦労である。

そして雨野祖母は口を開き任務内容を切り出した。

 

雨野祖母『冬空コガラシ殿を籠絡し、雨野家の婿に迎えよ!』

狭霧『!?///』

 

任務内容を聞いた狭霧は顔を赤くしてしまい、雲雀はまさに自分向けの任務だと胸が高ぶっていた。

一見ふざけているようにも思えるが、実際は正式な命令でもあるのだ。

 

狭霧『な、何を言っているのですかおばば様!?///』

雲雀『ってなんで狭霧ちゃんまで!?雲雀だけでいいのに!』

 

狭霧は思わず反論してしまい、コガラシに好意を抱いている雲雀は自分1人でいいと主張した。

 

雨野祖母の話によると、2年前の合戦以降、東軍も西軍も大きな動きを見せてはいないが、また合戦が起きてもおかしくない状況でもあり日本全土を巻き込む事態へと陥ってしまう可能性もある。

それを防ぐためには、誅魔忍軍が八咫鋼を含む第三勢力になり均衡を保つしか方法がない。

つまりこれは政略結婚のようなものでもある。

 

雨野祖母『狭霧よ、雲雀と2人で臨むのは、より確実に冬空コガラシ殿を雨野家の婿へ迎えるための策じゃ。けして雲雀に譲ろうなどと思わぬようにな!』

狭霧『!!///・・・』

雲雀『そ、そういうことなら・・・』

 

雨野祖母から訳を聞かされた狭霧は誅魔忍軍のためにと自分に言い聞かせて任務を引き受け、雲雀も渋々納得して狭霧と一緒に任務に臨むことを承諾した。

 

2人が部屋を出ようと立ち上がろうとした時、

 

雨野祖母『またぬか、まだ話は終わっとらんぞ』

狭霧・雲雀『えっ?』

 

雨野祖母が呼び止めて座らせようとした。

狭霧と雲雀は呼び止められたため、座り直して再び雨野祖母と向き合った。

 

雨野祖母『実はもう一つ長期任務があるのじゃ』

狭霧『もう一つ?』

 

狭霧と雲雀は顔を向き合ってしまい他にどんな長期任務があるのだろうと疑問に思ってしまう。

 

雨野祖母『狭霧よ、この男を知っておるか?』

 

雨野祖母は懐から写真を一枚取り出して狭霧と雲雀に見せた。

写真には緑色の髪をしたおとなしそうな男が写っていた。

雲雀にはまったく分からなかったが、狭霧は写真の男を見て目を丸くしてしまう。

 

狭霧『こいつは、平賀浩介・・・?』

雲雀『えっ?狭霧ちゃん知ってるの?』

 

狭霧が写真の男の名前を口に出したため雲雀は思わず狭霧の顔を見た。

 

狭霧『あぁ、私と同じクラスの男なのだが・・・。おばば様、この男がどうかされたのですか?』

雨野祖母『それをこれから話す。もう1つの長期任務と平賀浩介殿についてな』

 

狭霧と雲雀は長期任務と浩介にどんな関係があるのだろうと思いながらも内容を聞こうとした。

雨野祖母はコホンと咳をして話を切り出した。

 

雨野祖母『まずこの平賀浩介殿、誅魔忍軍の諜報員の調べによりあることが判明したのだ』

雲雀『・・・それって、なんなの?』

 

雲雀は恐る恐る雨野祖母に浩介のことを聞こうとした。

 

雨野祖母『平賀浩介殿、どうやらこの男・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平賀源内の末永であるようじゃ』

 

 

 

狭霧『なっ・・・!?』

雲雀『ひ、平賀源内ってあの!?』

 

浩介の祖先の正体を知った狭霧と雲雀は目を見開いてしまう。

 

平賀源内。

江戸時代にエレキテルを始め様々な発明品を生み出した発明家である。

 

狭霧はクラスメイトに歴史上の人物の末永がいたことに驚いてしまうが冷静になって考えてみた。

 

狭霧『ですがおばば様、この男が平賀源内の末永であることと長期任務に一体何の関係が?』

雨野祖母『まぁ狭霧よ、話は最後まで聞かぬか』

 

雨野祖母は狭霧を落ち着かせて話を続けようとした。

 

雨野祖母『平賀浩介殿は霊能力専門の発明品をつくっているとの情報を掴んでおる。しかも我々誅魔忍軍の工房でつくっているものよりも高性能な代物らしい』

雲雀『へぇ~』

 

話を聞いた雲雀は写真の浩介を興味深く見た。

黙って話を聞いていた狭霧は顎に手を当てて考えた。

平賀源内の末永の浩介、霊能力専門の発明品を作り出している、それらに関係する長期任務。

 

狭霧『・・・では、もう1つの長期任務というのは』

 

狭霧が内容を推測したと同時に雨野祖母は静かに頷いた。

 

雨野祖母『そう、平賀浩介殿を誅魔忍軍へと引き入れる。これがもう1つの長期任務じゃ』

 

八咫鋼の力を宿すコガラシ、高性能の霊能力専門の発明品を作り出す浩介、この2人が誅魔忍軍の味方につけばまさに無敵になるだろう。

 

雨野祖母『じゃが普通に勧誘しても協力してくれる可能性は低い。平賀浩介殿と友好的な関係を築いてからが好ましいじゃろう』

 

狭霧の知り合いだからこそ、この任務は2人が望ましいと考えて出した答えたらしい。

 

雨野祖母『狭霧!雲雀!お主らなら必ずこの2つの任務を成し遂げられると信じておる!頼んだぞ!』

狭霧『ハッ!』

雲雀『任せておばば様!』

 

狭霧と雲雀は雨野祖母の期待に答えるために気合いを入れた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

そして時間は戻り、現在。

 

狭霧(まさか平賀浩介が七海の親戚で一緒に暮らしてるとはな・・・)

 

狭霧はケーキを食べながら浩介の様子を伺っていた。

 

学校でも何度も話し掛けようとはしたものの何と声をかければよいか思いつかず話し掛けづらかった。

いきなり話し掛ければ怪しまれて警戒される恐れがあったからだ。

 

しかし、浩介がゆらぎ荘へ赴いた為話し掛ける絶好の機会が訪れた。

 

狭霧(だが、一体どうやって話を切り出せばよいのだ?)

 

いきなり平賀源内のことや霊能力専門の発明品のことなどを切り出してしまえば不審に思われてしまい友好的な関係を築くのは困難を極めてしまう。

 

いかにごく自然に会話に出せるのかと狭霧が必死になって考えていると、

 

こゆず「うわぁ~!スッゴ~い!」

 

こゆずの声が大広間に響いたため全員が注目すると、こゆずが浩介が持っていたアタッシュケースを勝手に開けて中に入っていたものを見ていた。

まるで新しいオモチャを貰った子供のように目を輝かせていた。

 

千紗希「何やってるのこゆずちゃん!?ダメだよ勝手に開けたら!」

浩介「いいよ宮崎さん、大したものなんか入ってないから」

 

千紗希は人の物を勝手に見ているこゆずを注意するが、浩介は軽く笑って許してくれた。

 

こゆず「みんなも見て!凄いものがたくさん入ってるよ!」

秋宗「凄いもの?」

かるら「一体何が入っとるのじゃ?」

 

アタッシュケースの中が気になる秋宗たちはこゆずの側へより中に入っているものを確認すると、中には対戦車ロケット発射機を連想させるバズーカや球体の形をした機械のようなものなど様々なメカニックを思わせるものが入っていた。

中を見た秋宗たちは少し動揺してしまう。

 

マトラ「何だこりゃ?」

 

マトラは入っていたバズーカを手に取ってまじまじと物色した。

バズーカは黒く引き金の近くにはダイヤルのようなものが取り付けられている。

 

浩介「それは『霊砲バズーカ』。使用者の霊力をランチャーのように打ち出せることができるよ」

秋宗「・・・は?」

 

不思議がっているマトラに浩介はバズーカについて説明をした。

浩介の説明に秋宗たちはポカンとなってしまうが狭霧と雲雀はもしや浩介が作ったものではないかと推測した。

 

マトラ「ふ~ん?」(ガチャッ

 

説明を聞いたマトラは窓を開けてバズーカを空の方へ構えた。

 

秋宗「ちょっ!?姐さん何する気だよ!?」

 

秋宗たちはマトラが何をするのかある程度予測できたため、身の危険を感じて少し彼女から距離を取った。

 

マトラ「決まってんだろ?試し撃ちだ!」

浩介「!?待って!それダイヤルが・・・!」

 

浩介が慌ててマトラを止めようとするが時既に遅し。

マトラは引き金に指を掛けて引いてしまった。

 

そして次の瞬間、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドオォォォォォォン!!!!

 

 

 

 

激しい爆音が響いたと同時に大広間どころかゆらぎ荘中に白い煙が立ち込めた。

 

コガラシ「な、何だ!?」

狭霧「みんな無事か!?」

雲雀「ゲホゲホ!一体何が起きたの!?」

千紗希「こゆずちゃん!何処!?」

こゆず「何も見えないよー!」

幽奈「何がどうなったんですか!?」

秋宗「お嬢!姐さん!大丈夫か!?」

 

視界を塞がれ立ち込める煙に秋宗たちは噎せながらも互いに安否を確認し合った。

そして徐々に煙が晴れ出してお互いに姿が確認できる程度まで視界が晴れた。

 

仲居さん「ビックリしました~!」

朧「ゆらぎ荘が爆発でもしたのかと思ったぞ」

 

みんなはお互いに怪我をしていないかを確認し合っていると、

 

秋宗「姐さん!大丈夫か姐さん!?」

かるら「しっかりせぬかマトラ!」

マトラ「ち、力が入んねぇ~・・・」

 

秋宗とかるらがうつ伏せになって倒れているマトラに寄り添って必死に呼び掛けていた。

マトラの様子はまるで長距離マラソンを完走したランナーのように疲れきっておりぐったりしていた。

 

浩介「大丈夫だよ、彼女は今霊力を全て使い切って疲れてるだけだから。まぁ無理もないか、メーターMAXで霊砲バズーカ撃ったんだからね」

 

心配になっている秋宗たちに浩介は大丈夫だと言い切った。

浩介はマトラの側に落ちている霊砲バズーカを拾ってどこも異常がないか確認した。

 

秋宗「霊力を、使い切った・・・?」

かるら「どういうことなのじゃ・・・?」

浩介「・・・ほら、ここを見て」

 

不思議がっている秋宗たちに浩介は霊砲バズーカのダイヤル部分を見えるように指し、コガラシたちも注目した。

ダイヤルには1~10までの番号があり矢印が10を指している。

 

浩介「このは霊砲バズーカが発射される霊力をこのダイヤルで調整できるんだ。1だと威力は小さいけど使用者の霊力の消費は少ない。数字が大きくなるに連れて威力は大きくなるけど当然使用者の霊力の消費者も大きくなる。で、ダイヤルを10に合わせると絶大な威力で発射されるけど使用者の霊力を全て使い切ってしまうんだ。」

秋宗「・・・成る程、そういうことか」

 

浩介から霊砲バズーカについての詳しい説明を聞いた秋宗たちはマトラが霊力を使い切った理由に納得した。

 

するとコガラシは浩介にあることを聞いた。

 

コガラシ「つうかお前何でこんな物騒なもの持ってんだよ?」

 

コガラシの言う通り、こんな危険すぎる代物を何故浩介が持っているのかみんな疑問におもってしまう。

もしかしたら何かとんでもないことを隠しているのではないかと、事情を把握している狭霧と雲雀以外は疑心暗鬼の目を向けた。

 

浩介「え、えぇっと・・・」

七海「大丈夫よみんな、これは浩介が趣味で作ったものだから」

 

戸惑っている浩介のために七海は前に立ち秋宗たちを落ち着かせようとした。

 

秋宗「つ、作った・・・?」

七海「えぇそうよ」

 

呆気に取られている秋宗たちに七海は改めて浩介を紹介した。

 

七海「浩介はね、平賀源内の末永なのよ」

『・・・・・えぇぇぇぇぇぇぇ!!??』

 

浩介の正体を知った秋宗たちは驚きの声を上げた。

そして当の本人は指で頬を掻いて少し照れていた。

 

秋宗「マジかよ!?」

かるら「平賀源内の末永じゃとぉ!?」

幽奈「凄いですぅ!」

 

秋冬たちは浩介の正体を知って思わず絶賛してしまう。

 

雲雀「狭霧ちゃん!やっぱりホントだったんだよ!」

狭霧「どうやらそのようだな」

 

狭霧と雲雀は小声で情報通り浩介が正真正銘平賀源内の末永なのだと確認した。

 

朧「・・・だがお前が平賀源内の末永だからと言ってこのような発明品を作れる理由にはならんぞ」

 

しかし、朧だけは浩介に対して疑いの目を向けていた。

確かに浩介が平賀源内の末永とはいえど霊能力専門の発明品を作れるのはおかしい。

 

問い詰められた浩介は困った表情で右手で頭を掻いた。

 

浩介「う~ん、言っても信じてもらえるか分かんないけど・・・。僕のご先祖様の平賀源内は、霊能力者達に協力して発明品を作ってたんだ」

朧「何だと・・・!?」

千紗希「そ、そうなの!?」

コガラシ「平賀源内に裏の顔があったのかよ・・・!?」

 

知られざる日本の裏の歴史にコガラシたちは驚愕の表情を露にした。

 

浩介「んで、僕が小さい頃にじいちゃんの家で偶然、平賀源内が書き残した霊能力専門の発明品の設計図を見つけてね。僕にも作れるかな?って感じで作ってみたら、いつの間にか熱中しちゃってね」

 

アハハと笑いながら浩介はバズーカを眺めて当時のことを思い出した。

しかし、秋宗には引っ掛かることがあった。

 

秋宗「じゃあ何でこんなの持ち歩いてんだよ?わざわざ俺らに見せるために持ってきたって訳でもなさそうだし」

 

見た所、普段から持ち歩いてる雰囲気がしたため秋宗にはどうしてもそこが腑に落ちずにいた。

 

聞かれた浩介は少し険しい顔になった。

 

浩介「・・・実は去年の4月頃から、悪霊やら妖怪やらに襲われるようになってね。常に護身用として発明品を持ち歩かなければならなくなってしまったんだ。これは僕の推測だけど、この街に霊力が著しく高い霊能力者がいてその霊力に当てられて悪霊と妖怪が集まってきてるんだと思うんだ。西条くんたち何か知らないかな?」

秋宗「去年の、4月・・・」

仲居さん「霊力が著しく高い、霊能力者・・・」

 

浩介の話を聞いて秋宗たちの視線はある人物へ集中した。

 

コガラシ「・・・・・何だよ?」

 

そう、八咫鋼の冬空コガラシへと。

コガラシがこの街へ来たのは去年の4月頃、更に霊力が著しく高いため浩介の推測と見事に一致している。

しかし秋宗たちはストレートに言うことが出来ず、コガラシ自身も話を聞いておそらく自分だろうと思ったため気まずくなり目を反らしてしまう。

そんな中、1人空気の読めないやつが切り出した。

 

マトラ「つうことは、八咫鋼のせいってことか・・・?」

かるら「マトラ!」

秋宗「姐さん!」

 

誰も言えずにいたことを仰向けでぐったりしているマトラがポロッと溢してしまい秋宗とかるらは揃ってマトラを叱りつけてしまう。

 

コガラシ「・・・すまん平賀、俺のせいで迷惑かけて」

 

責任を感じてるコガラシは浩介に申し訳なさそうに頭を下げた。

 

浩介「冬空くんが謝る必要ないよ!そんなに気にしなくていいからさ!」

七海「そうよやっさん、貴方のせいじゃないわ」

 

浩介は慌てて自分を責めているコガラシを元気付けようとし、七海も便乗して励まそうとした。

しかし、コガラシの表情は暗いままでその影響で空気も重くなってしまった。

 

この空気を何とかせねばと千紗希が考えていると、ふと浩介のアタッシュケースが視界に入り、他にも色々入ってることに気がついた。

 

千紗希「ひ、平賀くん!これって何!?」

 

空気を変える為に千紗希はアタッシュケースに入っていたVRゴーグルのような形状をした発明品を手に取った。

千紗希に質問された浩介は話題を切り替えようとゴーグルの説明をした。

 

浩介「あ、あぁ!それは『幽霊探索ゴーグル』。霊力が少ない人でも幽霊を見ることができるんだ」

千紗希「えっ!?てことは私がこれを付けると幽奈さんが見えるってこと!?」

浩介「うん、使ってみる?」

千紗希「じゃあせっかくだし!」

 

早速千紗希は幽霊探索ゴーグルを装着して周囲を見渡してみた。

確かに浩介の言った通り、幽奈の姿がはっきりと見えていた。

 

千紗希「すごい!ホントに幽奈さんが見えてる!」

幽奈「えぇっ!?私が見えてるのですか千紗希さん!?」

千紗希「あ、あれ?見えるけど声が聞こえない?」

浩介「姿が見えるだけだから声は別だよ」

 

ゴーグルを掛けてるとはいえ声までは拾えず千紗希には幽奈が口パクをしているようにしか見えなかった。

そしてみんなも空気を明るくしようとアタッシュケースの中の発明品を手に取った。

 

こゆず「ねぇねぇ!この青いボールみたいなの何?」

浩介「『霊力分散装置』。膨大な霊力にそれを投げ入れると霊力が分散されるんだ」

秋宗「へぇ、じゃあこっちの赤いボールもか?」

浩介「そっちは『霊力爆散装置』。簡単に言えば霊力の爆弾みたいなものだよ」

雲雀「そんなの危ないだけじゃん!」

幽奈「コガラシさんも見て下さいよ!凄そうなものばかりですよ!」

コガラシ「お、おう・・・」

 

先程までの重い空気が嘘のように消え去りみんなはワイワイと発明品を見ながら賑わっていた。

ずっと黙っていた狭霧は今がチャンスだと思い浩介に話しかけた。

 

狭霧「ひ、平賀浩介・・・」

浩介「ん?何?」

 

話し掛けられた浩介は狭霧の方を見ると、狭霧はモジモジしながら何とかして話を切り出そうとした。

 

狭霧「貴様の発明品は中々のものばかりだ。それでだな。もし、良ければ、私と雲雀の誅魔忍の妖怪退治の任務を、手伝ってくれないか?」

雲雀「そ、そうだよ!狭霧ちゃんの言う通りだよ!平賀くんがいれば百人力だよ!」

 

雲雀も浩介を誅魔忍軍へ引き入れる任務を思い出し浩介に任務を手伝って欲しいとお願いした。

 

浩介「うーん・・・」

 

いきなり誅魔忍の任務を手伝ってほしいと頼まれた浩介は最初は戸惑ったものの腕を組んで考えて、

 

浩介「・・・せっかく作ったものを使わないと勿体ない気もするし。分かった!雨野さんたちの任務を手伝うよ!」

 

狭霧たちの任務に協力することを決めた。

 

狭霧「恩に切る!」

雲雀「よろしくね平賀くん!」

 

狭霧は取り敢えず浩介を任務に同行させるという形で浩介を引き入れる任務の第一段階を成功させたことに内心でホッとした。

 

七海「浩介、任務終わった後に堅物さんとまな板さんに変なことしたらダメよ?」

浩介「しないよそんなこと!///」

雲雀「それより雲雀のあだ名まだまな板さんなの!?」

 

みんなは思わずアハハ!と笑ってしまい賑わってきた。

 

すると朧が浩介の元へと歩いて行き、

 

朧「平賀、もしよければ異性を完全に惚れさせる発明品を作ってくれないか?」

浩介「えっ?何に使うの?」

コガラシ「朧、お前なぁ・・・」

 

相手を惚れさせる発明品の制作をお願いしようとし、浩介は一瞬固まってしまいコガラシはどうせ自分に使うのだろうと呆れていた。

 

かるら「朧!また抜け駆けをしおって!」

 

かるらは朧へ詰め寄るためにヅカヅカと歩いて行くと、

 

 

カチッ

 

 

かるら「ん?なんじゃ?」

 

何かを踏んだかるらは一体何を踏んでしまったのだろうと足元を見ると、浩介のアタッシュケースに入っていた赤いボールがあった。

 

秋宗「・・・赤ってなんだっけ?」

浩介「・・・霊力爆散装置」

狭霧「・・・装置が起動する条件は?」

浩介「・・・衝撃を与えるだけ」

 

秋宗たちの顔から血の気が引いてどんどん青ざめていきそして・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカアァァァァァァァァァァァァン!!!!

 

 

 

 

霊力拡散装着が起動して秋宗たちは爆発に巻き込まれてしまいゆらぎ荘の一部が壊れてしまった。

 

ちなみにゆらぎ荘の改修工事の出費は緋扇邸が全額負担してくれたらしい。

 

 

 




今回も秋宗くんがあまり登場しませんでしたが次からはどんどん活躍させます!

感想の程、お願いいたします

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